今日のロシアニュース(2022年2/18日分)

プーチンが繰り出すヤバい奇策「ロシア軍を使わずウクライナ制圧」(FRIDAY) - Yahoo!ニュース2022年3月4日号

「侵攻しないという言葉の裏にプーチン大統領(69)の奇策がある」とロシア政治に詳しい筑波大学教授の中村逸郎氏*1が語る。
「ロシアは2月10日から20日にかけて、同盟国のベラルーシと国境地帯で大規模軍事演習を行っています。これはベラルーシウクライナに侵攻する下準備だと見られています。ベラルーシに攻め込ませることで、『ロシアは侵攻しない』という建て前は守られることになる。」

 吹き出しました。そんな手の込んだこと(しかしベラルーシと合同軍事演習をしてるのでロシアがベラルーシにやらせたに違いない、ベラルーシ軍に偽装したロシア軍はさすがにいなくても、ロシアによるベラルーシに対する軍事顧問団の派遣や武器支援はあるのではないかと米国に非難される可能性が大、しかもロシアの単独侵攻と違いベラルーシが米国の制裁対象となる)をするくらいなら、まだ黒井や常岡が言うように「満州事変や上海事変トンキン湾事件パターン(自衛を口実にロシアの侵攻)」ではないか。


英首相「ロシアがウクライナ侵攻すれば“台湾にも影響”及ぶ」|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト
 記事タイトルに噴き出しました。「中国とロシア」「台湾とウクライナ」は勿論色々と違いがあるので仮にロシアがウクライナに侵攻したとしても中国の台湾進攻がありうるという話にはなりません。


「プーチン氏は侵攻決断」バイデン氏が言明 - 産経ニュース
 「以前から指摘していますが」勿論このバイデン発言で「プーチンが侵攻する」と見なすことは出来ません。
 「アフガンから米軍撤退→タリバンの政権奪取で支持率低下」のバイデンにとって「ロシアのウクライナ侵攻」は絶対に避けたい事態でしょう。こうした「牽制発言」で「プーチンの侵攻を阻止したい」と考えるのは自然な話です。実際、プーチンはこうした牽制発言で「侵攻を断念する」かもしれない。
 「侵攻はない(あるいはその可能性は低い)」と発言して「侵攻」があった場合は「甘い判断でプーチンの侵攻を招いた」と批判されることがあり得ますが、「侵攻の可能性が高い」と発言して「侵攻」がなくても「バイデンは危機を煽って米ロ関係を悪化させた」と非難する人間は「よほどのアンチバイデン(トランプシンパ?)かプーチンシンパ」でない限りあり得ません。プーチンが「ウクライナ国境付近に軍を動員している」以上、それが「恫喝にとどまる」としても「侵攻の可能性」は否定できませんので。


「林外相は露の術中に見事にはまった」 高市氏が猛批判 - 産経ニュース
 林外相が「会談で何を話したか」によりますね。「欧米が制裁したら日本も参加せざるを得ない」としてロシアの自重を求めたのなら批判するのはむしろおかしい。


【浪速風】侵攻は愛国ではない - 産経ニュース

 世界中に普及した自動小銃「AK―47」は、カラシニコフ銃とも呼ばれる。開発した旧ソ連の元戦車兵、ミハイル・カラシニコフ氏(1919~2013年)は、祖国を守るために銃を作った*2のだと言い、「不適切な場所で」使われたとしたら、それは「政治家の責任」だと指摘した
▶しかし晩年、ロシア正教のキリル総主教に「心の痛みは耐えがたい」と告白し、銃が奪った多くの命に自分は責任があるのか問うた。正教会は「祖国防衛を目的とした武器の開発や使用は支持される」との見解を示し、キリル総主教はカラシニコフ氏を「愛国主義の模範だ」とたたえた(石川明人*3キリスト教と戦争:「愛と平和」を説きつつ戦う論理*4』)

 「戦前日本の侵略」を美化する産経が良くも「ロシアはウクライナを侵攻するな」といえたもんだと思いますがそれはさておき。
 石川氏については、以前新刊紹介:「歴史評論」2021年8月号 - bogus-simotukareのブログで紹介したので改めて紹介しておきます。勿論こうした「宗教による戦争の正当化」は新刊紹介:「歴史評論」2021年8月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した「エノラ・ゲイの話」でわかるようにロシア限定の話ではない。

*1:著書『東京発モスクワ秘密文書』(1995年、新潮社)、『ロシア市民:体制転換を生きる』(1999年、岩波新書)、『帝政民主主義国家ロシア:プーチンの時代』(2005年、岩波書店)、『虚栄の帝国ロシア』(2007年、岩波書店)、『ロシアはどこに行くのか』(2008年、講談社現代新書)、『ろくでなしのロシア:プーチンロシア正教』(2013年、講談社)、『シベリア最深紀行』(2016年、岩波書店→2018年、文春学藝ライブラリー)、『ロシアを決して信じるな』(2021年、新潮新書

*2:ミハイル・カラシニコフ - Wikipediaによれば「カラシニコフ銃」の開発自体は1947年だが、彼に開発を決意させたのは「ナチドイツの自動小銃」に「ソ連軍が苦しめられたこと」によるものとこと。

*3:桃山学院大学准教授。著書『ティリッヒの宗教芸術論』(2007年、北海道大学出版会)、『戦争は人間的な営みである』(2012年、並木書房)、『戦場の宗教、軍人の信仰』(2013年、八千代出版)、『私たち、戦争人間について:愛と平和主義の限界に関する考察』(2017年、創元社)、『キリスト教と日本人』(2019年、ちくま新書)、『すべてが武器になる:文化としての〈戦争〉と〈軍事〉』(2021年、創元社)など

*4:2016年、中公新書