新刊紹介:「経済」6月号

「経済」6月号の詳細については以下のサイトをご覧ください。興味のある記事だけ紹介してみます。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/

■随想「1万円札のイデオロギー」(岡崎ひでたか*1
(内容紹介)
 仮に「1万円札の肖像」である「慶應義塾創立者福沢諭吉を評価*2するとしても福沢のアジア差別意識を露呈したとして福沢研究者の間ですら評判の悪い「脱亜論*3」の問題について日本人が無関心なのはいかがな物か。そうした日本人の「アジアへの無関心あるいは差別意識、偏見」が反中韓極右の安倍政権の誕生の一原因であると批判せざるを得ない。

参考
中央日報福沢諭吉侵略戦争正当化した日本右翼の元祖』
http://japanese.joins.com/article/108/119108.html?sectcode=&servcode=


■世界と日本
【中国「二人っ子」へ政策転換】(平井潤一)
(内容紹介)
 「そもそも、もう子ども制限せんでええやん、何や2人に緩和て」という声もあるわけですがまあ一応「進歩として評価すべき」なんでしょうね。

参考
赤旗『中国「一人っ子政策」廃止、高齢化社会の進展顕在化』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-10-31/2015103107_01_1.html
■産経『【日々是世界】中国がついに一人っ子政策を廃止』
http://www.sankei.com/premium/news/151109/prm1511090003-n1.html
夕刊フジ
■【真・人民日報】一人っ子政策が“生んだ”3000万人超の結婚できない男たち
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20151021/frn1510211550003-n1.htm
■【真・人民日報】「一人っ子政策」が生んだ“失独”問題 重い社会保障費にさらなる重荷
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20151118/frn1511181140002-n1.htm
人民日報
■中国、「一人っ子政策」を全面廃止
http://j.people.com.cn/n/2015/1030/c94475-8969298.html
一人っ子政策廃止で新生児毎年400万人増、保健医療に大きな圧力
http://j.people.com.cn/n/2015/1127/c94475-8982837.html


■【韓国ワンショット法】(洪相絃)
(内容紹介)
 いわゆるワンショット法に対する批判。

参考
東亜日報「野党、「何が何でも大手企業は外すべき」と強硬姿勢」
http://japanese.donga.com/List/3/all/27/430109/1


■【人口減少と地方銀行】(桜田氾)
(内容紹介)
 人口減少(少子化や過疎化)に対応して各地の地方銀行経営統合や業務提携に踏み切っていることが指摘されている。

参考
毎日新聞「ふくおかFG*4・十八銀、地銀最大の統合へ…来年4月」
http://mainichi.jp/articles/20160226/k00/00m/020/097000c
産経新聞「ふくおかFGと十八銀行が統合へ 国内最大の地銀グループに」
http://www.sankei.com/economy/news/160226/ecn1602260033-n1.html
日経新聞「ふくおかFGと十八銀が統合 17年4月、地銀首位に」
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO97723960W6A220C1MM8000/
東洋経済オンライン『九州の地銀再編は、新たな段階に突入した:十八銀・FFGの統合が意味するもの』
http://toyokeizai.net/articles/-/108083


■【東芝の4万人リストラ】(米田徳治)
(内容紹介)
赤旗の記事紹介で代替。

赤旗『雇用対策本部直ちに、小池氏、東芝リストラ批判』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-03-30/2016033004_02_1.html


特集「アベノミクス・破綻と転換」
■「低迷する日本経済」(工藤昌宏*5
■「異次元緩和・マイナス金利政策でどうなるか」(建部正義*6
(内容紹介)
Q&A方式で書いてみる。

「中国景気停滞後の株価低迷、あるいは反動円高アベノミクスの失敗を示していると思いますが」

「私もそう思います。実はアベノミクスで達成できたのは『円安』『株価高』『企業収益増』で、国民の収入や消費は増えるどころか減っていました。結局、アベノミクスの成果は『日本の内需』に基づくものではなく、外需、それも中国景気にかなり依存した物だったのです。だから中国景気が停滞すると株価安、反動円高になってしまう。しかも消費税を8%に増税したことが今『消費減→景気低迷』という形でかなり効いてると思います。日銀は慌ててマイナス金利を発動しましたが今のところ、海外投機筋に『もう金融緩和できないからマイナス金利にしたのだ』と足下を見られてか、円高、株価安を解決するまでには至っていません」

「そうなると景気刺激策はどうなりますでしょうか」

内需拡大、つまり国民の消費意欲を刺激することが重要でしょう。そのためには安倍政権が続けてきた国民負担増政策を逆に『国民の負担を軽減する方向』に変えるべきです。租税については消費税に重きを置くのでなく、むしろここ数年、減税ばかりしてきた法人税、高額所得者の所得税を増やす方向に向かうべきです。『弱きを助け強きをくじく』のが政治であり『強気を助け弱気をくじく』安倍政権の政治は間違っています。」

参考
赤旗
アベノミクスは破綻、GDP減 山下書記局長が会見
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-02-16/2016021601_04_1.html
アベノミクス破綻 政府統計が裏付け、正規雇用・賃金増えずGDP減
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-02-18/2016021801_03_1.html
■主張『アベノミクス破綻、“継承”では経済再生できぬ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-02-04/2016020401_05_1.html
■主張『アベノミクス失速、失政続けることが最悪の失政』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-03-13/2016031301_05_1.html
アベノミクスで食品価格上昇 所得は減少、エンゲル係数が上昇
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-06/2016040601_07_1.html


■「一億総活躍社会と同一労働同一賃金論」(牧野富夫*7
(内容紹介)
Q&A方式で書いてみる。

同一労働同一賃金についてどう思いますか」

「一般論としては何ら異論はありません。ただ二点指摘しておきたいと思います。一点は『安倍政権がどこまで本気なのか、何が目的なのか』ということです。同一労働同一賃金(同一労働同一価値賃金)とは「正規(常勤)と非正規(派遣、パート、アルバイトなど非常勤)の賃金格差」「男性女性の賃金格差」「反共労務差別」などといった『雇用形態、性別、思想などによる労働差別(賃金差別)を禁止する考え』です。つまりは何らかの形で不当な賃金差別を温存しようとするなら、それは同一労働同一価値賃金の名に値しません。とはいえそうした労働差別を雇用管理の前提にしてきたのが財界であり、その財界の支援を受けるのが自民党であることを考えるとそこまでの覚悟があるのか疑問を覚えます。第二は『抽象的に同一労働同一価値賃金というのは簡単でも具体的に答えを出すのは楽ではない』ということです。細部については各企業と労組の交渉で決まるとしても、今後「同一労働同一価値賃金」の具体化(基準作り)について政府や財界の動きを監視・批判するのは当然として、我々の側でも、先駆的に取り組んでいる欧米を参考に提案を行っていく必要があるでしょう。」

参考
赤旗
同一労働同一賃金直ちに、小池氏「労基法に書き込みを」、NHK「日曜討論
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-02-01/2016020101_02_1.html
■主張『同一労働同一賃金、真に実効性ある法律改正こそ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-03-07/2016030701_05_1.html
同一労働同一賃金長時間労働是正、党議員団、政府に要請
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-26/2016042604_02_1.html


■「貧困クライシス:年収300万円以下の時代」(藤田宏*8
(内容紹介)
赤旗『貧困世帯、20年で2.5倍、山形大・戸室氏*9の研究で明らかに、都道府県別の実態示す』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-03-15/2016031501_03_1.html
でわかるように、日本では1990年代後半以降、非正規雇用の増加により、「貧困層の増大と格差拡大」が深刻な問題となっている(赤旗記事のデータは第二次安倍政権誕生前だが、安倍政権は『格差縮小策、貧困是正策など何一つしていないため』、良くて横ばい、悪ければさらなる悪化が予想される)。
 こうした貧困を是正するためには雇用の安定や最低賃金の上昇など、積極的な是正策が期待される。
 なお、安倍政権の一億総活躍社会にはそうした貧困、格差是正の観点が認められずその点では全く期待が持てない。


■「TPP協定徹底検証」(真嶋良孝*10、寺尾正之*11内田聖子、磯田宏*12
(内容紹介)
 寺尾氏が医療関係者、真嶋氏(農民運動全国連合会副会長)、磯田氏(農業学者)が農業関係者ということから主としてその点にスポットを当てたTPP批判が行われている。

参考
赤旗
■TPP 驚く秘密主義、笠井氏 交渉を批判 廃案主張
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-19/2016041902_01_1.html
■「除外」「再協議」区分なし、畠山氏  TPP“国会決議違反明らか”
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-20/2016042002_02_1.html
■ISDS条項 経済主権売り渡すな、笠井氏「米企業に有利」、衆院外務委
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-21/2016042102_03_1.html
■主張『TPPの法案審議、先延ばしでなく廃案・撤回を』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-28/2016042801_05_1.html


■「日本経済長期停滞の中のサービス産業拡大:非正規雇用増大と公共サービスの産業化」(飯盛信男*13
(内容紹介)
 タイトルに見られるように先ず第一に「日本経済におけるサービス産業の占める割合が増加していること」が指摘される。
 第二に「非正規雇用(低賃金不安定雇用)が増加していること」、特に「公共サービス(教育、医療、福祉など)の産業化」において「非正規雇用が増加し」、その結果として「離職者の増加→公共サービスの危機」がもたらせていることが指摘される。
 第三に「第二の指摘を踏まえた上で」 非正規雇用(低賃金不安定雇用)の正規雇用(適正賃金&安定雇用)への転換が主張される。


■「待機児童問題の背景と解決の道」(村山祐一*14
(内容紹介)
赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
■深刻 保育所の待機児童、公立保育所の大幅増を、保育士の待遇改善が急務
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-03-13/2016031301_04_1.html
■待機児童問題 政府の緊急対策、問題点が浮き彫り、詰め込み拍車 実態に合わぬ目標 保育士処遇先送り
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-04/2016040401_03_1.html
保育所・待機児問題への日本共産党の緊急提言の発表
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-06/2016040602_03_1.html


■入門講座・企業分析2「簿記と会計制度」(小栗崇資*15
(内容紹介)
 簿記として単式簿記複式簿記、会計書類(財務諸表)として、貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書が簡単に説明される。
 なお簿記や財務諸表は「一見、無色中立で客観的に見える」が簿記や財務諸表には作成目的があり、「作成目的を繁栄した」作成ルールがある。その意味で簿記や財務諸表は「ある種のイデオロギーに基づく物」であり決して「全くの無色中立」ということはないのだという点が重要である。
 詳しい事については今後説明するが企業の資産価格を「取得時価格で評価するか、現在時価で評価するか」「現在時価で評価する場合どう評価するか」などは決して「イデオロギー抜き」で決められることではない。


■データで見る日本経済23「日銀短観、大企業も景況感悪化」
 中小企業に比べれば良かった大企業の景況感も最近の中国景気低迷に伴い悪化していることが指摘されている。

参考
赤旗『大企業も景況感悪化、日銀短観 13年以来の低水準、アベノミクス 三つの破綻明白』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-02/2016040201_02_1.html

*1:なお、岡崎氏は今年の4月28日になくなっている。岡粼氏の略歴については以下の通り。『日本児童文学者協会日本子どもの本研究会会員。日中戦争をテーマにした「トンヤンクイがやってきた」(2015年、新日本出版社)で日本児童文学者協会賞を受賞(毎日新聞の訃報記事)』『代表作に「荷抜け」(2007年、新日本出版社)、「鬼が瀬物語」1〜4(2004年、2005年、2006年、2008年、新日本出版社)など(産経の訃報記事)』。なお「トンヤンクイ(東洋鬼)」とは日中戦争時に旧日本軍に対して使われた言葉。

*2:ただし岡崎氏自身は、福沢に極めて否定的な安川寿之輔氏や雁屋哲氏などに近い認識で万札の福沢肖像を別の人物に変えたいようだが。安川氏や雁屋氏の認識については■週刊金曜日「論争欄」から:虚構の「福沢諭吉」論と「明るい明治」論を撃つ、韓国「強制併合」から100年、安川寿之輔・名古屋大学名誉教授に聞く(http://kgcoms.cocolog-nifty.com/jp/kinyoubi1.html)や■雁屋哲の今日もまた『福沢諭吉について1』(http://kariyatetsu.com/blog/1128.php)、『福沢諭吉について2』(http://kariyatetsu.com/blog/1129.php)、『福沢諭吉について3』(http://kariyatetsu.com/blog/1131.php)、『福沢諭吉について4』(http://kariyatetsu.com/blog/1133.php)、『福沢諭吉について5』(http://kariyatetsu.com/blog/1136.php)、『福沢諭吉について6』(http://kariyatetsu.com/blog/1142.php)、■朝日新聞福沢諭吉が日本の近代化誤らせた? 8日に名古屋で集い』(http://www.asahi.com/articles/ASHD34KGSHD3OIPE01J.html)参照

*3:安川氏、雁屋氏ほど全否定的な福沢理解は少数派だと思うが、それでも「脱亜論まで肯定的に評価する研究者」は極右以外いないだろう。

*4:福岡銀行親和銀行(長崎)、熊本銀行を傘下にもつ金融グループ

*5:著書『日本海運業の展開と企業集団』(1991年、文眞堂

*6:著書『金融危機下の日銀の金融政策』(2010年、中央大学出版部)、『21世紀型世界経済危機と金融政策』(2013年、新日本出版社)など

*7:著書『構造改革は国民をどこへ導くか』(2003年、新日本出版社)、『“小さな政府”論とはなにか』(2007年、公人の友社)など

*8:著書『財界戦略とアベノミクス内部留保はどう使われる』(2015年、本の泉社)

*9:著書『ドキュメント・請負労働180日』(2011年、岩波書店

*10:著書『いまこそ、日本でも食糧主権の確立を!』(2008年、本の泉社)

*11:著書『「医療改革法」でどうなる、どうする』(共著、2006年、新日本出版社)、『後期高齢者医療がよくわかる』(2008年、リヨン社)など

*12:著書『アメリカのアグリフードビジネス』(2001年、日本経済評論社)、『政権交代と水田農業:米政策改革から戸別所得補償政策へ』(共著、2011年、筑波書房)、『新大陸型資本主義国の共生農業システム:アメリカとカナダ』(共著、2011年、農林統計協会)、『アグロフュエル・ブーム下の米国エタノール産業と穀作農業の構造変化』(2016年、筑波書房)

*13:著書『構造改革とサービス産業』(2007年、青木書店)、『日本経済の再生とサービス産業』(2014年、青木書店)など

*14:著書『保育園はどう変わるべきか:公的保障の拡充改革への展望』(1993年、ひとなる書房)、『もっと考えて!!子どもの保育条件:保育所最低基準の歩みと改善課題』(2001年、新読書社)、『「子育て支援後進国」からの脱却』(2008年、新読書社)、『たのしい保育園に入りたい!:子どもの視点をいかした保育制度改革への提言』(2011年、新日本出版社)など

*15:著書『内部留保の経営分析』(共著、2010年、学習の友社)、『株式会社会計の基本構造』(2014年、中央経済社)、『内部留保の研究』(共著、2015年、唯学書房)など