今日の産経ニュース(2020年3月28日分)

【産経抄】3月28日 - 産経ニュース

 新型コロナウイルス克服後の世界情勢は、これまでとは一変していることだろう。
「中国のメッキがはがれたのは大きい。しかも被害は、自分たちにも及ぶのだと欧州諸国も理解した」。
 外務省幹部が指摘するように、中国の経済力に目がくらんでいた各国は、その危うさを思い知ったはずである。

 まあ産経らしい馬鹿馬鹿しさですね。
 「メッキがはげた」とは何なのか。中国の防疫体制に不備があることか。
 しかしそんなことは欧州諸国にとっての「貿易相手国としての中国の重要性」には全く関係ないわけです。そう言う意味では世界情勢は何ら変わらない。
 かつ防疫体制に問題があるというなら、例えば欧州諸国はどうなのか(典型的にはコロナ蔓延が特に深刻なイタリア)。
 中国に何の責任もないとは言いませんが、世界各地での新型コロナ蔓延を「中国だけのせい」にすることは明らかに無理があります。
 そして、むしろ、「新型コロナの世界情勢への影響」というなら、TBSラジオ森本毅郎スタンバイ!」でコメンテーターの伊藤芳明氏も危惧していましたが、「EUの地位低下」が危惧されるでしょう。
 英国のEU離脱のように、今、欧州諸国では難民や移民への反発からEU懐疑論、消極論が強まっています。
 現在実施されている「新型コロナ対策による欧州各国の一時的な国境封鎖措置」がEUに否定的な右派政党によって「EUが国境の壁をなくしたことが新型コロナ蔓延を助長した」「新型コロナ蔓延は我々のEU批判の正しさを証明した」「今の措置は一時的な物にとどめず、新型コロナ収束後も続けるべきだ」と言うEU否定の方向に向かう危険性が全くないとは言えない。

 G7*1で初めて中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に加わるなど関係の深いイタリアで、8千人以上が亡くなる感染爆発が起きているのは偶然とはいえまい。

 おいおいですね。関係があるという根拠は何なのか。そもそも「感染があっても治療体制がしっかりしていれば死者はそんなには増えない」でしょう。死者がやたら多いと言うことは、むしろイタリアの医療体制の問題ではないのか。
 そもそも欧州諸国の中に「中国と深い貿易関係がない国」なんかどこにもありません(ちなみにAIIBに最も早く参加を表明したG7の国は英国。フランスもエアバスを中国に大量購入してもらっている)。
 新型コロナという悲劇を中国叩きに使うことしか考えてないらしい産経にはいつもながら呆れます。

【参考:EU地位低下の危機】

イタリア支援でEUにくさびを打ち込んだ中国 | コロナショックの大波紋 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
・感染者の爆発的拡大に対応が追いつかず、いわゆる医療崩壊の状態に陥っているイタリアでは、マスクを筆頭とする医療物資支援をEUに求めてきた。しかし、イタリア当局者から「EUのどの国も応じてくれなかった(マッサーリ駐EU大使)」との不満が漏れるように、混乱のさなかでEUは連帯感を示すには至っていない。逆にフランスやドイツが国外へのマスク輸出を抑止する政策を行って、これをフォンデアライエン*2欧州委員長が「一方的な行動は良くない」といさめる体たらくである。
 こうした状況でイタリアに支援を提供したのが中国であり、3月12日には約30トンの医療物資に加え、医療チームも到着したことが伝えられている。これを受けたディマイオ伊外相による「これが連帯というもの」という中国への称賛はいうまでもなくEUへの当てつけだ。
・一連の中国からの支援に対して、上述したディマイオ伊外相の発言のほか、ブチッチ*3セルビア大統領からも「欧州の連帯など存在しない。おとぎ話だった」、「われわれを助けられるのは中国だけ」といった発言が見られる。
・ちなみに、このブチッチ大統領の発言は3月15日、EUがマスクやゴーグル、防護服などの医療用品に関してEU域外への輸出制限を決め、域内医療機関における必要分を確保・備蓄する動きを批判したものであった。
・中国による一連の人道支援を欧州の為政者たちはどのような目で見つめているのだろうか。ポストコロナの欧州・中国関係を変化させる興味深いことが起きているように思える。

*1:米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本

*2:ドイツキリスト教民主同盟(CDU)副党首、メルケル内閣労働相、国防相などを経て欧州委員長

*3:防相、首相などを経て大統領