「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2019年10/25分:荒木和博&高英起の巻)(追記あり)

金桂官及び金英哲談話と金正恩の金剛山現地指導|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ

・10月24日に朝鮮外務省の金桂官*1顧問が、そして同27日には朝鮮アジア太平洋平和委員会の金英哲*2委員長が朝米交渉に関する以下の談話を発表しました。
・両談話が立て続けに出された意味は、金桂官談話があくまでトランプの決断に期待を寄せる姿勢を強調した(「明」)のに対して、金英哲談話は朝鮮の忍耐には限界があることを強調している(「暗」)という違いにあります。
・そして、金英哲談話の最後の言葉「永遠の敵はいても、永遠の友はいない」は、すでに選挙ムードに突入しているトランプに対して、金正恩*3・トランプ関係の現状が続くと高をくくり、あぐらをかくことに最大限の警鐘を鳴らしたものと見るべきでしょう。
・私は、10月23日に金正恩委員長が金剛山観光地区の現地指導を行い、「容易く観光地を明け渡して何もせず利を得ようとした先任者らの間違った政策によって金剛山が10余年間放置されて傷が残った、土地が惜しい、国力が弱い時に他人に依存しようとした先任者らの依存政策が非常に間違っていた」と、「先任者ら」の「間違った政策」「依存政策」を厳しく批判するとともに、「今、金剛山がまるで北と南の共有物のように、北南関係の象徴、縮図のようになっており、北南関係が発展しなければ金剛山観光もできないようになっているが、これは確かに間違った事、間違った認識だ」と述べたこと(同日付朝鮮中央通信)にも大きな関心があります。
・うがち過ぎという批判を覚悟で私の印象を述べさせてください。金正恩委員長が言う「先任者ら」の中には父親である金正日*4が含まれていると見るべきでしょう(そのこと自体、私にとってある意味「驚天動地」の出来事です)。
 それは、両談話において内包されている金正恩・トランプ親交関係も絶対なものではないというメッセージに対応します。そして、金剛山に関わる南北協力関係に望みを託している(と私には見える)文在寅大統領に対して「これは確かに間違った事、間違った認識だ」と金正恩が述べたことは、金英哲談話のトランプに対する「永遠の敵はいても、永遠の友はいない」という遠慮会釈もない指摘に対応しています。
 もちろん、朝鮮がトランプ及び文在寅*5に対してそこまで「深読み」することを要求しているということではありません。しかし、朝鮮指導部の中では朝米及び北南関係のあり方に関してとことん突き詰めた検討が行われていると判断するのは最低限間違いないのではないでしょうか。金正恩委員長の金剛山現地指導に、朝鮮で対米・対韓業務を担当するチャン・グムチョル統一戦線部長に加え、崔善姫*6第1外務次官が同行した事実も到底無視することはできないことです。

1)「対話派」の浅井先生と「打倒北朝鮮」のウヨである荒木や高は価値観が大きく違う
2)「金正日が、金正恩発言で否定されてる」と断定調の荒木や高とは違い「北朝鮮素人なので深読みのしすぎと批判されるかもしれないし、間違ってるかもしれないが金正日も否定されてるのではないかと思う」とエクスキューズがある
という意味で違いはありますが、浅井先生も「これは金正日批判を含むのではないか」と言う見方をしていますので参考までに紹介しておきます。


韓「国」(自称)ならではの表層的分析;元帥様が将軍様を否定するはずもなく: 白頭の革命精神な日記
 金正恩が金正日を否定【調査会NEWS3106】(R01.10.25): 荒木和博BLOG愛人女優を「ズタズタにして処刑」した父親への金正恩の反感(高英起) - 個人 - Yahoo!ニュースの様な主張に対する批判記事です。
 要するに「仮に金正恩金剛山観光に否定的*7だとしても、それは少なくとも建前では金正日批判を意味しない」「中国が事実上、トウ小平以降の改革開放で毛沢東路線を否定しても、『毛の功績は7、罪過は3』『四人組の悪影響で誤って文革を発動した*8』『建国の父としての毛沢東は偉大』として毛沢東を公然とは否定しない、出来ないのと同じ」つう批判ですね。
 そもそも韓「国」(自称)ならではの表層的分析;元帥様が将軍様を否定するはずもなく: 白頭の革命精神な日記によれば

 今回の発言について「金総書記というよりも、対南政策に深く関与していた張成沢*9チャン・ソンテク)氏など、金正日政権当時の政策担当者を批判した」との解釈も出ている。東国大学の高有煥(コ・ユファン)教授は「金正恩氏は実務担当者を連れていったようなので、彼らの前任者という意味かもしれない」と指摘した。

と言う指摘もあるのにそうした指摘を「無知なので知らないのか」「都合が悪いので故意に無視したのか」はともかく、触れない辺りが荒木も高もダメダメです。
 韓「国」(自称)ならではの表層的分析;元帥様が将軍様を否定するはずもなく: 白頭の革命精神な日記の筆者は「高有煥(コ・ユファン)教授のような解釈は充分あり得る(金正日否定など考えがたいので)」としています)。賛同するにせよしないにせよ「自らの主張に反する主張」について反論するどころか触れもしないという荒木や高の主張は明らかにまともではありません。
 なお、私見では単に「金正日否定?」「金剛山観光否定?」とした荒木の方が高よりもまともでしょう。
 高に至っては何の根拠もないのに「愛人女優を「ズタズタにして処刑」した父親への金正恩の反感?」とまで決めつけていますから。
 そもそも高の言う「ズタズタにして処刑」、単なる噂話に過ぎず、断言できる話では全くないようですが。
 そもそもこの「ズタズタにして処刑」話、

 金正日氏はかつて、愛人だった女優*10が別の男性との間でスキャンダルを起こすや、父である故金日成主席に自分との関係が(ボーガス注:知られ、この不祥事を理由に後継者から外されるのを*11)恐れ、文字通り(ボーガス注:自動小銃で穴ぼこだらけにされ)ズタズタにして公開処刑されたと言われる。

という「相当に怪しい、うさんくさい話」です(「ウソ」と断定できる証拠など素人の俺にはないのでウソだとはもちろん言いませんが)。
 そもそも「父に知られたくない」のなら「粛清する」にしても、左遷ならともかく公開銃殺など全くの逆効果でしょう。
 かえって「なぜ公開銃殺などしたのか?」と父に「不祥事を気づかれる危険性」が増すだけでしょう。
 いやそもそも金日成の長男で、後継者最有力候補、当時もそれなりの地位にいたとは言え、高を信じれば「この不祥事がばれたら俺は父から疎まれるかもしれない」という恐怖感を感じる程度の地位でしかなかった当時の金正日に「公開銃殺」なんて画策できるのか、銃殺なんてもんは「もっと大きな権力の持ち主でないとできないと違うのか(つうか、そもそも公開銃殺となると原則、金日成の承認が必要でないといけないんじゃないか)」つう疑問を俺は感じますね。


金正恩が金正日を否定【調査会NEWS3106】(R01.10.25): 荒木和博BLOG
愛人女優を「ズタズタにして処刑」した父親への金正恩の反感(高英起) - 個人 - Yahoo!ニュース
 荒木や高の金正恩への悪口雑言はどうでもいいとして、正恩が「南北朝鮮関係」や「金剛山観光」についてどのような価値観で、どんな落としどころを考えてるのかは気になるところです。もちろん単に「韓国側への揺さぶり」と言う可能性もあるでしょう。

*1:第一外務次官を長く務めた。

*2:現在、朝鮮労働党副委員長

*3:北朝鮮国務委員長、朝鮮労働党委員長、朝鮮人民軍最高司令官

*4:北朝鮮国防委員長、朝鮮労働党総書記、朝鮮人民軍最高司令官

*5:盧武鉉政権大統領秘書室長、「共に民主党」代表を経て大統領

*6:6カ国協議次席代表、外務省北米局長などを経て第一外務次官

*7:勿論この点自体に議論の余地、争いの余地があるでしょうが

*8:この「毛擁護」のように今回の件は「張成沢の悪影響で誤って金正日同志は金剛山開発に深入りした」と言う論理なのかもしれません。

*9:金日成国家主席朝鮮労働党総書記兼務)の娘、金正日・国防委員長(朝鮮労働党総書記兼務)の妹に当たる金敬姫を妻とし、金正日の側近を務めた。しかし2013年12月に失脚し、国家転覆罪で死刑となった(失脚当時は北朝鮮国防副委員長、朝鮮労働党行政部長)(ウィキペディア張成沢」参照)。

*10:高の別記事機関銃でズタズタに…金正日氏に「口封じ」で殺された美人女優の悲劇 | デイリーNKジャパンによれば禹仁姫(ウ・イニ)と言う女性

*11:前後の文脈で分かりますが高も自称ジャーナリストならまともな日本語で書いてほしいもんです。