今日のMSN産経ニュース(9/11分)(追記あり)

■【産経抄】9月11日
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130911/plc13091103290004-n1.htm

今日の産経抄はマジで酷いですね。その分突っ込みやすいですけど。

日本が戦争に負けた昭和20年8月15日、中国国民政府の蒋介石はラジオで国民や兵士に呼びかけた。「怨を以(もっ)て怨に報いてはならない」。中国に残る日本軍への勝手な報復を禁じたのだ。この言葉に感激した当時の日本人は多かったという。
▼その蒋介石のライバルで中国共産党を率いた毛沢東は昭和47年、国交回復のため北京を訪れた田中角栄*1首相ら*2に、こう語った。「もうケンカは終わりましたか」。田中も日本国民も「大人(たいじん)」然としたその言葉にうたれた。そして中国ファンや毛沢東ファンが増えていった。
▼自らを「大人」としてふるまい、相手を圧倒したり懐柔したりする。中国一流の外交術である。蒋介石は日本人を味方につけることで、戦後台頭する共産党を抑えようとした。毛沢東にしても、日本側の心を取り込んで交渉を有利に運ぼうとしたことは間違いない。

蒋介石演説に外交戦術って面はそりゃあるでしょう。しかし「だから感謝しなくていいんだ」と言いたげな産経には呆れますね。
 向こうだって外交戦術ってことは認めた上で「産経は何様だ?」と呆れるしかないでしょう。
 蒋介石演説がなかったらどうなっていたか。反日感情に燃える中国人が日本人を殺しまくるという惨状が生まれたかも知れないわけです(なお、産経は何故か蒋介石毛沢東の対日賠償請求権放棄については触れていませんがここで触れておきましょう。これだって単純な善意の訳はないですし、蒋介石の場合、同盟国米国からの「放棄しろという圧力」もあったわけですが感謝すべきでしょう)。
 大体、外交なんてどこの国だって「単純な善意」の訳がない。
 産経がべた褒めする「東日本大震災時の米軍のトモダチ作戦」は「沖縄基地問題での米軍批判をやわらげる」という目的があるわけです。産経風に言えば『自らを「大人」としてふるまい、相手を懐柔しようとする米国一流の外交術』です。
 産経がべた褒めする「東日本大震災時の台湾からの巨額の支援金」は産経風に言えば『自らを「大人」としてふるまい、相手を懐柔しようとする台湾一流の外交術』です。
 でもそういうこというと怒り出すのが産経でしょうに。前から知ってはいますけどどれほどデタラメな新聞なんですかね。そして「トモダチ作戦や台湾の義援金を冷静に受け止めよう」と言う人間(左派が多い気がします)でもさすがにこの文章の産経のように「感謝しなくていいんだ」とは言わないでしょう。動機が何であれ、ありがたい行為ではあるわけですから。
・しかし蒋介石健在時には産経は「偉大な蒋介石の演説に感謝しよう」と天まで高く持ち上げてたのにね。
 ま、国民党が中国接近を強め、民主進歩党がそれを批判してるからこうなるんでしょうが、蒋介石健在時には「蒋の民主進歩党弾圧を黙認してたのが産経」です。どこまでもご都合主義な産経。

東京が五輪開催都市に選ばれたとき、中国がこの「大人」作戦に出るのではと、内心恐れた。習近平*3氏が安倍晋三首相に祝電を打ち「大いに協力したい」と語る。尖閣近辺の領海侵犯も当面控えでもすれば、日本人の嫌中感も和らぎ、手玉に取られると思ったからだ。

・手玉に取るとかそういう事じゃなくて祝電なんて普通の外交儀礼でしょうに。
「日本が当選して不愉快だ」と語るとか、「だから祝電なんか送らない」という態度を取るとか、できるわけもないでしょう。そして尖閣問題で領海侵犯を控える(今のところ控えてないみたいですけど)ならいい事じゃないですか。そんなに中国と険悪な関係でいたいのか?
・ただ産経『【東京五輪決定】中国、祝意避け「歴史と現実正視せよ」 早くも五輪を政治利用』(http://sankei.jp.msn.com/world/news/130910/chn13091008430000-n1.htm)によれば中国五輪委員会は祝電を送ったものの、習近平国家主席からの祝電は今のところないそうですが(一方韓国は劉震龍文化体育観光相が下村文科相宛に祝電を送ったそうです。参考:時事通信東京五輪決定で祝電=韓国』(http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013090900836))。
・しかし政治利用って。早速「東京五輪アベノミクスの四本目の矢」だの「IOCも福島の汚染水処理を評価してくれた(というよりトルコは隣国シリア情勢が、スペインは欧州経済危機が不安だっただけでしょうに。それでも俺は日本以外にすべきだったと思いますが。福島事故は充分シリア情勢や欧州経済危機に匹敵する、いやそれどころか凌駕する問題事件ですよ)」だの政治利用してるのは日本ウヨだと思いますが。

実際には正反対だった。祝電どころか、会見した外務省報道官は「日本側は歴史と現実を正視するように」と、相変わらずギスギスした言葉を投げかけた。一昨日は尖閣諸島近くに無人機を飛ばし、昨日は公船が領海を侵犯、日本への挑発行為を繰り返す。

だって「五輪の祝電」と「尖閣や歴史問題(靖国)」はまた別物ですから。ま、俺個人的には「歴史認識問題での苦言」は問題ないと思いますが、尖閣問題で飛行機飛ばしたり、船を出したりするのは自重した方が良かったんじゃないかとは思います。

招致成功で安倍首相への支持が高まるのが怖いそうだ。

誰がそんな事言ってるんでしょうか?。正直、「福島汚染水処理問題で『問題はない』と世界に向けて明らかな嘘を公言したこと」は今後「汚染水処理がうまくいかなければ」、「支持落下」の原因になり得ると思いますが産経も随分能天気なもんです。

だから極力無視しようということらしい。

つうより、今の政治情勢(日中間がぎくしゃくしてる)で下手に「おめでとう、おめでとう」と言えば安倍が「中国が俺に屈服した」と勘違いして調子に乗って何するかわからないと思ってるんでしょ。

だがそれでは「隣国の五輪開催さえ祝福できない国」との印象を世界中に与える。

 中国五輪委員会は祝意を表明していますけどね。中国政府高官レベルの祝電がないだけです。
 そして北京五輪の時、「チベット問題などをネタにウヨ(産経を含む)が祝福してなかったこと」を平気でスルーできる神経には呆れます。 
 まあ、安倍が首相でなくても「汚染水問題だけ」でも手放しで「五輪万歳」なんて誰も出来ないと思いますよ。産経のような鈍感バカ以外は。

*1:岸内閣郵政相、自民党政務調査会長、池田内閣蔵相、自民党幹事長、佐藤内閣通産相などを経て首相

*2:大平正芳外相(後に首相)を「ら」で済ませるのは失礼では?

*3:福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席(党中央軍事委員会副主席兼務)などを経て現在、国家主席、党総書記、国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席