消えたブルマー(2023年8月2日記載)

 たしかにこれでは、女の子もいい顔はしなさそうだ - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)を読んで思いついた記事です。

【教えて!goo】ブルマはなぜ消えたのか!? 専門家に聞いてみた(1/3ページ) - 産経ニュース2017.1.28
 「ブルマ」は、昭和世代には懐かしい響きだが、今はブルマを知らない子たちも多いと聞く。その昔、なぜ体操着として採用されたのか、そもそもなぜブルマとよばれるのか。謎はつきない……。そこで『ブルマーの社会史 女子体育へのまなざし*1』の著者である掛水通子さん*2に話を聞いてみることにした。
 まず、現在の小学生の体操着事情について聞いた。
「一昔前は男子ショートパンツ、女子はブルマというのが一般的でしたが、今は男女ともハーフパンツやクォーターパンツです。 
 一昔前は中学校・高校では授業も男女別々で、女子だけにダンス、男子だけに武道などという差がありました。時を経て、学習指導要領の改定により中高の教育内容は男女同一になり、体育の授業内容も同じになりました。その後、選択制の導入も関係し、男女共修が始まりました(実際には今でも、共学校でも男女別修の学校もあります)。このことが、ブルマからハーフパンツへの移行に影響を及ぼしました。男女同じ授業を男女同じ服装で受けることになった結果、ブルマは消滅しました」(掛水さん)
 男女平等の時代がブルマを消滅させ、今では言葉自体を知らない子どもがいるのだ。
 では、体操着に採用されたのはいつだったのか。その歴史を教えてもらった。
「ブルマは、ブルーマーさんの名前に由来します。19世紀半ばの欧米では、コルセットで身体を締め付け、鯨の髭や鋼鉄でできたクリノリン(腰枠)でスカートを広げた服装がはやり、中産階級ばかりでなく下層階級も着用していました。このような服装を改良したのが、アメリカ生まれのアメリア・ジェンクス・ブルーマーで『膝下丈のスカートとゆったりしたトラウザーズ(ズボン)を組み合わせたスタイル』を着用しました。そしてこのスタイルのことを『ブルマ』と呼びました。友人の服装を模したものだったそうですが、当時は不評で、本人も8年ほどで着用をやめています。その後、1880年代にアメリカのサージャントスクールで女子の体操服としてブルマが採用され、ブルマの名前が残ることになりました」(掛水さん)
 ブルマの起源はアメリカで、当初はスカートとズボンの組み合わせだった。そのブルマがいつ日本に伝来し、あの形になったのだろう。
「地域や学校にもよりますが、明治30年頃まで、女性は着物の着流しにたすき掛けで体育の授業を受けていました。その後、実践女子学園の創設者でもある下田歌子が考案した女袴に靴、束髪が広まり、少しずつ運動しやすくなりました。この頃、雑誌でアメリカのスカートとズボンの組み合わせであるブルマが紹介され、米国留学帰りの女高師の井口阿くりは『圧迫することなく運動に自由になる』と紹介しましたが定着しませんでした」
 だが、ブルマは消えなかった。
「大正初期になると、くくり袴という、中央部分をとめて裾をくくる袴を着用することが増えてきました。そして大正末期頃からようやく洋式運動服となり、スカートのままか、スカートとズボンの組み合わせであるブルマを着用するようになりました。戦後、生理用品、化学繊維の発展とともに、ブルマはちょうちんブルマからぴったりブルマへと、長さや形、布地や下ゴムの有無などモデルチェンジを繰り返しながら学校体育着として生き続けましたが、1992年以降一気に消滅していきました」(掛水さん)
 当時の女子らが自ら、ブルマは男性の性的な対象になるから嫌であるという声を上げ、消滅していったという。
「ブルマは社会の歴史、特に女性解放の歴史と重なります。コルセットで束縛され、広いスカートで動きにくい身体を解放し、自由で動きやすい服装としてブルマは考案されました。しかし、当時の女性は自立しておらず、男性から見て美しくなければならなかったため、ブルマが受け入れられることはありませんでした。その後、女性も社会進出を果たし、スポーツに参加するようになると、アメリカの学校の体操着として取り入れられ、その頃には、女性も自らが動きやすいことを考えるようになりました。日本でも、はじめはアメリカ同様受け入れられず、消えていきましたが、袴やスカートよりも動きやすいので、改良され続けていきました。月日は流れ、いつしか男子の性的なまなざしの対象となり、誕生した頃とは異なる女性開放の立場で消えていったのです」(掛水さん)
 ブルマの発展、そして消滅には、女性が自分の意見を言えるようになった歴史が密接に絡んでいたのだ。
 アメリカで誕生し、日本に伝来したブルマは独自の進化を遂げ、やがて消滅した。ブルマに限らず、ファッションは世相を反映することが多い。ファッションの変化に目を向け、世の中の動きを改めて捉えてみると、意外な発見があり、面白いかもしれない。

消えたブルマー 中3女子の「はきたくない」に裁判官は [令和]:朝日新聞デジタル2019.4.23
 「ブルマーに統一、くすぶる不満」。
 1993年11月、朝日新聞にこんな見出しの記事が掲載された。
 自由な服装が認められていたシンガポール日本人学校中等部の体育の授業で、学校側がブルマーに統一する方針を打ち出し、生徒が反発したという内容だ。学校側は「体にぴったりして機能的」「服装の統一で集団の美を教えたい」と主張。生徒側は「腰の線や足が露出しすぎる」などと反論しているという。
 記事をうけ、朝日新聞には中学生や主婦らから「ブルマー強要はセクハラ」などの投書が次々寄せられた。当時、ブルマーの盗難事件が相次ぎ、繁華街などにできたブルセラショップでは、女子高生らのブルマーが売られ、社会問題化していた。
 シンガポールの記事を書いた竹信三恵子*3・和光大名誉教授(ジェンダー論)は、「おかしいと思いながらはっきりものを言えなかった、または、聞いてもらえなかった女性たちが、海外で起きたことに励まされたのではないか」とみる。
 このころを境に「ブルマー」に対する違和感を取り上げた記事が増えた。
 95年には、栃木県内の私立中学校のブルマー問題が栃木版で取り上げられた。その前年、社会科見学で訪れた宇都宮地裁で3年生の女子生徒が裁判官に「はきたくないブルマーをはかされています。人権問題ではないでしょうか」と質問。
(この記事は有料記事です。残り908文字)

「ブルマーは廃止、ニワトリも飼わない」小学校から消えたもの(週刊女性PRIME)2021.9.11
 昭和の子どもだった読者世代が学生時代に着用していた体操服といえば、ブルマー。実は、明治時代からあったものだというが、平成に入った1990年代からハーフパンツに切り替える学校が増えていった。
「1980年代に巻き起こったブルセラブームの影響が大きい。盗撮が増えた時代でもあり、ブルマー姿の女子が性的な対象として見られ、性犯罪につながるとして世間から騒がれ始めたのです」(渋井哲也さん*4
 学校現場では、どう考えていたのだろうか? 埼玉県の小学校で校長を務めた経験がある元教員・Sさんが言う。
「女子の身体の発育は年々早くなっていき、小学校中学年くらいで初潮を迎える児童も多くいたんです。体育の授業中、生理用ナプキンがずれてブルマーからはみ出るのを気にする女子もいて、かわいそうでした。ハーフパンツに変わって安心しましたね」

 ということで「女子生徒の抗議の声」で消滅したブルマです。
 なお、「ブルマーは廃止、ニワトリも飼わない」小学校から消えたもの(週刊女性PRIME)(2021.9.11)によれば

 プールも学校から姿を消している。文部科学省の調査によると、屋外プールを持つ小学校は1996年には2万111校あったが、2015年には1万5163校と約25%減少。中学校でも同様の傾向にある。
「高度経済成長の時代には学校が多くつくられ、プールなどの施設も充実させていました。それが地域のためになると考えられていたからです。しかし、施設の老朽化が進む現在では改築にかかる費用負担が大きく、そのうえ少子化も進み、コストパフォーマンスが悪くなってしまったのです」(渋井さん)
 プールの廃止に伴い、公営プールを使用したり、民間のスイミングスクールに委託したりする学校も増えている。
 消えたものは、ほかにもある。
「理科の実験でおなじみのアルコールランプに代わって、(ボーガス注:安全面から)文部科学省はカセットコンロの使用を推奨*5しています」(渋井さん)
 実際、学校ではアルコールランプによる事故が多発し、問題視されてきた。手や髪、衣服などへ引火してヤケドを負うケースのほか、爆発事故や死亡事故も起きている。
「アルコールランプは日常生活ではまず使いません。カセットコンロを使ったほうが実用的だという考え方もあるのだと思います」と、渋井さん。
 校庭の片隅にある飼育小屋で、“生き物係”がニワトリにエサやりの当番、こんな風景も今は昔。動物を飼育する学校自体が減りつつあるうえ、なかでも「ニワトリを飼う学校は少なくなっている」(Mさん)からだ。
「2004年に流行した鳥インフルエンザが影響しているのでしょう。動物アレルギーの子どもや教職員への配慮もあると思います」(渋井さん)

だそうです。但しカセットコンロも使用法を間違えれば最悪、死亡事故になることは以前拙記事今週の週刊漫画ゴラク(2023年7/22記載)(副題:『Wスティール』最終回、カセットボンベの爆発事故ほか) - bogus-simotukareのブログで触れました。

長澤茉里奈、ブルマの体操着姿に絶賛の嵐「違和感なし」「美女2人組のコスプレ可愛い過ぎ」 : スポーツ報知2022.9.1
 グラビアアイドルでタレントの長澤茉里奈1日に自身のインスタグラムを更新し、ブルマの体操着姿を公開した。
 長澤は、韓国のモデルでYouTuberのピョ・ウンジと「YouTubeコラボさせていただきました」と報告。
 このコラボにフォロワーからは「美女2人組のコスプレ可愛い過ぎるよ」「体操服似合いすぎ」「違和感なしっす」「最高な二人だね~」「たまらんね」など絶賛のコメントが寄せられている。

 完全に「性的嗜好(?)」としてのブルマですね。勿論こういうのが女子生徒に嫌がられて「消えた」わけですが。
 なお、「ブルマ、コスプレ、アイドル」等でググったら最初の方でヒットしたのがこの記事であり、また「美女2人組のコスプレ可愛い過ぎる」等のコメントが「(ブルマを性的嗜好として消費するコメントとして)興味深い」と思い紹介したのであって、それ以上の深い意味はありません。小生が「長澤やピョ・ウンジのファン」というわけではない(他にもグラビアアイドルのブルマ着用記事はありますが紹介は省略します)。

*1:2005年、青弓社高橋一郎氏(1962年生まれ。大阪教育大学教授)、萩原美代子氏(1946年生まれ。文化女子大学名誉教授)らとの共著

*2:1950年生まれ。東京女子体育大学名誉教授。著書『日本における女子体育教師史研究』(2018年、大空社)

*3:1953年生まれ。朝日新聞経済部記者、シンガポール特派員、学芸部デスク、CSテレビ「朝日ニュースター」解説委員、朝日新聞労働担当編集委員論説委員兼務)など歴任。2011~2019年まで和光大学教授。著書『ルポ雇用劣化不況』(2009年、岩波新書)、『女性を活用する国、しない国』(2010年、岩波ブックレット)、『しあわせに働ける社会へ』(2012年、岩波ジュニア新書)、『ルポ賃金差別』(2012年、ちくま新書)、『家事労働ハラスメント』(2013年、岩波新書)、『正社員消滅』(2017年、朝日新書)、『これを知らずに働けますか?:学生と考える、労働問題ソボクな疑問30』(2017年、ちくまプリマー新書)、『10代から考える生き方選び』(2020年、岩波ジュニア新書)、『女性不況サバイバル』(2023年、岩波新書)等(竹信三恵子 - Wikipedia参照)

*4:著書『ルポ平成ネット犯罪』(2019年、ちくま新書)、『ルポ自殺』(2022年、河出新書)、『ルポ座間9人殺害事件』(2022年、光文社新書)等

*5:これについてはググってヒットした「時短」できるカセットこんろで、生徒の考えを深める時間を – 日本教育新聞電子版 NIKKYOWEB(2019.7.8)、授業での実験機会を増やす「理科実験用ガスコンロ」 – 日本教育新聞電子版 NIKKYOWEB(2022.7.11)を紹介しておきます。