新刊紹介:「経済」1月号

「経済」1月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
■巻頭言『スペインの「小さな大革命」』
(内容紹介)
 スペインの左派政党ポデモスが好意的に取り上げられています。

参考
赤旗『スペイン 緊縮転換へ、来年度予算 政府とポデモスが一致、核兵器禁止条約署名も』
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-09-09/2018090905_01_1.html


■随想『「生活図画事件」の歴史を追って』(川嶋均)
(内容紹介)
 赤旗などの記事紹介で代替。まあ、横浜事件や、三浦綾子銃口』(角川文庫)で知られる北海道綴方教育連盟事件等と同様のでっち上げえん罪ですね。

https://mainichi.jp/articles/20180323/ddl/k01/040/077000c
毎日新聞『生活図画事件:「戦争はだめだ」 松本さん講演 遺言のつもりで叫び続けたい 帯広 /北海道』
 旭川市旭川師範学校(現・北海道教育大旭川校)の学生が第二次世界大戦中、「危険思想の啓蒙(けいもう)」を理由に治安維持法違反で摘発された「生活図画事件」の当事者、音更町の松本五郎さん(97)が、帯広市内で講演した。「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法施行などの動きを憂え「遺言のつもりで、『戦争はだめだ』と叫び続けたい」と語った。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-05-10/20080510faq12_01_0.html
赤旗『戦前の北海道・生活図画教育事件とは?』
〈問い〉
 戦前の北海道で弾圧された「生活図画教育」とは?(北海道・一読者)
〈答え〉
 生活図画教育とは、1932〜40年、北海道旭川師範学校・熊田満佐吾、旭川中学校・上野成之両教師とその教え子たちが実践した美術教育です。
 それは、教え子たちに、身の回りの生活を見つめさせ、題材を選び、自らと現実の生活をより良く変革することをめざす絵の教育でした。しかし、戦争を推し進める国家権力はこうした教育さえ許さず、41年北海道綴方(つづりかた)教育連盟への弾圧に次いでこれらの教師たちを弾圧しました。これが「生活図画事件」といわれるものです。
 熊田は「リアリズムの図画を通してその時代の現実を正しく反映させなければならない」として「美術とは何か」「美術は人間に何をもたらすか」を学生に討論させ、工場などで働く人びとを描かせました。
 上野は、31〜35年に続いた大凶作の現実に生徒の目を向けさせ、「凶作地の人たちを救おう」「欠食児童に学用品を送ろう」をテーマに美術部員にポスターを共同制作させました。ポスター「スペイン動乱*1は何をもたらしたか」の制作では「戦争という現実を考え直してみる目を要求した」と後年、語っています。
 これらの実践は、32年旭川中等学校美術連盟の組織へと発展、卒業生は「北風画会」を結成し毎年、旭川市内で展覧会を開き、市民に親しまれました。
 教師となった卒業生は、生活図画教育のみならず、生活綴方にも取り組み、アイヌ差別やいじめの解決、地域青年団の活動など、戦後民主教育の先駆ともいえる実践をしました。
 41年1月北海道綴方教育連盟の教師53人とともに熊田は検挙されました。師範学校は美術部員を取り調べ、卒業直前に5年生5人を留年・思想善導、1人を放校にします。9月、特高は留年の5人を含む熊田の教え子(国民学校教師)21人、上野と教え子3人を検挙します。軍隊に入隊または入隊直前3人(判明分)は、後に憲兵に取り調べを受け、1人が虐待で亡くなっています。
 裁判では、稲刈り途中で腰を伸ばした農婦を描いた「凶作地の人たちを救おう」のポスターについて、「地主ト凶作ノ桎梏(しっこく)ニ喘(あえ)グ農民ヲ資本主義社会機構ヨリ解放セントスル階級思想ヲ啓蒙スルモノ」として処断し、これらの絵を総括して「プロレタリアートによる社会変革に必要な階級的感情及意欲を培養し昂揚する為の絵画である」(旭川区裁堀口検事)と断定。治安維持法目的遂行罪として熊田を3年半、上野、本間勝四郎を2年半の実刑に、12人を執行猶予付の有罪としました。


世界と日本
アメリ中間選挙が示したもの(西村央)
(内容紹介)
 下院選挙での共和党大敗、民主党勝利(過半数獲得)について米国政治の転換が始まったのではないかとの認識を示しています。
 またミシガン州ミネソタ州で初の「イスラム下院議員」が誕生したこと、カンザス州、ニューメキシコ州で初の「先住民出身女性の下院議員」が誕生したことも「トランプ的右派主義」にたいする抗議の表れとして評価しています。

参考

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO37843240W8A111C1000000?channel=DF130120166100
■先住民女性から初の米連邦議員 歴史的出来事の背景
 2018年の米中間選挙で起きた歴史的な出来事の一つは、連邦議会で初めて先住民女性議員が誕生したことだ。
 元ニューメキシコ州民主党会長でラグナ・プエブロ族のデブ・ハーランド氏が下院に当選したほか、カンザス州でもホーチャンク族の弁護士シャリス・デービッズ氏が共和党のケビン・ヨーダー議員を破り、下院に当選した。
 ネイティブアメリカンの人々についてのニュースを扱うオンラインニュースサイト「Indian Country Today」の編集者マーク・トラハント氏は、2人の勝利が歴史に与える影響について、どれだけ大げさな言葉を並べても言い足りないと話す。
 1789年以降に誕生した連邦議員約1万2000人のうち、先住民の血を引く議員は300人ほどだが、その中に女性は一人も含まれていなかった。
「国民の代表たちの議論の中に、アメリカ先住民がいなくてはなりません。その重要性を、先住民のコミュニティーは理解するでしょう」
 2018年の中間選挙は女性たちにとっても歴史的な選挙となった。下院選挙では、新人31人、現職65人、合計で96人の女性議員が生まれた。ミシガン州ミネソタ州では、史上初のムスリム女性議員が誕生した。民主党のラシダ・タリーブ氏、民主農民労働党イルハン・オマル氏だ。
 こうした劇的な選挙結果の背景には、セクシャルハラスメント問題や女性の声を抑え込んできた権力構造について、全米が再考を迫られているということがある。「#MeToo」運動から、性的暴行疑惑が浮かび上がった連邦最高裁判事ブレット・カバノー氏の公聴会まで、怒りが政界における女性の台頭を後押しした。
 カンザス州から下院議員になるデービッズ氏は弁護士であるだけでなく、同性愛者であること、格闘家であることを公言している。今回の選挙では、LGBTQ(性的少数者)の候補者も複数当選した。


■中国の「改革・開放」40年(平井潤一)
(内容紹介)
 「すべてがバラ色と言うわけではない」と断った上で改革開放による経済発展について一定の評価をしています。

参考

http://j.people.com.cn/n3/2018/0925/c94476-9503377.html
■人民日報『改革開放40周年 輸出914倍・輸入664倍に増加』
 1978年から2017年までの間に、人民元建てで計算すると、輸出入総額は355億元(1元は約16.4円)から27兆8千億元に増加し、782倍の増加で、年平均増加率は18.6%になった。このうち輸出総額は168億元から15兆3千億元へと914倍増加し、年平均増加率は19.1%。輸入総額は187億元から12兆5千億元へと664倍増加し、年平均増加率は18.1%だった。
 中国の貨物貿易の世界に占める割合が大幅に上昇した。改革開放の初期段階の貨物輸出入の世界シェアは0.8%にとどまり、世界29位だったが、17年は11.5%で、貨物貿易は再び世界一になり、このうち輸出は12.8%、輸入は10.2%を占めた。
 貿易の製品構造が絶えず最適化された。78年には一次製品(中間製品)の輸出が53.5%を占め、工業製品(完成品)は46.5%だったが、17年は工業製品が94.8%で一次製品が5.2%になった。85年から17年までの間に、電気機械製品の輸出額は16億8千万ドル(1ドルは約112.8円)から1兆3千億ドルに増加し、中国は9年連続で電気機械製品の輸出世界一の座を保った。同期にはハイテク製品が輸出に占める割合も2%から28.8%へ上昇した。

http://j.people.com.cn/n3/2018/1003/c94476-9505724.html
■人民日報『改革開放40年 1人あたり可処分所得は年平均8.5%増』
 国家統計局の統計によると、急速な経済成長にともない、住民所得は飛躍的増加を続けた。2017年に全国の1人あたり可処分所得は2万5974元に達した。物価上昇率を差し引くと1978年と比べて実質23.8倍、年平均8.5%の増加となる。中国住民の1人当たりの所得は過去40年間のうち31年間で1万元を突破、5年間で2万元を突破し、現在は3万元の大台へと邁進している。

http://j.people.com.cn/n3/2018/1208/c94476-9526650.html
■人民日報『改革開放後 全国の個人事業主が500倍増加』
 国家市場監督管理総局が7日に明らかにしたところによると、改革開放がスタートしてからの40年間に、中国では個人事業主の数が500倍以上増加したという。


■インド対外政策の現段階(西海敏夫)
(内容紹介)
 産経など日本右派が「中国とインドの対立」を大げさに騒ぎ「インドと手を組んでの中国封じ込め」を主張することが批判されている。
 インドは一帯一路には参加していないものの、AIIB、上海協力機構BRICS首脳会議、BRICS銀行などで中国とつながりがあり「インドと手を組んでの中国封じ込め」などありえないとしている。
 また、米国が「クリミア問題」「シリア問題」「選挙介入疑惑」などでロシアと対立を深める中、インドはロシアから地対空ミサイルを購入していることにも触れ「インド外交は単なる親米ではない」と注意を促している。

参考

https://www.sankei.com/world/news/180626/wor1806260041-n1.html
■産経『一帯一路は「拒否」、AIIBは「歓迎」 インド「バランス外交」でしたたかに利益狙う』
「AIIBによるインフラ投資は、何十億という人々の生活に好影響を与えるだろう」
 モディ首相は26日の演説でAIIBをこう称賛。「世界が成長するエンジン」とも持ち上げ、AIIBの金立群総裁は満足げな表情を浮かべた。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36199890V01C18A0EAF000/
■日経『インド、ロシアから地対空ミサイル購入へ』
 インドのモディ首相とロシアのプーチン大統領は5日、ニューデリーで会談し、インドがロシア製地対空ミサイルシステム「S400」を購入することで合意した。5基購入し総額は50億ドル(約5700億円)を超える見通し。ロシアに制裁を科すトランプ米政権はインドに対し、取引の再考を求めていた。
 インドは歴史的に武器購入で、旧ソ連・ロシアへの依存度が高い。ストックホルム国際平和研究所によると、2000年以降の武器輸入に占めるロシア比率は70%を超える。同研究員は「対米配慮より、主権国家として利便性の高い武器を買う決断を下した結果だ」とも述べ、対米外交と防衛能力の強化をてんびんにかけて、後者を選んだと分析する。


特集『問われる世界経済の行方』
■座談会「「米国第一主義」が揺るがす世界経済」(平野健、小林尚朗、宮崎礼二)
(内容紹介)
 トランプの米国第一主義が生み出す問題をどう是正していくかが論じられてる。
 米国国内外でのトランプ批判をどう強めていくか、高めていくかが論じられており、米国国内的には、先日の下院選での民主党勝利に希望の目が見いだされている。国外的には日本やEU諸国などが連帯してどう米国第一主義に対抗していくかということが論じられている。


リーマンショックから10年 マネー資本主義の現段階(英吉利)
(内容紹介)
 リーマンショック以降、「マネー資本主義」規制の動きが強まりつつあることを紹介。こうした動きを更に推進する必要があるとしている。


グローバル化のなかでの労働運動(布施恵輔)
(内容紹介)
 グローバル経済の進展の中必ずしも労働運動が、資本側の攻勢に対抗できてないことが指摘され、どう対応していくかが重要な課題とされている。


■トランプ政権の減税政策(河音琢郎*2
(内容紹介)
 トランプ政権の企業減税が「トランプが主張する景気刺激策」としての効果を発揮せずむしろ財政赤字拡大を招いていることが批判されている。


■緊縮政策と福祉国家の危機:英国の先例が示唆するもの(合田寛*3
(内容紹介)
 英国が緊縮政策によって福祉国家を崩壊させていること、そのことによって右翼排外主義を助長していることが批判的に紹介されている。
 日本や他のヨーロッパ諸国にとってもこうした動きは対岸の火事ではなくどう対応していくかが急務の課題とされている。


アメリカ農業の「工業化」とオルタナティブ:国連「家族農業の10年」の下で(村田武*4
(内容紹介)
 アメリカ農業の工業化に対し、オルタナティブとしての「有機農業」や「小規模家族農業」が紹介されている。


■現代中国生活事情:北京滞在経験(上)(平子友長*5
(内容紹介)
 2017年4月から2018年2月まで精華大学人文学部特別招へい教授を勤めた筆者による中国滞在報告。
 筆者は「自分の狭い体験での判断だが」とした上で、「大学学費の安さ」「大学教員の給与の高さ」「大学教員が雑務に追われず、研究に専心できる体制」といった意味ではもはや中国は日本を追い越しているのではないかとみている。


■地方公務員「会計年度任用職員制度」の問題点:住民のいのちと人権を投げ捨て許さず(田原聖子)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗『処遇改善に資する運用を、非正規地方公務員の新制度 本村氏要求、衆院総務委』
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2018-02-21/2018022104_01_1.html

*1:フランコ軍と共和派によるスペイン内戦のこと

*2:著書『アメリカの財政再建と予算過程』(2006年、日本経済評論社)など

*3:著書『大増税時代』(2004年、大月書店)、『格差社会と大増税』(2011年、学習の友社)、『タックスヘイブンに迫る』(2014年、新日本出版社)、『パナマ文書とオフショア・タックスヘイブン』(2016年、日本機関誌出版センター)など

*4:著書『WTOと世界農業』(2003年、筑波書房ブックレット)、『コーヒーとフェアトレード』(2005年、筑波書房ブックレット)、『戦後ドイツとEUの農業政策』(2006年、筑波書房)、『ドイツ農業と「エネルギー転換」:バイオガス発電と家族農業経営』(2013年、筑波書房ブックレット)、『日本農業の危機と再生』(2015年、かもがわ出版)、『現代ドイツの家族農業経営』(2016年、筑波書房)など

*5:著書『社会主義と現代世界』(1991年、青木書店)など