今日のMSN産経ニュース(12/1分)(追記あり)

■【北朝鮮拉致横田めぐみさん事件は「偶発的犯行」ではなかった?
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131201/crm13120118000007-n1.htm
 11/28にあった巣くう会の集会でこういう放言があったんだそうです(後で巣くう会サイトや、荒木、島田、西岡といった巣くう会関係者の個人サイトで報告があるでしょうからそのときは突っ込みます)。
 まあ、普通に考えて「(めぐみさんに工作員が目撃された事による)偶発的犯行」でしょうね。政府はそういう認識だし、従来は巣くう会もそう主張していたわけです。
 「15歳の少女を計画的に拉致した」「彼女の日常生活をあらかじめ詳細に調べいつどこで拉致するか綿密に計画を立てた」とかあり得ないでしょう。大体何のために「めぐみさんを計画的に拉致する」のか。
 大体「15歳の少女拉致」なんか彼女しかいないし(少なくとも政府は彼女以外に彼女と同年代の少女、つまり女子中学生や女子高生が拉致されたなんて認定していません)。産経も巣くう会一味も言うことがすごいですね、悪い意味で。

 めぐみさんが拉致される約30分前、現場のすぐ近くで不可思議な事案が起きていた。女子高校生が北朝鮮工作員とみられる不審な男2人につきまとわれていたのだ。
 男たちは帰宅途中の女子高生の前方からやってきて、すれ違った。その後、振り返ると男たちは女子高生を尾行していた。恐怖感を覚えた女子高生はすぐ近くの自宅まで駆け込んだ。2人の男について、恵谷さんは「(朝鮮労働党の工作機関である)作戦部所属の戦闘員と在日の工作員ではないかと推定する」と指摘した。

 やれやれですね。
 「単に不審者が女子高生の後ろをついてきた」と言うだけの事件を「女子中学生のめぐみさんがその直後、拉致された」「女子高生が不審者につきまとわれた場所は佐渡でめぐみさん拉致現場と同じ」というだけで「不審者は北朝鮮工作員では?」「つまり北朝鮮は女子中学生や女子高生を計画的に拉致しようとしていたに違いない」と放言できる恵谷治と「恵谷の寝言を記事に出来る産経」のトンデモぶりには呆れます。大体「計画的拉致を実行しようとしている工作員」なら「前方から来てすれ違った段階」で襲いかかってるでしょうに。拉致対象に近づきながら襲いかかることもせずにまんまと逃げられるとは、随分と間抜けな工作員がいるものです。
 「女子高生によからぬ事をしようとする単なる変質者、痴漢」と考えない理由は何でしょうか?
まあ、「偶発的犯行」というより「計画的犯行」と言う方が「世間の北朝鮮への反発が高まる」という判断なんでしょうがこんな怪しい話を誰が信用するのか?
 しかも「小泉訪朝直後ならまだしも、訪朝から10年経ってからこんな事を言い出す」なんて「ああ、めぐみさんの事件すら風化しつつあるからこういうこと言って北朝鮮への反発を高めようとしてるのか。お粗末な連中だな」としか俺は思いません。
 まあ、そもそも「よほど堅い証拠(この程度では全然堅くありません)」でもない限り「計画的犯行」なんて言えないし、そもそも「問題解決(拉致被害者の帰国)」において「偶発的か計画的か」を知る必要は必ずしもないですが。


■【産経抄】国際親善に尽くされる両陛下 12月1日http://sankei.jp.msn.com/life/news/131201/edc13120103090000-n1.htm
 天皇・皇后のインド訪問を前に「パル判事はあの戦争を侵略戦争とは認めなかった」といういつもの産経です。タイトル「国際親善に尽くされる両陛下」と内容がまるであっていない。もちろん両陛下は産経のような認識じゃないでしょうしインドで「産経が望むような大東亜戦争擁護論」を主張することもないでしょう。そもそも日本政府公式見解はそんなんじゃないし。
 それはともかく「パルが戦前日本の戦争を擁護したのが事実だとして、だから何だ」という話です(id:pr3さんが黙然日記『産経抄インド象観』(http://d.hatena.ne.jp/pr3/20131201/1385990866)で指摘するように産経の主張では本当か眉唾ですが)。パルがそういう認識だったとしても、それは国際社会のスタンダードでは全くない。東京裁判の判事はパル以外はそんな認識じゃないわけです。だから東条英機などに死刑判決が出た。そしてパルがそういう認識だったとしても、それはインドの公式見解でもない。

まだ占領下にあった昭和24年には、東京の子供たちの願いを聞いてネール首相がゾウの「インディラ」を上野動物園にプレゼントした。

 中国が日本にパンダをプレゼントしても感謝しない癖に何を言ってるんでしょうか?
 「パンダは日中友好という政治的目的がある」「いわゆるパンダ外交であり、単なる善意じゃない」というならインドだって同じです。「単なる善意じゃないゾウ外交」でしょう。
 またid:pr3さんも黙然日記『産経抄インド象観』(http://d.hatena.ne.jp/pr3/20131201/1385990866)で指摘していますが「日本とインドの友好(インド象のプレゼント)」=「大東亜戦争擁護論」でもありません。大体、日本政府の公式見解は「大東亜戦争は聖戦ではない」なんだからそういう話になるわけがない。

昭和35年、皇太子・同妃時代の天皇、皇后両陛下がインドを訪問されたとき、そのネール首相はこう演説した。「日本の政策には同意できたもの、できなかったものもあったが、つねにわれわれは日本と日本国民、その美徳を尊敬してきた。日本は偉大である」。

 「同意できなかった物(戦前の侵略のことでしょう)もある」とはっきりとネールが言ってるのに何で「パルとネールを同一視できる」んでしょうか。
 後半の「日本を常に尊敬してきた」ってのは国賓へのリップサービスでしょうよ。この程度の発言を「ネールも大東亜戦争大義を支持していた」と強弁するのは酷いデマカセです。

同時に国民としてはこの機に、パール博士をはじめ他に例を見ないインドとの交流の歴史を思い起こしたいものだ。

 「他に例を見ない」って、インドと比べて距離も近いし、「中国や韓国との交流」の方が歴史的によほど深いと思うんですけどね(遣隋使、遣唐使日宋貿易日明貿易とか朝鮮通信使)。まあ、産経にとって中国も韓国も大嫌いだからそういうことを言いたくないんでしょうけど。


【追記】
黙然日記『産経抄インド象観』(http://d.hatena.ne.jp/pr3/20131201/1385990866)が産経抄に突っ込んでいますので紹介しておきます。

引用されているネール首相の演説も、「日本のいいところはいい、悪いところは悪い、いいところは尊敬する(しかし悪いところは……)」という含意のある、外交辞令としては厳しいものです。

ですよねえ。産経のことだからてっきり

日本の政策には同意できたもの、できなかったものもあったが

と言う部分は勝手に「省略して」

つねにわれわれは日本と日本国民、その美徳を尊敬してきた。日本は偉大である

という社交辞令の所だけ紹介するインチキ紹介で「ほら見ろ、インドは日本を常に尊敬してきたんだ」と強弁するかと思いきや

日本の政策には同意できたもの、できなかったものもあったが

を紹介しながら「ネールが大東亜戦争肯定論者(つまり産経のお仲間)」であるかのように言うんだから呆れます。
まさかとは思いますが産経は

ネールが同意できる日本の政策=大東亜戦争
ネールが同意できない日本の政策=戦後の自虐史観教育

とでも思ってるんでしょうか。そんなわけがない。