今日のロシアニュース(2022年4月8日分)

◆シロビキ
 「軍や公安(旧KGB)出身の政治家」を指す言葉であり、

◆パトルシェフ国家安全会議書記
 元FSB(連邦保安庁)長官

などプーチン側近連の多くがこれに当たり、プーチン政権の統治を「強権的な物にしている一因」とされます(KGB出身でFSB長官だったプーチン自身もシロビキですが)。
 さて「話が脱線します」が戦前日本も「かなりシロビキ的なところがあった」といっていいでしょう。
 何せ歴代首相には「非軍人の藩閥政治家(例:第一次伊藤、黒田、第一次山県、第二次伊藤、第二次山県内閣蔵相を歴任した松方正義)や官僚政治家(例:斎藤、岡田、第一次近衛内閣外相を歴任した広田弘毅)」「立憲政友会総裁、立憲民政党総裁など政党出身者*1」ももちろんいますが

桂太郎
 第三次伊藤、第一次大隈、第二次山県、第四次伊藤内閣陸軍大臣
山本権兵衛
 第二次山県、第四次伊藤、第一次桂内閣海軍大臣
寺内正毅
 第一次桂、第一次西園寺、第二次桂内閣陸軍大臣
加藤友三郎
 第二次大隈、寺内、原、高橋内閣海軍大臣
斎藤実
 第一次西園寺、第二次桂、第二次西園寺、第三次桂、第一次山本内閣海軍大臣
岡田啓介
 田中、斎藤内閣海軍大臣
林銑十郎
 斎藤、岡田内閣陸軍大臣
◆阿部信行
 陸軍次官、台湾軍司令官
◆米内光政
 林、第一次近衛、平沼、小磯、鈴木内閣海軍大臣
東條英機
 第二次、第三次近衛内閣陸軍大臣
◆小磯國昭
 陸軍次官、関東軍参謀長、朝鮮軍司令官
鈴木貫太郎
 海軍次官連合艦隊司令長官、海軍軍令部長

と軍人出身者が山ほどいます(斎藤内閣以降は「満州事変」「515事件」によって軍国主義が高まる時代ではありますが)。


【正論】宗教界とプーチン「聖戦」の誤り 日本大学教授・松本佐保 - 産経ニュース

 キリル総主教は、ロシアのウクライナ侵攻開始後4日目に、ウクライナの反ロシア勢力を「悪の勢力」と呼び、プーチン大統領によるウクライナ侵攻を支持している。

 以前、拙記事新刊紹介:「歴史評論」2021年8月号 - bogus-simotukareのブログ

戦争と文化(17)――聖書には「汝、殺すなかれ」とあるのに、どうして、ユダヤ=キリスト教は戦争や暴力行為を後押ししてきたのか? | 大正大学
 1945年8月6日、原爆を搭載したアメリカのB-29「エノラ・ゲイ」が日本本土に向かう時、「戦争の終わりが早くきますように、そしてもう一度地に平和が訪れますように、あなた〔神〕に祈ります。あなたのご加護によって、今夜飛行する兵士たちが無事にわたしたちのところへ帰ってきますように」というお祈りをしたことを紹介しました(第11回目のブログ)。簡単にいうと、当時のほとんどのアメリカ人は「日本は凶悪な国である、この国との戦争には絶対に勝利しなければならない」と思っていたのです。そして、日本への原爆投下が「平和実現の手段」だったのです。
 また、時代は前後しますが、キリスト教界は、エルサレム奪還に十字軍を派遣しましたし、プロテスタントカトリックに分かれて血で血を洗う宗教戦争をくりひろげたこともありました。

従軍チャプレンと軍人の信仰 石川明人 2011年8月6日 - キリスト新聞社ホームページ
「あなたのご加護によって、今夜飛行する兵士たちが無事にわたしたちのところへ帰ってきますように。わたしたちはあなたを信じ、今もまたこれから先も永遠にあなたのご加護を受けていることを知って前へ進みます。イエス・キリストの御名によって、アーメン」
 エノラ・ゲイの乗組員たちは、この祈りの通り、任務を遂行したあと無事に基地へ帰還した。この祈りは神に「とどいた」のだ。だがここには、(ボーガス注:原爆で)殺される側の人々への言葉はない。われわれは、こうした信仰の姿をどう考えればいいのだろうか。

というエピソードを紹介しましたがこうした「宗教の戦争への加担」は何も「プーチンロシアに限った話ではない」。
 また拙記事新刊紹介:「歴史評論」2021年8月号 - bogus-simotukareのブログでは

日露戦争におけるキリスト教徒の葛藤 ― 近代日本の宗教≪16≫ 石川明人氏(1/2ページ):中外日報
 日露戦争の時代、日本国内で特に深刻な状況に置かれていた宗教は、ロシア正教会である。
 (ボーガス注:日本の)正教会自身も、自分たちが決して「露探(ロシアのスパイ)」でも「国賊」でもないことをアピールするのに必死だった。
 (ボーガス注:日本正教会創設者)ニコライも、日本に留まることを決めた際の訓示で、信者たちに、あなたたちは日本の勝利を祈りなさい、そしてもし戦いに勝ったならば感謝の気持ちを祈りなさい、という主旨のことを述べている。
 小崎弘道*2は、全国宗教家大会で「この戦争は、人種の戦争でも宗教の戦争でもなく、ロシアが代表する16世紀の文明と、日本が代表する20世紀の文明との戦争である」と述べた。こうした小崎の発言を伝え聞いたニコライは、日記に「ロシア罵倒の熱心においてとりわけ際立つのはプロテスタントのコザキ(小崎)である」と書いており、複雑な思いを抱いていたことがうかがえる。
 当時、日本国内のプロテスタント宣教師のなかにはロシアに対する嫌悪と軽蔑をあらわにする者も多く、ニコライはそれに強い反発を感じていた。ニコライは「プロテスタントの宣教師たちほど、ロシアを憎み、ロシアの不幸を願っている者はいない」とも書いている。傍目には同じキリスト教徒のあいだでも、当時の内実はわりと複雑だったのである。
 こうしたことは、あらためて私たちに、信仰とは何か、平和とは何か、という問いを考えるきっかけになるであろう。

という「ロシアの戦争(日露戦争)と、当時の日本正教会の苦しい立場」を紹介しました。今の日本正教会【ウクライナ侵攻】 日本正教会が公式に態度表明 「あらゆる暴力行為と破壊に反対」 2022年3月10日 - キリスト新聞社ホームページということでやはり「プーチン批判」のようですが。
 さて当初は「これで終わらせていた」のですがコメント欄で「会員でないので全文読めず残念」というご指摘があること、その後「書き加えたいこと」が出たことでいくつかコメントしておきます。

 これに対し、ロシア正教会の司祭ら280人余りが3月初め、軍事侵攻を批判する公開書簡を発表し「ウクライナの兄弟姉妹は不当な攻撃を受けている」とし、即時停戦と和解を求めた。

 「これ」とは勿論「キリル主教のプーチン支持」ですが、勇敢な行為として高く評価したいと思います。

 モスクワ総主教庁ウクライナ正教会から2018年にウクライナ正教会キエフ総主教庁が分離独立、少数教派のウクライナ独立正教会と統合され、新生「ウクライナ正教会」が誕生し多数派となった。これを正教会のトップとして承認したのがコンスタンティノープル総主教であり、ロシア正教会のトップ、モスクワ総主教、キリルと激しく対立している。

 コメント欄でも指摘がありますが、もともとは同じ正教会ですが「トルコ正教会(今やイスラムが主流のトルコですが、東ローマ時代からの流れで正教会もあります)」と「ロシア正教会」の二つに分裂。その分裂がずっと続いた上、2014年のクリミア併合を契機に「ウクライナ正教会主流派」がロシアから離れ、トルコ側につくことになります。なお、和平交渉の舞台がトルコであることの理由の一つは「正教会つながり」でしょう。

 ゼレンスキー大統領が教皇に和平調停を依頼したとの報道もある。

 真偽は不明ですが、こうした噂が出ることこそが「神社本庁(日本)やロシア正教ヒンズー教(インド)、ユダヤ教イスラエル)」など「特定の国家や民族とのつながりが強い宗教」と「ローマカトリック」の大きな違いと言えるでしょう。
 勿論、「ムソリーニ時代」はローマカトリックも確か「ムソリーニ」に迎合してるので、手放しで礼賛もできませんが「神社本庁ロシア正教ヒンズー教ユダヤ教」などよりは「権力からの自立性が高い」のではないか。


日本駐在のロシア外交官ら8人追放 ウクライナ情勢で 外務省 | NHK | ウクライナ情勢
 結局「欧米の追放論」に追従したわけですが果たしてそれで良かったのか。むしろ駐在は認めてパイプを残しておくべきではないのか。

*1:ただし、その政党出身の首相も多くの場合、高橋是清(元日銀総裁)、加藤高明(元駐英公使)、若槻礼次郎(元大蔵次官)、田中義一(元参謀次長)、浜口雄幸(元大蔵次官)など「官僚出身(官僚が政界に転身)」ですが。こうした官僚出身首相は今ではむしろ少なくなりました。むしろ「世襲政治家の首相(橋本龍伍元厚生相の息子である橋本龍太郎小泉純也防衛庁長官の息子である小泉純一郎、岸元首相の孫、安倍元幹事長の息子である安倍晋三福田赳夫元首相の息子である福田康夫、吉田元首相の孫である麻生太郎鳩山一郎元首相の孫である鳩山由紀夫岸田文武元代議士の息子である岸田文雄(現首相))が多い」ですが、戦後も、一時期は官僚出身首相は「吉田茂(元外務次官)」「岸信介(元商工次官)」「池田勇人(元大蔵次官)」「佐藤栄作(元運輸次官)」「福田赳夫(元大蔵省主計局長)」と多数いました。田中角栄(非官僚)が「今太閤」と呼ばれたのも「官僚首相全盛期」に官僚政治家・福田を破って首相になったからです。

*2:1856~1938年。同志社総長、日本基督教連盟会長など歴任(小崎弘道 - Wikipedia参照)