今日の産経ニュース(2019年8月31日分)

【昭和天皇の87年】ノモンハン事件の真実 関東軍は本当に「惨敗」したのか- - 産経ニュース

 5月以降、およそ4カ月に及ぶノモンハン事件関東軍は1万7405人の死傷者を出し、惨敗したと認定された。ソ連軍の死傷者が10分の1以下の1200~1300人だったと、長く信じられてきたからだ。しかしこれはソ連お得意のプロパガンダで、1991(平成3)年のソ連崩壊後に明らかになった資料によれば、ソ連軍死傷者は関東軍より多い、1万8721人に達していた(※4)。

 当時において関東軍が大被害を受け「勝利したとは到底言えないこと」は明らかな事実です。
 その後、「当初日本軍が認識していた以上にソ連軍の被害が甚大で死傷者数について言えば、日本と遜色ないこと」が分かったから何がどうしたというのかという話です。そんなことを理由に「日本は負けてない」だの「いやむしろ勝った」だのいって何か意味があるのか。

 この日、関東軍の不敗神話は崩れた(※2)。
 敗退の理由は、上級司令部の杜撰(ずさん)な作戦指導だ。ソ連軍の兵力を過小に見積もり、十分な砲弾を準備しなかったうえ、近代的な機動戦に無理解だった。にもかかわらず上級司令部は、自らの責任を現場になすりつけ、砲弾が尽きて後退した指揮官に自決を強要するなどの醜態をさらした(※3)。

 まあ、いつものパターンですね。ノモンハン事件以外では、インパール作戦や「餓島」と呼ばれた「ガダルカナル島作戦」が悪名高いですが、「ずさんな計画を立てて失敗してもろくに反省しない」「もちろん責任者もろくに処分されない」「むしろ部下に責任転嫁がされる」というのは「日本軍の病気」と言っていいでしょう。そもそも「ノモンハン事件」などの「小さな話」ではなく「日中戦争と太平洋戦争」という「大きな話」自体が「蒋介石の抵抗意思や能力」「米国の戦争能力」を過小評価し「日本は蒋介石や米国に勝てる」と判断したずさんな計画以外の何物でもないですが。

(※3) 関東軍参謀らは快速の戦車部隊と鈍足の歩兵部隊を組み合わせて長距離移動させるなど、機械化部隊の運用に無理解で、日本の戦車部隊の技術力を活用できなかった。なお、8月後半の戦闘で部隊を指揮し、力戦したフイ高地守備の井置栄一中佐とノロ高地守備の長谷部理叡大佐は、砲弾が尽きて撤退したことを「無断撤退」と責められ、第23師団長の小松原道太郎中将から自決を強要されていずれも拳銃自殺した。小松原自身は生き残り、昭和15年に病死する。しかし近年の研究により、小松原は以前、在モスクワ日本大使館付武官だった時期にハニートラップにかかり、ソ連のスパイになっていた可能性が高いとする学説もある

 「誰の学説だよ、産経はその学者の名前と論文名出してみろよ」ですね。
 もちろん自らの失敗を隠蔽するため部下に責任を押しつけ自決させた小松原の行為は恥ずべき事です。
 ただし、こうした「保身のための部下への責任転嫁」は残念ながら日本軍においては「小松原限定でもノモンハン事件限定でも」ありません。
 こうした「保身のための部下への責任転嫁」は、「日本軍の病気だった」といっていいでしょう。
 「ハニートラップ(いわゆる美人局行為のこと)」云々として「部下への責任転嫁」の理由を「小松原個人の個性」にしてしまうことは明らかに適切ではありません。
 かつ「学者と論文の名前」を産経が出せない時点で、これは「小松原に対する誹謗中傷」「根拠のないデマ」の疑いが濃厚です。いくら小松原の人格に問題があるからといって根拠もなしに「ソ連スパイ」呼ばわりするなど人格侮辱にもほどがあります。
 なお、ウィキペディア「小松原道太郎」によればこの「小松原・ソ連スパイ説」を主張する学者は「黒宮広昭インディアナ大教授」だそうですが、ググっても記事がヒットしないのでこれが「箸にも棒にもかからない陰謀論」なのか、「一定の信憑性がある」のか、黒宮氏が「南京事件における東中野修道亜細亜大学)や、慰安婦問題における秦郁彦千葉大や日本大)並みのアホ学者」なのかどうかは不明です。産経が黒宮氏の名前を「なぜか記載しない辺り」産経ですらこの説の信憑性を疑ってる可能性が濃厚かと思いますが。まあ、そもそも「記事が全然ヒットしない」と言う辺り信憑性が怪しいでしょう。
 正直「橋本龍太郎*1首相・中国ハニートラップ説(アンチ中国ウヨが垂れ流す陰謀論*2の一種)」並に怪しい説じゃないか。
「お前、何でもかんでもハニートラップ(以下、ハニトラ)で説明しようとするな、産経」
「部下に責任転嫁する小松原みたいな無茶苦茶なバカ*3の存在を必死に奴の個性だけで説明して日本軍を免罪*4しようとするな」
「日ソ中立条約に熱心だった松岡洋右(第二次近衛内閣外相)までソ連のハニトラとか言い出さないだろうな」
インパール作戦の牟田口も『故意にずさんな計画で日本軍に被害を与えた英米のスパイ』呼ばわりするのか」
鈴木宗男のロシアびいきなんかもハニトラで説明するのか*5」と言いたくなります。
 いずれにせよ「百歩譲って小松原がスパイとしても」それだけでノモンハン事件の勝敗が決まったわけではない。
 また、「そんな高級将校をスパイに仕立て上げられてた当時の日本政府・軍はアホ」と言う話になるのですが、ゾルゲ事件での「近衛ブレーンの尾崎が日中戦争や南進論を助長した*6」といい、今回の小松原といい、なぜか産経は「日本政府・軍はソ連にこけにされるアホでした」と公言することに何の躊躇もないようです。
 「スターリンソ連のように悪辣であることは悪い」が「バカが無責任行為をした上に責任とらないこと(今回の場合、産経に寄れば『尾崎にだまされて』日中戦争を継続し、または対米戦争を実行した、あるいは、小松原の無茶苦茶な行為・自決強要を容認した政府、軍中央)」は産経的には「まあ、人間誰でも過失はあるから」「だましたソ連*7が悪い!」になるようです。

 張作霖爆殺事件以降、陸軍の軍紀が乱れ、昭和天皇を悩ませてきたことは何度も書いた。しかしそれは、すべて陸軍士官学校および陸軍大学卒業のエリート軍人によるものだ。

 そりゃある意味当然でしょう。「士官学校や陸大を卒業した」職業軍人でもない限り、軍に対する思い入れなどないし、職業軍人でもない限り、「軍紀を乱す事が出来る」重要な立場にも付けませんから。
 なお、「昭和天皇を悩ませた」云々という産経の書き方には非常に問題があります。というのは張作霖爆殺事件を結局、「河本大作を処分せずもみ消したこと」でわかるように昭和天皇は軍の暴走に毅然とした態度を結局とらなかったからです。特に「満州国建国」につながった満州事変については結果オーライで容認しています。この結果「結果さえ出せば多少問題があっても上(昭和天皇や内閣、軍中央など)が容認してくれる」と暴走が助長されることになります。昭和天皇は単純な被害者の立場にはありません。

 海千山千の首相、平沼騏一郎*8はどうしていたか。実は、ノモンハンどころではなかった。欧州で平沼内閣を退陣に追い込むほどの、複雑怪奇な事態が起きていたのである

 「欧州情勢は複雑怪奇」という声明を発表し、平沼内閣が総辞職した「独ソ不可侵条約」のことでしょうがそれは次回の話になります。


【昭和天皇の87年】ソ連軍を撃破した関東軍戦車部隊 名将ジューコフは狼狽した - 産経ニュース

 日本の政権中枢にまでスパイ網を張りめぐらせた*9ゾルゲと、彼の右腕となった元朝日新聞記者、尾崎秀実らが集めた機密情報により、日本政府の内情はソ連に筒抜けとなった

 前も書きましたがいかにゾルゲと尾崎が有能なスパイとは言え彼らは神様ではありません。何でもかんでも出来たわけではない。小生の知る限り彼らの情報でソ連ノモンハン事件で有利になったなんて事実はありません。産経も思わせぶりな文章を書くだけで具体的な指摘は何もありませんからおそらくデマ記事、ガセネタでしょう。ゾルゲグループの功績とはそんなところにはない。有名なところでは「日本の北進(ソ連攻撃)はない、南進(東南アジア進出)だ」と言う情報をつかんだことにより、ソ連が日本の侵攻を恐れることなく、安心して独ソ戦前線に軍主力を投入してドイツに勝利したことでしょう。とはいえスターリンヒトラー相手に油断していなければ、また無茶苦茶な粛清をやってソ連軍のベテラン将校を抹殺しなければ、ゾルゲ情報などなくてもドイツに楽に勝てたとも言われていますが。


【主張】北のミサイル発射 安保理沈黙は米の責任だ - 産経ニュース
 アンチ北朝鮮の産経としては不愉快で仕方がないのでしょうが「それで何か問題があるのか」と言う話です。米国が黙ってればたいした動きもない程度の話(つまり米国以外の安保理理事国は大して重要視してない話)ならそのまんまでいいのではないか。


【主張】韓国の難癖 旭日旗批判を突っぱねよ - 産経ニュース
 「日の丸(国旗)を持ち込むな」ならまだしもなんで「旭日旗を持ち込むな」が言いがかりになるのか。
 「日本海軍の旗(今は海自の旗)」なんか五輪に持ち込むことは韓国への挑発行為と見なされても文句言えないでしょうし、かつ「五輪は海自あるいは戦前日本海軍と関係したイベントでもない」ので持ち込む必要性もない。

*1:大平内閣厚生相、中曽根内閣運輸相、海部内閣蔵相、自民党政調会長(河野総裁時代)、村山内閣通産相などを経て首相

*2:アンチ中国ウヨは親中国派認定すると平気でこういうデマを垂れ流します。

*3:ただしそれは日本軍において小松原一人だけではもちろんありませんが。

*4:つうか仮に「小松原がソ連スパイで、故意にノモンハン事件で日本軍を敗北させようとしていた、しかもそのくせに部下に責任転嫁して自決に追いやった(実際は「ソ連スパイ」の事実はないでしょうが)」としてそれを「日本軍悪くない、小松原が悪い」と思える産経は意味不明です。「スパイだろうと何だろうと無謀で無責任な野郎(この場合、小松原)」を幹部として処遇し、ろくに処分しない時点で「責任大あり」です。

*5:あくまでも皮肉として書いており本気ではありませんが安倍や河野の北方領土問題での腰砕けぶりには「プーチンにハニトラでも仕掛けられたのか」と言いたくなります。

*6:俺の知る限りそんな事実はなく、産経のデマですが。

*7:もちろん「産経の言うような意味」で「だました事実」はどこにも存在しませんが。

*8:検事総長大審院長、第二次山本内閣司法相、枢密院議長、首相、第二次近衛内閣内務相など歴任。戦後、終身刑判決で服役中に病死。後に靖国に合祀。

*9:はっきり言ってそんな事実はありません。ゾルゲや尾崎は「ジャーナリスト(ゾルゲ)」「政治評論家(尾崎)」という「表向きの看板」によって「取材活動」の名目で政治家や官僚(外交官含む)、軍人(近衛内閣関係者、ドイツ大使館幹部など)相手に「スパイとしての」情報収集していたわけですが当然ながら「取材活動の建前」ですから一定の限界はあります。「本当に取材活動なのか」と疑われるような行為は勿論出来ません。もちろんゾルゲらをスパイと知った上で付き合っていた政府高官(つまり共犯者)も一人もいませんし。