今日の産経ニュース(7/29分)(追記・修正あり)

■【カンボジア総選挙】「投票数の80%を獲得」 与党広報官が圧勝見通し表明
https://www.sankei.com/world/news/180729/wor1807290032-n1.html
カンボジア総選挙、与党が「全議席獲得」か 強まる独裁に国際社会反発必至
https://www.sankei.com/world/news/180730/wor1807300016-n1.html
 「与党が選挙で大勝」とはいえ最大野党を強制解散するという「日本共産党破防法適用」並の禁じ手使ってますからねえ(逮捕起訴をおそれた野党幹部は欧米に亡命)。なんともかんとも。
 欧米は批判してるといったって「ブッシュが悪の枢軸呼ばわりしてたイラン、北朝鮮」なんかに比べたらめちゃめちゃぬるい。そこには「親イスラエル反共主義」からイラン、北朝鮮を敵視するが、カンボジアはそうではない、というインチキがあるわけです。アメリカの「民主主義ガー」なんてのは極めてインチキな代物です。
 「米国の敵視政策への牽制」がイラン、北朝鮮の核開発理由ですし、核開発してない「共産国キューバに相当きつい制裁掛けてたことを考えればこうした「カンボジアとイラン、北朝鮮の扱いの違い」に「核開発」は「本質的には」関係ないでしょうね。核開発したことが米国の敵意を助長したとしても核開発しなくてもカンボジアとの扱いの違いはおそらくあったでしょう。


■日本軍の孤児救出、井上和彦氏が紹介 「大東亜戦争を語り継ぐ会」
https://www.sankei.com/life/news/180729/lif1807290040-n1.html
 まあシベリア出兵の本筋は「とにかく共産政権ぶっ倒す(反共の見地)」「それプラス可能ならシベリアの一部(石油などがある)を日本でぶんどる」つう話にすぎず「ポーランド孤児救出」なんて完全に脇道ですがそれはさておき。
 何で「大東亜戦争を語り継ぐ会」でシベリア出兵なのか、まるきり意味不明です。
 日本史の知識がないと、「シベリア出兵って要するに1945年の終戦直前の日ソ戦争(ソ連軍が満州に侵攻など)のこと?。だからシベリアに日本兵が抑留されたの?」と誤解しそうです。


■【花田紀凱の週刊誌ウオッチング】〈679〉野田聖子*1大臣は総理を目指すなら夫の身辺整理を
https://www.sankei.com/premium/news/180729/prm1807290009-n1.html
 森友疑惑の時に産経や花田ら安倍信者が必死に「妻と夫は別人格」といってたのは何だったんですかね?(もちろん森友疑惑での昭恵の行為は明らかに安倍の了解によるものであり別人格なんて言い訳は詭弁ですが)。

野田聖子総務相を操る元暴力団員の夫」(『文春』)
「『女性総理』の夢を壊した『野田聖子総務相』の『元反社夫』」(『新潮』)

 まあ「元暴力団の夫」とやらが野田の政治力を悪用して何かしてるのなら「昭恵の行為(安倍が容認し支援している)で安倍が批判されるのと同様」批判されて当然でしょうね。
 一方で「昔は元ヤクザで問題があったが今は真人間になり、妻の政治力悪用なんかしてない」つうなら別に問題もない。そのあたりは今後はっきりする話でしょう。


■【書評】作家・井沢元彦が読む『教科書が教えない楠木正成産経新聞取材班 評価変遷の謎と史実に迫る
https://www.sankei.com/life/news/180729/lif1807290029-n1.html
 そりゃまあ皇国史観の見地に立たないと楠木正成を教科書で教える意義は少ないでしょうねえ。別にそれで悪いこともないでしょう。
 しかしこういうときにウヨが最初に出す南朝武将の名前はやっぱり「軍事的天才・英雄」の「楠木正成」なんですね。
 「新田義貞」「名和長年」「菊池武時」「北畠親房・顕家親子」とかじゃなくて。
 そしてまあ、こんな産経の与太に付き合ってくれる歴史学者もいないんでしょうが、よりによってただの右翼ライターでしかない井沢ですか。
 そういえば拙ブログ別記事のコメント欄でアンドリュー・バルトフェルドさんが「食い詰めた奴がウヨに商売替えする」てコメントしていましたが、井沢なんかその典型でしょうねえ。元々はこの男、小説『猿丸幻視行』(1980年)で江戸川乱歩賞をとったミステリ作家ですから。
 しかし井沢と同時期に乱歩賞を取った『写楽殺人事件』(1982年)の高橋克彦*2、『放課後』(1985年)の東野圭吾*3等と違いその後は鳴かず飛ばず。むしろ井沢と乱歩賞を争って敗れた『占星術殺人事件』(1980年)の島田荘司の方がミステリ作家として活躍してますから皮肉なもんです(ウィキペディア江戸川乱歩賞」参照)。
 そこで井沢がウヨ商売に転向したらそれで金が儲かるんだから井沢はもはや事実上「ミステリ作家廃業」のわけです。
 なお、「楠木正成」「新田義貞」「菊池武時」「北畠親房」でググってみましたが、以下の著書は、まあ、版元などからまともな本ではないかと思います。

楠木正成
・新井孝重*4楠木正成』(2011年、吉川弘文館
・海津一朗*5楠木正成と悪党:南北朝時代を読みなおす』(1999年、ちくま新書)
新田義貞
・田中大喜*6『新田一族の中世:「武家の棟梁」への道』(2015年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)
・峰岸純夫*7新田義貞』(2005年、吉川弘文館人物叢書)
・山本隆志*8新田義貞』(2005年、ミネルヴァ日本評伝選)
【菊池武時】
・杉本尚雄『菊池氏三代』(1988年、吉川弘文館人物叢書)
北畠親房
・伊藤喜良*9『東国の南北朝動乱:北畠親房と国人』(2001年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)
・岡野友彦*10北畠親房』(2009年、ミネルヴァ日本評伝選)
・下川玲子*11北畠親房儒学』(2001年、ぺりかん社
本郷和人*12天皇の思想:闘う貴族北畠親房の思惑』(2010年、山川出版社


■【正論8月号】日本のマスコミが報じないトランプ・ロシア疑惑の真実 〜リベラルたちの“国家犯罪” オバマクリントン・ゲート 国際政治学者 藤井厳喜
https://www.sankei.com/premium/news/180729/prm1807290011-n1.html
 まあ「日本のマスコミが報じない」「リベラルたちの国家犯罪」「オバマクリントンゲート」などのタイトルからして読む前からおおよそ見当がつきます。無茶苦茶なトランプ擁護と日米リベラル(米国は米国民主党、モラー特別検察官や『NYタイムズワシントンポスト、CNNなどのトランプ批判メディア』、日本はNYタイムズなどのトランプ批判報道を支持する朝日、毎日などのリベラル系メディア)への悪口でしょう。
 ただ米国において「ロシアゲートのトランプは問題だ」つうのは「移民問題、対イスラエル外交、日本やEU、中国への報復関税などの他の問題とは違い」、もはや保守、リベラルだの、民主党支持、共和党支持だのあまり関係ない話になっています。
 共和党やフォックスニュースなどからもこの件ではトランプ批判が飛び出している。米国においてよほどのトランプ信者でもない限り、「ロシアゲート民主党の言いがかり。選挙介入等、ロシアの問題行為*13にトランプが加担した事実などない」「モラー特別検察官は民主党の手先、トランプが解任しても問題ない」「むしろヒラリーのメール問題の方が問題だ」などといってロシアゲートでトランプ擁護する奴はまずいない。
 ロシアゲートとは米国ではそういう「ニクソンウォーターゲート」「朴クネの崔順実ゲート」「安倍のモリカケ」等のような扱いをされています。
 だから日本においても米国の風潮を反映して「トランプ擁護などまず見ない」、それだけの話です(もちろんそれで問題ないわけですが)。そしてそういう日本メディアは「米国同様」何も朝日、毎日、東京新聞などといったリベラル系だけではない。読売、産経、日経でもそんなもんはまず見ない。今回の藤井の駄文「ロシアゲートは反トランプ派の捏造」なんて、日本においてウヨメディアですらまず見ない代物です。

 いまだに筆者自身、時々、講演会などで「ロシア・ゲートでトランプ政権はもつのですか?」というような質問を受けることが多いのである。「ロシア・ゲートなど全く存在しません」と回答すると、質問者はあっけにとられている。そこで言葉を足して「安倍首相のモリカケ問題と一緒で、反対勢力は騒いでいますが、全く実体は存在しなかったのです」と言うと、どうやらみんな納得してくれるようである。

 「モリカケと一緒です」といったら普通の人間はかえって納得しないでしょう。むしろ「実態がない」といいたいなら「産経だけが騒いでいた蓮舫*14民進党代表(当時)の二重国籍『疑惑』と同じ」等と言うべきでしょうが、さすが藤井の講演会に行く奴は常識がありません。
 まあ「全く存在しなかった」ら、米国メディアも騒がないし、政治的問題にもならないわけですが、そこで「モリカケでも出てきた詭弁」、「政権打倒のためのでっち上げ」が登場するわけです。つうか、なんでここまで強弁して藤井や産経『正論』がロシアゲートでトランプを擁護しないといけないのか、訳がわかりません。「米国民主党が嫌いだから」なのか、はたまた「トランプが好きだから」なのか。
 まさか「プーチンが好きだから」ではないでしょうが。

 ロレッタ・リンチ司法長官とコミーFBI長官は、明らかにヒラリーを政治的に支持する立場から、彼女を起訴せずに、事実上、“無罪放免”してしまったのである。

 「厳密に言えば違法行為だが起訴するほどの罪じゃないことが捜査でわかった」「起訴したらトランプを大統領選で有利にし、彼が勝った場合はもちろん負けた場合でも『司法省とFBIはトランプに協力した、行政の中立性を破壊した』との批判を浴びかねない」との判断によるものに過ぎないでしょう(そもそもヒラリー陣営にはFBIの捜査自体にそういう苦情を言う人間がいました。かつ、藤井の言うような「陰謀」があるのならそもそもFBIは捜査自体しないでしょう)。
 森友疑惑で検察が財務官僚すら起訴しなかったのとは意味が違います。別に不当な行為でもない。

・「ディープ・ステイト(Deep State:深層国家)」という言葉が登場してくる。これは、トランプ政権を支持している保守派の人達が好んで使う言葉である。
・コミー前FBI長官やモラー*15特別検察官やローゼンスタイン副司法長官などはディープ・ステイトのこの目に見える氷山の一角に過ぎないのだ。

 要するに陰謀論です。ろくな根拠もないのでまともな人間はまず使いません。どう見ても「反トランプ派」に対する誹謗の言葉でしかありませんから。
 大体「オバマ政権時からその地位にあったコミー氏」「トランプに任命権限のないモラー特別検察官」はともかくトランプが大統領就任後に任命した「ローゼンスタイン副長官」が「反トランプ派だ」とは何の冗談でしょうか?

 ウォーターゲート事件では、ニューヨークタイムズを始めとする大手リベラル派マスコミはこれを「権力の犯罪」として鋭く糾弾した。ニクソン大統領はこれに抵抗できず、大統領弾劾を待たずに辞職する道を選んだ。

 共和党支持層ですらニクソン辞任を求めていましたからね。なおニクソンが「事前に報告を受け了承した」など、ウォーターゲートに直接関与していたかどうかはともかく、その後「特別検察官を解任する」などの司法妨害的な行為をしたことは事実です。その結果「直接関与があろうとなかろうとあんな司法妨害は許せない」「司法妨害をするなんてニクソンが直接関与していたか、ニクソンではないにせよ政権中枢の大物が関与していたのではないのか」という批判をニクソンは浴びることになります。

 ロシアのこの違法工作によって、アメリカ大統領選挙の結果が変えられることもなかった。

 俺もこれはその通りだろうと思います。ただし「失敗したから犯罪してもとがめない」つう話には全くならないわけです。なら選挙に影響なければ「公明党は今も日蓮国教化狙ってる」「日本共産党は今も暴力革命を捨ててない」などというデマビラを選挙期間中にばらまいていいのか。そんなバカな話はない。

プーチン大統領やロシア政府がこういった政治工作にかかわった証拠は何一つ発見されていない。

 「ロシア人の違法工作」は藤井は認めるようですので「ロシア政府に関係ないロシア人がやった」といいたいようです。
 それが事実ならトランプが米露首脳会談後「プーチンが選挙介入したとは思わない。そもそも動機がないと思う」と発言し、「民主党NYタイムズワシントンポストなどだけではなく」共和党やフォックニュースなどからも「トランプはどこの国の大統領なのか!」などの批判が噴出、仕方なく発言撤回に追い込まれたことはどうなるのか?。それが事実なら「トランプは事実をいっただけ」であり、あんな非難を浴びることもなかったわけです。

参考

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3309215018072018MM0000/
■日経『ロシアの選挙介入認める トランプ氏、会見発言を撤回』
 トランプ米大統領は17日、米ホワイトハウスで「2016年の米大統領選でロシアが介入したという米情報機関の結論を受け入れる」と述べた。16日にはロシアの関与を否定するプーチン大統領に同調したが、言い間違いだったと釈明。わずか1日で発言を撤回した。国内でロシアに近すぎるとの批判を受けて方針転換したが、米議会では対ロ制裁強化を求める声も出ており、混乱収拾のメドはたっていない。
 トランプ氏が共和党議員との会合で語った。トランプ氏は会合で、16日の米ロ首脳会談後のプーチン氏との共同記者会見では選挙介入問題で「『ロシアが干渉しない理由が見つからない』と言うつもりだった」と語った。16日は「ロシアが干渉する理由が見つからない」と話しており、「not」を一つ入れ忘れたと主張した。ただ、トランプ氏は会合で選挙介入の主体は「他にもいるかもしれない」とも語った。
 米情報機関は16年10月に16年の大統領選でロシアのサイバー攻撃による妨害があったと発表した。トランプ氏は16日、関与を否定するプーチン氏と米情報機関のどちらを信用するかを問われ「プーチン氏の否定はとても力強い」と語り、プーチン氏を支持する考えを示していた。しかし、17日の会合では米情報機関を全面的に信頼していると強調し、ここでも考えを一変させた。
 ロシアによる選挙介入問題は、米国が長年にわたって理念としてきた民主主義の根幹を揺るがす深刻な問題だ。言い間違えとするトランプ氏の主張に米議会の反発は大きい。米下院情報委員会の民主党トップのシフ議員は17日、トランプ氏の釈明について「どんな短いコメントも修正できない」と批判した。
 米議会ではロシアに近いトランプ氏をけん制するため対ロ制裁の強化を求める声も強まってきた。米メディアによると、共和党のルビオ上院議員超党派議員は米情報機関が今後の米選挙でロシアの介入を認定した場合、追加制裁を求める法案を検討している。
 上院共和党の指導部で法案を差配するマコネル院内総務は17日、記者団に「ロシアに関する法案を取り上げる可能性がある」と語った。
 11月の議会中間選挙を控えて、共和党はロシアに「弱腰」とみられるのは得策ではないとみているようだ。共和党上院全国委員会議長のガードナー議員は「プーチン氏のロシアは米国の友人ではない」と断言する。トランプ氏が発言を即座に撤回したのも中間選挙への悪影響を懸念したためとみられる。

*1:小渕内閣郵政相、福田、麻生内閣消費者問題等担当相、自民党総務会長(第二次安倍総裁時代)を経て第四次安倍内閣総務相

*2:1987年、『北斎殺人事件』で日本推理作家協会賞を、1992年、『緋い記憶』で直木三十五賞を、2000年、『火怨』で吉川英治文学賞を受賞

*3:1999年、『秘密』で日本推理作家協会賞(長編部門)を、2006年、『容疑者Xの献身』で直木三十五賞を、2013年、『夢幻花』で柴田錬三郎賞を、2014年、『祈りの幕が下りる時』で吉川英治文学賞を受賞

*4:著書『悪党の世紀』(1997年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『黒田悪党たちの中世史』(2005年、NHKブックス)、『蒙古襲来』(2007年、吉川弘文館)など

*5:著書『神風と悪党の世紀:南北朝時代を読み直す』(1995年、講談社現代新書)、『蒙古襲来』(1998年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)など

*6:著書『中世武士団構造の研究』(2011年、校倉書房)など

*7:著書『足利尊氏と直義』(2009年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『享徳の乱:中世東国の「三十年戦争」』(2017年、講談社選書メチエ)など

*8:著書『那須与一伝承の誕生』(2012年、ミネルヴァ書房)、『山名宗全』(2015年、ミネルヴァ日本評伝選)など

*9:著書『後醍醐天皇建武政権』(1999年、新日本新書)、『足利義持』(2008年、吉川弘文館人物叢書)、『足利義満』(2010年、山川出版社日本史リブレット人)など

*10:著書『源氏と日本国王』(2003年、講談社現代新書)など

*11:著書『朱子学的普遍と東アジア』(2011年、ぺりかん社)、『朱子学から考える権利の思想』(2017年、ぺりかん社

*12:著書『武士から王へ』(2007年、ちくま新書)、『天皇はなぜ生き残ったか』(2009年、新潮新書)、『天皇はなぜ万世一系なのか』(2010年、文春新書)、『謎とき平清盛』(2011年、文春新書)、『戦いの日本史:武士の時代を読み直す』(2012年、角川選書)、『武士とはなにか:中世の王権を読み解く』(2013年、角川ソフィア文庫)、『戦国武将の明暗』(2015年、新潮新書)、『真説・戦国武将の素顔』(2017年、宝島社新書)など

*13:そもそも「選挙介入など存在しない」つう人間も一部にいますが

*14:菅、野田内閣行政刷新担当相、民進党代表代行(岡田代表時代)、民進党代表を歴任。現在、立憲民主党参院国対委員長

*15:ブッシュ父、クリントン政権司法次官補、ブッシュ子、オバマ政権FBI長官等を歴任