高世仁に突っ込む(2020年9/27日分)(追記あり)

シリアは今も叫んでいる - 高世仁の「諸悪莫作」日記

 悲惨なのは、若者が家族を支えるために兵士になり、そう仕向けているのがシリア、リビアの紛争に介入するトルコやロシアなのだ。
 シリアでは、トルコは反政府勢力を、ロシアはアサド政権を支援し、リビアではトルコが暫定政府軍を、ロシアが反政府軍事組織「リビア国民軍」(LNA)を支援する。どちらの地域でも対決する構図だ。

 としか書かない高世ですが何もシリア、リビアの紛争に介入しているのはこの両国だけではありません。
 新刊紹介:「経済」10月号 - bogus-simotukareのブログで触れましたがリビア内戦では国連に加盟している暫定政府(ムスリム同胞団系列)を「トルコやカタール、イタリア(リビアは昔はイタリアの植民地だった)」などが、ハフタル将軍率いる反政府勢力「リビア国民軍」(LNA)を「ロシア、エジプト、UAEアラブ首長国連邦)、フランス」などが支援していると言われます。
 ロシアの場合チェチェン紛争イスラムテロリストを叩いていますし、エジプトは国内でムスリム同胞団を弾圧していますので、そう言う思惑でのリビア反政府派支援でもあるでしょう。一報、トルコはイスラム色の強い政権であるわけです(勿論、そう言う話だけでは無く経済的利権もあるでしょうが)。
 シリア内戦では国連に加盟しているアサド政権を「ロシア、イラン」などが、反政府勢力を「トルコ、サウジ、カタールUAEアラブ首長国連邦)」などが支援していると言われます。
 小生が意外だったのは新刊紹介:「経済」10月号 - bogus-simotukareのブログでも触れましたが、リビア内戦において、「ロシアが支援する反政府勢力(ハフタル将軍一派)」を「経済的利益からフランスも支援しているらしいこと」ですね(NATO加盟国のほとんどが暫定政府を支援している上、反政府派支援国にEUの制裁を受けるロシアが入っているため、フランスは、NATO諸国、EU諸国との友好関係に配慮し、反政府派支援の事実を建前では否定しているが状況証拠から「フランスの反政府派支援は間違いなく事実」と見なされている)。
 高世の記事だけを読んでると「フランス=人権大国」みたいに思えますが話はそんなに単純では無いわけです。新刊紹介:「経済」10月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した月刊『経済』2020年10月号やニューズウィーク日本版記事などを読むとその辺りの複雑さがある程度分かる。
 高世がそうした複雑な事実を知らないのなら無知だし、知っていて無視してるのなら不誠実です。どっちにしろ高世の行為は「シリア、リビア紛争の悪しき単純化」であり非常に問題です。高世のような「無能or不誠実な」自称ジャーナリストがジンネットを倒産させて社会的影響力を大きく失ったことは「非常に良いことだった」と改めて書いておきます。
 できれば高世はジャーナリスト面して活動などせずに、とっとと郷里の山形にでも隠居して欲しいもんです。というとおそらく高世はマジギレでしょうが。

【追記】
 ちなみにトルコとロシアの対立というと高世が指摘する「シリア内戦(ロシアがアサド政権支援、トルコが反政府派支援)」「リビア内戦(トルコが暫定政権支援、ロシアが反政府派支援)」のほかに「アルメニアアゼルバイジャン紛争(ロシアがアルメニアを、トルコがアゼルバイジャンを支援)」がありますね。
 「トルコとロシアの対立」が「アゼルバイジャンアルメニア、シリア、リビア」という「4つの国、地域」に大きな影響を与えているわけです(シリア内戦、リビア内戦にはロシア、トルコ以外も介入していますが)。 

アゼルバイジャンとアルメニア、紛争地めぐり大規模衝突 複数が死傷 - 産経ニュース
 南カフカス地方の旧ソ連構成国アゼルバイジャンアルメニアの双方が領有を主張する紛争地アゼルバイジャン西部ナゴルノカラバフ自治州で27日、大規模な戦闘が発生した。民間人を含む複数の死傷者が出ているもよう。
 イタル・タス通信などによると、両国は「相手が先に攻撃をしてきた」と主張。
 アゼルバイジャンの友好国であるトルコは同国への支援を表明し、アルメニアを非難。一方、アルメニアの後ろ盾で、アゼルバイジャンにも影響力を持つロシアは双方に自制を求めた。欧州連合(EU)のミシェル*1大統領も即時停戦を要求した。
 ナゴルノカラバフ自治州ではソ連末期、多数派のアルメニア系住民がアルメニアへの帰属変更を求めてアゼルバイジャンと対立し、両国で数万人が死亡する紛争に発展。ロシアの軍事支援を受けたアルメニア側が自治州の実効支配を確立した状態で1994年に停戦となった。停戦後も衝突が散発し、2016年4月には少なくとも計数十人が死亡する衝突が発生した。

ということで停戦状態にあったアルメニアアゼルバイジャンで軍事衝突があったようです。
 ちなみにトルコ側の言い分。

【アルメニアがアゼルバイジャンを攻撃】 トルコ外務省報道官が非難声明 | TRT 日本語
 アゼルバイジャン国防省からの発表によると、アルメニア軍が9月27日の6時頃、前線地帯で、大規模挑発行為を起こし、アゼルバイジャン軍の駐屯地や民間人の居住地区を、大口径の武器、大砲、迫撃砲で攻撃した。
 この攻撃に対し、トルコ共和国外務省のハミ・アクソイ報道官が、声明文を発表した。
 国際法を明らかに違反し、民間人の犠牲者も出したアルメニアの攻撃を強く非難することが表明された声明文で、アルメニアは地域の平和と安定の前に立ちはだかる最も大きな障害であることを改めて示したことが強く指摘された。
 アゼルバイジャンは国民と領土の完全性を守るために、必ず正当な自衛権を行使することが告げられた声明文で、「この攻撃下におけるトルコのアゼルバイジャンへの支援は、ひとつの心であり、完全である。アゼルバイジャンが望むように、アゼルバイジャンと共にいる。国際社会にも正しい側に留まるよう呼びかける。この声明文を通じて、殉国したアゼルバイジャンの同胞にアッラーの加護を、負傷したアゼルバイジャンの同胞に一刻も早い快復を、我が心アゼルバイジャンに哀悼の意を表す」と述べられた。

 「全てアルメニアが悪い」という見解が表明されています。恐らくロシア側は逆に「全てアゼルバイジャンが悪い」なのでしょうがググった限りではよくわかりません。

*1:ベルギーでワーブル市長、開発協力大臣、首相などを経てEU大統領