今日の産経ニュース(11/26分)

第一次大戦が今の怪物を生んだ 京都大学名誉教授・中西輝政*1
https://special.sankei.com/f/seiron/article/20181126/0001.html

 日本ではいまだに「第一次大戦は主としてヨーロッパの戦争であり日本に深い関わりがあった戦争ではない」という誤った歴史認識が定着しているように思われる。

 日本も日英同盟を口実に参戦し、ドイツを攻撃、その結果「ドイツ領パラオ」を日本の植民地として獲得してますので「関わりはある」わけです。
 もちろん日中戦争、太平洋戦争のようないわゆる「総力戦」ではありませんが。

 歴史に「イフ」は許されないが、あえて言えばもしあの時、第一次世界大戦が起こらなかったら、ロシア革命は決して起こらず、ソ連はこの地上に誕生しなかったであろう(つまり、中国や北朝鮮共産国家となることもなかったはず)。

 確かに直接のロシア革命の引き金は「戦争による生活苦→ロマノフ王朝への反発」でしょうが「戦争がなければ生活苦がなかった」とまでは言えず、当然ながら「戦争がなければ革命がなかった」とは言い切れません。
 そして中国共産党の勝利についていえば「ロシア革命によるソ連誕生」より「日本が蒋介石に戦争を仕掛けたこと」のほうが影響としては大きいでしょう。
 スターリン毛沢東勝利を当初予想せず、蒋介石勝利を予想し、そのために、中国共産党への態度が極めて冷淡だったことがのちの「中ソ対立」の一因となったことは有名な話です。
 一方、「日本の仕掛けた戦争」のせいで蒋介石は「共産党打倒に力を十分注ぐこと」ができず、あげく、西安事件国共合作をする羽目になるわけです。
 だからこそ毛沢東はのちに「日本のおかげで勝利できた」というきわどい冗談を飛ばすし、大森勝久氏などは「毛沢東をアシストするために日本は蒋介石に戦争を仕掛けた、近衛文麿ソ連の手先だ」などという陰謀論を放言するわけです。
 まあ、「1945年の日本敗戦後、内戦が4年続いていること」を考えれば「日本のために共産党が勝利した」というほど話は単純ではないでしょうし、また「日本が戦争を蒋介石に仕掛けなくても毛沢東が勝利した」かもしれませんが、それにしても日本の存在が蒋介石共産党打倒作戦を妨害したことは事実です。

*1:著書『大英帝国衰亡史』(2004年、PHP文庫)、『迫りくる日中冷戦の時代』(2012年、PHP新書)、『中国外交の大失敗』(2014年、PHP新書)、『アメリカ外交の魂』(2014年、文春学藝ライブラリー)など