新刊紹介:「経済」1月号

「経済」1月号について、簡単に紹介します。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
世界と日本
中国共産党が第19回大会(平井潤一)
(内容紹介)
 平井論文も指摘していますがやはり
1)「習近平*1による新時代の中国の特色ある社会主義思想」が党規約に入り、習氏の名前が党規約入り
 「3つの代表(江沢民*2)」「科学的発展観胡錦濤*3)」のように自己の主張が党規約に入った党最高幹部はほかにもいますが、氏名が入ったケースは「毛沢東*4思想」「トウ小平*5理論」しかありません。毛沢東思想、トウ小平理論に比べると今回は「表現が長い」ですが。
2)「党の最高指導部」である党中央政治局常務委員に習氏の側近とされる栗戦書*6・党中央弁公庁主任が就任したこと(そして李克強*7首相を除き、第一期習政権の党中央政治局常務委員が全て退任したこと)
 党中央政治局における習氏の立場が強まったこと
といったところがポイントでしょう。習氏が政権基盤をさらに固めたということです。次期指導者が誰かは明確化しませんでしたが、さすがに「習氏の三期目」はないんじゃないか。
 こうした習氏の政権基盤強化を、産経や福島香織*8、阿部治平*9や田畑光永*10といった反中国連中は「習の独裁」だのもっと酷いと「毛沢東化」「死ぬまで党トップを目指してる」と悪口雑言しますが、平井氏は「今後に注目」とし、産経らのような否定的評価は現時点ではしていません。まあ、そういうあたりが産経や福島香織、阿部治平、田畑光永といった反中国連中が日本共産党に対し「中国に甘い」などと悪口する理由の訳ですが。

参考
人民日報
■「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」が党規約に:中国共産党第19回全国代表大会が閉幕
http://j.people.com.cn/n3/2017/1024/c94474-9284198.html
■第19回党大会、4大機関の新設を明確に
http://j.people.com.cn/n3/2017/1025/c94474-9284664.html
 「4大機関((1)全面的な法に基づく国家統治中央指導グループ、(2)国有自然資源資産管理・自然生態監督管理機関、(3)退役軍人管理保障機関、(4)国家・省・市・県監察委員会)の新設」をアピールしたいことは解りますが現時点では抽象的なので「今後に注目」といったところでしょうね。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/cpc2017/index.html
NHK『習国家主席 総書記再選 李首相留任 2期目の習指導部が発足』
・当初、新しい5人の(ボーガス注:党中央政治局常務委員の)中には重慶市トップの陳敏爾氏*11広東省トップの胡春華*12のともに50代の2人が選ばれる可能性も指摘されていましたが、結局、2人とも見送られ、これまで円滑な指導者の交代のため事前に次の世代のリーダーと目される若手幹部を最高指導部入りさせるという長く続いてきたパターン*13は踏襲されませんでした。
・中国は、かつては経済成長率が毎年10%程度に達する高成長を続けていましたが、習近平指導部の発足後、2013年から去年までの成長率は平均で7.2%に低下し、世界1の人口と割安な人件費を背景に安い商品を輸出することで成長を続けてきた経済モデルは転換を迫られています。
 このため習近平国家主席は今回の党大会での政治報告で、「2035年までにイノベーション・技術革新で世界上位に上り詰める」という目標を掲げて、今後、ITなど次世代の産業を育成し、経済の構造改革を進める考えを強調しました。


■勝訴続く建設アスベスト裁判(西村隆雄)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
■建設アスベスト訴訟、国に6度目の断罪、横浜地裁、メーカーの責任も再び
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-10-25/2017102515_02_1.html


特集「世界の構造変化とグローバル資本主義
■世界の構造変化と日本(緒方靖夫*14
■対談「日本の原水禁運動と東アジアの平和共同」(高草木博*15、太田昌克*16
(内容紹介)
 緒方論文、高草木・太田対談が主たるテーマとしているのは「核兵器禁止条約の成立」と「この条約に否定的な核5大国と日本への批判」です。
 なお、「右寄りのトランプ政権、安倍政権になって核廃絶に米日両国は一層後ろ向きになった」が「基本的に核廃絶に冷淡な態度が米日政府の長年の態度、それはノーベル平和賞オバマも変わらない」というのが高草木氏、太田氏の見方です。

参考
日本共産党核兵器禁止条約が採択、ついに歴史動いた、核なき世界へ新たなスタート:国連会議に参加 志位和夫委員長に聞く』
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2017/07/2017kakuheiki-kinshi-shii.html
赤旗
■核禁止条約「歓迎」を決議、国連第1委 賛成118カ国 日本は反対
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-10-29/2017102901_02_1.html


■「偉大なアメリカ」の幻想と現実(薄井雅子*17
(内容紹介)
 サンダース現象を過大評価はできないとしながらも「そこに米国の希望を見いだそうとする」薄井氏の主張には小生もほぼ同感です。
 トランプ批判は当然として、一方で「クリントンは大企業よりだ」とする批判にも対応していく必要があるわけです。


■トランプ政権と多国籍企業(下)(山脇友宏)
(内容紹介)
 前回と「大まかな内容」は同じです。つまり「プアホワイト」の「中央政治は大企業中心だ」という政治不信を背景に大統領に成り上がったトランプだが、「大企業と戦うだけの覚悟も戦略もない」以上、そうしたプアホワイトの期待は裏切られざるを得ないという話です。


■座談会「グローバル資本主義をどう見るか」(鶴田満彦*18、萩原伸次郎*19、米田貢*20佐々木憲昭*21
(内容紹介)
 グローバル資本主義それ自体は批判しないが、現時点における「グローバル資本主義の現実的な形」については「大企業中心主義」として批判し「あるべきグローバル資本主義」を目指そうというのが座談会の基本線です。もちろん「何があるべきグローバル資本主義か、それをどう実現していくのか」はなかなか難しい話ですが。


■今日の私立大学:問題の所在と解決のすじ道(野中郁江*22、山賀徹)
(内容紹介)
 野中氏らが問題にしているのは
1)私立大学の経営危機
2)(1と関連するが)大学進学費用の高額化
です。
 そしてその解決策としては

A)私学助成の充実
B)私立大学の公立化
 ちなみに具体例としては
山口東京理科大学山陽小野田市立山口東京理科大学」「成美大学福知山公立大学」などがあります。
アエラ『地方の私大を公立化する「ウルトラC」の成否』
http://toyokeizai.net/articles/-/149287
中日新聞『地方私大に公立化進む 閉鎖や撤退免れ』
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/kyouiku/list/CK2017041602000096.html
を参考にあげておきます。

があげられています。もちろん私立大学の経営については大学執行部の問題もありますが、少なくともA)については俺も異論はありません。


日本学生支援機構の経営分析(寺澤智広)
(内容紹介)
 日本学生支援機構の「ローン化」が批判され
1)貸与型では無く給付型奨学金を基本とすること
2)貸与型も低利率にすること
3)返還免除制度の充実を図ること
などが指摘されています。


■イギリス階級闘争史と宗教:『空想から科学へ』英語版序文から学ぶ(長久理嗣)
(内容紹介)
 エンゲルス『空想から科学へ』英語版序文を題材に、エンゲルスの『イギリス階級闘争史と宗教』に対する見解が紹介されています。
 英国国教会に対するプロテスタントの反発から清教徒革命、名誉革命が起こったとするエンゲルスはその限りではキリスト教の改革性を認めます。
 しかしそれは「ブルジョワ的民主主義」であり「労働者の人権に配慮した民主主義(エンゲルスの立場ではそれが社会主義共産主義)ではない」、むしろ労働者の人権要求にブルジョワキリスト教徒は敵対しているとして、一方でキリスト教の反動保守性も批判するわけです。

*1:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*2:電子工業大臣、上海市長・党委員会書記などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*3:共青団中国共産主義青年団)中央書記処第一書記、貴州省党委員会書記、チベット自治区党委員会書記などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*4:中国共産党主席

*5:党副主席、第一副首相、人民解放軍総参謀長などを経て党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*6:黒龍江省長、貴州省党委員会書記など歴任

*7:共青団中国共産主義青年団)中央書記処第一書記、河南省長・党委員会書記、遼寧省党委員会書記、第一副首相など歴任

*8:近年は『赤い帝国・中国が滅びる日』(2016年、KKベストセラーズ)、『暴走する中国が世界を終わらせる』(共著、2016年、ビジネス社)、『日本は再びアジアの盟主になる:トランプvs.習近平! 米中激突で漁夫の利を得る日本』(共著、2016年、宝島社)、『アメリカと中国が世界をぶっ壊す』(共著、2017年、徳間書店)、『米中の危険なゲームが始まった』(2017年、ビジネス社)といったバカウヨ著書を執筆。産経退社後、着実に劣化している。

*9:著書『もうひとつのチベット現代史:プンツォク・ワンギェルの夢と革命の生涯』(2006年、明石書店)、『チベット高原の片隅で』(2012年、連合出版)など

*10:著書『中国を知る』(1990年、岩波ジュニア新書)、『トウ小平の遺産』(1995年、岩波新書)など

*11:貴州省党委員会書記などを経て重慶市党委員会書記

*12:中国共産主義青年団共青団)中央書記処第一書記。河北省長、内モンゴル自治区党委員会書記などを経て広東省党委員会書記

*13:といってもそれは「江沢民総書記時代の胡錦濤氏」「胡錦濤総書記時代の習近平氏」ですが。江沢民氏は趙紫陽総書記失脚による「突然の昇進」ですし、胡耀邦総書記や趙紫陽総書記はトウ小平の「鶴の一声」による登用でしょう。

*14:日本共産党副委員長(国際局長兼務)。著書『日本共産党の野党外交』(2002年、新日本出版社)、『イスラム世界を行く:中東・湾岸六カ国の旅』(2003年、新日本出版社)など

*15:原水爆禁止日本協議会(日本原水協)事務局長

*16:共同通信社編集委員論説委員。著書『盟約の闇:「核の傘」と日米同盟』(2004年、日本評論社)、『日米「核密約」の全貌』(2011年、筑摩選書)、『日米〈核〉同盟:原爆、核の傘、フクシマ』(2014年、岩波新書)、『日本はなぜ核を手放せないのか』(2015年、岩波書店)、『偽装の被爆国』(2017年、岩波書店)など

*17:著書『戦争熱症候群:傷つくアメリカ社会』(2008年、新日本出版社

*18:著書『グローバル資本主義と日本経済』(2009年、桜井書店)、『21世紀日本の経済と社会』(2014年、桜井書店)

*19:著書『アメリカ経済政策史:戦後「ケインズ連合」の興亡』(1996年、有斐閣)、『世界経済と企業行動:現代アメリカ経済分析序説』(2005年、大月書店)、『米国はいかにして世界経済を支配したか』(2008年、青灯社)、『新自由主義と金融覇権:現代アメリカ経済政策史』(2016年、大月書店)、『トランプ政権とアメリカ経済:危機に瀕する「中間層重視の経済政策」』(2017年、学習の友社)など

*20:著書『現代日本金融危機管理体制:日本型TBTF政策の検証』(2007年、中央大学出版部)

*21:著書『財界支配:日本経団連の実相』(2016年、新日本出版社

*22:著書『私立大学の財政分析ができる本』(共著、2001年、大月書店)、『現代会計制度の構図』(2005年、大月書店)など