今日のMSN産経ニュース(3/31分)(追記・訂正あり)

■「日本の世論学びたい」 ケネディ大使が自民女性議員と花見弁当で交流
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140331/stt14033122000007-n1.htm

 安倍晋三*1首相が女性の社会進出を促す施策を打ち出していることには「好感が持てる。日米でお互い切磋琢磨(せっさたくま)してやっていかなければならない」と語った。

 まあどう見てもリップサービスに過ぎないでしょうがそれはさておき。米国だって日韓・日中関係を悪化させる安倍の極右ぶりに不快感を感じる一方で沖縄基地問題での米国べったりには「うい奴」「都合のいい奴」と思ってるのでしょうし、うかつに安倍打倒なんかやって後継政権がぐちゃぐちゃになっても嫌だという思いもあるのでしょう。
 まあ、ポスト安倍が石破*2幹事長でアレ、麻生*3財務相・副総理でアレ、誰でアレ、誰かはっきり固まって「それが安倍より米国にとって都合がいい」と思えばそのときは容赦なく安倍なんか斬って捨てるでしょうけどね。まだその時期ではないんでしょう。
 なお、この種のことを安倍が「米国は俺を支持してる」と大宣伝するであろう事は間違いないでしょう。まあ、「祖父・岸信介*4元首相とは違いどう見ても賢明には見えない」安倍の場合「自己正当化としての宣伝」ではなく本気で「なんだ、靖国参拝しても日米関係に問題ないじゃん、ケネディ女史が俺を褒めてくれた」と勘違いして変な暴走しかねないところが日本国民にとっても国際社会や米国にとっても恐ろしいところです。


■日本の調査捕鯨は条約違反 国際司法裁判所
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140331/asi14033119080002-n1.htm
 判決の是非はともかく、素朴に疑問ですね。何が疑問かというと判決内容ではなく日本が訴訟に応じたことです。
 どこまで日本が本気かはともかく「竹島問題をICJに提訴しよう」という日本の主張に韓国が応じないために竹島問題で訴訟が成立しないことでわかるように、ICJ訴訟は相手が訴訟を応諾しない限り訴訟が成立しません。にもかかわらず日本はオーストラリアの提訴を応諾し、その結果、敗訴。
 1)今の調査捕鯨を「判決内容を満たす内容」に大幅に修正するか(それが可能か知りませんが)
 2)調査捕鯨それ自体をあきらめるか、という厳しい選択を迫られるわけです。
 少なくとも今までの調査捕鯨は出来なくなった。
 応諾しなければこんな窮地に陥ることもなかったんですが
1)勝つと気楽に考え自滅した
2)勝つか疑問なので応諾したくないが応諾しないと日豪関係や日米関係などがまずくなりかねないので応諾せざるを得なかった、さすがにクジラのためにそこまで外交を犠牲に出来ない(欧米の国の多くは反捕鯨です)
3)正直、「クジラ肉が売れない」ので、赤字垂れ流し事業と化してる捕鯨水産庁は辞めたいが、政治家の圧力で「辞めたい」とは言えない、辞められない状況になっていた。なのでオーストラリアの提訴を「負けても構わない」「いやむしろ負けて辞める口実にしたい」とばかりに乗っかった、当然訴訟態度もすごくいい加減
のどれなんですかね。まあ、2)や3)だとしても捕鯨関係者相手に正直に言えるわけもなく「1)だ」とした上で、「我々の訴訟進行が不手際で負けて申し訳ありませんでした」と言う以外にないでしょうが。

【追記】

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140401/trl14040107590001-n1.htm
産経新聞『日本捕鯨「科学」認めず 南極海敗訴 支持国中露も「中止」』
 ICJに提訴された場合、義務的に応じなければならないとする強制管轄権を認めず、竹島問題の付託を拒否している韓国と異なり、日本は強制管轄権を認めているため受けて立たざるを得なかった。

 つうことで小生愚かにも知りませんでしたが日本は「ICJに訴えられたら常に受け入れる」と約束しているため、提訴されたら受け入れるしかないんだそうです(一度そういう約束をしたら撤回できないのかとか、何故そういう約束をしたのか気になるところです)。
 つうことで上に書いたこと(受け入れたのには何か理由があったんじゃないか)は成り立たないようでどうもすみません(一応上の文章をそのまま残しておきますが)。
ただ
1)勝つと気楽に考えていたのか
2)勝つか疑問だが「常に受け入れ」を約束して応諾せざるを得ないので、応諾したが勝つ自信はないのか
3)「負けても構わない」
だったのかは気になるところです。



■【産経抄】中国が仕掛ける情報戦 3月31日
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140331/chn14033103170000-n1.htm
 情報戦も何も南京事件は実在の事件ですが。それに対し「南京事件などなかった」という産経はお話になりません(つうか以前連載していた蒋介石秘録で、南京事件について「10万人単位の虐殺」を産経が事実上認めていたこととの整合性はどうなっているのやら?、この件についてはたとえば産経愛読者倶楽部『産経新聞・住田良能社長は南京「40万人虐殺」を取り消せ』(http://d.hatena.ne.jp/sankeiaidokusya/20110220/p1)を参照)。
 大体「南京の人口は20万人だから30万人の虐殺はあり得ない」というのは「古典的かつ有名なデマ」「過去に何度も論破されているデマ」「もはやまともな議論の対象にならないデマ」で南京事件について一定の理解がある人にとっては呆れる他はない低レベルなデマです。産経が無知だからこういうデマを流すのか、「デマをデマと知りながら故意に流すのか」知りませんが、こんなデマは南京事件について無知、不勉強な人相手にしか通用しません。
 このデマについて、詳しくはたとえば「南京の人口は増えたのか?」(http://www.geocities.jp/yu77799/jinkou2.html)をご覧下さい。
 詳しくはリンク先を見てもらえればと思いますが、要するに「外国人が管理していていくらか安全な南京安全区の人口が20万から25万に増えた」に過ぎず、「南京市の人口が増えたわけではない」という話です。しかも「20万」「25万」は推計値に過ぎません。って、以上の文章は実は小生の過去エントリ『今日のMSN産経ニュース(6/25分)(追記・訂正あり)』(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20120625/5314918653)とほとんど同じですが。

事件直後に「大虐殺」を最初に紹介した英国のジャーナリストと、中国国民党の中央宣伝部とのつながりも明らかになっている。

これまた小生の過去エントリ『今日のMSN産経ニュース(6/25分)(追記・訂正あり)』(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20120625/5314918653)で突っ込んでいますが改めて突っ込みます。
 この英国人ジャーナリストとはティンパーリーという人物です。産経がはっきりティンパーリーの名前を書かないのは調べられると都合が悪いと自覚してるからでしょう。
 俺の理解ではこのティンパーリーへの言いがかりはたぶん、北村稔「南京事件の探求」(文春新書)が一番最初ではないかと思います。
 実はウィキペ「ティンパーリー」を読むだけで、この産経文章のウソはわかります。事件が発生した1937年当時のティンパーリーはマンチェスター・ガーディアン紙やAPの特派員でした。
 彼が国民党中央宣伝部の顧問になるのはその後の1939年〜1943年のことです。どう考えても南京事件報道などからティンパーリーの能力を高く評価した国民党政府がスカウトしたとしか見なせないでしょう。「中国国民党の広報担当だから南京事件を報じた」のではなく「南京事件を報じたから中国国民党の広報担当になった」のであり、全く因果関係が逆です。
 産経の行為は「元ジャーナリスト」猪瀬直樹石原都知事の子分「副知事」になったことを理由に、「石原ごときの子分の本だから」と「子分になる前のジャーナリスト時代の本」を問答無用で切り捨てるような暴挙です。まあ、石原の子分に平気で今はなれる猪瀬は、いつの時点か知りませんが「ある時点で」ろくでもないごろつきに転落したんでしょうが。
 そもそもティンパーリーは「南京事件を報じた著名なジャーナリストの一人」ではあっても「彼一人だけが報じた」わけではないので彼に因縁をつけても無意味です。


【追記】
1)【編集日誌】国家主席の「有害」発言
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140331/chn14033108010001-n1.htm
 産経抄だけでなく、このコラムでも産経は「南京の人口は20万人だから30万人虐殺はあり得ない」と言うデマを流しています。
 そもそも少し調べれば「南京の人口が30万人を超えてること」「したがって産経の言うような意味で『30万人虐殺はありえない』ということは成立しないこと」はわかりますが、それ以前にいくらこの問題に無知な人間でも
・産経の言うようなことに「産経以外のメディア」やプロの歴史学者が気付かないなどと言うことは常識で考えてあり得ない
・中国国家主席ともあろう者が「ブレーンもいるのに」産経の言うようなバカ発言をやるとは常識で考えて思えない
と考えるでしょうね。まともな常識があれば。
2)黙然日記『産経、モグラる』(http://d.hatena.ne.jp/pr3/20140331/1396283869)を見てみましょう。

 両コラムとも口を揃えて、「当時の南京の人口は20万人、どうやって30万人殺すのか」とやっているのですが、読まされる方はうんざりです。「永久機関を発明したぞ!」という雄叫びに対して、いちいち「エネルギー保存則があるから不可能なんだよ」と説明するときの徒労感ですね。

 全くおっしゃるとおりで「何度も笠原十九司*5ら研究者に批判されてるデマ」ですからね(『南京事件:「虐殺」の構造(増補版)』(2007年、中公新書)の著者・秦郁彦はどうか知りません。まあ、さすがにここまで酷いのは秦も批判してると思いますが。ただ慰安婦問題での秦の主張*6 があまりにも酷すぎるので秦の南京事件研究は読む気ないですね。「南京事件のおおざっぱな内容理解」とか「ウヨのデマはどこがデマなのかをおおざっぱに理解する」レベルなら笠原本を読むだけで充分でしょう)。
 上にも書きましたが「20万人」は南京安全区であって南京市じゃありませんから。
 市町村を含めた「東京都の人口の話」をしてるのに「東京23区にはそんなに人がいない」というくらいとんちんかんです。
 笠原氏らの批判を知らないなら無知だし、知ってて言ってるなら嘘つきだし、どっちにしろどうしようもありません。

*1:小泉内閣官房副長官官房長官自民党幹事長(小泉総裁時代)を経て首相

*2:福田内閣防衛相、麻生内閣農水相自民党政務調査会長(谷垣総裁時代)を歴任

*3:橋本内閣経済企画庁長官、森内閣経済財政担当相、小泉内閣総務相、第一次安倍内閣外相を歴任

*4:自民党幹事長、石橋内閣外相を経て首相

*5:著書『南京事件』(1997年、岩波新書)、『南京難民区の百日:虐殺を見た外国人』(2005年、岩波現代文庫)、『南京事件論争史:日本人は史実をどう認識してきたか』(2007年、平凡社新書

*6:著書『慰安婦と戦場の性』(1999年、新潮選書)、『歪められる日本現代史』(2006年、PHP研究所)など