黒井文太郎に突っ込む(2020年2月5日分)(追記あり)

黒井文太郎*1
 対クルドエルドアン*2は酷い仕打ちをしてきたわけですが、イドリブの人々の命を守る為にはトルコ軍に踏ん張ってもらうしかありません。
 人々の殺戮しかしないアサド軍をなんとか押し戻し、できればそのまま駐留してセーフゾーン化してほしい

 黒井もついに「悪い意味」で「行き着くところまで行き着いた」感がありますね。
 エルドアンが正義の味方でも何でもないこと、独裁体質であることを考えれば
1)エルドアンがどこまでアサド軍とバトルするか疑問(適当なところで手打ちの可能性大)
2)仮にエルドアンがアサド軍に勝利したとしてもそれが「民衆(特にエルドアンが敵視するクルド)」にとって「アサド勝利よりも利益か」疑問
ですが「何よりも大事なことはアサド打倒」の反アサドの黒井にとっては「欧米がアサド打倒を事実上諦めた」今、もはや「独裁だろうがクルド差別者だろうがかまわない。アサドと戦う限り、俺はエルドアンを支持する」というところに行き着いたわけです。
 ただしエルドアンが正義の味方でも何でもないので「黒井の期待を裏切る可能性」は当然ありますし、そうなれば
1)エルドアン万歳をなかったことにして黙りか
2)掌返しでエルドアン罵倒、でしょうが。

【追記】

・常岡浩介がリツイート
◆桜木武史
@takeshisakuragi
 非常に分かりやすくイドリブ県の現状を分析しています。追い詰められているのはトルコであり、優勢に事を進めているのはアサド政権、また前者には積極的に支援する味方はおらず、後者にはロシアとイランが付いている。トルコの恫喝に効果は期待できないでしょう。
再び緊張高まるシリア情勢 世界が注目するロシアとトルコの動きを解説:朝日新聞GLOBE+

 そもそもトルコは「自国の国益のために動いており正義の味方でも何でもない」と言う意味でも過大な評価は馬鹿げています。


トルコとシリアの軍事衝突(?)|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ
 エルドアンを正義の味方であるかのように描く黒井に対する批判となっているのが浅井論文です。
 浅井氏に寄れば「シリア・アサド軍の反体制派攻撃」については「エルドアンも了承していた」。
 ただしその前提条件としては「反体制派に加わっている親トルコ軍事勢力をエルドアンが引き取る」。
 つまり
 トルコ「反体制派を攻撃してもええが、その前に親トルコ軍事勢力が反体制派から離脱してトルコに亡命することを認めてくれ」
 シリアやシリアを支援するロシア「わかった」
つう話だったわけです。
 ところが、何故かいつまで経っても、親トルコ軍事勢力が反体制派から離脱しない。
 しびれを切らしたシリアがついに反体制派攻撃に打って出たと言う話です。これでエルドアンを正義の味方であるかのように描き出す黒井はおかしいでしょう。
 さて浅井先生は「シリア&ロシア」も「トルコ」も「お互い全面戦争は希望してないだろう(つまり黒井の希望など叶わない)」としています。つまり「適当なところで手打ちになる」ということです。
 欧米から制裁食らってるロシアは勿論、トルコの方も「クルド問題」「独裁色を強めるエルドアンの政治手法」では欧米の批判をあびています。お互い、全面戦争して体力を疲弊している余裕などないわけです。
 そんな体力はお互いにない。そこで適当なところで手打ちになるわけです。

*1:著書『世界のテロリスト』(2002年、講談社+α文庫)、『北朝鮮に備える軍事学』(2006年、講談社+α新書)、『日本の情報機関』(2007年、講談社+α新書)、『ビンラディン抹殺指令』(2011年、洋泉社新書y)、『イスラム国の正体』(2014年、ベスト新書)、『イスラム国「世界同時テロ」』(2016年、ベスト新書)など

*2:イスタンブル市長、首相を経て大統領