新刊紹介:「前衛」11月号(追記あり)

 「前衛」11月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。「興味のある内容」のうち「俺なりになんとか紹介できそうな内容」だけ簡単に触れます。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
■座談会『野党国対委員長大いに語る』(辻元清美*1立憲民主党)、泉健太*2(国民民主党)、広田一*3無所属の会*4)、穀田恵二日本共産党))
(内容紹介)
 赤旗記事紹介で代替。なお、自由党国対委員長玉城デニー氏(当時。現在、沖縄県知事)、社民党国対委員長照屋寛徳氏の名前がないのは彼らが「沖縄選出で県知事選に全力投球」だからのようです。ただ「その場合でも」代理を立てるべきだった気もしますが。

参考
赤旗
■一致点での協力推進、参院野党国対委員長が確認
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-05-11/2018051102_04_1.html
■文書問題 閉会中審査が必要、野党国対委員長が会談
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-09-01/2018090102_04_1.html
■対ロ外交で閉会中審査要求、野党国対委員長が一致
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-09-15/2018091501_02_1.html
臨時国会の開会早く、災害対応など 野党国対会談で確認
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-10-04/2018100402_01_1.html
■『前衛』11月号 野党国対委員長が座談会/182日間の激闘 縦横に/信頼生まれ大きな役割
http://www.jcp-sthb.jp/news/entry-759.html


■市民は野党に何を期待するのか(佐々木寛*5
(内容紹介)
 新潟県知事選で市民活動家として野党共闘実現に尽力した方のコメントですね。
 彼の主張を要約すれば
1)支持率的な意味では「可能な限り」野党共闘せざるを得ないが
2)その場合、明確な対立軸が必要
ということです。対立軸を示すことができなかったからこそ小池*6、前原*7、細野*8らの「希望の党」は沈没したわけです。
 「脱原発」という対立軸を示すことができた新潟県知事選は一度は野党共闘が勝利し、またその後は残念ながら敗北したものの健闘したわけです。また先日の沖縄県知事選勝利も「基地問題という対立軸を示したこと」も大きかったと言えるのではないか。


■安保法制後の日米軍事同盟(上)(山根隆志*9
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。内容的には「安保法後の日米同盟」においては「日米共同軍事作戦」を前提とした「日米共同演習」が増加しているという指摘である。

赤旗
■日米実動訓練 市民ら抗議、横浜市 “米軍戦略への加担、中止を”
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-08-28/2018082801_04_1.html
東シナ海などでも訓練、自衛隊と米・英軍 中国との緊張高める
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-09-29/2018092901_07_1.html
■海自潜水艦 南シナ海初訓練、外交なしの軍事行動 百害あって一利なし、志位委員長
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-09-18/2018091801_07_1.html


■安倍改憲策動とのたたかい:改憲案提案を阻止 市民と野党が追い込んだ(佐々木森夢)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
改憲発議許さない、臨時国会狙う安倍政権 憲法会議が声明、「3000万人署名の早期の達成を」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-08-29/2018082905_01_1.html
■主張『安倍改憲阻止へ:3000万人署名広げに広げ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-09-03/2018090301_05_1.html


アベノミクス開発戦略とポスト五輪危機(岩見良太郎*10
(内容紹介)
 アベノミクスによりある種の不動産バブルが生じているが、五輪の終了を機にバブルが崩壊しかねないと危惧の念を表明。そうした不動産バブルを早急に是正すべきだとしている。


多国籍企業のための東京大改造の現実(末延渥史*11
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
■再開発 大企業を優遇、本村氏 「都市再生」問題で批判
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-05-29/2016052904_04_0.html
■住民置き去り再開発、宮本氏、特措法の問題指摘
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-13/2018041305_03_1.html


パックス・アメリカーナを問い直す 「科学的平和」の意味と限界(中山智香子*12
(内容紹介)
 筆者の言う「科学的平和」とは「平和を科学的に実現する」という意味ではなく「いわゆるパックス・アメリカーナアメリカの平和)」の前提となる理論だと言うことをまず指摘しておきます。
 筆者は「パックス・アメリカーナ」においては「ヨーロッパ諸国間の戦争」は確かにアメリカを盟主とするNATOシステムによって「阻止され、ヨーロッパに平和が訪れた」がそれは、アメリカによる「ベトナム戦争」「アフガン戦争」「イラク戦争」などを否定するものではなかったと指摘。
 今こそ「真の科学的平和」を目指すべきだとしています。ここからは私見ですがその場合、やはり、重要なのはアメリカを掣肘する存在としての「EU諸国(英仏独イタリアなど)」、「BRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)」、「ASEAN諸国(ベトナム、マレーシア、シンガポール、フィリピン、インドネシアなど)」といった様々な国々の存在でしょう。そうした意味では過大評価は禁物だが「AIIB」は「いわゆる世銀システム」とは違ったオルタナティブを生み出す可能性も否定できないでしょう。


■「仮想通貨」に未来はあるか―NEM流出事件が示したもの(園島隆人)
(内容紹介)
 仮想通貨について「技術的に不正が防げる」という主張は「NEM流出事件」で実態に反することが証明されたと指摘。法的な規制の必要性を主張している。
 なお、筆者は仮想通貨を否定してはいないが、現状では「流出のリスクが高すぎ、一般国民には到底推奨できない」としている。 


■宗教人と日本共産党との懇談会(星出卓也/藤原さよ子/小嶋弘遵)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗『宗教者は共同のパートナー 日本共産党と懇談会、豊かな連帯の輪広がる、小池・吉良議員が出席』
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-08-30/2018083014_03_1.html


■災害列島日本で 国民・消費者のための損害保険産業めざして(松浦章*13
(内容紹介)
赤旗の記事紹介で代替。

赤旗『損保代理店 現状・未来考える、大門議員が報告 大阪でシンポ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-05-28/2017052804_03_1.html


■論点『プルトニウム「削減」宣言の一方で再処理の矛盾』(鈴木剛
(内容紹介)
赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
■「プルトニウムは増える」、MOX燃料問題 藤野議員が追及
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-03-13/2016031313_01_0.html
■主張『プルトニウム累増:使うあてのない再処理中止を』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-02/2016040201_05_1.html
■主張『プルトニウム蓄積:破綻した核燃サイクル撤退を』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2018-01-21/2018012102_01_1.html
■主張『プルトニウム保有:核燃サイクルからの撤退こそ』
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-07-19/2018071901_05_1.html
原子力委新指針 どう見る? プルトニウム削減方針、元中央大学教授 舘野淳さん*14に聞く
http://jcpre.com/?p=15853
■主張『プルトニウム保有核燃料サイクルから手を引け』
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-08-23/2018082301_05_1.html


■暮らしの焦点『伊東市メガソーラー建設計画 住民の反対運動広がる』(山本明久)
(内容紹介)
 産経が
■産経【太陽光発電は人を幸せにするか】(5)伊東の港のそばに韓国系企業がメガソーラー 「海に土砂が流れ込む」 「反対の声」にも計画は進み
https://www.sankei.com/premium/news/180908/prm1809080003-n1.html
などで散々悪口していたメガソーラー計画ですが、共産党も批判的立場のようです。
 ググったら
赤旗
太陽光発電 環境壊さぬ設置を、田村参院議員質問 大規模開発に対策求める
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-02-14/2015021404_04_1.html
■土砂流出現場を調査、真島議員ら メガソーラー問題
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-08-25/2015082504_02_1.html
■住民反対ソーラー 中止を、大津 市田副委員長ら予定地視察
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-27/2016112714_01_1.html
■大型太陽光の規制必要、武田氏、国立公園の保全要求
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-03-12/2017031204_05_1.html
日本共産党衆院議員・もとむら伸子
静岡県伊東市で、八幡野地区のメガソーラー問題の現地調査!!!
http://motomura-nobuko.jp/2018/0803-152721.html
伊豆高原メガソーラーパーク発電所の問題で、経済産業省から聞き取り!!
http://motomura-nobuko.jp/2018/0820-164115.html
というソーラー計画批判の記事も見つかりました。まあ「太陽光発電一般の支持」と「個別具体的な計画」はまた別ですから当然の話です。
 もちろん「反共」産経の記事が共産党の「伊豆高原メガソーラー計画反対」の立場に何一つ触れないのはいつものことです。
 一方で伊東市長や静岡県知事の反対姿勢に触れるのは「共産党など太陽光発電支持者のせいでこういう事態に伊豆高原がなってる」という悪質な印象操作以外の何物でもないでしょう。
 共産党の活動を大々的に宣伝しろとは言いませんが、共産党の立場に産経が触れないのは明らかに不適切です。


メディア時評
■新聞『安倍三選、百害あって一利なし』(阿部裕)
(内容紹介)
 月刊『世界』10月号(https://www.iwanami.co.jp/book/b376558.html)の『安倍政権ファクトチェック100』南彰(朝日新聞)、望月衣塑子*15東京新聞)を紹介。「望月氏東京新聞)など一部良心派を除いて」新聞やテレビ、週刊誌などがこうしたファクトチェックをどれほどやってきたのか、やっているのかという厳しい批判を行っている。
 しかし、まあ、「同じ女性新聞記者」とはいえ「望月氏東京新聞)」と「福島香織(評価してないので敬称略。元産経)」の違いにはため息が出ますね。いや比べたら、望月氏に大変失礼でしょうが。
 福島も昔はもう少しまともだったんですけどね。


■テレビ『インターネット配信で何が』(沢木啓三)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
■なんだっけ『NHKのネット同時配信って?』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-08-27/2017082703_01_0.html
■安倍首相の意向 「放送制度改革」、フェイクニュース・ヘイト横行の危険
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-11/2018041114_01_1.html
■リテラ『見城徹のAbemaTV安倍首相“接待”番組は親会社・テレ朝幹部もグルの選挙応援だった!?』
https://lite-ra.com/2017/10/post-3528.html

 沢木氏も指摘していますが、アベマTVのような「安倍万歳ネットテレビ」の存在を考えれば、ネット配信が手放しで評価できるものでないことは確かでしょう。


■スポーツ最前線『ラグビー日本代表の成長と課題』(大野晃*16


■文化の話題
【映画:監督・高畑勲さんを偲ぶ】(児玉由紀恵)
(内容紹介)
 まあ高畑氏が偉大なのも、共産党支持者にして護憲派でもあるのも今更ですが。
1)高畑氏の平和主義
 具体的には「映画人九条の会への参加」、「映画『火垂るの墓』(1988年、脚本・監督)の製作」、「実現しなかったが、映画『国境』の製作計画」などがあげられるでしょう。

参考

高畑勲ウィキペディア参照)
・『おもひでぽろぽろ』(1991年、脚本・監督)をつくる前に、しかたしん原作の『国境』をもとに、満州国朝鮮半島における人々の日常生活を淡々と描く中で、日本人の現地人差別の実態を詳らかにする企画を進めていたが、1989年に起きた天安門事件の影響で企画が流れた。

https://lite-ra.com/2018/04/post-3949.html
■リテラ『「火垂るの墓では戦争は止められない」高畑勲監督が「日本の戦争加害責任」に向き合うため進めていた幻の映画企画』
「『火垂るの墓』は反戦映画と評されますが、反戦映画が戦争を起こさないため、止めるためのものであるなら、あの作品はそうした役には立たないのではないか」(神奈川新聞2015年1月1日付)
 一方、その高畑監督が『火垂るの墓』の次に撮ろうとしていた“まぼろしの作品”については、あまり知られていない。監督作としての次作は1991年の『おもひでぽろぽろ』になるが、実はその間、高畑監督は別の企画を進めていた。しかし、ある理由によりお蔵入りになったという。「国公労新聞」2004年1月1・11日合併号のインタビューで監督自身がこう語っている。
「(『火垂るの墓』は)戦争の悲惨さを体験したものとして、平和の大切さを訴える作品をつくることができたことはよかったのですが、一方で、日本のしかけた戦争が末期になってどんなに悲惨だったかだけを言っていてもいけないと思っています。
 じつは『おもひでぽろぽろ』をつくる前に、しかたしんさん原作の『国境』をもとにして、日本による中国への侵略戦争、加害責任を問う企画を進めていたのです。残念ながら、天安門事件の影響で企画が流れたのですが、日本が他国に対してやってきたことをきちんと見つめなければ世界の人々と本当に手をつなぐことはできないと思っています」
 高畑監督が『火垂るの墓』の次に取り組もうとしていたテーマは、日本の「侵略戦争」と「加害責任」を問うことだった。ついに日の目を見ることのなくなった“まぼろしの高畑映画”。その原作となるはずだった『国境』とは、どういった作品なのか。現在、絶版となっている同作を読んでみた。
(中略)
 同作の特徴のひとつとして、関東大震災時の朝鮮人虐殺、慰安婦や徴用工の強制連行、人体実験をしていた731部隊、植民地解放を謳った傀儡政権の樹立、朝鮮人創氏改名など、日本による加害事実のエピソードが随所に挿入されることが挙げられる。そのすべてが作者の実体験ではないにせよ、少なくとも日本軍による強制連行については、当時目撃した光景が如実に反映されているようだ。しかた氏はある講演のなかでこう証言している。
〈いっぺん、どこかの小さい駅で朝鮮人が強制連行される現場を見てしまったことがあるんです。これもすごかったですね。ぼくは人間が泣くというのはこういうことかと初めて知ったわけです。オモニが泣き叫ぶ、泣き叫ぶオモニをけ倒し、ぶんなぐり、ひっぺがしながら、息子や夫たちが貨車に積みこまれていく光景を見てしまった。その泣き声は強烈に残っているんです。ぼくはそのとき、自分が朝鮮人をわかっていると言ってたくせに、指一本動かすことができない日本人の限界を、どっかで感じていたんですね。〉(『児童文学と朝鮮』神戸学生青年センター出版部、1989年)
(中略)
 こんな時代だからこそ、やはり、映画版『国境』は“まぼろしの作品”になるべきではなかった。きっと、高畑監督も、そう思いながら眠りについたのではないだろうか。そんなふうに思えてならないのだ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018082002000263.html
東京新聞『<つなぐ 戦後73年>幻の高畑戦争映画 ジブリ企画書、児童文学作家が原作』
 今年四月、八十二歳で死去したアニメ映画監督の高畑勲さんが作品化を志し、果たせなかった戦争映画がある。名古屋市の児童文学作家、故しかたしん(本名・四方晨)さんの作品を原作とした「国境 BORDER 1939」。戦前の中国大陸を舞台に、日本の侵略にあらがうアジアの若者たちの連帯を描こうとしていた。東京新聞スタジオジブリ(東京)から企画書を入手。日本の若い世代が無意識のうちに戦前と同じ道に進まぬようにと、歴史の教訓を映像で伝えようとした高畑さんの思いがうかがえる。(林啓太)
 映画の企画書によると、主人公は、現在のソウルにあった旧京城帝国大予科の日本人の男子学生。失踪した親友を捜すため、旧満州国の秘密警察に追われながら、謎の美少女とともに中国東北部やモンゴルの二万キロを駆け抜ける物語だ。
 企画書が完成したのは一九八九年四月中旬。その中で、高畑さんは問題意識をこう記していた。
 「経済大国となった日本が、無意識のうちに過去と同じ道を辿(たど)る危険を冒さぬために、映像でも、あの時代の歴史を若い世代に伝えたい」
「外国が自分の国へ侵入し、文化を押しつけてきたら、もっと強烈に自国を意識することになる。逆に他人の国へ侵入する側に立った場合どうなのか」
 ともに映画化の企画に取り組んだスタジオジブリ鈴木敏夫プロデューサー(70)によると、高畑さんは日本による韓国併合(一九一〇年)後の、日本人と朝鮮人の関係に関心を抱いていた。そして「大陸での戦争を舞台に、日本人とは何者かを問い掛け、『心の中の国境』を巡る物語をつむごうとしていた」と代弁する。
 企画書ができた直後の八九年六月、中国で天安門事件が起きた。人民解放軍民主化を求める学生や市民を武力弾圧し、日本は批判的な姿勢で臨んだ。鈴木プロデューサーによると、そのような情勢下で映画化しても興行として成り立たないとの判断から、断念せざるを得なかったという。
◆「国境BORDER1939」 〜あらすじ〜
 1939(昭和14)年春、満州国軍の士官学校満州軍官学校」の生徒、田川信彦が軍事演習中に姿を消した。旧制中学時代の親友で、旧京城帝国大予科生の山内昭夫が真相を探ろうと満州に行く。信彦は、実は秘密裏に田川家の養子となったモンゴルの王族の子。自らの出自を知り、母国に侵略を図る日本への抵抗運動に身を投じていた。昭夫は自分が侵略国の国民であることへの自覚を促されながら、満州放送の看板娘で正体はやはりモンゴル王族の子である原田秋子ら、朝鮮や中国、モンゴルの抗日地下組織の若者らの助けでモンゴルに向かう。彼らの後を満州国公安局の冷酷な日本人の秘密警察官らが追う。映画化構想は、86〜89年に完成した原作の3部作のうちの第1部。
<しかたしん(四方晨)>
 児童文学作家。1928年、ソウル生まれ。旧京城帝国大から敗戦を機に転入した愛知大法経学部を卒業。在学時に中部日本放送に入社し、劇団かもめ(現・劇団名古屋)で活動。72年に「むくげとモーゼル」を出版、73年に名古屋市を拠点とする児童劇団「うりんこ」を創設するなど、児童文学や青少年演劇に尽力。日本児童文学者協会理事や愛知大短期大学部教授(演劇論)などを務めた。2003年に75歳で死去。

2)日本的なものへの思い
 盟友の宮崎駿氏が『風の谷のナウシカ』(1984年、脚本・監督)、『天空の城ラピュタ』(1986年、脚本・監督)、『紅の豚』(1992年、脚本・監督)、『ハウルの動く城』(2004年、脚本、監督)、『借りぐらしのアリエッティ』(2010年、脚本)など洋風(?)の作品が多いのに対し、高畑氏は

じゃりン子チエ(映画版)』(1981年、脚本・監督)
火垂るの墓』(1988年、脚本・監督)
おもひでぽろぽろ』(1991年、脚本・監督)
平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年、脚本・監督)
ホーホケキョ となりの山田くん』(1999年、脚本・監督)
かぐや姫の物語』(2013年、脚本・監督)

と日本的なものが多い気がしますね。もちろん趣味の問題もあるでしょうが「自分にしかできないアニメをつくる」という自負も強かったのだろうと思いますね。


【演劇:劇団青年座の「ぼたん雪が舞うとき」】(水村武)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

劇団青年座ぼたん雪が舞うとき』
http://seinenza.com/performance/public/233.html

https://natalie.mu/stage/news/301877
■老夫婦の避難生活描く、青年座ぼたん雪が舞うとき」がNHK BSで放送
 劇団青年座ぼたん雪が舞うとき」が、10月7日24:00からNHK BSプレミアムの「プレミアムステージ」で放送される。
 今年8月から9月にかけて上演された「ぼたん雪が舞うとき」は、作を高木達、演出を齊藤理恵子が手がけた二人芝居。2011年の東日本大震災による原発事故をモチーフとした本作では、立ち入り禁止区域に取り残され、電気も水道も電話もない家で避難生活を始めた老夫婦が描かれた。本作はA組、B組、C組の組み合わせで上演され、今回は横堀悦夫津田真澄のA組による公演が放送される。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018081802000280.html
東京新聞原発被災者の1週間、芝居に 福島の劇作家「問題解決していない」』
 東京電力福島第一原発事故により、放射線量が高い街で屋内退避を強いられた夫婦の一週間を描いた劇団青年座の二人芝居「ぼたん雪が舞うとき」が、二十二日から東京都内で上演される。劇団代表の森正敏さん(65)は「事故の記憶が薄れつつある今、自分の身に起きたようにリアルに考えられる舞台にしたい」と話す。
 原作を書いたのは福島県いわき市在住の劇作家高木達(とおる)さん(68)。第一原発から三十キロ圏内に住んでおり、原発事故当時は二十キロ圏内に避難指示が出たため、危険を感じて妹夫婦の車で故郷を脱出した。一方で同県内の各地では、避難の情報も十分に入らない中で高齢世帯が取り残され、支援物資や助けもなく孤立して厳しい状況に追い込まれたケースも多かった。そうした現実を基に、物語を仕上げた。
 高木さんの原作を基にして三人の演出家がそれぞれ台本をアレンジ。夫婦役の俳優三組が上演期間中に日替わりで演じる。各チームの演出家と役者が稽古場で議論しながら舞台をつくり上げた。
 三つの舞台はいずれも「原発がある日本のどこかの街」との設定で、うち二つは福島の原発事故直後、一つは事故から八年後の物語とした。登場する夫婦は、それぞれ五十代、六十代、七十代と世代が異なる。「いつでも、どこでも誰にでも起こり得る物語」として、多くの観客に受け止めてもらう狙いという。
 いわき市は今春、今後の原発事故に備えて原子力災害広域避難計画を各家庭に配ったが、高木さんは「高齢者や障害者など避難弱者の問題は解決していない」と書き下ろしの動機を話す。
 放射線量が減ったとして国は被災地の放射線監視装置(モニタリングポスト)を順次撤去する方針を示したが、高木さんは「廃炉の過程で事故や放射能漏れもあり得る。危機意識の差は大きく、東京などの都会で警鐘を鳴らしたい」と言う。


【音楽:旧東ドイツ最後の「フィデリオ」】(宮沢昭男)
(内容紹介)
 『新刊紹介:「前衛」8月号』http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20180718/5421309876で、宮沢氏による『カタリーナ・ワーグナーの新演出によるフィデリオ』評を紹介しましたが、今回は別のフィデリオです。

http://blog.livedoor.jp/haydnphil/archives/52174599.html
 フィデリオも最近は過激な演出も多いけれど、ここでは伝統的。ただし舞台は20世紀の共産主義の牢獄で、ドイツの東と西を分けていた鉄のカーテンを模した柵の奥で展開される。フィデリオ政治犯を解放する話だからそんな演出は誰でも考えそうだが、この演出の初演は1989年の10月7日、ベルリンの壁が壊れる1ヶ月前だ。当時のドレスデン共産主義東ドイツだったわけで、この演出家はかなり勇気がある。

という「旧東ドイツ最後のフィデリオ」がドレスデンで最近(2018年5月)、再演されたそうです。

http://blog.livedoor.jp/haydnphil/archives/52451075.html
 ゼンパーオーパ*17の「フィデリオ」は東ドイツの監獄を模したセットで、鉄条網の柵に囲まれた中で繰り広げられる。ラストは囚人が解放された自由を称えるわけだけれど、この演出の初演は1989年10月9日ベルリンの壁の壊れる1ヶ月前で、時代を先取りしたと当時は大評判だった。その後1990年代にはゼンパーオーパーの中心レパートリーとして何度も上演されたらしいのだが、ここ数年はやっていない。この日は外部の企画団体が全チケットを買い上げた非公開上演だったらしく、観光客らしい人は見当たらない。高齢のドイツ人ばかりだけど客席はほぼ満員。この年代の人にとってはとても親近感のある演出なのだろう。

 「高齢のドイツ人ばかり」つうのが、「何だかなあ」ですね。まあこれだけでは「なんとも言えませんが」、「あえて独断と偏見で言えば」、もしかしたら、若者にとっては「東ドイツ?。昔のことだから知らないし興味ない」的な感覚なのかもしれません。まあ、若者はオペラも好きじゃないのかもしれない。

*1:社民党政策審議会長、国対委員長鳩山内閣国交副大臣菅内閣首相補佐官(災害ボランティア担当)、民主党政調副会長、役員室長、民進党幹事長代行、立憲民主党政調会長などを経て立憲民主党国対委員長。著書『いま、「政治の質」を変える』(2012年、岩波書店)、『デマとデモクラシー』(2016年、イースト新書)など

*2:希望の党国対委員長などを経て国民民主党国対委員長

*3:菅内閣防衛大臣政務官などを経て「無所属の会国対委員長

*4:岡田元民主党代表を代表とする旧民進党系の党派

*5:著書『市民政治の育てかた:新潟が吹かせたデモクラシーの風』(2017年、大月書店)

*6:小泉内閣環境相、第一次安倍内閣防衛相、自民党総務会長(谷垣総裁時代)を経て都知事

*7:鳩山内閣国交相菅内閣外相、民主党政調会長(野田代表時代)、野田内閣国家戦略担当相、民進党代表など歴任

*8:野田内閣環境相民主党幹事長(海江田代表時代)、政調会長岡田代表時代)、民進党代表代行(蓮舫代表時代)など歴任

*9:著書『イラク戦争の出撃拠点:在日米軍と「思いやり予算」の検証』(共著、2003年、新日本出版社

*10:著書『場のまちづくりの理論:現代都市計画批判』(2012年、日本経済評論社)、『再開発は誰のためか:住民不在の都市再生』(2016年、日本経済評論社)、『豊洲新市場・オリンピック村開発の「不都合な真実」:東京都政が見えなくしているもの』(共著、2017年、自治体研究社)など

*11:著書『地図のない東京名所案内』(2010年、ウイング出版部)

*12:著書『経済戦争の理論:大戦間期ウィーンとゲーム理論』(2010年、勁草書房)、『経済ジェノサイド:フリードマンと世界経済の半世紀』(2013年、平凡社新書)など。個人サイト(http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/nakayamac/

*13:著書『日本の損害保険産業:CSRと労働を中心に』(2014年、桜井書店)

*14:著書『廃炉時代が始まった:この原発はいらない』(2011年、リーダーズノート新書)、『シビアアクシデントの脅威:科学的脱原発のすすめ』(2015年、リーダーズノート)など

*15:著書『武器輸出と日本企業』(2016年、角川新書)、『新聞記者』(2017年、角川新書)、『権力と新聞の大問題』(共著、2018年、集英社新書

*16:著書『現代スポーツ批判:スポーツ報道最前線からのレポート』(1996年、大修館書店)

*17:ドイツ・ザクセン州の州都ドレスデンにある州立歌劇場の愛称。東ドイツ時代は国立歌劇場でドレスデン国立歌劇場と呼ばれたが、現在はザクセン州立である。