【産経抄】5月7日(追記・訂正あり)

 英国の総選挙の結果が、日本時間のきょう判明する。労働党、保守党の二大政党に、自由民主党が加わった三つどもえの戦いを、小欄も興味深く眺めてきた。

・何故「興味深く眺めてきた」のでしょう。「英国自民党がのびたら日本でも第三極がのびる余地があるぜ」とか?。ただ英国自民党は経済政策では社民的(あるいは昔の自民党保守本流的)、安保でもハト派のようなので、日本で一番近い政党があるとしたら、多分産経はあまりお好きでない国民新党社民党なのですが。英国自民党がのびたからと言って産経が好きなネオリベ、または復古主義の「みんなの党」「日本創新党」「たちあがれ日本」がのびる保障はありません。
・保守党が第一党となりましたが過半数は取れず他党(特に第三勢力である英国自民党)の動向がどうなるかが重要ポイント。他党の動きによっては労働党政権が続行することもあり得るでしょう(もちろんその場合、連立政権で現首相・ブラウン氏は辞任するでしょうが)
・どんな政権が出来るにせよ、連立が不可避では、安定政権とはならなさそうです。
・保守党が過半数を取れなかったと言うことは保守党が支持されたと言うより労働党が支持を減らしたと言うことでしょう。
・なお、英国自民党世論調査から今回はのびるのではないかと期待されましたが、前回と同程度の議席のようです。死票が多い小選挙区制の欠陥でしょうね。ただ今回、労働、保守どちらも過半数を取れなかったと言うことで、英国自民党等の支持を得るため、小選挙区制度の改正(日本のように一部比例を取り入れ、完全小選挙区制をやめるなど)の可能性もゼロではありません。改正の方向に行って欲しいですがどうなることでしょう。

【5/16追記】
結局、保守・自民連立内閣のようです。クレッグ氏は副首相と言うことでかなりの好待遇のようです。いずれにせよお互い、選挙戦では批判しあっていたわけで、どううまくやっていくかが問題です。お互い変な妥協をすれば支持者の批判は避けられませんが、かといって全く妥協しないのでは政治がやっていけません。なお、産経抄が取り上げた核抑止力の問題は残念ながら、クレッグ氏が妥協し当面棚上げとなったようです。

 遊説中のブラウン首相が支持者の女性から、労働党政権が移民に甘すぎるとの批判を受け、車に戻ってからついた悪態の言葉だ。「なんてビゴテッド(偏屈)な女だ」。これを胸元からはずし忘れたテレビ中継用のマイクが、見事に拾ったからたまらない。

 一方、日本は「与党に帰化した人多い」など、酷い暴言(デマ発言)をブラウン氏のようにうっかりどころか、公然と吐いても謝罪せず、某全国紙もそれをスルーしたり擁護するという酷い状況です。

 英国生活の長いマークス寿子さんによると、移民の増加にともない、「福祉の悪用」の問題が深刻化しているという(『総崩れのイギリスそれでも踏ん張るイギリス人』草思社)。移民社会のなかで、失業手当や疾病手当などを搾取する“産業”がすでに生まれている。

 移民問題と福祉の悪用は直接は関係ないでしょう。移民の少ない日本でも生活保護の不正受給などはあります。「移民問題」と「福祉の悪用」をつなげるそうした言説自体、移民差別では?

子ども手当」を狙って、母国から他人の子をわが子として連れてくる例もしばしばあったというから、日本も人ごとではない。

 そこで民主の「子ども手当」たたきですか?(呆)

一方で、多人種国家であるこの国で、移民そのものを否定するのはタブーに近い。ビゴテッドは、「排外主義者」のニュアンスもあるから、余計に問題が大きくなった。

 ネットで私が見た情報によるとその女性は実際に「排外主義者」と疑われても仕方のない発言をしたようです。ブラウン発言は問題だと思いますが、石原都知事の暴言などと違ってある程度同情の余地はあります。公然と言ったわけではなくつぶやきですし、女性の側に何の問題もないわけではなさそうですから。

 3党首によるテレビ討論会では、保守党のキャメロン党首が移民規制を打ち出し、労働党以上に移民に寛容な自民党との違いを鮮明にした。自民党との連立も模索する労働党だが、安全保障問題でブラウン首相は、英国独自の核抑止力放棄を主張する自民党のクレッグ党首を、「現実離れ」と批判する。
 「学べば学ぶほど、(海兵隊が)連携し抑止力を維持していることがわかった」。わが首相が、訪問先の沖縄県で吐露したようなノーテンキな発言は、一切なかったようだが。

自民党というのは元々、労働党右派と自由党がくっ付いて出来た政党で労働党と保守党の中間の政党だったはずなのですが?。今や「労働党以上に移民に寛容」ですか?。へえ、歴史とは皮肉なものですね。
・ブラウン党首はクレッグ党首を「現実離れ(つまりクレッグ党首はノーテンキ)」と非難したと書きながら、「わが首相が、訪問先の沖縄県で吐露したようなノーテンキな発言は、一切なかった」と書く産経の神経はすごすぎます。自民党参加の連立政権が仮に誕生したとして少数与党のクレッグ氏が、多数派におもねって鳩山発言みたいなこと(例「学べば学ぶほど、英国独自の核抑止力が大切なことがわかった」)をすることはないと何故言えるのでしょう?。それはともかく、産経が核軍縮にそんなに好意的とは思いませんでした(本当は単に鳩山叩きするため、クレッグ発言に突っ込まないだけでしょうが)。
 もちろん私はクレッグ氏の主張する方向(核軍縮)にイギリスが進むことを世界平和の観点から望んでいます。
・それにしても、イギリスネタなのに鳩山批判につなげる強引さは酷いですね。