【産経抄】5月19日

 世の中にはうたぐり深い人がいるもので、報道各社が実施している世論調査を「たった1000人ほどに聞いただけで何が世論だ」「本当に電話しているのか」とケチをつける人が結構多い。「新聞社やテレビ局が談合して数字を決めているのでは」というはがきをいただいたこともある。

・まあ、そう言う人はいつの時代にもいます。抄子の好きな安倍内閣麻生内閣時代にもネトウヨという人は内閣支持率の低下にそんなことをいっていました。「疑り深い」と言うより「自分の考え(内閣を支持)」と「世論(内閣不支持が多い)」のズレをそう言う形で正当化、合理化しようとしているのでしょう。
・まだ、「こんなすばらしい内閣を支持しないなんて日本人はバカだ」「マスコミの中傷報道に踊らされている」「それが分かる俺ってお利口」の方が態度が傲慢でも「世論調査捏造」と言う根拠レスの陰謀論でないだけマシです。
・「国民の意見はそうでも、私は民主党を支持します」と言いづらい人が「国民も俺と同意見だがマスコミがねじ曲げている」という陰謀論に走るんでしょうか?。明らかに間違ってる陰謀論(事実の問題)より正しいかも知れない民主党支持(価値観の問題)の方が唱えやすいと思うのですが。
・ただし「たった1000人ほどに聞いただけで何が世論だ」というのは分かります(それが正しいという意味ではなくて)。統計学的には「1000人でOK」なのでしょうが、国民みんなが統計に詳しいわけではないですから。私も「選挙民は1000人どころではないのに何故1000人でOKなの?」と聞かれたら答えられません。

 オペレーターはちゃんと電話しているし、小社とA社が談合するほど仲がいいわけはないのだが、確かに内閣支持率は申し合わせたように各社とも20%前後でそろった。

・A社と書かずに朝日とはっきり書けばいいのに?。「仲が悪い」から名前を書きたくないのだとしたら、大人げない話です。
・まあ、仲が良い悪い以前に、商売上のライバルですからね。世論調査結果を一緒に捏造する動機なんかないでしょう。ばれたら大スキャンダルですし。
自民党の小泉郵政選挙での勝利(もちろん私はこれを評価しません)や、先の衆院選挙での大敗が見事に世論調査の正しさを証明していると言えるでしょう。大枠では世論調査通りの結果ですから。もちろん、世論調査が選挙に影響するという側面もありますが、さすがに「小泉自民党劣勢が大勝」、「麻生自民党優勢が大敗」に変わったりはしないでしょう。
・「申し合わせたように各社とも20%前後」で揃うのはもちろん当然です。調査日や質問文章、サンプル数の違い、などで多少の誤差は出るでしょうが、すさまじい差が出たらそれこそ異常です。調べていること(内閣支持率)は同じ、時期もほとんど同じなのですから。一人や二人ならともかく、世論調査結果に影響を与えるほど、人の考えが「朝日には鳩山政権支持って答えたけど、産経には鳩山政権不支持って答える」「昨日は鳩山政権支持だが今日は不支持」のようにころころ変わるとは思えません。
 もしすさまじい差があったら、どちらかの調査の調査方法がおかしいのではないでしょうか。

 そうなると小欄のへそまがりの虫が騒ぎ、鳩山政権のいいところを探し出してほめちぎってみたくなった。

 もちろん皮肉です。但し、後の文章を読む限り成功してる皮肉とは思えませんが。

 まずは首相の正直さと勉強熱心さをほめたい。首相は就任前、お友達に吹き込まれて沖縄に米海兵隊は不要だと信じていた。それを正直に告白し、半年間勉強した結果、「抑止力」という概念を学んだ。

・抄子には赤旗を読むことをおすすめしたい。赤旗を読む限り、「抑止力」と言う概念は非常に怪しいと思います。海兵隊は海外遠征軍で日本防衛のための軍ではありません。むしろ「アフガンやイラクに出兵しているんだから米軍の方が脅威じゃないの」「戦争抑止力どころか戦争を起こしているのが米軍」と言う赤旗の主張に私は共感します。
・首相の場合、失礼ながら「他人に影響されやすい信念のない人」or「アメリカに逆らったらまずいからとアメリカ様の言うことを聞くヘタレ」にすぎないのでは?。勉強熱心かどうかはともかくそう言うのは正直とは言いません。「米軍が抑止力って具体的にどういう意味?」「誰から何を抑止してるの?」「自衛隊だけじゃ何故ダメなの?」「米軍基地が沖縄じゃないと何故ダメなの?」(そもそも首相は「駐留なき安保」を過去に主張していたと思うのですが)と聞いたらしどろもどろになりそうですね。

 部下もつわものぞろいである。農水相は、宮崎県で口蹄疫がみつかってもメキシコやキューバ、コロンビアをキャンセルせずに訪問した。所管の緊急時より中南米との信義を大切にするとはよほど腹が据わったご仁とみた。

・いや、えひめ丸が沈没したのにゴルフを続けた森総理(当時)の方が「腹が据わったご仁」でしょう。ちなみにウィキペディア森喜朗」に寄ればこの時、「ゴルフ場にいても報告を受け、指示することは出来る」と言って森氏をかばう岡崎久彦氏の文章を掲載したのが産経です。なら、外遊しても「報告を受け、指示すること」は出来ますよね、産経さん(皮肉)
・外遊を口実にした観光旅行とかならともかく、外遊(外交)ももちろん大事なお仕事です。
・むしろ問題視すべきは、外遊したことではなく、口蹄疫を防ぐためにすべきことをしていたのかということでしょう(この点については詳しくないので態度保留。口蹄疫がなかなか収まらないので一見、政府がダメに見えますが、専門家でない私のような者が思いつきで何か言っても仕方ないでしょう)。
 外遊をやめても無為無策では結果は同じことですし、外遊しても適切な対応を打ったのならば、外遊に問題などありません。
・そのあたりをきちんとアピールできない政府・民主党の広報能力のなさは問題だと思いますが。
・いずれにせよ赤松大臣の高飛車な態度は問題だと思います。「反省やお詫びすることはない」と言ったそうですが、もう少し物の言い様には気をつけるべきでしょう。問題は解決したわけではなく現地の畜産農家口蹄疫に苦しんでいるのですから。
「現時点では重大なミスはなかったと思うが、私の気づかない落ち度があったのかも知れない。各方面のご意見には謙虚に耳を傾け、改めるべき所は改めたい」とでも謙虚に言えば少しはマシでしょうに。

 事業仕分けも表だけでなく、裏でも順調に進んでいる。「仕分け人」の中心人物である参院議員は、特殊会社西日本高速道路に何事かあるとかぎつけたようだ。役員会議にまで同席し熱血指導したそうな。

尾立源幸氏の件(仕分けの事前調査を口実に西日本高速道路に不当な政治的圧力を加えた疑惑)は昨日報道されたばかりなので、いきなりこんなことを書いてもたいていの人には何のことだか分からないでしょう。
・尾立氏って中心人物でしたっけ?。大体、何故名前を書かないのか?。これでは「参院議員って蓮舫のこと?」とか要らぬ誤解を生みます。
・こういう事件が起きたのは問題ですが、ここから一気に「だから事業仕分けなんか要らない」というのは論理飛躍でしょう(共産のような、それなりの根拠があるまともな仕分け批判はもちろんまた別の話です。仕分けを批判するなとか、仕分けが常に正しいなどと言いたいわけではありません)。仕分け人みんなが彼のような暴挙をしてるわけではないでしょう。
・とりあえず民主党の対応待ち。民主党が尾立氏を下手にかばうようなら「事業仕分けなんか要るのか」「まず尾立氏を仕分けよ」と皮肉を言われても仕方ないでしょうが、きちんとした対応(調査と処分)を取れば良いだけの話です。まずは尾立氏を仕分け人から解任することです。彼に仕分け人を続けさせても、もはや仕分けの信頼性が下がるだけでしょうから。
・まあ、鳩山首相小沢幹事長と違って、参院議員1期でまだ若い、つまり大した大物ではなさそうな尾立氏はきちんと処分されるでしょうが。新聞記事を読む限り、尾立氏のスタンドプレーであって、民主党が組織的に圧力をかけたわけでもないようですし。

【5/22追記】
・こう書いたのだがテレビニュースを見る限り、尾立氏は現時点では仕分け人として活動しているようだ。
赤旗の下記記事でも、共産議員の質問に対し、「現在調査中」「調査後しかるべき対応を取る」と答えたよう。尾立氏が関与してるからと言って仕分けを全否定する気はないし、西日本高速道路の件は、本当に「圧力を加える意思は主観的にはなかった」のかもしれない。しかし、疑惑を報道された人間はやはり仕分けから外すべきではないだろうか?

「民主議員「圧力」報道・「誤解招かぬよう要請」・山下氏質問に行政刷新相」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-05-21/2010052104_01_1.html

 最もほめたいのは、小沢一郎幹事長である。検察に3度も事情聴取され、側近が3人逮捕されても、まったく動じていない。議員辞職すれば、民主党の支持率は上がるはずだが、姑息な手段はとりたくないのだろう。首相も「がんばって」と励ましている。こんな立派な人々が担っている政権なのに、支持率が20%とは世間も見る目がない。

・疑惑まみれでも議員辞職しなかった人間は他にも沢山います(リクルート事件時の自民党幹部議員など)。議員辞職しても立候補して、当選したからみそぎは済んだという人間(加藤紘一など)も沢山います。
 一審で有罪判決が出ても、確定判決が出るまで辞めないと、なお辞めない人(ロッキード事件田中角栄、ゼネコン汚職中村喜四郎など)すらいます。
 で、そう言うとき、産経は批判してましたっけ?。赤旗が批判するのならともかく産経が批判しても説得力ゼロです。