今日の中国ニュース(2019年3月5日分)

【主張】台湾総統の会見 政府は安保対話に着手を - 産経ニュース

 台湾の蔡英文総統が産経新聞との単独会見で、中国の脅威を念頭に、安全保障やサイバー攻撃の問題について日本政府と対話を行いたい考えを表明した。
 蔡氏が「台湾と日本は同じ脅威に直面している」と語ったのは頷(うなず)ける。「安全保障協力の対話のレベルを上げることが非常に重要だ」との呼びかけには、応える価値がある。
 日台に外交関係はないが安全保障などの対話まで禁じられているわけではあるまい。東アジアの安定のため、日台、日米台は協力できることがあるはずだ。

 まあ「一帯一路参加表明」安倍は「反中国」蔡英文や産経の期待に応えることはないでしょう。
 それにしても「産経単独インタビュー」というあたりが蔡英文は無様です。蔡英文としては「自分の反中国演説をそのまんま垂れ流してほしかった」がそんな日本メディアは産経くらいしかないわけです。
 産経の行為は「政党機関紙でもないのに特定の政治家に露骨に肩入れする」というジャーナリズムにあるまじき行為ですし、あげくそれによって「中国の反発を買う恐れが強い」のですからまともなメディアはやるわけもない。最近、話題のウイグル問題のように「中国の反発を買ってもメディア的に正当化できる」のなら他のメディアもやるかもしれない。しかしこれは「中国の政治に対する正当な批判」のような道理のある報道とは全く違います。


リベラル21 ある中国通の予言について思うこと(阿部治平)
 毎度毎度の反中アジビラです。よくもこんな駄文を阿部も書くし、リベラル21も載せるもんです。浅井基文先生の文章でも載せればいいのに。冗談でも皮肉でもなくそう思いますが、リベラル21は浅井先生に対し「中国びいき」と悪口する阿部の文を掲載した過去があるからそんなことはしないのでしょう。
 なお、この阿部の文に対する批判的感想は拙記事今日の中国関係ニュースほか(9/4分)(追記・訂正あり) - bogus-simotukareのブログで述べたことがあります。この機会にご覧頂ければ幸いです。
 浅井先生と阿部の違い、それは「中国をある種の協力相手と見なすかどうか」です。浅井先生は「人権問題」があるとはいえ「東アジアの諸問題(北朝鮮核問題など)解決」については中国の協力を得ることが不可避だと考えています。阿部はそうではない。阿部はその点では所詮、産経のような反中国と大して変わりません。

 2008年リーマンショック世界金融危機)があった。中国政府は4兆元(およそ65兆円)を投下して景気回復を図った。効果は十分にあった。
 先進国の経済は一時中国頼りとなり、フランス・サルコジ*1大統領やドイツ・メルケル*2首相が中国詣をした。

 いろいろな意味で興味深い阿部の文です。
 まず第一に「アンチ中国」阿部も「経済面でドイツ、フランスなどと言ったEU諸国も中国とは深いつながりがあり、人権問題で一定の批判はしても全面対決などしない」つうことを認めざるを得ない。
 第二にそれでも「リーマンショックガー」ととんちんかんなことをいってしまう。リーマンショック以前は欧州諸国は中国批判をガンガンやっていたのか。そんな事実はないでしょう。仮にリーマンショックが影響したとしても「中国批判が今までより多少弱まった」にすぎません。

 彼らは尖閣諸島南シナ海を「核心的利益」とし、その領有は失った領土の回復だと主張した。私は、「じゃあ、(ボーガス注:帝政ロシア清朝からウラジオストク沿海州などを奪った)アイグン条約も北京条約も無効だ。レーニンウラジオストクをロシア領だといったが、中国は沿海州も回復しなければなるまい?」といってみた。彼らはこれには考えが及ばなかったらしくとまどった様子を見せた。

 「阿部は正気なのか?」ですね。まあ、正気ではなく「嫌みのつもり」なんでしょうが、尖閣南シナ海と「ウラジオストク」「沿海州」では全然話が違う。また、ウィキペディア中ソ国境紛争』を読めば分かりますが、中露間の領土紛争*3はすでに『2004年に締結された中露国境協定』により決着しています。
 学生からすれば相手(阿部)は「センコー」だし、まさか「本気ではない」とは思いながらも「それは違う」ということには躊躇したのでしょう。
 まあ理屈の上で言えば「軍事力で帝政ロシアが奪った」ので「沿海州ウラジオストクの返還を求めてもいい」わけですが、現実的にそれがどう見ても無理なら求めるわけにはいかないでしょう。諦めるしかない。一方「尖閣南シナ海はそうした要求が筋がとおってるし、かつ実行可能」と考えれば、「沿海州との違い」は何らおかしくない。

・中国のGDPは(統計上の確かさに大きな問題があるけれども)、一桁台の成長とはいえ、リーマンショック後の2010年から2018年までの間に2.15倍に達したが、日本のGDPは1.09倍になっただけだった。日中GDP 格差は拡大した。
・日本は、20年もの長期にわたる経済の停滞が続いた。この間に「後進中国」は「先進日本」を追い越し、先進的な技術力、巨大な軍事力を擁する強大な国家に脱皮した。

 「アンチ中国」阿部ですら「中国の発展と日本の停滞*4」を認めていることが興味深い。

 中国は南シナ海を軍事力で制圧し、「一帯一路」構想を提起し、AIIB(亜洲基礎設施投資銀行*5)を設立し、中国が主導権をにぎる東アジア共同体形成を目指して大きな一歩を踏み出した。

 問題点がありすぎる文ですね。
 まず第一に「南シナ海を軍事力で制圧」とは何のことなのか。そんな事実はないでしょう。
 第二に「中国が主導権をにぎる東アジア共同体形成」なんてもんを中国は目指してないでしょう。そもそも当面において「EU」「ASEAN」のような「東アジア共同体」が出来る可能性は決して高くないし、AIIBも一帯一路も「東アジアだけ対象」のわけでもない。AIIBや一帯一路の目的はもっと単純に「中国の経済力を強め国際的発言力を増す」程度の理解でいいでしょう。

 安倍*6政権は中国の経済的軍事的進出に対抗して、インドまでをふくめた西太平洋インド洋における中国包囲網を構築しようと苦闘したが、関係諸国の同意を得られず挫折した。

 別に安倍は「中国の経済的軍事的進出に対抗」しているわけではなく単に反中国右翼に過ぎないでしょう。
 その安倍ですら中国の経済力を重視する日本財界の圧力もあってか、ついに昨年5月には李克強*7首相の訪日を歓迎し、彼の北海道訪問にわざわざ同行し日中友好をアピールするパフォーマンスまでしました。そして一帯一路への参加も表明した。

 朝鮮半島の和平交渉には影響力を発揮するどころか手も足も出ない。拉致問題ですらアメリカ頼みだ。

 そもそも安倍には拉致問題も「核・ミサイル問題」も解決する能力どころかその意思すらないでしょう。単に「拉致や核・ミサイルをネタに北朝鮮を叩き、ナショナリズムをあおり政権支持につなげる」、その程度の考えしかないでしょう。その程度の考えしかないからこそ「文在寅*8韓国大統領やトランプ米国大統領の太陽政策路線」に打つ手がなかったわけです。
 「拉致問題ですらアメリカ頼み」て本当に「アメリカ頼み」ならまだいい。「アメリカに頼んだって拉致の当事者じゃないから意味がない。アメリカも本気で動かないし、北朝鮮もそんなアメリカに拉致でいい返事なんかしない」と思いながら「打つ手が何もない」からこそ、アリバイ作り、ごまかしとして「アメリカ頼み」を装ってるに過ぎないでしょう。

 今日、中国の経済成長率は、トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争によってさらに低下した。

 ただし「安い中国製品が入ってこなくて米国の物価が上がってる!」「中国の対米制裁で農産物が売れない!(米国の大豆農家から反発の声が上がり始めたなんて記事がネット上にあります)」「中国が不景気になったらむしろ米国の商品が中国で売れなくなって米国が困るじゃないか!」とする「経済面でのトランプ批判」が米国内にあるので、「中国ばかりが困ってる」わけでもありません。

 にもかかわらず、中国の国際的影響力は依然として大きなものだし、これからも大きくなっていくだろう。貿易一つとっても、中国にとっては日本はおおぜいの中の一人だが、日本経済にとっては中国市場を無視しては存在できないという現実がある。

 そりゃそうでしょう。

 これから中国を先頭に韓国・北朝鮮反日ナショナリズムによって束になってかかってくる恐れがある。わが日本がこれら3国とは植民地化と侵略戦争の過去を十分に清算していないからである。

 「中国を先頭に束になってかかってくる」という表現は適切ではないでしょう。
 中国は「北朝鮮や韓国にとって重要な貿易相手国」であり「戦前日本の侵略被害国という共通点」があるとはいえ「歴史認識問題限定」ですら「韓国や北朝鮮の親分」ではないからです。
 単に「歴史認識問題では大いに利害が共通する」ため、共同で日本(というか安倍政権)を歴史認識問題で批判しているにすぎません。
 なお、「日本が過去を十分精算してない」のは事実です。これは安倍一人のせいではない。安倍以前が「過去の清算」という意味で百点満点だったわけではない。
 そもそも「過去の清算が百点満点」「日本人は深く過去の侵略と植民地支配を反省している」のなら安倍のような「過去の侵略と植民地支配に無反省な男」が首相になることなどありえません。仮になったとしても今のように「安倍が過去に対し無反省な態度を公然ととっている(例:慰安婦銅像の撤去要求、徴用工問題や南京事件資料ユネスコ世界記憶遺産登録での挑発的言動、南京事件否定論者の櫻井よしこ中教審委員に、百田尚樹NHK経営委員に任命*9)」のに政権が長期にわたって維持できるなんて事もあり得ない(まあ、安倍支持層はモリカケ疑惑ですら容認する気らしいのでそれ以前の話ですが)。
 とはいえ「安倍以前」において「鈴木*10政権での教科書問題(事態沈静化のため、宮沢*11官房長官談話と近隣諸国条項を発表)」「中曽根*12首相への藤尾*13文相更迭要求(藤尾が韓国併合を正当化したことに韓国・全斗煥政権が強く反発)」「中曽根、小泉*14政権での靖国参拝」など一部を除けば、「日本との経済関係」に配慮して中国、韓国は日本批判を控えてきたと言っていいでしょう。
 小渕*15政権においては日韓共催サッカーワールドカップすら行われている。
 安倍が退陣すれば、野党に政権交代せずとも、自民党政権のままでも後任が「石破*16でアレ、石原伸晃*17でアレ、岸田*18でアレ」誰でアレ、「安倍ほどの戦前美化右翼」が首相になることはおよそ考えられないので、歴史認識問題での「今の日本批判」はかなり沈静化していくでしょう。
 今の状況は「首相が極右安倍だから」という面が大きい。

 (ボーガス注:産経や文春、新潮など右翼メディアのように)中国をこき下ろし、習近平*19専制政治を非難することで、日本人の脆弱なナショナリズムを煽るだけでは、何の役にも立たない

 確かにその通りですが、この阿部の文自体が

 中国をこき下ろし、習近平専制政治を非難することで、日本人の脆弱なナショナリズムを煽る

代物でしかないのがなんともかんとも。「阿部は、リベラル21は自分が見えてない」と思いますね。彼らは冷静な中国批判をしているつもりなのでしょうが。

*1:ファラン内閣内務相、財務相、ドピルバン内閣内務相などを経て大統領

*2:コール内閣環境相キリスト教民主同盟 (CDU) 幹事長などを経て首相

*3:ただし、毛沢東時の紛争ですら「ウラジオストク沿海州を返せ」なんて言っていませんが。とはいえこうした過去の経緯が「中ソ領土紛争」に影響していたこともまた事実でしょう。

*4:ただし阿部は「アンチ自民(特にアンチ安倍自民)」なので「中国の発展」はともかく「日本の停滞」を認めることにはあまり躊躇はないかもしれません。

*5:アジアインフラ投資銀行と普通に日本語で書いてほしいところです(亜洲=アジア、基礎施設=インフラ、なのでしょう)。

*6:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官を経て首相

*7:共青団共産主義青年団)中央書記処第一書記、河南省長・党委員会書記、遼寧省党委員会書記、第一副首相などを経て首相(中国共産党中央政治局常務委員兼務)

*8:盧武鉉政権大統領秘書室長、「共に民主党」代表を経て大統領

*9:ただし委員再任時には、さすがによしこや百田を再任はしませんでしたが、まともな人間なら最初からよしこや百田など委員にしません。

*10:池田内閣郵政相、官房長官、佐藤内閣厚生相、福田内閣農林相、自民党総務会長(大平総裁時代)などを経て首相

*11:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相。首相退任後も小渕、森内閣で蔵相

*12:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官を経て首相

*13:鈴木内閣労働相、自民党政調会長(中曽根総裁時代)、中曽根内閣文相を歴任

*14:宮沢内閣郵政相、橋本内閣厚生相を経て首相

*15:竹下内閣官房長官自民党副総裁(河野総裁時代)、橋本内閣外相を経て首相

*16:石破派総帥。小泉内閣防衛庁長官福田内閣防衛相、麻生内閣農水相(谷垣総裁時代)、自民党幹事長(第二次安倍総裁時代)、第三次安倍内閣地方創生担当相など歴任

*17:石原派総帥。小泉内閣国交相自民党政調会長(第一次安倍総裁時代)、幹事長(谷垣総裁時代)、第二次安倍内閣環境相、第三次安倍内閣経済財政担当相を歴任

*18:岸田派総帥。第一次安倍、福田内閣沖縄・北方等担当相、第二次、第三次安倍内閣外相を経て自民党政調会長

*19:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席