新刊紹介:「経済」2021年7月号

「経済」7月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
世界と日本
◆米バイデン政権施政方針(西村央)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。
ポイントとしては
・国内問題では「没落した中間層の復興(格差是正)」を打ち出し、累進課税の強化などを主張。またトランプ政権下で悪化した民族対立を是正するとし、民族融和を打ち出している。
・国際問題では「温暖化防止協定への復帰」を宣言。「NATO諸国」「G7諸国」を中心に「国際協調」を打ち出している反面、中露を敵視する路線はトランプ政権とほとんど変わらず。特に中台問題を理由に日本に「九条改憲などを要求する圧力」を強めることが危惧される
といったところでしょう。「トランプよりはマジだが手放しで評価できない」と言った評価になります。

米バイデン大統領 施政方針演説「アメリカは再び動きだした」 | 米 バイデン大統領 | NHKニュース 
 「中間層がこの国を築いた」と述べて労働者層を重視する姿勢を強調し、雇用の創出に向けた巨額のインフラ投資や子育て世帯などを支援する大規模な予算計画を示して実現への理解を求めました。
 また外交・安全保障政策では「テロ、核拡散、移民問題、サイバーセキュリティー、気候変動、そしてパンデミックなど、現代のあらゆる危機に1国だけで対処することはできない」と述べて、同盟関係と国際協調を重視する姿勢を鮮明にしました。
 そして、最も重大な競合国と位置づける中国については「習近平国家主席は真剣に中国を世界で最も重要で影響力のある国にしようとしている」と警戒感をあらわにしたうえで「アメリカの労働者や産業を弱体化させる不公正な貿易慣行に立ち向かう。私は習主席に、インド太平洋においても紛争を防ぐために強力な軍事的プレゼンスを維持することを伝えた」と述べ、経済や安全保障の分野で対抗していく考えを示しました。
 北朝鮮については、「アメリカと世界の安全保障に深刻な脅威をもたらすイランと北朝鮮の核開発については、同盟国と緊密に連携し、外交と抑止力によって両国の脅威に対処する」と述べました。

赤旗企業・富裕層に公正負担要求/米バイデン大統領初の施政方針演説/社会福祉・教育拡充へ
 新たな家族計画には▽3、4歳児保育の無償化▽中低所得家庭の育児費負担軽減と保育士賃上げ▽子育て・介護での12週間の有給休暇保障▽コミュニティカレッジ(2年制公立大学)の学費無償化▽低所得家庭児童への食事補助▽子育て世帯への税額控除の拡充―など、中・低所得層や子育て世代に手厚い施策が盛り込まれています。
 一方、トランプ前政権時に下げられた個人所得税最高税率を37%から39・6%に戻し、年収100万ドル(約1億1000万円)以上の世帯の株式等譲渡益(キャピタルゲイン)課税率を2倍の39・6%に引き上げ。富裕層・企業の「税逃れ」調査厳格化と合わせ10年間で1兆5000億ドルの財源を確保します。
 バイデン氏は「中間層の税負担を増やすつもりはない。彼らはすでに十分に払っている」「最近の研究によると、米国の上位55の大企業が昨年支払った連邦税はゼロだ。400億ドル以上利益があったのにゼロだ」「米国の企業と米国民の1%にあたる最富裕層が公正な納税を始める時だ」と主張しました。
 外交では、対中関係について「競争は歓迎し紛争は模索しない」が、「海外においても米国の国益を守る」と表明。香港や新疆ウイグル自治区などの問題でも厳格な対応をすることを示唆するなど、中国に厳しい姿勢でのぞむ方針を改めて示しました。


◆韓国のSPCグループ(洪相鉉)
 韓国大企業SPCグループ(韓国でパリバゲット、パリクロワッサン、ダンキンドーナツなどを展開する食品企業)による労組への攻撃が批判されている。

参考

韓国:SPCグループ、複数労組を利用して「民主労総から脱退しろ」
 SPCグループ内で複数労組制度を悪用して 労働組合を弾圧したという証言が続いた。
 3月30日午後に国会で開かれた 「複数労組制度を悪用したSPCグループの労働組合弾圧事例と争点」討論会では、 パリバゲットダンキンドーナツ、SPL事業場の労組関係者が出てきて 労組弾圧の事例を直接証言した。 正義党の姜恩美(カン・ウンミ)国会議員が主催して全国化学繊維食品産業労働組合(化繊労組)が主幹する討論会だった。


特集「SDGsが問うもの」
SDGsとは何か(真嶋麻子*1
(内容紹介)
 「SDGsエスディージーズ:持続可能な開発目標:2015年の国連総会で採択)とは何か」について簡単な説明がされていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。「SDGs」でググれば持続可能な開発目標 - WikipediaSDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省SDGsってなんだろう? | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)など色々ヒットしますのでそれを見て頂ければと思います。
 ググれば分かりますが、昨今は

【刊行年順(刊行年が同じ場合は著者名順)】
◆村上芽*2、渡辺珠子*3SDGs入門』(2019年、日経文庫)
池上彰監修『世界がぐっと近くなる SDGsとボクらをつなぐ本』(2020年、学研プラス)
◆稲場雅紀*4、南博*5SDGs:危機の時代の羅針盤』(2020年、岩波新書)
◆蟹江憲史*6SDGs:持続可能な開発目標』(2020年、中公新書)
たかまつなな*7『お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs』(2020年、くもん出版
高橋進生物多様性を問いなおす:世界・自然・未来との共生とSDGs』(2021年、ちくま新書)
◆高橋真樹*8『日本のSDGs:それってほんとにサステナブル?』(2021年、大月書店)

ということで出版界においてもまさに「ある種のSDGsブーム」といっていいでしょう。何せあの「流行り物には何でも飛びつく」池上彰も本を出していますし、「複数の新書(岩波、ちくま、中公)」から本が出るテーマというのはそうはないでしょう。菅が宣伝している「カーボンニュートラル」つうのも「菅なりのSDGs対応のワンオブゼム」のわけです(菅流カーボンニュートラルの是非については、俺の無能のため、ここでは別に論じません)。
 さてSDGsで重要な点の一つは「SDGsは2015年に突如出来た物ではなく」、いわゆる「前史がある」ということですね。
 どこから前史とみるかは色々見方がありますが、1972年6月のローマクラブの成長の限界 - Wikipedia発表からカウントが一般的なようです。で前史ですが

【前史】
◆1972年6月(当時は佐藤内閣)
 ローマクラブの『成長の限界』発表
◆1987年(当時は中曽根内閣)
 いわゆる国連ブルントラント*9委員会報告書の発表。報告書は『地球の未来を守るために』の表題で1987年に福武書店から邦訳が出版。
◆2000年(当時は森内閣
 いわゆる国連MDGsミレニアム開発目標 - Wikipedia
 2015年までの達成目標。
◆2015年(当時は第三次安倍内閣
 MDGsを引き継ぐ形でSDGsを採択

などとなります。
 で「1988年に宇野外相、梶山国家公安委員長答弁を引き出した橋本敦質問(例えば1988年3月26日/参議院予算委員会での橋本敦議員の質問(抜粋))があったのに世間は1997年の安明進証言まで日本では世間はろくに拉致のことなど騒がなかった、何だかなあ」的なことを真嶋氏も、他の諸氏も言っておられます(安の証言についてはたとえばけっきょく「横田めぐみ拉致問題における安明進証言」などというものにのっかったのが、高世仁が会社をこかした淵源(の少なくとも1つ)ではないか - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)参照)。
 「SDGsの指摘するようなことは1972年のローマクラブの時*10から専門家は言ってる。その後も1987年のブルントラント報告*11とか、2000年のMDGs*12とかあるのに日本の政治家や一般人が無視してきただけやないか。大体SDGSだって2015年の成立当初*13は大して騒がれてなかったのに今頃ブーム*14とか何やの。底の浅いブームと違うの?。すぐに風化する危険が無いか?」と。
 まあ、拉致問題の「小泉訪朝(2002年)直後の過熱ぶり」と「今の風化(高世のジンネットはついに倒産など)」を考えると「SDGsが一過性のブームに終わらないか」という危惧は当然でしょう。何せSDGsのテーマである環境保護というのは非常な難問ですしね。


◆企業・経済の変革とSDGs(小栗崇資*15
(内容紹介)
 SDGsをどう「企業や経済の変革につなげていくか」について筆者の考えが述べられていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
 なお、SDGs(国連での決定事項)の弱点として「最大公約数であること」を筆者は指摘しています。例えば最大公約数であるが故に「脱原発派」からは「持続可能な開発」の為に必要と主張される「脱原発」についてはSDGsは(国連の加盟国内に米国や日本といった原発推進国があるが故に)明確な方針を打ち出していません。


◆グローバル・サプライチェーンとディーセント・ワーク(長田華子*16
(内容紹介)
 ディーセントワークは一般に「人間らしい労働(低賃金、長時間、生命の危険などの問題が無い労働)」と訳されています。一方、グローバル・サプライチェーンとは「グローバルな(地球規模の)供給網」と言う意味です。
 つまりは日本や欧米が「賃金の安い発展途上国(例えばバングラデシュ)で製造を委託すること=グローバル・サプライチェーン」と考えればいいでしょう。
 『バングラデシュの工業化とジェンダー:日系縫製企業の国際移転』(2014年、御茶の水書房)、『990円のジーンズがつくられるのはなぜ?:ファストファッションの工場で起こっていること』(2016年、合同出版)の著書を持ち長年「バングラデシュ縫製企業での労働問題」を論じてきた筆者は「グローバルサプライチェーン」が現実問題として「低賃金・長時間労働」を発展途上国(例えばバングラデシュ)に強要し、その国の「ディーセントワーク」を阻害していることを批判し、「そうした問題の解決にSDGsが何が出来るかが問われている」としています。
 例えば中国は「事実無根」と反論していますが、「欧米から疑惑が指摘される、新疆ウイグルでの綿花産業での強制労働」も「事実であるならば」グローバルサプライチェーンによるディーセントワーク阻害と言えるでしょう。
 話が脱線しますがそういう意味では俺的には「欧米の中国批判」は「極めて偽善的」に見えますね。何もそうした問題は中国限定ではないからです。そして中国のウイグルでの問題に「一党独裁」という要素が無いとは言いませんが「グローバルサプライチェーンによる強要」という「中国以外の発展途上国にも共通する問題があること」にも注目すべきでしょう。


◆食糧危機の打開と持続可能な農林漁業への転換(関根佳恵*17
(内容紹介)
 つまりは

◆そのままでも食べられる米や麦、大豆などが『より儲かる牛、豚』の餌にされる
◆そのままでも食べられる鰯や鯵が『より儲かる養殖のマグロやぶり』の餌にされる
◆食べられないがエタノール燃料として儲かるサトウキビやパームやしが大量に作られる

といった「儲かる作物が作られ、必ずしも必要な作物が作られない農林漁業(持続可能とは言いがたく、食糧危機を助長している農林漁業)の現状」が批判されています。
 まあ小生も「将来的にはマグロやぶり、豚肉や牛肉も食べられなくなるのだろうか」「大豆タンパクによる代替肉とか昆虫食も不可避なのだろうか」的な気持ちは感じます。

参考

「昆虫食」商品が身近に 栄養豊富、エコで人気:朝日新聞デジタル2021.5.24
 コオロギやイモムシなどを使った昆虫食が、人口爆発に伴う食糧問題の解決策として注目を集めている。国内でも大手企業が商品化に乗り出し、身近に広がりつつある。ゲテモノ扱いするのは、もう古い。
 昆虫食については、国際連合食糧農業機関(FAO)が2013年に発表した報告書で、「たんぱく質や良質な脂肪などが豊富で、健康的で栄養価の高い食材だ」と高く評価。昆虫を育てる際に排出される温室効果ガスは一般的な家畜と比べて少ないため、環境への負荷も少ないとされ、環境問題の観点からも注目されている。

脱炭素へ「代替肉」推奨 暮らしの変革呼び掛け―環境白書:時事ドットコム2021.6.8
 政府は8日の閣議で、2021年の「環境・循環型社会・生物多様性白書」を決定した。
 白書は食料に関して「生産から加工、廃棄に至るまでのCO2の排出、農地への転用に伴う森林開発といった環境負荷が生じる可能性がある」と説明。特に肉類について「飼料の生産・輸送に伴うCO2排出に加え、家畜の消化器からのメタン発生」により、温室ガス排出量が多いと指摘した。
 その上で最近、代替肉の商品を提供する飲食店やコンビニエンスストアなどが増えていると紹介。「見た目や食感も肉に近い代替食材が開発され、より身近な存在になることが期待されている」と訴えた。

キユーピー 国内初の代替卵商品 大豆由来(FNNプライムオンライン) - goo ニュース2021.6.10
 キユーピーが、大豆が原料のスクランブルエッグのような「代替卵」を発売することがわかった。
 「ほぼたま」と名付けられた商品は、見た目も食感も卵の味わいを楽しめるということで、植物性由来の食べ物を好む健康志向や、家畜の飼育による環境への負荷を懸念する声が高まっていることに答えたものだとしている。


◆環境危機とSDGs:大量生産・消費・廃棄社会の転換(上園昌武*18
(内容紹介)
 「環境保護の観点」から、従来の経済成長が前提としてきた「大量生産・消費・廃棄」をやめることが急務と主張されていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。


SDGsと開発イデオロギー:途上国の視点から(太田和弘*19
(内容紹介)
 SDGsが「既存の経済体制の中で利益を受ける先進国(欧米や日本)」の意向も踏まえた最大公約数的なものであるがゆえに、その内容が良く言えば「穏健」、悪く言えば「微温的」な物であることが指摘されています。
 つまりはSDGsとは「既に定まった異論のない正しい道」などではなく、今後も「随時、見直し、修正していくこと」が不断に求められる物であることが指摘されています。


◆「ビジネスと人権」をめぐる国際人権の展開(申惠丰*20
(内容紹介)
 「ビジネスと人権」をめぐる国際法の最近の動向が論じられていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
 
参考

米がユニクロのシャツを新疆産綿使用を理由に輸入差し止め 外交部のコメント--人民網日本語版--人民日報2021.5.20
【記者】
 米国メディアの報道によると、米税関当局は今年1月、ユニクロの一部シャツについて、新疆維吾爾(ウイグル自治区での「強制労働」で生産された綿を使用している疑いがあるとして輸入許可を停止した。ユニクロは5月10日、新疆産綿を使用していない証拠を提出したが、米側は「証拠不足」として退けた。この件について見解は。
【趙報道官】
 「強制労働」に関して、すでに我々は中国側の原則的立場を繰り返し明らかにしてきた。中国の新疆にいわゆる「強制労働」はなく、全て自らの意思によって就業しており、職業を選択している。(ボーガス注:主として米国バイデン政権だが)特定の西側国の政治屋及び反中勢力が撒き散らしているこうした嘘は、「人権」を表看板に掲げて中国の特定の企業や産業を叩き、新疆の災禍と騒乱、中国の発展の抑止という彼らの悪辣な陰謀を支えるためのものに他ならない。

新疆綿 ウイグル問題で使用中止の動き: 日本経済新聞2021年5月22日
 日本企業の間で中国の新疆ウイグル自治区産の「新疆綿」の使用をやめる動きが出てきた。日本経済新聞の取材に対し、ワールドやミズノなど3社が中止を表明した。ウイグルを巡っては(ボーガス注:綿花収穫において違法な強制労働が行われてる疑いがあるとして)中国政府による人権侵害が取り沙汰されている。
 中国は世界第2位の綿花生産国だ。なかでも新疆産は中国生産の8~9割を占める。「新疆綿は安価で高品質なためまったく使わないという判断は難しい」(アパレル大手)との声もある。
 新疆綿の使用をやめることには、中国国内で反発を買い、不買運動などの標的になるリスクもある。逆に使い続けることで欧米や日本で批判される恐れもあり、企業は板挟みになっている。

ビジネス特集 うちの会社が強制労働!? 対応迫られる企業の人権リスク | NHKニュース2021.6.9
 ビジネスのグローバル化が進む中、日本企業は人権リスクへの対策を迫られている。背景にあるのは、世界的な人権意識の高まりだ。
 子ども服ブランドのミキハウスは4年前、突然、弁護士などで作る人権団体から糾弾された(【声明】ミキハウス及びワコールはミャンマー委託先縫製工場における労働環境の改善に向けて実効的な対応をとるべき | ヒューマンライツ・ナウ参照)。
 声明の中で、ミャンマーの縫製工場で「強制的な長時間労働」や「劣悪な労働環境」での違法行為が継続的に行われていると指摘されたのだ。
 大手メディアにも取り上げられ、50年近くかけて築き上げたブランドイメージは、大きく傷つく瀬戸際に立たされた。
 対応に追われた品質管理部長の上田泰三さんはこう振り返る。
上田品質管理部長
「うちの会社が人権問題で指摘を受けるとはまったく想像していなかった。初めての経験で当初は何をすればいいのか分からなかった。不買運動につながるような危機感があった」
 問題が起きた背景には、製品の供給網、いわゆるサプライチェーンを把握することの難しさがあった。
 指摘を受けて、会社ではすぐにミャンマーでの現地調査を実施。そこで明らかになったのは、日本の真夏のような環境の中、エアコンもない部屋で働いていた多くの従業員たちの姿だった。
 調査では、給与明細やタイムカードなども細かく確認し、職場環境とともに従業員に給料がきちんと支払われていない状況も改善させた。
 一連の対応は、指摘した人権団体からも一定の評価を受けた。
◆チョコレートの世界で新たな取り組み
 こうした問題は服だけでなく、食品などでも同じことが言える。
 私たちがよく口にするチョコレートの世界では、海外の人権団体と連携し、原料を提供する国での人権リスクを減らそうという取り組みがある。
 アメリカ政府などの調査によると、アフリカのガーナでは、およそ77万人の子どもたちがチョコレートの原料、カカオの生産に携わっていると見られている。児童労働によって教育の機会が奪われ、農薬を使用するなど危険な労働に関わっていることも報告されている。
 こうした中、いま注目されているのが、スイスのNGO、国際カカオイニシアチブ(ICI)が現地の農家と協力して児童労働を防ぐ仕組みだ。
(中略)
 日本政府も去年10月、「ビジネスと人権に関する行動計画」を公表した。
 この中で企業に促しているのが、「人権デューディリジェンス」の導入だ。これは、企業が強制労働や児童労働、ハラスメントといった人権侵害のリスクがないかを調べて対策を取り、必要な情報を開示するというものだ。
 ただ、行動計画に法的な拘束力はないため、こうした取り組みが広がるかどうかは、企業の自主性に任せられている。
 企業の人権対策に詳しい経営コンサルタントの羽生田(はにゅうだ)慶介さんは、日本の現状に警鐘を鳴らす。
◆羽生田さん
「外国人の技能実習生の待遇など海外から厳しい視線を注がれていて、多くの企業がいつ指摘を受けてもおかしくない状況だ。経営者は人権リスクが経営に及ぼすインパクトを正しく認識し、適切かつ迅速に対策を講じていく必要がある」
 実はこの人権リスク、なにも海外に拠点や取引先のある大手企業にかぎった話ではない。
 今後、大手が対策を本格的に進めると、国内で事業を展開する中小企業も人権上のリスクを抱えていれば、契約を打ち切られてしまう可能性が出てくる。
 日本の多くの企業が自分事として捉え、対策をしっかりと講じていくことが求められそうだ。


◆日本経済を読み解くキーワード『ESG投資』(中野瑞彦*21
(内容紹介)
 ESG投資とはEnvironment(環境問題)、Social(社会問題)、​Governance(ガバナンス=企業統治)の3つの観点から企業 への投資を検討するという話ですが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。


◆インド・コロナ禍下の農民運動の新展開(西海敏夫)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

政権基盤揺るがすインドの反「農業法」デモ | 公益社団法人 日本経済研究センター:Japan Center for Economic Research2020.12.27
 9月末に可決・成立した「2020年農産物流通促進法」など3つの新法、いわゆる「新農業法」に反対する抗議デモが一段と先鋭化、モディ政権の基盤を揺るがしかねない情勢となってきた。農産物流通の自由化や農業セクターへの民間資本導入を狙った新農業法は、モディ政権が遅まきながら打ち出した本格的な農業改革の第一弾。伸び悩んでいた農民の所得向上につながると期待されていたのだが、そこに大きな落とし穴があった。
 政府はこれまで、最低支持価格(MSP)による政府の農産物買い上げ制度は廃止しない、と再三繰り返してきたが(中略)多くの農民は「民間企業との取引では、立場の弱い零細農民が大企業に価格主導権を握られてしまう」との警戒感を露わにしている。
 今回の新農業法には、農民に対して適切な栽培技術や市場情報を提供して生産性向上を促すことなく、ある日いきなり「自由化します、好きなように農産物を売ってください」と言っている側面もある。これでは零細農は途方に暮れるほかはない。
 政府は、「公設市場や買い入れ制度は廃止しない」と再三明言しているが、農民の疑心暗鬼はなかなか解消しない。公設市場の取り扱いシェアが減少すれば税金や手数料収入が減ってしまう各州政府も、本音では非常に不安だろう。
 つまりモディ政権の農業改革は、農家を育成するという視点を欠いたまま流通改革を推進しようとしただけでなく、長年積み上げられた中核農家や農産物を扱う商人、そして公設市場に税収を依存していた州政府の既得権益に手を突っ込んでしまったのだ。二重の「失策」と言えるだろう。何よりもお互いの間に「信頼関係」がないことが歴然だ。

農民デモ、各国著名人支持 インド政府の弾圧強化で:時事ドットコム2021.2.8
 インドで2カ月以上続く農業関連法改正に反対する農民デモに対し、政府が弾圧を強めている。当局はデモ会場周辺のインターネット接続を遮断。ツイッター社にデモ関連の情報を削除するよう要求した。これに対しスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんや米歌手リアーナさんら著名人がデモ支持を表明し、波紋が広がっている。
 グレタさんは3日、ツイッターで米CNNの記事を引用し、「デモに連帯する」と表明。ツイッターで1億人以上のフォロワーを持つリアーナさんも「なぜ私たちはこのことについて話さないの?」と訴えた。また、インド系のハリス米副大統領のめいで弁護士のミーナ・ハリスさんは「世界最大の民主主義が攻撃されている」と非難した。
 デモのきっかけは、政府が昨年9月に実施した農業取引自由化をめぐる法改正だった。農産物の買いたたきにつながることを警戒した農民が各地で抗議デモを展開し、首都周辺には数千人が集結した。
 デモは当初は穏やかだったが、1月26日に警察との衝突で農民側に死者が出た。デモ参加者に少数派シーク教徒が含まれていたことから、政府やヒンズー至上主義の与党インド人民党(BJP)は、デモがシーク教徒の分離独立運動に結び付いていると主張し、世論の批判をかわそうとした。


◆座談会『コロナ危機と新自由主義の転換を』(小畑雅子*22、森田しのぶ*23、前田美津恵*24大門実紀史*25
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。
赤旗
コロナ 奮闘する医療労働者/命守る人員と病床確保を/日本医労連委員長 森田しのぶさんに聞く2020.4.16
コロナ禍のもと 安心して過ごせる学校へ/全教委員長 小畑雅子さんに聞く/少人数学級 今こそ実現を2020.5.27
コロナ対応 医療現場は危機的/使命感ではもうもたない/医療・公衆衛生の拡充へ転換を/日本医労連 森田委員長に聞く2020.12.26
融資延長 柔軟対応を/コロナ対策 大門議員が要求2021.2.2

コロナ禍 貧困・格差なくせ/全労連など 最低生計費示し最賃一律1500円に2021.6.1
 小畑雅子議長は、「コロナ禍でも、諸外国では将来を見据え、最賃を引き上げている。日本でも、地域経済を活性化させ、女性や非正規雇用が多いエッセンシャルワーカー(国民生活を支える労働者)のため、8時間働けば普通に暮らせる最賃にするため、全国一律1500円に引き上げるべきだ」と強調。それと一体に中小企業支援策や、消費税引き下げを求めました。


GAFA*26の高収益の実態と規制の必要性(高野嘉史)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
赤旗
主張/GAFA/規制と課税の新機軸が必要だ2018.12.28
GAFAへの課税ルール/日本が役割果たせ/大門氏/参院財政金融委2019.4.10
主張/巨大IT企業/プラットフォーマー規制急げ2020.1.20
主張/デジタル課税/公正なルールづくりが急務だ2020.7.12
主張/GAFAの高収益/コロナ下で広がる格差ただせ2020.8.3
主張/米のグーグル提訴/巨大IT企業の規制を強めよ2020.10.25
主張/巨大IT企業規制/独占支配を許さない仕組みを2020.12.30
主張/国際課税の協議/抜け穴ふさぐ公正なルールを2021.3.7

*1:日本大学助教

*2:日本総研創発戦略センターシニアマネジャー(村上 芽|研究員紹介|日本総研参照)

*3:日本総研創発戦略センタースペシャリスト(渡辺 珠子|研究員紹介|日本総研参照)

*4:SDGsジャパン(SDGs市民社会ネットワーク)政策担当顧問。政府審議会『SDGs推進円卓会議』メンバー(Amazonの著者紹介による)。

*5:外務省国際協力局参事官(地球規模課題担当)、国際協力局審議官(地球規模課題担当)としてSDGs問題に関与。2020年より、特命全権大使(広報外交担当兼国際貿易・経済担当)(南博 (外交官) - Wikipedia参照)。

*6:慶應義塾大学教授。著書『地球環境外交と国内政策:京都議定書をめぐるオランダの外交と政策』(2001年、 慶應義塾大学出版会)、『環境政治学入門』(2004年、丸善)など

*7:漫才協会所属のお笑い芸人。著書『政治の絵本(新版):学校で教えてくれない選挙の話』(2019年、弘文堂)。公式サイトたかまつななオフィシャルサイトたかまつなな - Wikipedia参照)

*8:著書『観光コースでないハワイ』(2011年、高文研)、『自然エネルギー革命をはじめよう:地域でつくるみんなの電力』(2012年、大月書店)、『ご当地電力はじめました!』(2015年、岩波ジュニア新書)、『そこが知りたい電力自由化』(2016年、大月書店)、『ぼくの村は壁で囲まれた:パレスチナに生きる子どもたち』(2017年、現代書館

*9:ノルウェー首相(1981年、1986~1989年、1990~1996年)、WHO事務局長(1998~2003年)など歴任(グロ・ハーレム・ブルントラント - Wikipedia参照)。しかしブルントラントって三回も首相に就任してるんですね。

*10:くしくも拉致発生(正確には1970年代後半ですが)も大体このくらいの時期です

*11:くしくも橋本質問(1988年)がこのくらいの時期です

*12:奇しくも小泉訪朝(2002年)がこのくらいの時期です

*13:くしくもウンギョンさんと横田夫妻の面会(2014年3月:これについては例えばともかく良かったと思う(3月16日更新) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)参照)、ストックホルム合意(2014年5月)が大体このくらいの時期です。

*14:2015年当時にブームでなかったのが今ブームが来たのがSDGsで、2014年当時にウンギョンさんと横田夫妻の面会、ストックホルム合意などで「ミニブーム」が来たのに今や風化しているのが拉致です。

*15:駒澤大学名誉教授。著書『アメリ連結会計生成史論』(2002年、日本経済評論社)、『株式会社会計の基本構造』(2014年、中央経済社)など

*16:茨城大学准教授。著書『バングラデシュの工業化とジェンダー:日系縫製企業の国際移転』(2014年、御茶の水書房)、『990円のジーンズがつくられるのはなぜ?:ファストファッションの工場で起こっていること』(2016年、合同出版)

*17:愛知学院大学准教授。著書『13歳からの食と農』(2020年、かもがわ出版

*18:北海学園大学教授。著書『環境の政治経済学』(編著、2010年、ミネルヴァ書房)、『先進例から学ぶ再生可能エネルギーの普及政策』(編著、2013年、本の泉社)、『エネルギー自立と持続可能な地域づくり』(編著、2021年、昭和堂)など

*19:神戸大学教授。著書『貧困の社会構造分析:なぜフィリピンは貧困を克服できないのか』(2018年、法律文化社

*20:青山学院大学教授。著書『人権条約の現代的展開』(2009年、信山社)、『国際人権法』(2013年、信山社)、『国際人権入門』(2020年、岩波新書)など

*21:桃山学院大学教授

*22:全教(全日本教職員組合)委員長などを経て全労連(全国労働組合総連合)議長

*23:医労連日本医療労働組合連合会)委員長

*24:全生連(全国生活と健康を守る会連合会)副会長

*25:衆院議員。共産党中央委員。著書『「属国ニッポン」経済版』(2003年、新日本出版社)、『新自由主義の犯罪:「属国ニッポン」経済版2』(2007年、新日本出版社)、『ルールある経済って、なに?:社会的公正(ソーシャル・ジャスティス)と日本国憲法』(2010年、新日本出版社)、『カジノミクス』(2018年、新日本出版社

*26:グーグル(Google)、アマゾン(Amazon)、フェイスブックFacebook)、アップル(Apple)のこと