【追記】
陰謀論もこじらせるとあまりに荒唐無稽な話になり始末に負えない(ルーズヴェルトはそんなすごい戦略家でもないし、米国だってそこまでひどい国ではないだろう) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)でこの説記事をご紹介頂きました。いつもありがとうございます。なお、ゆう氏の記事が古いまま(ジオシティ)だったのでリンクを張り直しました。
【追記終わり】
【入門・日米戦争どっちが悪い(6)】「真珠湾」事前に知っていたルーズベルト 現地に教えず見殺し(3/5ページ) - 産経ニュース
スティネット『真珠湾の真実:ルーズベルト欺瞞の日々』(2001年、文藝春秋)を根拠としたこの産経の主張がまるきりのデマで、日米のまともな歴史学、ジャーナリストには全く相手にされていないことは
スティネット「真珠湾の真実」をめぐって 中西輝政−秦郁彦論争を中心に 日米開戦「ルーズベルトの陰謀」
スティネット「真珠湾の真実」をめぐって 中西輝政−秦郁彦論争を中心に 日米開戦「ルーズベルトの陰謀」
や真珠湾攻撃陰謀説 - Wikipediaを見れば分かります。興味深いのはあの「河野談話否定・秦」ですらこんな陰謀論は支持しないことでしょう。
それにしても既にデマであることが明白な説を公然と自称全国紙が記事にする。「デマをデマと知りながら垂れ流してる」のか、「デマであることが分からない程のバカ」なのか知りませんが、およそまともではない。
そして「日米友好」を口にし、米軍基地反対運動を「反米だ」と罵倒しながら、こんな反米陰謀論、反米デマを唱えるのだから産経も無茶苦茶です。結局産経らウヨにとって「日米開戦」は未だに「日本が悪かった」とは認められないのでしょう。
まあ仮に「事前にルーズベルトが知っていた*1」としても殴りかかったのは日本である以上「無罪です」なんてことにはなりようがないのですが。
それはともかく「日米交易の利益*2」「日米安保の利益*3」という現実主義の前に産経らウヨはそうした「恨み辛みを隠している」。
しかし所詮そうした恨み辛みは消すことができず、ときおりこのように飛び出してくるわけです。デマ中傷という最悪の形で。
米国も内心不愉快でしょうが「自民党・安倍政権に利用価値がある」ため「どうせ負け犬の遠吠えだ」「陰口みたいなもん」と言う理解もあって「大目に見ている」わけです。
なお、「山本五十六*4の真珠湾攻撃」ばかり騒がれるのでつい忘れがちですが、日本はほぼ同時期に「山下奉文*5のマレー攻撃」もやっています。米国だけでなく英国の重要拠点も攻撃したわけです。真珠湾攻撃陰謀論は「山下のマレー攻撃」を無視した事によって成立する主張のわけです。産経もさすがに「チャーチルは事前にマレー攻撃を知っていた」とは言わないでしょう。まあ、チャーチルとルーズベルトが日本をその場で返り討ちにしてくれたら戦争ももっと早く終わっていたんですけどね。
参考
真珠湾攻撃陰謀説 - Wikipedia
スティネットの『真珠湾の真実』に対して秦郁彦は以下の反論を展開している。
・秦は1999年3月メリーランド州カレッジパークの国立公文書館でJN-25bの解読作業に関する文書OP-20-Gを発見した。その文書に寄れば、1941年12月1日の時点ではJN-25bのほんのわずかな暗号を解明できずただの一通も解読できなかった、というのが事実であり、真珠湾攻撃前にJN-25bが解読されていたというスティネットの主張を論破するものである(秦編『検証・真珠湾の謎と真実』(2001年、PHP研究所))。
・日本外務省は九七式欧文印字機という暗号機(アメリカのコード名パープル、パープル暗号機)を使用していたが、アメリカはこれを複製することに成功していた。パープル電報は米軍は97%から98%解読できた。しかし日本海軍の暗号が解けるようになったのは真珠湾攻撃後の1942年春以降である(真珠湾攻撃については外務省暗号が解読できても事前には察知できない)。
・スティネットが原著57ページで例示した、11月18日から20日付の日本軍電報の写真に見える米国側の解読日付が終戦後の1946年4月となっている。
スティネットの著作について秦は、「類書のなかでも最低レベル」で「功の側面があるとすれば、真珠湾陰謀論は成り立たないこと」を立証したことと評している。