【産経抄】7月28日(追記・訂正あり)

 今日の産経抄は産経らしいトンデモなクオリティ。政治のことを書くのはやめた方が良いと思う。昨日みたいなほのぼのコラムを書いてればいいんですよ。突っ込みネタ提供はありがたいですが。

両雄並び立たず、ではなく、両雌並び立たず、と書いたら怒られるだろうか。

 「そんな言葉はない」「変な言葉を作るな」と右派は怒るでしょうし、「女性差別ではないのか」と左派も怒るでしょうね。

 「総理、総理」と威勢のいい追及で名を挙げた辻元清美衆院議員が、独断に近い形で政権離脱した福島瑞穂党首のやり方に我慢ならず社民党に三下り半を突きつけた。

・「独断に近い」というのは何が根拠なんでしょうか。
 そもそも、「福島氏の独断」であろうと、幹部たる辻元氏が、そのときに反発して離党したならともかく、了承したのに選挙に負けたら非難するというのは話になりません。勝ったら非難はしなかったんでしょうか。そういうのってご都合主義ですよね。
 鈴木宗男を「疑惑のデパート」「疑惑の総合商社」と過去に言っておきながら、彼が衆院外務委員会委員長に就任することを与党三党が支持すると、「すみませんでした」と鈴木に泣きを入れるような人ですから仕方ないんでしょうか?(毒)
 あの時は党のためにしぶしぶ涙をのんだのかと思いましたがどうやらそんなきれい事ではなかったようです。副大臣になりたいがためだったんでしょうね。いわゆる「大臣病」。まあ与党になれば二度と秘書給与詐取疑惑追及のようなつらい目に遭わないでしょうからいいんじゃないでしょうか(皮肉)。あの時、出版した「なんでやねん」を彼女はどう思っているのでしょうか。黒歴史ですか、やっぱり(苦笑)
・大体、あの時点で離脱しなかったら、また社民党は裏切ったと言われさらに議席を減らしていたでしょう(実際、離脱した時点では、筋を通したと評価され世論調査社民党支持率もある程度あがっています)。
 社民党議席を減らした理由はそんなこと(政権離脱)ではないでしょう。
 と言っても自分さえ良ければそれで良いらしい、幹部としての責任感ゼロの辻元氏の耳には届かないでしょうが(まあ、この判断が彼女の立身出世という観点に限っても本当に良かったのかは現時点では何とも言えませんが)。
 「本当につらいときにいてくれるのが真の友」(←正確な表現は不明)という趣旨の言葉も確かありますし、彼女は社民党にとって真の友ではなかったんでしょう。彼女にとっては社民党は出世の階段の一つに過ぎなかったんでしょう(もしかしたらピースボートも?)。
 マスコミ受けする人間が一人いなくなったことは少なくとも短期的には苦しいでしょうが、偽りの友が一人いなくなったことで団結を強め、頑張って欲しいとは思います。

 社民党のポスターに、福島党首と辻元氏のツーショット写真が使われ、てっきり仲がいいと勘違いしていたが、そうでもなかったらしい。4時間にわたって懸命に慰留したのは、重野安正幹事長で、福島党首の説得は形だけだったようだ。

 ツーショット写真だから仲が良いって(苦笑)
 それはともかく、慰留したのが重野さんだからといってそれだけで、福島氏の説得が形だけとは言えないと思いますが。そう言うのは苦手な方なのかも知れません。説得中に辻元氏にぶち切れたりしたらまずいでしょうし(短気な私が辻元氏の相手をしたら「勝手なことばかり言うな」と確実に切れると思います)。

 党首候補が家出したため、社民党の国会議員は10人のみとなり、ミニ政党並みに落魄してしまった。前身の社会党が往時には、衆参で250人以上もの議員を抱えていたのが信じられない。

「党首候補が家出」
 離党を「家出」とネガティブに表現するのはいかがなものでしょうか。過去にも離党劇はたくさんありますがそう言う表現をしたことが過去にありますか、産経さん?
 もちろん私はあの離党を評価はしませんが。

「ミニ政党並みに落魄」
 いや、以前から社民党はミニ政党ですよ。彼女が離党しても議席数は1議席減に過ぎません。ご存じなかった?

「前身の社会党が往時には、衆参で250人以上もの議員を抱えていたのが信じられない。」
 おっしゃるとおりですが「何を今更」ではあります。それと当時の社会党議員のかなりの部分は民主党に移っています。

 実は消滅したはずの社会党の伝統は、社民党ではなく、しっかりと民主党に息づいている。社会党の有力参院議員の多くは、総評系労組出身者だったが、今回の参院選でも総評と同盟が合体した連合傘下の労組幹部11人が民主党から出馬、10人当選した。

 で、それが何か?。労組出身であることは別に悪ではありません。
 また民主党には労組出身以外にも議員はいますし、同盟系(旧民社系?)はかなり右寄りなんですが。
 それと社民党と労組の関係(抄子のいう「社会党の伝統」?)はなくなったわけではありません。

 参院民主党のドンは、日教組出身の輿石東氏だ。人格識見に秀でているからだろうが、議員会長として臨んだ参院選で大敗しても責任を問う声はなく、めでたく会長4選を果たした。

 産経抄というネタにマジレスしてもしょうがないんですが、輿石氏の代わりに火中の栗を拾う人間がいないと言うだけでしょう。無投票ですから。
 また輿石氏の責任を問えば、菅首相、仙谷官房長官、枝野幹事長の責任も問わざるを得なくなります。敗戦責任は輿石氏だけにあるなんてのは筋が通りませんから。反輿石はどうしても反菅、反仙谷、反枝野となるわけでこれはかなりのパワーがいります。
 この3人が素直に非を認めて辞職すれば話は別ですがそうじゃないですから。

 輿石氏も昔は社会党議員だった。辻元氏が社民党を捨て、民主党になびくのも何の不思議はない。

・彼女が民主党になびくのは別に社会党関係者がいるからではなく、単に政権与党の一員になりたいからでしょう。もちろん社会党関係者がいるので言い訳しやすいとか、人脈を使って潜り込みやすいとかという彼女にとっての「利点」はありますが。
・政権与党の一員でいるためには「県外移設」公約を破ることなど彼女にとってどうでもいい訳です。
 最後まで政権離脱に反対し、副大臣ポストに未練たらたらだった、という巷の噂は悲しいことに事実だったようです。
・たとえるなら中小企業の重役で苦労するより、大企業の部課長(頑張れば重役もあり得るし、それが無理でも中小企業の重役より苦労は小さい?)になりたいと言うことでしょう。「寄らば大樹の陰」です。気持ちは分からないでもないですが、それだったら、最初から自民なり民主なり与党ないし最大野党に入れば良かった話であって、支持者や国民を馬鹿にしています。
 ただし政権与党になりたいとはいえ、自民党与党時代に、自民に入るほど恥知らずではなかったと言うことでしょう(そんなことをしたら支持者の総スカンで落選の危険すらありますが)。
 いずれにせよ、今が「自分を高く売る」絶好機というのが彼女の判断と言うことでしょう。福島氏のように党首でなくて良かったと思っているかも知れません(「党首が離党」「社民党丸ごと民主入り」は不可能ではありませんが困難ですから)。
 わかりやすい権力亡者ぶりだと思います。彼女は政権亡者と言われたくないから必死に言い訳していますが。まあ、言い訳は野党議員が与党入りしたり、野党が突然与党と連立(自自、自公など)を組んだりするときのいつものお約束ですね。
 彼女が目を見張る成果を発揮すればこの批判意見はもちろん撤回しますが、過去のパターンと同じで、まずないでしょう。

【追記】
以下のエントリは辻元離党に好意的ですが私はとてもそんな気にはなりません。(抄子の辻元叩きは不愉快ですが)
「kojitakenの日記:辻元清美氏の社民党離党に関する、保坂展人氏と「小沢信者」の落差」
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20100728/1280270920

「本日の産経SHOWと阿久根政界NOW:下種の勘繰り」
http://d.hatena.ne.jp/slapnuts2004/20100728/p1

むしろ以下のようなエントリに共感します。有罪判決が出てもめげない辻元氏の精神のタフさは評価しますが、それが権力あさりにいかされたのが今回の件でしょう。
広原盛明のつれづれ日記:辻元議員の社民党離党をどうみるか」
http://d.hatena.ne.jp/hiroharablog/20100728/1280285844

 辻元議員は遠からず民主党に入ることは99%確実だろう。だがそのときに、辻元議員は果たして「憲法9条を守り、弱い立場の人たちの政治を目指し、普天間基地問題の解決のために頑張れる」のか。改憲を掲げ、普天間基地辺野古移設を強行し、派遣労働者原文ママ、派遣労働の誤記)を野放しにし、年金を生存レベル以下に放置し、消費税増税を画策し、おまけに衆参比例定数削減を強行しようとする民主党政権のなかで、いったい「何を頑張る」のか。

「醍醐聰のブログ:ツバメの渡りと政治家の渡り」
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-8c49.html

 (辻元氏から)聞こえてくるのはひたすら与党に身を置きたいという、自己愛過多で、多数党へすりよる言葉ばかりである。同議員のこうした本性は社民党が政権から離脱するのに伴って、国土交通副大臣を辞任する時に、未練がましく大泣きしたあの子供じみた姿に既に現れていた

「大藤理子の政治時評:「危機的状況」を理由にすれば自己保身もごまかせるしね、やっぱ賢いわあ、清美ちゃん」(週刊金曜日2010年8月6日・13日合併号)
→詳しい内容は図書館ででも読んでください。
 

 なお、id:kojitaken氏の小沢支持者は辻元離党を批判し、そうでない者は好意的と言う認識は端的に言って間違っています。
 私は、小沢氏は嫌いですが今回の辻元離党を評価しません。
 一方、id:pompom20氏は自他共に認める小沢びいきでしょうが、彼は今回の離党については、そう言う考えもありではないか、このまま社民党が消滅する(そう決まったわけではないがその可能性もある)よりは民主に合流するのも良いのではないか、と言うブクマをつけており必ずしも否定的ではありません。