今日の中国ニュース(2021年2月14日分)(追記あり)

中国リベラル知識人の「親トランプ化」とその後遺症 | ふらっと東アジア | 米村耕一 | 毎日新聞「政治プレミア」

 清華大学社会学者、郭于華氏は、2018年6月にツイッター上で「西側(諸国)の左派も、中国の左派*1もトランプをチンピラ扱いするが、実のところトランプを批判し、戯画化する彼らこそがチンピラだ」と書き込み、その後も継続して強いトランプ氏支持の姿勢を見せた。
 また、同じくリベラル派と目される清華大学社会学者、孫立平氏は2019年5月のエッセーで、トランプ氏の政治手法を「改革開放初期の思想開放運動に似ている」と評価し、「妄言の連続」と言われるトランプ氏の発言が、「米国をより若く活力ある社会へと変えていく可能性がある」と称賛した。

 面白い記事だと思うので紹介しておきます。中国政府に批判的な「中国国内の一部のリベラル派知識人*2」が「敵(中国)の敵(トランプ)は味方」という党利党略で「トランプ礼賛*3」をして「アホか?」「トランプ批判派を中国シンパ扱いかよ!」「お前ら人権擁護派、民主主義擁護派、自由主義じゃなかったのか!、トランプのどこがそれに該当するんだ?。BLM運動を暴徒扱いするトランプはむしろ香港デモを暴徒扱いする中国中央政府に似てるんじゃ無いのか?」などと国内外の反発食らってるという話です。
 まあ、ダライ・ラマ一派やペマ・ギャルポ、楊海英などが党利党略で日本ウヨ(高須クリニック、国基研理事長・桜井よしこなど)とつるんでるようなもんです。米村耕一*4毎日新聞中国総局長が、嘆き批判するように道義的是非は勿論、戦術としても最悪でしょう。ダライらがウヨとつるんだことで「日本のリベラル派や左派がダライらに距離を置いたこと」と同じ事(中国リベラル派に距離を置くこと、少なくともトランプ礼賛したリベラル派に距離を置くこと)が確実に「中国国内で」あるいは「欧米で」起こるでしょう。
 特に「トランプ敗北でバイデン大統領」の今は「お前ら、過去のトランプ礼賛をどうするの?」つう話です。まさか居直り続けはしないでしょうが、「過去のトランプ礼賛」を全て無かったことにして黙りで、ろくに謝罪もしないのでは「ふざけんな、手前!」「表舞台から消えろ!」つう話にしかなりません。いずれにせよ「あるべき道理」を無視した「敵の敵は味方」という「短絡的な考え」は長期的には害悪しかないでしょう。


【新聞に喝!】米国は本当に尖閣を守るのか インド太平洋問題研究所理事長・簑原俊洋 - 産経ニュース
 「本当に尖閣を守るのか?」以前に米国、中国、日本どこも「尖閣で戦闘などやりたくない」でしょう。
 それは当然ながらどこの国においても「何故そのような戦争になったのか!」という批判を国内外から招いて政権維持が危なくなりかねないからです。
 特に米国なんて尖閣問題の当事者じゃない。そんな当事者でないことに「米兵の命を犠牲にすること」には米国内の批判は免れないでしょう。
 そして日本から戦闘が始まるにせよ、中国から戦闘が始まるにせよ、国内外から「何故そんな戦闘が起こることを事前に阻止できなかったのか。米国政府は無能である」のそしりを免れません。
 結果「そんな戦闘が起こったらただでおかない(経済制裁などあらゆる手段で対決する)」と日中両国に事前に牽制、警告することになります。
 一方でそんな牽制、警告を無視して戦闘を行えば日本であれ、中国であれ、米国との関係は悪化するし、国際的批判も免れないでしょう。つまりは日中両国政府に常識があればそんな戦闘は起こりえないのであり、よほど「日本ないし中国政府」を「野蛮で無法で常識外れ」と想定しない限りそんな戦闘は起こりようがない。


【主張】中国の海警法 国際法違反は看過できぬ - 産経ニュース

 中国海警局(海警)の権限を定めた海警法が施行された。
 これにより、中国政府が、中央軍事委員会傘下の「第二海軍」としての海警に、法執行機関の行動であるかのように偽らせて尖閣諸島沖縄県)や南シナ海の島々を奪い取る恐れが高まった。
 自衛隊の早期展開の意思と態勢を整えることが急務である。

 馬鹿馬鹿しくて話になりませんね。海警法の政治的、法的是非はともかく、これで「中国が尖閣南沙諸島を軍事力で奪取する」と思う人間はまず居ないでしょう。産経ですら本心では無く「故意のデマ垂れ流し」でしょう。
 結局「赤字部分(自衛隊の軍拡)」を正当化するための強弁でしかない(そうした強弁を助長したという意味で海警法制定は「政治的に愚策」と評価できるかもしれませんがそれはひとまずおきます)。
 そんなことをした場合の「デメリット(国際的非難、場合によっては欧米の制裁もあり得るし、東南アジア諸国や日本との関係は確実に悪化)」と「メリット(尖閣南沙諸島周辺の漁場や地下埋蔵資源)」を考えたら明らかにデメリットの方が大きいからです。
 漁業なんて今時大した利権じゃない。石油や天然ガスといった地下埋蔵資源について言えば現時点では「可能性の話」でしかありません。どれだけあるかわからないし、当然商業的にペイするかも分からない。そんな話で軍事侵攻なんか誰もしない。
 大体そんなことをしたら今まで準備してきた「習主席の国賓訪問」が完全にぽしゃってしまう。
 海警法は「政治的アピールにすぎない」と見るべきでしょう。

【追記】
 俺と同様の指摘を見つけましたので紹介しておきます。詳しくはリンク先をご覧下さい。
 海峡両岸論 第123号 2021.02.15発行 - 海警法で「尖閣奪われる」は曲解 「ダブスタ」で中国をみる曇った目 - | ちきゅう座

 なお、「海警法は武力行使ガー」というが武力行使なら「条件付きだが」海保だって認められてる。その意味では、海警法のような法律は「普通の法律」であるし、実際、海保には北朝鮮の不審船を機関銃で撃沈したこともある。一方、中国側はそんなことは一度もしてない。海保の方が余程「軍事的脅威」ではないのか(俺の要約であって原文の引用ではありません)

という趣旨の指摘には「なるほど」と思います。

*1:西側の左派とは「もちろん左派もいますが、バイデンなどのリベラル派」で一方、中国の左派とは「中国共産党指導部」です。「日本共産党中国共産党」を「どっちも共産党を自称」として一緒くたにするような無茶苦茶な話です。「西側の左派」は別に中国共産党シンパではない。

*2:さすがに「全て」ではないが、『あんな奴らは少数派だからどうでもいい』として無視できない程度にはいる、つまり『現在の日本左翼世界での革マル派中核派』のような泡沫勢力ではないというのが米村氏の認識であり、だからこそこうして批判記事にしたわけです。

*3:とはいえトランプが「対中国制裁関税」「中国企業ファーウェイの欧米市場からの排除を画策」「新型コロナについて武漢ウイルス呼ばわりしたあげく、米国での蔓延について中国に全面的に責任転嫁」「ウイグル統治をジェノサイド呼ばわり」など、無茶苦茶な反中国路線に打って出たのは割と最近のことであって、大統領就任当初はそんなことは無く、彼の反中国は明らかに信念に基づいた物では無く「その場、その場の受け狙い」でしかありませんが。

*4:著書『北朝鮮・絶対秘密文書』(2015年、新潮新書