今日の産経ニュースほか(6/17分)(追記・訂正あり)

■人民日報『AIIBがトンガ、アルゼンチン、マダガスカルの加盟を承認』
http://j.people.com.cn/n3/2017/0617/c94476-9229706.html
■ロイター『AIIB、アルゼンチン・マダガスカル・トンガの加盟を承認』
https://jp.reuters.com/article/aiib-asia-membership-idJPKBN19710E
 AIIBの意義を否定したがる産経ですが「加盟国の拡大」という「現実」は皮肉です。AIIBをどう評価するにせよ産経の全否定的な評価が間違っていることだけは確かでしょう。


【ここから産経です】
■【AIIB年次総会】交錯する各国の思惑 「くず債券」扱いのまま、信用獲得へ日米参加が必須(河崎真澄)
http://www.sankei.com/world/news/170617/wor1706170035-n1.html
 必死にAIIBを貶めようとする産経です。

 中国の国債格付けは先月、1989年の「天安門事件」以来、28年ぶりに格下げされた。債務負担増が理由で、中国政府に焦燥感が広がった。AIIBが得る格付けが「中国」を超えることは、不可能だ。

 意味不明な主張ですね。中国が最大の出資国で、本部も中国国内に置かれ、役職員に中国人も多いとはとは言え、AIIBは中国政府の下部組織ではない。
 『AIIBが得る格付けが「中国」を超えること』は充分あり得るでしょう。

国際金融筋は、「信用力の高い日米が参加して初めて、アジア開発銀行(ADB)や世銀のような最上位の格付けが得られる上、ODA(政府開発援助)の長年にわたる実績を使わなければ途上国支援は“絵に描いた餅”」と指摘した。

 英国、フランス、イタリア、ドイツ、カナダが参加してる以上そんなこともないんじゃないか。
 日米の過大評価もいいところでしょう。まあ発言者が「国際金融筋」であって「エコノミストのA氏」などのように具体的でない辺り説得力にそもそも乏しいですが。
「名前出して言えないようなことなのかよ(例えばAIIBに否定的な立場の役職についてるので名前出すと説得力に乏しい)」ですね。

中国側は、鳩山由紀夫元首相をAIIBの顧問役に就任させたことが“逆効果”になっていることに気づいていない。

 何がどう逆効果なんですかね?。産経や安倍的には「鳩山氏に敵愾心を抱いてる」のかもしれませんがそうだとしてもくだらない話です。中国としては日本とのパイプをつくるため「それなりの地位にある日本人要人」を選んだにすぎないでしょう。
 残念ながら鳩山氏以外は安倍を恐れ就任に消極的だったにすぎないでしょう。

 年次総会を通じて際立ったのがインドの交渉術の巧みさ。AIIBが金融面で支援する中国主導のシルクロード経済圏構想「一帯一路」の国際会議が先月、北京で行われたが、インドは安全保障上への懸念から政府代表の派遣を拒んだ。
 メンツを失ったにもかかわらず、AIIBは来年の年次総会をインドのムンバイで開くと決め、インドの基金向けに165億円の初の投資案件も承認した。地政学的にインドの協力が欠かせないと、譲歩した。

 「インド良くやった」と産経は言いたいのかも知れませんが「AIIBに入ってもインドみたいな態度が取れるなら産経の立場でも問題ねえんじゃねえの?」「産経はAIIBと一帯一路が直結してると言うけど直結してないジャン*1」という批判が来ることも産経は予想できないようです。
 

キューバの人権状況悪化 昨年は9千人超を拘束、7年間で最多
http://www.sankei.com/world/news/170617/wor1706170032-n1.html
 キューバに人権問題がないとは勿論言いませんが、トランプが「オバマの行ったキューバとの国交正常化」を潰す危険性がある現在、こうした発表には「オバマの政策を潰そうとする」うさんくさい、きな臭いモノを感じますね。こうした発表のバックに国交正常化に否定的なキューバ人亡命組織(反共右派)がいるのではないか。


■【産経抄】6月17日
http://www.sankei.com/column/news/170617/clm1706170003-n1.html

 自分たちの過去の言動は忘れ、高飛車に他者を非難する。そんな新聞や野党の二重基準には、つくづくうんざりする。学校法人加計学園獣医学部新設計画*2をめぐり、義家弘介*3文部科学副大臣が、文書を流した*4文科省職員を守秘義務違反で処分する可能性に触れたところ、袋だたきに遭った*5件である。

・こういうことを安倍首相でも菅*6官房長官でも松野*7文科相でもなく「義家じゃない方の副大臣」でもなく「義家副大臣が言う」という辺りが興味深いですね。
 ちなみに「義家じゃない方の副大臣」は水落敏栄*8と言う人です。ウィキペ「水落敏栄」によれば日本遺族会会長だそうですが水落氏には失礼ながら「えー、今日本遺族会会長ってそんな小物なの?」ですね。なにせ経験した最高ポストが副大臣(第三次安倍内閣文科副大臣)ですから。
 過去の日本遺族会会長は賀屋興宣*9橋本龍太郎*10古賀誠*11尾辻秀久*12とそこそこ大物ですから水落氏は明らかに格落ちです。遺族の高齢化で日本遺族会の政治力が落ちてるんですかね。
・それはともかく、つまり安倍らはこういう発言が非常に問題があることはさすがに自覚してるわけです。だから自分では言いたくない。でも「安倍様に逆らったらどうなるか分かってるのか!」と恫喝はしたい。それも「文科省限定」「霞が関限定」でこっそりではなく「日本国中に恫喝アピールしたい」というのだから正気ではない。
 でそこでそうした恫喝発言をやらされるのが子分の義家です。義家がこういう事を喜んでやってるのか、渋々かはともかく、安倍らにとって義家なんて「あいつヤンキー上がりのゴミだろ、こういう汚れ仕事にうってつけだよ」つうその程度の存在のわけです。
 都合が悪くなったら「義家が勝手に言ってること」で副大臣更迭で切り捨てればいい。批判があまり大きくないようなら義家をそのまま留任させると。
 「義家の発言を安倍政権が支持してる」というイメージを与えながら「俺は言ってない」という逃げ道を用意しておくといういつもの汚いやり口です。
・で予想通り「民主党政権は一部政権幹部が尖閣ビデオ流出の時、一色処分の可能性を発言したから、義家批判はご都合主義だ」と言い出す産経です。
 「だから何?」ですね。それ、仮に「ご都合主義だ」と非難するにしても「一色処分論」を主張し、かつ「義家を批判してる人間」にしか該当しません。義家批判者=「一色処分論支持者」ではない。どちらの処分論も「政府の不当な恫喝ではないか」として批判する人間は勿論いるわけです(なお一色は刑事処分や懲戒処分は確かされませんでしたが、出世の見込みもなくなりいずらくなったのか、退職勧奨(いわゆる肩たたき)されたのかはともかく退職し、今や右翼売文屋、右翼タレントです。)。つうか一色処分論に反対しながら今回義家発言を擁護する産経の方がよほどご都合主義じゃないのか。
 いやそもそも一色の行為は「国会内限定」「国会議員限定」とは言え自民党議員にもビデオが公開されたことを考えれば「一色処分論の是非はひとまず置くとしても」正当な内部告発と言えるか非常に疑問です。事情はともかく「自民党も一応了解したビデオの外部非公開(ひとまず国会内で国会議員だけ視聴)」を「外部公開すべきだ」「野党議員(自公、共産など)も視聴したからいいと言う問題じゃない」という主張もせずにいきなり外部流出させた一色の行為は「民主党非難、中国非難を煽るセンセーショナリズム」以外に果たして何か意味があったのか。そのことは産経が紹介する朝日記事も

朝日社説は「政府や国会の意思に反することであり、許されない」

と指摘しています。一色の行為は政府だけでなく「国会内限定公開を了承した国会(もちろん自民含む)の意思」にも反していたわけです。一方、今回の加計疑惑なんか内部告発がなかったらどうなっていたのか言うまでもないでしょう。インチキ調査とは言え再調査せざるを得なかった安倍や菅ですが内部告発がなかったらあいつらは「前川が勝手に言ってること」で居直り続けたでしょう。
 もちろん産経は居直れなかったことが「内部告発した奴ら絶対に許せない、安倍様に反逆しやがって*13」と悔しいし、今後こうした内部告発を潰すためにあらゆる手段で官僚を恫喝したいし、だからこそ義家発言を擁護するわけです。
 まあ、加計疑惑が鳩山*14、菅*15、野田*16政権で発生すれば、産経は「義家のような発言が政府から出たら」非難していたでしょうし、一方で前川氏の暴露を、一色同様英雄扱いしていたでしょう。産経の脳内にあるのは「自民はかばう、自民以外は叩く」「自民を叩く奴は国賊、自民以外を叩く奴は英雄」というご都合主義でしかないからです。

 菅内閣の「ご意向」に反する公務員はけしからんと説いた新聞が、今では文書を漏らした職員を英雄扱いして持ち上げている。民進党ともども前非を悔いて、一色氏に謝罪して出直したらどうか。

 「菅内閣のご意向に反するな」なんて事は朝日も毎日も言っておらず産経の言いがかりですがそれはさておき。
 むしろ

 過去に情報(尖閣ビデオ)を漏らした職員(一色)を英雄扱いして持ち上げている新聞が今では安倍内閣の「ご意向」に反する公務員はけしからんと説いた。産経は自民党ともども前非を悔いて、前川氏らに謝罪して出直したらどうか。

ですね。

参考
赤旗『通報職員の保護「当然」、吉良氏に松野文科相答弁、参院文科委』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-06-17/2017061702_03_1.html
 義家批判はしないものの義家擁護も公然とはできない松野文科相です。


 【加計学園疑惑について:追記】
赤旗
■「加計文書」 文科省認める、追加調査 「怪文書」一転 省内に存在
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-06-16/2017061601_03_1.html
■加計問題 官邸の意向明らか、内閣府メールに萩生田副長官の指示 参院予算委 小池書記局長が追及
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-06-17/2017061701_01_1.html
■論戦ハイライト『「加計ありき」明白、副長官関与 否定根拠示せず、参院予算委 小池書記局長の追及』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-06-17/2017061703_01_1.html
■主張『「加計」追加調査:文書はあった、疑惑は深まった』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-06-17/2017061701_05_1.html

NHK『「加計学園獣医学部新設問題 4つの論点』

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170525/k10010995051000.html
 国家戦略特区の制度により、学校法人「加計学園」が愛媛県今治市に新設しようとしている獣医学部の問題。この問題をめぐり、学園の理事長が安倍総理大臣と大学時代からの友人であることや、「総理のご意向」などと書かれた複数の文書が公表されたことから国会で野党が今治市とこの学園が選ばれたいきさつが不透明だと追及しています。これに対し、安倍総理大臣は「彼からこの問題について、頼まれたことはなく、働きかけていない」と否定しているほか、菅官房長官も文書について、「怪文書のような文書だ」と述べています。いったい何が問題とされているのか、これまで国会などで指摘されている論点をまとめました。
(中略)
■選考は適切に行われたのか
 議論となっているのが、今治市加計学園が選ばれた過程についてです。
 今治市獣医学部の新設を正式に目指したのは平成28年1月ですが、その2か月後に同じく特区制度のもと、獣医学部の設置に名乗りを上げていたのが京都府です。ことし1月、今治市に設置が決まるまで、この2つの自治体は獣医学部を設置をめぐり、競合する関係にありました。国会では野党からこうした選考の最中にかかわらず、各省庁が今治市の提案を前提に検討していたのではないかと疑念が示されました。
 その根拠とされたのが去年9月から10月にかけて、内閣府文部科学省がやり取りしたことを記録したとされる複数の文書の存在です。
 このうち、「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と書かれた文書は、今治市獣医学部を設置する時期について、「最短距離で規制改革を前提としたプロセスを踏んでいる状況で、これは総理のご意向だと聞いている」と書かれています。
 また別の文書では、去年9月下旬に行われたとされる打ち合わせの内容が記されていて、このなかで内閣府の幹部は「平成30年4月にこの学部を開学するのを大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」と文部科学省側に要請しています。
 これに対し、文部科学省側が、「今治市の構想を実現するのは簡単ではない」と答えると、内閣府側は「できない選択肢はない。やることを早くやらないと責任をとることになる」と述べたと記されています。
 これら文書はいずれも選考途中に作られたとされ、野党からは、獣医学部の設置は(ボーガス注:京都府からも申請があったにも拘わらず、京都府を無視して)いわば「今治ありき」で決められたのではないかと疑問の声が上がりました。
 これに対し、菅官房長官は「怪文書のような文書で、出どころも明確になっていない」と批判はあたらないと否定しました。
 また、文部科学省も松野文部科学大臣が記者会見を開き、「関係職員に聞き取りした結果、これらの文書の存在は確認できなかった」と結論づけています。
 さらに、京都府側の関係者に話を聞くと、応募を断念した理由の1つに募集条件が変更されたことをあげました。
 平成27年6月に日本再興戦略で獣医学部の新設が提案されてから、内閣府はその応募条件について「全国的見地」で行うと明記していました。それが去年11月になると、この文言が消えた代わりに「獣医系大学のない地域に限り」という文言が新たに盛り込まれました。これにより、同じ地域にすでに獣医学部をもつ大阪府立大学があるため、新たな条件を満たすことができなくなったということです。
 こうした経緯について、野党からは疑問の声も上がっています。特区の作業部会の中で京都府京都産業大学が示した共同提案は20ページにわたっていて、iPS細胞を使った再生医療など新たな生命科学の分野で活躍できる獣医師を育てると記されていました。これに対し、野党の議員から今治市の提案は2枚で、内容的にも京都府側がすぐれていたのではないかと指摘する声もでています。
 これについて、内閣府は「今治市の提案のほうが京都府と比べて熟度が高かった」と説明しています。また、条件を変更した理由については「獣医師が少ない地域に限り認めるためだった。また、獣医学部の新設に反対していた獣医師会に配慮するためだった」と説明しています。
 一方、京都府の関係者は「条件の変更は寝耳に水で、受け止めきれなかった。それぞれの計画の優劣で公平に選考されれば納得いくが今回はあまりに選考の過程が不透明でなぜ選ばれなかったのか納得できない」と指摘しています。

*1:まあ中国は直結させたいでしょうが、理屈上は直結してないし、だからこそインドのような立場も認めざるを得ないわけです。

*2:「学校法人加計学園獣医学部新設計画に絡んだ首相の政治介入疑惑」などとは書かない点が実に産経らしい。

*3:第二次安倍内閣文科大臣政務官を経て第三次安倍内閣文科副大臣

*4:内部告発した」と書かない点が実に産経らしい。

*5:「厳しく批判された」と普通に書かない点が実に産経らしい。

*6:第一次安倍内閣総務相

*7:第一次安倍内閣厚労大臣政務官、福田、麻生内閣文科副大臣などを経て第三次安倍内閣文科相

*8:第一次安倍内閣で文科大臣政務官

*9:戦前、近衛、東条内閣蔵相。戦後、A級戦犯として終身刑判決を受けるがいわゆる逆コースで釈放され政界に復権自民党政調会長(池田総裁時代)、池田内閣法相など歴任。日本遺族会を極右団体化させた元凶とされる。

*10:大平内閣厚生相、中曽根内閣運輸相、自民党幹事長(宇野総裁時代)、海部内閣蔵相、村山内閣通産相などを経て首相

*11:橋本内閣運輸相、自民党幹事長(森総裁時代)など歴任

*12:小泉内閣厚労相自民党参院議員会長など歴任

*13:昔からそうですが、もはや完全に産経は自民党御用新聞以外の何物でもありません。

*14:新党さきがけ代表幹事、細川内閣官房副長官民主党幹事長(小沢代表時代)などを経て首相

*15:社民連副代表、新党さきがけ政調会長、橋本内閣厚生相、鳩山内閣副総理・財務相などを経て首相。現在、民進党最高顧問

*16:鳩山内閣財務副大臣菅内閣財務相を経て首相。現在、民進党幹事長