今日の中国ニュース(2019年3月21日分)

海峡両岸論 第100号 2019.03.16発行 - 英独がファーウェイ排除に反旗 米の試みは失敗、衰退加速も - | ちきゅう座

 次世代通信規格「5G」の構築から、中国通信機器大手の「華為技術」(ファーウェイ)を排除し、中国に「デジタル冷戦」を仕掛けたトランプ米政権の目論見が狂い始めた。英国の情報当局がファーウェイを全面排除しない方針を決めたほか、ドイツ政府も排除しない方向に傾いているからである。
英情報当局の方針は2月17日、英経済紙「フィナンシャルタイムズ」(FT)が伝えた。それによると、国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)は、ファーウェイ5G網導入について、利用を一部制限すべき領域はあるものの、安全保障上のリスクは抑えられると判断した。
 トランプ政権は、上下両院が2018年可決した「国防権限法」に基づき、2019年8月以降、米政府機関がファーウェイなど中国通信5社の製品を調達することを禁じ、さらに2020年8月からは同5社の製品を利用している「世界中のあらゆる企業を米政府機関の調達から排除」という「二段構え」で決めた。
 英国のNCSCは排除しない理由を「調達先の多様性を確保する狙い」としている。英国では欧州連合EU)離脱を前に、ホンダの工場閉鎖など企業の「英国離れ」が加速している。実際にEU離脱となれば大きな経済的損失が予想される。だから英政府も、中国との経済関係を重視せざるを得ない。特にファーウェイは2013年からの5年間で、同国に20億ポンド(2880憶円)もの投資をした「お得意様」である。米国との同盟関係も重要だが、背に腹は代えられないのだ。
 一方のドイツ。メルケル首相は2月初め来日した際、慶応大学での講演で、「ファーウェイが中国政府にデータを引き渡さないとの保証が得られない限り、5G通信網の構築に参加させない」と発言し、「米ブロック入りか」とみられた。
 しかしロイター電によると、2月7日付の独経済紙「ハンデルスブラット(電子版)」は、ドイツ政府が5G通信網構築からファーウェイを排除しない方針だと伝えた。6日の定例閣議後、メルケル首相の首席補佐官が各省庁と合意したという。
 米紙ウォールストリート・ジャーナル電子版(3月11日)によると、トランプ政権はドイツ政府に対し、ファーウェイ製品を採用すれば米情報機関の機密情報などの共有を制限すると警告したという。排除をめぐって米政府が同盟国に安全保障協力に影響が及ぶと明確に警告した初めてのケース。米国の焦りがみえる。
 一方の中国側。対米政策をめぐって揺れ動いた習近平指導部は、昨秋になって米国との全面衝突を避けるため「対抗せず、冷戦はせず、漸進的に開放し、国家の核心利益は譲歩せず」(不対抗、不打冷戦、按照伐開放、国家核心利益不退譲)の「21字方針」を打ち出した。
 だが譲歩は底なしではない。通商摩擦や安全保障問題は「核心利益ではない」から、いくらでも譲歩できる。大豆も自動車も油もジャブジャブ買って、2024年までに対米貿易黒字を「ゼロ」にしようとの意気込みすら見せ始めている。
 しかし「中国の発展モデル」をめぐる対立になれば妥協できない。ファーウェイは“核心的利益”の象徴である。ファーウェイ排除には徹底抗戦する構えだ。
 ファーウェイ排除で、日本政府は躊躇なく「踏み絵」を踏んだようにみえる。政府は18年12月10日、政府調達から中国製機器を排除する各省庁の申し合わせをした。申し合わせは、「中国」や「排除」という言葉は一切使わずに「サイバーセキュリティ確保の観点から」「総合的な評価を行う」としている。しかし排除の対象にはスマホまで含まれており、国家公務員は今後「ファーウェイのスマホを持ち込むな」と言われるはずだ。これをトランプの意向をくんだ「究極の忖度」と評した元防衛庁高官もいる。
 政府は、通信キャリア会社にも事実上、中国製通信機器排除への同調を求めたが、ここでも「サイバーセキュリティ確保の観点から、必要な情報提供を求める」とするだけで、排除するか否かは、事業者の判断に委ねるとしている。総務大臣は申し合わせ翌日11日「通信事業者もサイバーセキュリティの向上に積極的に取り組むことを期待したい」と述べた。
 総務相発言には、関係改善が進む中国を刺激したくない、同時に「WTO政府調達協定違反」との疑念も持たれたくない、そんな複雑な思いが滲む。この方針の下で、NTTをはじめNTTドコモKDDIau)、ソフトバンクの携帯大手3社と、携帯事業に参入する楽天の4社は排除をすんなり決めた。
 ファーウェイを排除する「米ブロック」のコア・メンバーは、米中心の情報協力組織「ファイブ・アイズ」(米、英、加、豪、NZ)と日本である。英政府はまだ正式決定していないが、英情報機関の方針通りファーウェイを排除しない可能性が高い。そうなると、「ファイブ・アイズ」の一角が崩れ、「米中デジタル新冷戦」の行方は不透明感を増すことになる。まだ態度を決めていないニュージーランドとカナダも排除に踏み切れないでいる。
 同じ同盟国でもこれほど対応に差が出ているのに、日本では「中国製機器を排除する各省庁の申し合わせ」に、メディアを含め異論がほとんど聞こえてこないのは不思議だ。ファーウェイ会長が人民解放軍出身で、同社が仕掛けたバックドアから米国の情報を窃取しているとの嫌疑を「さもありなん」とそのまま信じ込んでいるのだろうか。
 1月26日付けニューヨーク・タイムズは、ファーウェイが人民解放軍と繫がり、バックドアを仕掛けようとしている証拠を米政府が掴もうと試みファーウェイにハッキングまで仕掛けたが、「証拠を得られずにいる」と書いた。中国側は「窃取の証拠を出せ」と迫っているが、米政府はこれまでのところ出していない。
 サプライチェーンに対する打撃への懸念は、日本のIT業界からも出始めている。中国のIT関連業種は18年第4四半期から急速に落ち込み始めた。永守重信日本電産CEO は1月17日、業績見通しを発表した際「落ち込みは私が経験したことのないレベル」「この変化を甘く見てはいけない」との表現で、(ボーガス注:中米貿易紛争が世界経済や日本経済、そして日本電産に与える悪影響の)危機感をあらわにした。産業用ロボットを手掛ける安川電機も業績見通しを引き下げた。中国市場の落ち込みを理由に業績見通しを下方修正する日本企業は増え続けている。
 トランプ自身も2月21日のツイッターで「米国は進んだ技術を排除するのではなく、競争を通じて勝利したい」と述べ、「ファーウェイ排除を見直す可能性に含みを持たせた」(日経)
 世界経済をかく乱するファーウェイ排除の試みは果たして成功するだろうか。
 経産省OBでチャイナウォッチャーの津上俊哉氏*1の見方(「現代ビジネス」19年2月15日、「米中ハイテク冷戦、実は米国と同盟国側が衰退する恐れアリ」)を紹介する。
 IT経済のブロック化によって、中国製機器を排除した米国と同盟国では競争がなくなり、5G通信網の建設投資コストが上がる。一方、排除された中国企業は生き残りのためコストダウン努力を重ねる。「結果的に、米ブロック側は5Gの普及で遅れを取る恐れがある。中国製の性能が上回るならなおさらだ」というわけだ。
 ソフトバンクなど通信大手各社のファーウェイ排除に伴うコストアップは単純計算で3~4割高になるとされる。津上は「米国のやり過ぎは米陣営の孤立化を招いて遠からず失敗する」とみる。幸いと言うべきか、日本政府はまだファーウェイ排除を明示的に決定したわけではない。

 コメント抜きで紹介だけしておきます。


【石平のChina Watch】習独裁体制の落とし穴(1/2ページ) - 産経ニュース

 共産党政治局と政府中枢には、習*2主席の幼なじみや地方勤務時代の元部下からなる側近グループ*3があるにはあるが、メンバーの全員が無能なイエスマンばかり

 むしろ側近に無能なイエスマンしかないのは安倍政権の方ではないのか。一帯一路やAIIBという大胆な構想を打ち出し、しかも単に構想にとどまらず実現した習氏に向かって全く何という馬鹿なことを言っているのか。


【正論】西太平洋に迫る危機に対処せよ 平和安全保障研究所理事長・西原正 - 産経ニュース

 南シナ海や台湾に関する中国側の恐喝は激しさを増している。中国は中国共産党創立100周年を迎える2021年や建国100周年を迎える2049年に対して、何らかの武力衝突をしてでも統一の成果を誇りたいと考えているのではないだろうか。
 中国が尖閣諸島に対する領有権主張も「核心的利益である」としているのを考えれば、そこでもいずれ軍事行動を起こすだろうことは想定しておくべきである。

 その可能性はまずないですね。軍事的に勝利できるかわからず、仮に軍事的に勝てたとしても、「欧米の経済制裁の恐れが強く」政治的に勝利できる可能性がないからです。現代は「戦争は原則として悪」という認識が強いので仮に軍事的に勝てたとしても政治的にはペイしない可能性が高く戦争へのハードルは相当に高いと言っていいでしょう。


リベラル21 日暮れて途遠し―ダライ・ラマ亡命60年の今阿部治平*4

 いまから60年前の1959年3月17日、チベット仏教の最高位にしてチベット国王*5だった十四世ダライ・ラマが、中国共産党工作委員会と中国軍のやり方に耐え切れずインドに亡命した

 「中国政府相手に騒乱(反乱、武力蜂起)を起こして失敗したから亡命した」と書かず、まるで「平和的にただ立ち去った」かのように書くあたりが実に阿部治平らしい。もちろん褒めてません(苦笑)

 昨年の自治区域内総生産は、前年比9・1%増と全国平均6・6%を大きく上回り「全国の先頭を走った」と報告された(東京新聞2019・3・11)。似た報道はすでにこの1月人民日報にあった。いわく、全自治区で15万人の貧困人口および19の貧困県が全て貧困から脱却した。2018年、自治区農民の一人当たり可処分所得の増加率は13%。25の貧困県が貧困状態から脱却し、全自治区での貧困発生率は8%以下まで低下した(人民日報ネット2019・1・11)。

 ダライ万歳の阿部ですらこの点については一応肯定的に受け入れています。

 だが、国有企業であれ私企業であれ、2000年からの「西部大開発」を主導したのはおもに漢人である。その事業で豊かになったのは漢人事業家と官僚である。一般農牧民に多少のおこぼれはなかったわけではないが、貧富ごちゃまぜの統計ではチベット人地域の貧困状態は表わせない。

 ダライやペマも似たようなこと言っていたかと思いますが、実に阿部らしいですね。
 なおそれが事実だとしても*6「分配に問題がある」だけの話で、開発それ自体が問題の訳ではありません。

 さらに少数民族の若者にとっては就職差別の問題がある。彼らの母語チベット語だから、そもそも漢語(中国語)が下手であることが不利になるうえに、漢人企業はチベット人を雇いたがらない。

 それって就職差別なんですかね?。中国人である以上「中国の共通語」を覚えてもらうのは「ある意味当然」でしょう。

 本心からダライ・ラマを否定するチベット人がいるとしたらチベット民族ではないという。なぜなら、ダライ・ラマチベット仏教の至聖の地位にあると同時に、身は海外にあってもチベット民族を代表していると考えるからである。

 率直に言ってこういうのは時代錯誤でしょう。「戦前の天皇崇拝」が今も生き続けてるような話に過ぎません。「中国の統治の是非に関係なく*7」こうした時代錯誤をなくさなければ「チベット自治区でアレ、ダラムサラの亡命政府でアレ」チベットに明るい未来などないでしょう。
 とはいえ、以前別記事で紹介した「欧米に移住したがるチベット人ダラムサラに増えてる」という話からはそうしたダライ崇拝も衰えてることがうかがえますが。

 第二次大戦以前の天皇は(ボーガス注:ご真影や不敬罪による処罰などで)行政的に神格性が付与され、民衆にとって「恐れ」が付きまとったが、今日天皇に対する尊敬の念はごく自然で、ダライ・ラマ崇拝に似ていると答えるとおおかたは納得した。

 おいおいですね。例えば
1)「昭和天皇には戦争責任があると思う」といって右翼に狙撃された本島長崎市長(当時)
2)昭和天皇死去直前の自粛騒動
の存在は阿部の目には映らないようです。よくもそんな野郎がリベラルを名乗れるもんです。
 ダライへの敬愛とやらにしても阿部が言うほど果たして自然な物かどうか。

 安倍*8首相は、この2月ベネズエラの混乱について「平和的解決を望む」と発言した。1ヶ月後*9日本共産党の志位委員長も、マドゥロ*10政権を人権と民主主義を踏みにじったと非難する声明を発表した。
 どうして日本には、遠いベネズエラについては発言する政治家があっても、隣国の人権状況について発言する政治家や政党がないのだろうか。

 おいおいですね。残念ながら俺がググった限りでは「最近のチベットウイグル」について、志位氏がコメントしたという情報が見つからなかったのですが

チベット問題――対話による平和的解決を/志位委員長が胡錦濤主席に書簡
中華人民共和国国家主席 胡錦濤*11殿
 チベット問題をめぐって、騒乱・暴動の拡大と、それへの制圧行動によって、犠牲者が拡大することを、憂慮しています。
 事態悪化のエスカレーションを防ぐために、わが党は、中国政府と、ダライ・ラマ側の代表との対話による平和的解決を求めるものです。

中国の人権問題について/志位委員長記念演説から 再録/2010年第40回赤旗まつり
 日本共産党志位和夫委員長が2010年11月の第40回赤旗まつりで行った記念演説のうち、中国の人権問題について述べた部分を再録します。
劉暁波(りゅうぎょうは)氏*12ノーベル平和賞受賞などにかかわって、中国における人権問題が国際的注目を集めています。この問題についてわが党の態度をのべておきたいと思います。
 日本共産党は、中国における政治体制の問題として、将来的には、どのような体制であれ、社会に本当に根をおろしたと言えるためには、言論による体制批判に対しては、これを禁止することなく、言論で対応するという政治体制への発展を展望することが、重要だと考えるという立場を、1998年の中国共産党との関係正常化以降、中国にたいしてたびたび率直に伝えてきました。言論による体制批判には言論で対応する政治体制への発展を展望することの重要性を、ここで重ねて強調しておきたいと思います。
 くわえて、人権保障に関する国際政治の到達点にてらして、私は、つぎの点を強調したいと思います。
 かつては人権問題――各国家が自国民の権利をどのように扱うかは、もっぱらその国の主権に属する内政問題として扱われました。しかし、とくにファシズム軍国主義による人権蹂躙(じゅうりん)が第2次世界大戦に結びついたという歴史の教訓を経て、世界の平和維持のためにも、各国の国内で人権が保障される体制をつくることが必要だと考えられるようになり、そのための一連の国際的な取り決めがなされてきました。
 中国も、それらの国際的取り決めを支持・賛成してきています。中国は、1948年の世界人権宣言を支持し、1966年に国連総会で採択された「市民的及び政治的権利に関する国際規約」――言論・表現の自由を含む広範な市民的・政治的権利を増進・擁護する責任を明記した国際人権規約に署名しています。
 さらに、中国は、国連総会決議にもとづいて1993年にウィーンで開催された世界人権会議が採択したウィーン宣言にも賛成しています。ウィーン宣言は、つぎのように明記しています。
 「国家的および地域的独自性の意義、ならびに多様な歴史的、文化的および宗教的背景を考慮に入れなければならないが、すべての人権および基本的自由を助長し保護することは、政治的、経済的および文化的な体制のいかんを問わず、国家の義務である」
 ここには二つの原則がのべられています。
 一つは、自由と人権の発展は、それぞれの国によってさまざまなプロセスをとり、「多様な歴史的、文化的および宗教的背景を考慮」すべきであって、特定のモデルを性急に押し付けるような態度を取るべきではないということであります。
 いま一つは、しかし同時に、人権と基本的自由は普遍的性格をもっており、すべての人権と基本的自由を「助長し保護する」ことは、「体制のいかんを問わず、国家の義務である」ということであります。
 これは人権保障における国際社会の重要な到達点をなすものだと私は考えます。
 私たちは、中国が、これらの国際的到達点に立ち、人権と自由の問題に対して、国際社会の理解と信頼を高める対応をとることを強く望むものであります。』

ということで志位氏はチベットウイグル問題について、あるいは中国の政策について苦言や批判を何も言ってないわけではありません(安倍首相、河野外相や自民、公明や他野党はよくわかりません)。
 それはともかく「遠いベネズエラ」云々つうのも阿部は酷い話です。「ベネズエラなんかどうでもいい」と理解されてもおかしくない発言を阿部がすることに何か意味があるのか。ベネズエラ国民に対して失礼でしょう。俺がリベラル21編集部ならこの部分は阿部に書き直しを命じますね。

参考
ベネズエラと安倍政権について】

ベネズエラ「平和的解決を」=安倍首相:時事ドットコム
 安倍晋三首相は4日夜、政情不安が続く南米ベネズエラ情勢について「民主的、平和的に解決されることを強く期待している」と述べた。マドゥロ大統領と反体制派のグアイド国会議長のいずれを支持するかは明言しなかった。ドイツのメルケル首相との共同記者会見で答えた。

ベネズエラ暫定大統領を支持 河野外相表明 :日本経済新聞
 河野太郎*13外相は19日の記者会見で、政情混乱が続く南米ベネズエラで暫定大統領就任を宣言したグアイド国会議長を「明確に支持する」と表明した。同氏を支持する米国や欧州の主要国と歩調を合わせた。マドゥロ大統領は2018年の大統領選が公平でなかったとして欧米各国から再選挙の実施を求められているが拒否している。河野氏は自由で公正な大統領選の早期実施も求めた。
 マドゥロ政権については「政治、経済、社会情勢悪化や人道上の危機に懸念を強く表明してきた」と批判した。

ベネズエラ日本共産党について】

主張/ベネズエラ危機/国民多数の意思による政治を
日本共産党はかねて、ベネズエラ問題は暴力的弾圧、人道危機という点で、すでに国際問題であるという立場から、国民多数の意思にもとづく政治の実現を同国に申し入れてきました。現在の問題の核心は、大統領選挙のやり直しを通じて、政府の正統性の確立と民主主義を回復することです。
ベネズエラ国民は2015年12月の国会選挙で、生活悪化を背景に野党連合が3分の2の議席を占める圧勝をもたらしました。ところが、マドゥロ政権は国民の審判を受け入れず、新国会の発足前にその権限を可能な限り骨抜きにし、発足後は国会決議のほとんどについて最高裁から違憲、無効判決を引き出してきました。
 政府の国会無視は、一昨年8月の制憲議会発足で極まりました。その目的は、国会の権限を根本からはく奪し、強権を支える「最高権力機関」を打ち立てるためでした。制憲議会議員を選出する選挙は、1人1票の投票原則さえ逸脱するなど徹底的に政権に有利になる仕組みでした。昨年の大統領選をお膳立てしたのも制憲議会でした。
 マドゥロ政権下で、国民は食料や医薬品不足、今年は1000万%と予測されるほどのハイパーインフレに苦しんでいます。国連は、人口の1割近い300万人がすでに国外に脱出し、年内に500万人と予測しています。
 マドゥロ氏は前政権以来の失政と国民生活の過酷な実態を認めず、国連などによる国際人道支援の受け入れも拒否しています。政権批判を容赦なく弾圧し、国連の調査によると一昨年の120人以上の犠牲者のうち、判明しているだけでも半数以上は治安当局の弾圧と政府支持派の暴力によるものでした。
 移住者・難民の大規模な流出は近隣諸国の社会保障や治安、疫病の広がりの恐れなど多くの面で困難をもたらし、財政を圧迫しています。ベネズエラ危機は、ここに至って一層深刻な国際問題になっています。
■弾圧も軍事介入も許さず
・今後の情勢がどう展開するにせよ、マドゥロ政権は弾圧をただちに停止すべきです。
・トランプ米大統領は今回の事態について、「(ボーガス注:軍事介入を含む)すべての選択肢が机上にある」と述べました。一昨年8月にはベネズエラに対する「軍事介入の選択肢」を検討していると強調し、中南米諸国からいっせいに反発されました。
 国際社会が一致して求めているのは、ベネズエラ国民による平和的な解決です。外国の軍事介入は絶対に許されません。

ベネズエラ情勢で党・「赤旗」を誹謗中傷/文化放送に抗議・要請/党広報部申し入れ
 日本共産党の植木俊雄広報部長は7日、都内の文化放送本社を訪れ、同社のラジオ番組「おはよう寺ちゃん活動中」(4日朝放送)で、ベネズエラ情勢に関する党と「しんぶん赤旗」の立場について「事実とまったく違う誹謗中傷のコメントがそのまま放送され、リスナーに重大な誤解を与えている」ことに抗議し、是正措置を求めました。
 同番組では、コメンテーターの上念司氏(経済評論家)が、ベネズエラマドゥロ政権の人権抑圧状況を説明したうえで、「内政干渉はいけないとかいって、この人権弾圧をしているマドゥロ側を応援しているとも思えるような論調の新聞があるんです。『赤旗』、日本のね。共産党は人権を何だと思っているんだろうと思って、恐ろしいなと思いますね」と語り、そのまま放送されました。
 植木部長は、▽日本共産党が駐日ベネズエラ大使を通じ、マドゥロ政権に対して反政府デモへの弾圧停止と民主主義秩序の回復を要請してきた▽「しんぶん赤旗」が弾圧への国際的批判について繰り返し報じてきた▽1月30日付では、改めて弾圧停止、政府の正統性の確立と民主主義の回復を求める「主張」を掲載した―ことを挙げ、上念氏のコメントは「わが党の姿をまったく逆に描いたきわめて不当なものである」と指摘しました。
 植木氏は、同番組内で誤った報道の是正措置を講ずることと、ベネズエラ問題での党の立場を放送する機会を設けるよう強く要請しました。

 共産への誹謗以前に「ネトウヨの上念なんかコメンテーターに呼ぶなよ。上念のコメントが信用できるとか価値があるとか思ってるのか。安倍への忖度か」と聞きたくなります。
 なお、共産は軍事介入は否定していますが、これは我が国の安倍首相を含む、「ほとんどのベネズエラ・マドロ政権批判派」がそうです。

弾圧やめ人権と民主主義の回復を――ベネズエラ危機について│外交│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会
(1)
 日本共産党は、南米ベネズエラチャベス政権が発足当初、選挙をつうじて国民多数の支持を得ながら進めてきた変革のプロセスに肯定的に注目してきた。
 しかし、同政権および後継のマドゥロ政権の失政と変質のもとで状況が変化し、市民の政治的自由と生存権に関わる人権問題が深刻化している。人権の保障は、第二次世界大戦後の国際秩序のもとで、それ自体が国際問題としての性格をもつものとなっており、ベネズエラ問題は重大な国際問題となっている。
(2)
 わが党は、2017年5月、ベネズエラ政府に対し、抗議行動に対する抑圧的措置をただちに停止し、民主的秩序の回復のために責任ある措置をとるよう申し入れた。しかし、その後、事態は著しく悪化してきた。
 現在、大きな高まりを見せる抗議運動とそれを抑圧・弾圧するマドゥロ政権との間で緊迫した情勢が続いている。
 マドゥロ政権に対し、抗議運動に対する抑圧・弾圧をただちに停止するよう求める。極度に欠乏している食料品や医薬品を早急に提供すること、国連や国際赤十字など外部からの国際人道支援物資を拒否するのではなく、受け入れることを求める。
(3)
 現在のベネズエラの危機は、主要には、マドゥロ政権が、2015年の選挙で野党が多数派になった国会の権限を無効化し、批判勢力を暴力的に抑圧・弾圧し、2018年5月の大統領選挙で野党の有力候補を排除して、権力の維持をはかったことから引き起こされたものである。
 こうした経過にてらし、わが党は、マドゥロ政権を、ベネズエラ人民の意思にもとづく正統な政権とみなすことはできない。事態の根本的な解決には、大統領選挙のやり直しを含め民主主義を回復することが不可欠であると考える。
(4)
 ベネズエラの危機を解決するうえで、外部からの干渉・介入を許さず、ベネズエラ人民の自決権を擁護・尊重すること、暴力に訴えることなく問題を平和的に解決することが、きわめて重要である。
 日本共産党は、どの国によるものであれ、ベネズエラに対する外部からの干渉・介入にきびしく反対する。
 わけても軍事介入は深刻な犠牲と事態の悪化をもたらすものであり、絶対にあってはならない。トランプ米政権は、軍事介入を「選択肢の一つ」と繰り返しているが、そのような権利はどの国であれ与えられていない。
 わが党は、抗議運動を敵視し、マドゥロ政権への「連帯」を世界の運動に押し付ける動きにも、きびしく反対する。
 ベネズエラの危機は、ベネズエラ人民の手によって解決されるべきである。

ベネズエラのマドゥロ政権による人権侵害の資料
 日本共産党の緒方靖夫副委員長は2017年5月9日、都内のベネズエラ大使館を訪ね、セイコウ・イシカワ駐日大使を通じて同国政府と与党・統一社会主義党に日本共産党としての申し入れを行いました。申し入れの内容は以下の通りです。
『貴国では、食料や医薬品、日用品の欠乏による国民生活の窮乏化のもとで、国民の抗議行動が広がっており、政府側の抑圧的措置がとられるもとで犠牲者が多数出ていると伝えられています。在留邦人の間からも生活と安全への不安の声が上がっています。
 貴国で起きている問題は今年1月、中南米カリブ海諸国共同体*14(CELAC)第5回首脳会議の政治宣言が冒頭でその民主的解決を訴え、4月17日には中南米11カ国が共同声明で事態を憂慮し、問題の平和的解決を呼びかけるなど、国際問題になっています。
 この間起きているベネズエラの事態を強く懸念していることを表明します。抗議行動への抑圧的措置を直ちに停止し、事態の平和的、民主的解決をはかるとともに、民主的秩序の回復のために貴国政府と与党・統一社会主義党が責任ある措置をとられるよう求めます。』

ベネズエラ大使館を訪問/緒方氏 党声明を手渡す
 日本共産党の緒方靖夫副委員長は22日、松島良尚国際局員とともに都内のベネズエラ大使館を訪れ、21日に志位和夫委員長が発表した党声明「弾圧やめ人権と民主主義の回復を――ベネズエラ危機について」をセイコウ・イシカワ大使に伝え、本国と与党・統一社会主義*15に伝達するよう要請しました。
 大使は声明の内容について「非常に残念だ。ベネズエラの情勢については何度も説明してきたが、それが宙に浮いてしまったようで心が痛む。ただ、わが国のことを心配していただいていることには感謝している」と応じました。
 大使はまた、声明が米国の経済制裁にふれていないことは「信じられない」としつつ、現在の事態は米国による介入によって引き起こされたものだと強調しました。
 緒方氏は、米国の金融制裁が始まったのは2017年8月からで、危機はその数年前から起きていると指摘。貧困化・弾圧などの人権侵害と法の支配の崩壊についての国連文書を引用しつつ、現在の危機の主要な原因は政権による失政だと反論しました。

*1:著書『中国停滞の核心』(2014年、文春新書)、『巨龍の苦闘:中国、GDP世界一位の幻想』(2015年、角川新書)、『「米中経済戦争」の内実を読み解く』(2017年、PHP新書) など

*2:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*3:石の言う「側近グループ」が誰を指すのかは不明です。

*4:著書『もうひとつのチベット現代史:プンツォク=ワンギェルの夢と革命の生涯』(2006年、明石書店)、『チベット高原の片隅で』(2012年、連合出版

*5:いわゆるチベット解放後の1959年のダライは国王ではなく「元国王」あるいは「チベット自治区準備委員会主任委員」だと思います。

*6:事実か知りませんが。

*7:と断らないと「ボーガスは中国シンパだ」と言い出すMukkeやnoharraのような輩がいるからです。

*8:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官を経て首相

*9:安倍の発言が2/4、志位声明が2/21なので明らかに1ヶ月後ではありませんし、そもそも1/30に赤旗社説主張/ベネズエラ危機/国民多数の意思による政治をが「マドロ政権批判」をしてるのに阿部も良くもこんな文を書くもんです。共産支持者として阿部治平への怒りを禁じ得ません。

*10:国会議長、チャベス政権外相、副大統領を経て大統領

*11:共青団共産主義青年団)中央書記処第一書記、貴州省党委員会書記、チベット自治区党委員会書記などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*12:著書『天安門事件から「08憲章」へ』(2009年、藤原書店)、『「私には敵はいない」の思想』(2011年、藤原書店)、『最後の審判を生き延びて』(2011年、岩波書店)など

*13:第三次安倍内閣国家公安委員長を経て第四次安倍内閣外相

*14:加盟国はアメリカ合衆国とカナダを除くアメリカ大陸33カ国

*15:1997年に結成されたチャベス政権与党・第五共和国運動が2007年に発展的解消して結党