今日の産経ニュース(3/18分)(追記・訂正あり)

■【主張】中国主導の投資銀 恣意的運営を防げるのか
http://www.sankei.com/column/news/150318/clm1503180002-n1.html
 まあ、余計なお世話ですね。参加国でこれから細部を詰めていくものについて今の段階で「恣意的運営防げるのか」もないでしょう。大体そんなに「恣意的運営」してほしくないなら「日米が参加して内部から恣意的運営を防ぐべき」じゃないんですかね。「英国、フランス、ドイツ、イタリアが参加の見込み」ならAIIB発足はもはや防ぎようがないわけですし。
 ともかく産経にはよほど「英国、フランス、ドイツ、イタリアが参加の見込み」と報じられたことがショックのようです。

設立には、米欧や日本が構築してきた国際金融秩序を崩す狙いが指摘される。

 まあ、別に「国際金融秩序」て「日本や欧米のもの」じゃないですからね。「中国にとって現状は国益に反する」と思えば色々やるでしょう。そんなのは中国に限った事じゃない。
 時々各方面(日本、韓国、ドイツ、イタリア、ブラジル、南アフリカなど)から出てくる「国連安保理常任理事国を増やそう」なんてのも「国際政治秩序をかえる狙い」があるわけです。
 違法行為でなければ中国相手に何言っても「価値観の違い」でしかなくてそれ以上、非難のしようもないわけです。ましてや「AIIB参加表明国がたくさんいる」わけですからね。

 環境や腐敗・汚職に目配りせず、お手盛り融資や返済能力を度外視した過剰融資を行うことは許されない。

 やれやれです。お手盛り融資はともかく既存の世界銀行などの融資がそんなに「環境や汚職」に目配りしてるのか。そんな事実はないと思いますけど。


■【産経抄】マッドマン・セオリー 3月18日
http://www.sankei.com/column/news/150318/clm1503180004-n1.html

 ウォーターゲート事件で失脚したニクソン*1米大統領だが、外交政策については、今も高い評価を受けている。キッシンジャー*2国務長官とのコンビにとって、最重要課題は当時のソ連に対する戦略だった。
政治学者の大嶽(おおたけ)秀夫さん*3によれば、「現実主義的平和論者」だったニクソン氏は、ソ連との交渉ではブラフ(はったり)、つまり「場合によっては世界を破滅させることも辞さないという強硬姿勢*4」が、最良の方法と信じていた。
▼これには、「狂気の振りをすること」さえ含まれている。ニクソン氏は、「マッドマン・セオリー」と呼んでいたという(『ニクソンキッシンジャー中公新書)。
▼まさかロシアのプーチン*5大統領は、ニクソン外交を研究して、「マッドマン」を演じているのではないだろう。
(中略)
 欧米諸国に対する、威嚇が目的であろう。

・「欧米諸国に対する威嚇が目的(つまりプーチンも本気で言ってるわけじゃないってことですよね、産経さん?)」ならそれ明らかに「マッドマンセオリーの一種」じゃないですか。産経は何訳のわからない事言ってるんですかね。
・ただし、プーチンニクソンに限らず「マッドマンセオリー」全般に言えることですが「常識的レベルのはったり」ならともかく「無茶苦茶なフカシ」というのはかえって事態を悪化させることも多いわけです。今回は果たしてどうなる事やら。
・もしかして産経があほな事言ってるのも「産経流マッドマンセオリー」か、と思いましたが、産経の場合「主観的にはマッドマンセオリー」でも客観的には「マッドマン」でしかないですね。

*1:アイゼンハワー政権副大統領を経て大統領

*2:ニクソン、フォード政権で国務長官

*3:著書『再軍備ナショナリズム:保守、リベラル、社会民主主義者の防衛観』(1988年、中公新書→2005年、講談社学術文庫)、『二つの戦後:ドイツと日本』(1992年、NHKブックス)、『日本政治の対立軸』(1999年、中公新書)、『日本型ポピュリズム』(2003年、中公新書)、『ニクソンキッシンジャー:現実主義外交とは何か』(2013年、中公新書)など

*4:ニクソン時代には第一次戦略兵器制限交渉がソ連との間で成立していますし、ニクソンの訪中もありました。つまりはニクソン外交をどう評価するにせよニクソンが「強硬論を吐いたとしても」それは彼なりの計算に基づいたもので産経のような「いたずらに中韓を罵倒するようなもの」とは違うわけです。

*5:エリツィン政権大統領府第一副長官、連邦保安庁長官、第一副首相、首相などを経て大統領