北朝鮮はなぜ拉致をしたのか(R3.7.27): 荒木和博BLOG
令和3年7月27日火曜日のショートメッセージ(Vol.480)。今日と明日、前編、後編でなぜ拉致が行われて長年続いたのかというお話をします。今日はまず北朝鮮側の事情。気合が入って話が長くなりました。再生速度を上げてお聞き下さい。
11分12秒の動画です。説明文だけで見る気が失せます。荒木動画を批判するために、俺は一応全部見ましたが、実際見る価値は全くありません。
何が馬鹿馬鹿しいか。まず第一に「拉致問題の解決(拉致被害者の日本帰国)」においてそんなことはどうでもいいことです。
拉致の犯行動機を知らないと「拉致問題が解決しないわけではない」。
これは何も北朝鮮拉致に限りません。
北方領土の返還において*1、「なぜソ連が北方領土に侵攻したか」なんてことを議論する必要があるのか。まったくないですよね。そんなことよりも「どうすればロシアが返還してくれるか?」「返還された場合の北方領土在住ロシア人をどうするか。日本国籍を与えて、ロシア系日本人として受け入れるのか。それとも全員、ロシア本土に移住してもらうのか?」を考える方がよほど重要です。
あるいは「犯罪の防止」あるいは「犯罪者の社会復帰(犯罪者の更生)」において「犯罪者の犯行動機」を知る必要があるのか。まあ、「動機が解ればそれに越したことはない」でしょうが、必ずしもそんな必要はないですよね。
「監視カメラの設置(犯罪の防止)」「出所後の生活支援(社会復帰)」などの方が有益ではないか。
第二にそんなことはわかりようがない。
まあ、様々な状況証拠から「日本人になりすまして韓国に入国するため」「北朝鮮工作員の日本語教師にする(例:金賢姫の日本語教師だったとされる李恩恵(拉致被害者・田口八重子さんとみられる))」「よど号グループの結婚相手にする」とかいろいろな説はある。
ただそれは、あくまでも「状況証拠による憶測」でしかないですからね。「拉致実行について決定がされた会議記録」でも出てくれば話が別ですが。
結局、1)「拉致解決という意味」では「知る必要もないこと」を、2)「所詮、憶測しか結論が出せない物」を議論しても何の意味もない。荒木のバカさにはいつもながら心底呆れます。
それにしても荒木が「北朝鮮拉致は当初は勿論、目的意識があったが、その目的を果たせないまま、途中から惰性でやっていたんじゃないか」つうのには「お前が言うな」と吹き出しました(まあ、俺も正直「どれほどの意味があったのか?」「そういう面もあるかも?」とは思いますが)。
何で吹き出したか。むしろ惰性で活動をやってるのは荒木ら巣くう会や特定失踪者問題調査会、ブルーリボンの会の方じゃないのか。何せ「どう見ても拉致解決に役立つとは思えない行為」、いやそれどころか「アンチ北朝鮮」と言う意味でも「意味あるのか?」つう行為しかやってないですからねえ。今更「めぐみへの誓い」なんて「横田めぐみの映画」なんか作って何の意味があるのか。それにしてもこんなくだらないウヨ映画が遺作になってしまった「小松政夫」には「大ベテランなのに」と本当にがっかりですね。伊東四朗の「スパルタの海 - Wikipedia」主演並みの黒歴史でしょう。
そして荒木が「2002年の小泉訪朝後も、いや2021年の今でも北朝鮮は拉致を行う可能性がある」と放言してるのには絶句ですね。要するに「可能なら今後(2021年8月など)失踪する人間すら特定失踪者認定します」という自白です(但し、失踪者リスト | 特定失踪者問題調査会によれば、現時点では『平成15(2003)年10月5日失踪の高見到氏』が一番最新の特定失踪者のようですが。もちろん2002年9月の小泉訪朝以降の失踪である高見氏の失踪が北朝鮮拉致の可能性は皆無ですし、荒木もまともな根拠で認定したわけでは全くありません)。こんなんでどうして北朝鮮が拉致問題で日朝交渉したがるのか。
日朝交渉しないでどうやって拉致を解決するのか。解決するわけがない。家族会が拉致を解決したいなら「2021年の今現在でも北朝鮮拉致があり得る」とデマを飛ばす荒木ら巣くう会とは縁切りすべきです。そして早急に蓮池透氏の除名を撤回し、彼と和解すべきです。
なお、「北朝鮮を免罪する気は全くない」ですが拉致(強制連行や強制労働を含む)は何も北朝鮮限定ではないことは留意しておくべきでしょう。
殺害するための拉致としては、俺が知ってる物では
【金大中拉致】(韓国朴正熙政権:米国の政治的圧力で殺害を諦めますが)
【コンドル作戦 - Wikipedia】(南米軍事政権による反体制派弾圧)
がある。
北朝鮮拉致のように「何らかの形で使うこと」を目的にした拉致(強制連行や強制労働を含む)としては、俺が知ってる物では
【戦前日本の中国人強制連行、強制徴用】
有名な物としては花岡事件 - Wikipediaや劉連仁 - Wikipedia氏の存在があります。
また、中国人強制連行、強制徴用については
◆杉原達*2『中国人強制連行』(2002年、岩波新書)
◆西成田豊*3『中国人強制連行』(2002年、東京大学出版会)
◆西成田豊『労働力動員と強制連行』(2009年、山川出版社日本史リブレット)
などの著書があります。
【戦前日本の朝鮮人強制連行、強制徴用】
有名な物としては軍艦島(端島炭鉱)がある。
また、朝鮮人強制連行、強制徴用については
◆古庄正*4、樋口雄一*5、山田昭次*6『朝鮮人戦時労働動員』(2005年、岩波書店)
◆外村大*7『朝鮮人強制連行』(2012年、岩波新書)
◆古庄正『足尾銅山・朝鮮人強制連行と戦後処理』(2013年、創史社)
◆竹内康人*8『韓国徴用工裁判とは何か』(2020年、岩波ブックレット)
などの著書があります。
【戦前日本の慰安婦制度】
慰安婦については
◆吉見義明*9『従軍慰安婦』(1995年、岩波新書)
◆吉見義明『日本軍「慰安婦」制度とは何か』(2010年、岩波ブックレット)
◆林博史*10『日本軍「慰安婦」問題の核心』(2015年、花伝社)
◆吉見義明『買春する帝国:日本軍「慰安婦」問題の基底』(2019年、岩波書店)
などの著書があります。
【戦前日本の『泰緬鉄道 - Wikipediaでの英国軍捕虜強制労働』】
【旧ソ連のシベリア抑留 - Wikipedia】
ドラマ化、映画化もされた山崎豊子『不毛地帯 - Wikipedia』の主人公が「シベリア抑留経験者」と言う設定でしたね。
シベリア抑留については
◆栗原俊雄*11『シベリア抑留』(2009年、岩波新書)
◆栗原俊雄『シベリア抑留は「過去」なのか』(2011年、岩波ブックレット)
◆富田武*12『シベリア抑留者たちの戦後』(2013年、人文書院)
◆長勢了治『シベリア抑留全史』(2013年、原書房)
◆長勢了治『シベリア抑留』(2015年、新潮選書)
◆富田武『シベリア抑留』(2016年、中公新書)
◆栗原俊雄『シベリア抑留最後の帰還者:家族をつないだ52通のハガキ』(2018年、角川新書)
◆富田武『シベリア抑留者への鎮魂歌』(2019年、人文書院)
などの著書があります。
がある。まあ、戦前日本もその点では「酷かった」わけです。もちろん、それは北朝鮮拉致が免罪される話では全くありません。しかし「戦前日本の拉致(中国人、朝鮮人の強制連行や慰安婦)」を「なかった」だの「たいした問題じゃない」だの強弁しながら、「北朝鮮拉致」を非難する荒木、島田、西岡のようなゲス右翼、デマ右翼には心底反吐が出ますね。
*1:俺個人はもはや返還を諦めていますが
*2:大阪大学名誉教授。著書『オリエントへの道:ドイツ帝国主義の社会史』(1990年、藤原書店)、『越境する民:近代大阪の朝鮮人史研究』(1998年、新幹社)など
*3:一橋大学名誉教授。著書『近代日本労資関係史の研究』(1988年、東京大学出版会)、『在日朝鮮人の「世界」と「帝国」国家』(1997年、東京大学出版会)、『経営と労働の明治維新』(2004年、吉川弘文館)、『近代日本労働史』(2007年、有斐閣)、『退職金の一四〇年』(2009年、青木書店)、『近代日本の労務供給請負業』(2015年、ミネルヴァ書房)、『日本の近代化と民衆意識の変容:機械工の情念と行動』(2020年、吉川弘文館)など
*5:著書『協和会:戦時下朝鮮人統制組織の研究』(1984年、社会評論社)、『皇軍兵士にされた朝鮮人:一五年戦争下の総動員体制の研究』(1991年、社会評論社)、『戦時下朝鮮の農民生活誌:1939~1945』(1998年、社会評論社)、『戦時下朝鮮の民衆と徴兵』(2001年、総和社)、『日本の朝鮮・韓国人』(2002年、同成社)、『日本の植民地支配と朝鮮農民』(2010年、同成社)、『戦時下朝鮮民衆の生活』(2010年、緑蔭書房)、『金天海』(2014年、社会評論社)、『植民地支配下の朝鮮農民』(2020年、社会評論社)など
*6:立教大学名誉教授。著書『金子文子』(1996年、影書房)、『植民地支配・戦争・戦後の責任』(2005年、創史社)、『関東大震災時の朝鮮人虐殺とその後』(2011年、創史社)、『全国戦没者追悼式批判』(2014年、影書房)、『関東大震災時の朝鮮人迫害』(2014年、創史社)など
*7:東京大学教授。著書『在日朝鮮人社会の歴史学的研究』(2009年、緑蔭書房)
*8:著書『浜岡・反原発の民衆史』(2014年、社会評論社)、『静岡県水平社の歴史』(2016年、解放出版社)、『日本陸軍のアジア空襲』(2016年、社会評論社)、『明治日本の産業革命遺産・強制労働Q&A』(2018年、社会評論社)
*9:中央大学名誉教授。著書『草の根のファシズム』(1987年、東京大学出版会)、『毒ガス戦と日本軍』(2004年、岩波書店)、『焼跡からのデモクラシー:草の根の占領期体験(上)(下)』(2014年、岩波現代全書)など
*10:関東学院大学教授。著書『沖縄戦と民衆』(2001年、大月書店)、『BC級戦犯裁判』(2005年、岩波新書)、『シンガポール華僑粛清』(2007年、高文研)、『戦後平和主義を問い直す』(2008年、かもがわ出版)、『戦犯裁判の研究』(2009年、勉誠出版)、『沖縄戦 強制された「集団自決」』(2009年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『沖縄戦が問うもの』(2010年、大月書店)、『米軍基地の歴史』(2011年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『裁かれた戦争犯罪:イギリスの対日戦犯裁判』(2014年、岩波人文書セレクション)、『暴力と差別としての米軍基地』(2014年、かもがわ出版)、『沖縄からの本土爆撃:米軍出撃基地の誕生』(2018年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)など。個人サイトWelcome to Hayashi Hirofumi'
*11:毎日新聞記者。著書『戦艦大和』(2007年、岩波新書)、『勲章:知られざる素顔』(2011年、岩波新書)、『20世紀遺跡:帝国の記憶を歩く』(2012年、角川学芸出版)、『遺骨:戦没者三一〇万人の戦後史』(2015年、岩波新書)、『「昭和天皇実録」と戦争』(2015年、山川出版社)、『特攻』(2015年、中公新書)、『戦後補償裁判:民間人たちの終わらない「戦争」』(2016年、NHK出版新書)
*12:成蹊大学名誉教授。著書『スターリニズムの統治構造:1930年代ソ連の政策決定と国民統合』(1996年、岩波書店)、『戦間期の日ソ関係 1917-1937』(2010年、岩波書店)、『日本人記者の観た赤いロシア』(2017年、岩波現代全書)、『歴史としての東大闘争』(2019年、ちくま新書)など