「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2019年6/18分:高世仁の巻)(追記あり)

香港デモ こんどは4人に1人が街頭へ - 高世仁の「諸悪莫作」日記

 香港では16日、なんと200万人が参加するデモがあった。香港人の4人に1人。
《香港の民主派団体は16日、「逃亡犯条例*1」改正案の完全撤回や林鄭月娥行政長官の辞任を求める大規模デモを実施した。主催者は200万人近くが参加したと発表した。前回9日の103万人を大幅に上回り、1997年の中国への返還以降で最大のデモとなった。林鄭氏は15日に改正を延期すると表明したものの撤回には応じず、市民の反発が強まった。林鄭氏は市民に陳謝したが、事態が収束するかは見通せない。(略)
 条例改正に反対するデモは4回目。中心部の道路が数時間にわたって大勢の人で埋め尽くされた。前回9日は主催者発表で103万人(警察発表は24万人)が参加し、政府は条例の改正延期に追い込まれた。今回、市民は完全撤回を求めて反発を強め、前週を上回る規模のデモとなった。計算上、香港市民の4人に1人以上が参加したことになる。警察発表では33万8000人だった。》(日経)

 高世には「やれやれ」ですね。こういうことを書くと中国シンパ扱いされそうで嫌なのですが「200万人」つうのは主催者発表に過ぎないわけです。
 警察発表でも数が増えてる(24万→33万)以上、数は増加はしてるのでしょう。
 とはいえ「200万人近くが参加」とは明らかに誇張でしょう。そうした「誇張された主催者発表」をもとに「4人に1人が参加」と見なすことは「運動の過大評価による運動の挫折や失敗」を生みかねない危険な行為だと俺は思います。

 民衆は9日のデモで条例改正の無期延期という譲歩を政府から勝ち取った。自分たちの力で政治を変えたという自信が、「延期」ではなく「撤回」をとさらに踏み込んだ目標に駆り立てたのだろう。

 こういうことを書くと中国シンパ扱いされそうで嫌なのですが「延期でええやん」と思いますけどね。「撤回」を叫んでもおそらく香港当局は撤回しないでしょう。そして「無期延期」とは「いつになっても出せない状況」が続くなら「事実上の撤回」と同じ訳です。
 一方で「撤回」を表明させたところでそれは「政治的効果」しかない。「法的に今後、再提案が不可能になる」つう話でもない。
 「事情が変わったから」「反対意見を受け入れて内容を大幅に変えたから」などの口実で再提出される可能性はあるわけです。
 行政長官辞任にしても「辞任の可能性は低い」でしょうし「辞任後、行政長官がいわゆる民主派寄りの人間になる」保証がなければ意味が乏しいでしょう(多分そんな保証はないのでしょうが)。
 むしろ「撤回」「行政長官辞任」を叫ぶと中国側が「延期で譲歩したのにどんだけ調子にのってる」「もう譲歩なんかせん」と反発して「強硬な態度(とはいえ第二の天安門とかさすがにそういうことはないでしょうが)」に打って出るリスクもあるわけです。
 正直「デモ参加者にとってどこが落としどころなのか?」「仮に撤回と行政長官辞任があればそこで沈静化するのか?」つう疑問は感じます。「一気に片をつける」つう気持ちは分からないでもないですが、「中国の反発を招く」そういうリスクを冒す必要が果たしてあるのか。ひとまずここは「大規模デモなどは控えて長期戦に持ち込む」つうことでもいいんじゃないか。
 まあ、「ここで片をつけないと巻き返される」つう恐怖感、危惧があるのかもしれませんが、それ「運動の将来について実は自信がない」つうことでしょうから手放しでは喜べない気がします。
 あるいは「特に指導部がなく、盛り上がったらそのままノーコントロールでつっ走る運動」なのか。これまたもしそうなら手放しでは喜べない気がします。

 わが国も戦後、言論の自由を奪ったうえで「お上」に従わせる以前の世の中を反省したはずである。

 「ドイツとは違い」、「はず」つうのは「残念ながら」建前に過ぎず「大多数の日本人」は反省してなかったんでしょうね。真に反省してたら、安倍みたいな戦前賛美右翼が首相になったり、ましてや長期政権などあり得ない(安倍批判派として実に腹立たしく情けないですが)。
 真に反省してたら南京事件否定論河野談話否定論を掲載する新聞(産経)や雑誌(正論)が堂々と販売などされてないでしょう。
 反省してないからこそ高世が言う「ドイツのような政治教育」もないわけです(まあドイツとてネオナチがいますので話はそんなに単純でもないのですが、それでも日本よりはマシでしょう)。
 それにしても高世には「救う会のような極右集団とつるんで恥じない奴がふざけんな」と思いますね。
 「俺たちの言うことに従え、従わない奴は北朝鮮シンパだ」なんて救う会の態度はおよそ民主的ではないでしょうに。
 救う会が家族会除名により「蓮池透氏を屈服させ、従わせようとしたこと」を黙認した高世が「政治的言論の自由が大事だ。そうしたことをドイツを模範にした政治教育で子どもたちに伝えられないか」などと言っても何の説得力もありません。高世は偉そうなことを抜かすなら、いい加減救う会や家族会の無法な行為(蓮池氏家族会除名など)を批判したらどうなのか。
 あるいは「政治的自由を教える教育の重要性」をこの記事で訴える高世は、救う会が「学校での拉致アニメ『めぐみ』上映運動」など露骨に教育介入してることをどう思うのか。
 それを高世が容認するのであれば「お前、嘘つきヤン」つう話です。高世のこのブログ記事での主張を徹底すれば「救う会が自らの政治的方針を教育現場に持ち込んでることは適切でない。それは特定の政治活動を生徒に押しつける反教育的な行為だ」「救う会を批判することも一つの考え方としてあり得ると教えることが適切な政治教育だ」という結論にしかならないはずです。


【追記その1】

【香港デモ】「逃亡犯条例」改訂が巻き起こした衝撃と市民の怒り - ふるまいよしこ (1/3)
 現行の同条例にははっきりと、「中央人民政府あるいは中華人民共和国のいかなるその他の地区の政府を除く」という一文があり、これによって香港から中国国内、及びマカオや台湾への逃亡犯引き渡しはできないことになっている。
 改訂草案提出のきっかけは、香港自らがその必要に迫られたからだった。というのも、すでに多くのメディアが報じている通り、2018年2月に台湾で起きた殺人事件に対応するためである。
 この事件は、当時カップルだった香港人男女が台湾に旅行に出かけ、そこで男性が女性を殺害したことから始まる。女性の死体を郊外に遺棄したその足で男性は飛行機に乗って香港に戻った。その後、被害女性の家族らの追及とその男性が女性の銀行カードを使って現金を引き出したことから、窃盗罪で逮捕された男性が女性の殺害を自供した。
 被害者と容疑者とも香港在住の香港人だが、事件が起こったのは台湾なので台湾で裁かれることになる。しかし、香港と台湾の間には前述の除外文によって逃亡者の引き渡しができない仕組みとなっていた。女性の家族は台湾政府にも法による処罰を訴えたが、香港から容疑者が引き渡されなければどうしようもない。このため、香港政府は、窃盗罪で現在服役中の男性容疑者が今年10月に刑期満了で釈放されるため、その前に台湾への引き渡しを可能にしようと、この法律の改訂を急いでいる。
 10月までまだ時間はあるが、それを急ぐのは香港側の都合もある。というのも、香港の最高議決機関の立法会が毎年6月30日にその年度会期を終え、休暇に入ることになっている。次年度会期は10月1日から始まるため、この6月中に可決、施行のめどが立たなければ、当該容疑者の釈放に間に合わないことになり、釈放された容疑者が中国など台湾との犯罪人引き渡し条約を結んでいないところに逃げ込んでしまう可能性がある。

 この「ふるまい氏*2の指摘」は重要ですね。もちろん「だから反対デモが間違ってる」とはいえません。反対デモは「それを口実に中国は政治犯弾圧を画策してる疑いがある」といってるわけですし、ふるまい氏個人はそうした指摘に賛同するようですし。
 とはいえ、「ならば、この10月に刑期満了する人間はどうするのか(逃げてしまってもいいのか)」つう問題は消えてなくなりません。
 ただただ「引き渡し条例反対」ではこの問題が完全に抜け落ちてしまいます。そこに対する配慮を反対デモはしてるのかつう疑問は感じます。「香港当局の案が悪いから反対したのだ、後のことは知らない」というのはあまりにも無責任すぎないか。


【追記その2】
香港の逃亡犯条例改正の「真の目的」 G20サミットを前に、習近平が失ったもの WEDGE Infinity(ウェッジ)
 野嶋*3もウエッジも「親台湾、反中国」のウヨライター、ウヨメディアなのでその主張は「林鄭月娥行政長官や習主席の権威が失墜した」云々と「中国に悪口雑言」であり、割り引く必要があるでしょう。それはともかく、野嶋が条例改正案の主目的を「政治犯潰しというよりは、習近平政権の進める汚職撲滅に対し、香港経由で逃げようとする腐敗高官をターゲットにしたものではないか?」と指摘している点が興味深いですね。
 なお、野嶋は「台湾で起きた殺人事件は改定の口実」云々としていますが問題は「口実かどうか」ではないでしょう。
 「台湾で起きた殺人事件の対応について現状で何ら問題ないのか」が問題であり、「問題がある」のなら、改定はしない場合でも何らかの対応が必要です。「改悪されなくてよかった(デモ隊の主張)」で済む話ではない。その当たりに野嶋が触れないでごまかすのはやはり「都合が悪いから」なのでしょう。

*1:こういうことを書くと中国シンパ扱いされそうで嫌なのですが、個人的には「政治犯処罰への悪用を恐れるのはわからんでもないけど、香港に中国本土から、マジの刑事犯罪者が逃げ込んだらどないするん?。少なくとも建前ではこの条例はそういう性格のもんやろ?」「少なくとも建前では日米犯罪人引渡条約とか一般的な犯罪者引き渡しと変わらへんやろ?」と疑問は感じます(あくまでも「建前では」ですが)。条例反対派的には「マジの犯罪者なら引き渡しはしませんが、中国政府の捜査資料を基に香港できちんと処罰します、だから引き渡し条例は不要です」つう話でしょうか?。あるいは「改憲には必ずしも反対しないが安倍改憲には反対だ」的な「まともな犯罪者引き渡し条例なら反対しないが、香港当局提出案はまともでないから反対だ(当面は引き渡さないで香港で処罰する。あるいは条例のような一般的な形で定めるのではなく、「手間が煩雑になるが」毎回、個別に引き渡すか引き渡さないか決める)」みたいな話なのか。何というか高世も「自称ジャーナリスト」ならそういう指摘もしてほしいですよね。つうか「記事や番組を見ないでこんなことを言っては本来いけない」のですが、多分ほとんどの日本メディアもそうした点には触れてないのでしょうね。【追記】これについては【香港デモ】「逃亡犯条例」改訂が巻き起こした衝撃と市民の怒り - ふるまいよしこ (1/3)を紹介した上でコメントしました。

*2:著書『中国メディア戦争』(2016年、NHK出版新書)など

*3:元朝日新聞台北市局長。著書『ふたつの故宮博物院』(2011年、新潮選書)、『ラスト・バタリオン:蒋介石と日本軍人たち』(2014年、講談社)、『認識・TAIWAN・電影:映画で知る台湾』(2015年、明石書店)、『故宮物語』(2016年、勉誠出版)、『台湾とは何か』(2016年、ちくま新書)、『タイワニーズ:故郷喪失者の物語』(2018年、小学館)など