今日の産経ニュース(8/22分)(追記・訂正あり)

■【緯度経度】暴君ネロ並み 習政権の苛烈なキリスト教弾圧 古森義久
http://www.sankei.com/column/news/150822/clm1508220007-n1.html
 ブクマもつけましたけどこっちでも書いてみます。
 まずは「暴君ネロ並み」て部分に突っ込んでみます。小生無知なので知らなかったのですがこの記事についたブクマに寄れば「ネロの弾圧は初期弾圧でありむしろ中期弾圧、後期弾圧となるにつれ弾圧はパワーアップしていくから産経の記事はおかしい」「暴君というのはキリスト教迫害よりもむしろ側近の粛清が問題にされている」そうです。

参考

http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/dogma/dog05.htm
・迫害は初めは地方レベルで、しかも散発的であった。ローマ帝国が、国家の方針としてキリスト教に対して本格的に弾圧を加え始めたのは、3世紀半ばのデキウス帝からである。この時にはアレキサンドリア神学者オリゲネス、カルタゴの司教チプリアノなどが殉教した。さらに4世紀初頭、ディオクレチアヌス帝は帝国各地の教会堂の破壊を命じ、キリスト信者に棄教を迫った。

 次に「産経の中国批判は正しいのかどうか」疑念を呈したいと思います。
 まあ、こういう事を書くと「ボーガスは中国の犬!」と吹き上がる人もいる*1でしょうが、まあ、「犬って言いたければ言えば?」つう話であって、どーでもいことです。「どこまで本当のことが書いてあるやら?」「中国にキリスト教それほど敵視する理由ってあるかしら?」と首をひねる記事です。

浙江省だけでこの1年半に合計1500本以上の十字架*2が中国政府当局により破壊*3され、撤去された。習近平*4政権の異常なキリスト教弾圧の一環なのだ」
 中国のキリスト教徒擁護の国際人権団体「中国援助協会」のボブ・フー(中国名・傅希秋)会長が熱をこめて証言した。米国の「中国に関する議会・政府委員会」が7月下旬に開いた公聴会だった。
(中略)
 同委員会の共同議長のマルコ・ルビオ上院議員公聴会の冒頭で「習近平政権は文化大革命以来の最も過酷な弾圧をいま実行している」と強調した。

 マルコ・ルビオつうのは島田洋一やこの文章の書き手である古森義久などウヨ連中が絶賛するネオコン議員です。
 この時点でまともな公聴会と言うよりは「中国叩き目的の米国ウヨのイベント」で「どこまで真実か怪しいこと」は明白でしょう。

 フー会長の証言によると、中国政府は習政権の下で共産党無神論に基づく宗教弾圧だけでなく、キリスト教の外国との絆を敵視しての抑圧を強化し始めた。
 中国では当局支配下キリスト教組織として「三自愛国教会」や「天主教愛国会」*5があり、その信徒が2千万人強とされる。それ以外に1億人*6ほどが当局の禁じる*7地下教会で信仰を持つとみられる。
(中略)
 こんな現状を証言するフー氏は中国の山東省生まれで、大学生時代の1980年代にキリスト教に入信した。民主化運動にもかかわり、天安門事件にも参加した。

 まあフー会長とやらの証言は嘘八百と見ていいんじゃないですかね。
 仮に「地下教会」とやらが弾圧されてるとしてもそれは「無神論」「外国とのつながり」てことではないでしょう。
 中国当局の許可を得て布教してる「三自愛国教会」や「天主教愛国会」は別に弾圧なんか受けないわけですから。
 以前「中国での生活が長い」ファンキー末吉氏が、

http://www.funkyblog.jp/2014/07/post_996.html
 炎上覚悟で書かせてもらうが、ワシには諸外国が言うように中国政府が宗教や少数民族を弾圧してるようには思えないのだ。
(中略)
 (注:中国)共産党を「ヤクザ」だと見ればその考え方は非常に分かり易い。
 ヤクザは宗教なんかどうでもいい。
 ただ自分を脅かす者に対しては命がけでそれを排除するだけの話である。

と書いてましたがそういうことでしょう。中国の歴史においては「黄巾の乱(漢朝)」「白蓮教徒の乱(明朝)」「太平天国の乱(清朝)」などと宗教反乱がいろいろあるわけです。
 また世界的に見ても「東学党の乱(甲午農民戦争とも呼ぶ、李氏朝鮮時代)」「ホメイニ師指導下のイラン革命」「ダライラマによるチベット暴動」「キング牧師公民権運動」など宗教家の政治力というのは無視できないわけです。
 で中国としては「宗教活動をコントロールしたい」と。で「布教をしたい人は事前に政府の許可を得なさい」と。コントロールしている限りにおいては、別に弾圧もないが「許可を取らないで布教してるので、コントロールできない」とか「それどころか中国共産党政権に敵対してる」と認定されれば弾圧されるつう話でしょう。それは教義を問題にしてるわけではないという意味では「宗教弾圧」と呼ぶべきかどうか微妙でしょう。当然ながらそれは「習政権になって弾圧が激化した」という話でもおそらくない。
 特にこのフー氏は

天安門事件にも参加した

なんて反中国共産党分子だから、なおさら「宗教弾圧」と言えるか微妙でしょう。ああそれと「言ってること全部嘘」てことはさすがにないでしょうが「天安門事件参加者」というフー氏の経歴からして主張内容がどこまで本当かは眉に唾付けておく必要があるでしょう。広聴会の方は「アンチ中国ウヨ」マルコ・ルビオが中心人物ですから「中国批判ブラボー」でろくにチェックもしないでしょうけど。
 まあ、それはともかくこういうことを「マルコ・ルビオ」のような米国ウヨが騒いでるつうのは「ある種の方針変更」なんでしょう。
 「チベットだの天安門事件だの持ち出しても『別に俺達にチベットとか関係ないしー』みたいに米国人の関心が低い」から「我々米国人の多くにとって生きるすべといってもキリスト教を中国は弾圧してるんです」と言って、「キリスト教信者の多い」米国国民の反中国感情高めたいと。
 まあ、米中の経済交流考えればルビオら米国ウヨのもくろみ通りそうそううまくいくとも思えませんが。

 女性の人権を旗印に過去の慰安婦問題で日本を糾弾する中国政府がいま現在、自国内でこんな人権弾圧を続けている事実こそ日本側でもぜひ提起すべきだろう

 そんなことをしたら「慰安婦問題の当事者・中韓の反発」はもちろん「マルコ・ルビオ議員やボブ・フー会長」からも「俺達が河野談話否定派と思われたら迷惑だ、余計なことするな」と抗議が入るでしょうね。


終戦間際の電報「イミュニテ カルイザワ」の意味探る 軽井沢で旧スイス公使館めぐりシンポ
http://www.sankei.com/world/news/150822/wor1508220040-n1.html
 どうなんですかね。産経が示唆するように何か「終戦工作」の意味合いがあるのか。
 ちなみに終戦工作を「歴史学的な意味で正確に理解している人」は少ないと思います。俺だって全然無知です。しかし、松本清張球形の荒野*8(文春文庫)、西村京太郎『D機関情報』(講談社文庫)として終戦工作は小説のネタになってます*9ので「終戦工作が存在したことそれ自体」について知ってる方も多いかと思います(ゴルゴ13のネタにもなっていたように思う*10)。
 しかしググって分かったことですが『球形の荒野』てのは「小説の時代設定、及び小説の発表時期が終戦から16年後の昭和36年(1961年)」なんですねえ。割と早い時期から「終戦工作の存在自体」は知られていたわけです。西村小説の発表は「清張の後」なので、まあ、清張作品を当然踏まえた上で書かれてるんだろうと思います。


■【編集日誌】原油安は「恩恵」なのか
http://www.sankei.com/column/news/150822/clm1508220005-n1.html

 原油安が再び進んでいます。
(中略)
 家計にも、企業にも原油安は基本的にプラスに働きます。日本経済は視界不良が続いているだけに、原油安は恩恵でしょう。ただ、決して手放しでは喜べません。このところの原油価格の下落は中東勢の増産とともに、中国経済の低迷で(注:中国の石油)需要が減少していることが理由とみられているからです。
 (注:現在は1バレル=40ドル台ですが)1バレル=40ドル台を割れば、それは中国の経済悪化が一段と進んでいる「合図」で、世界経済に大きなマイナス影響を及ぼす前兆かもしれません。紙面では原油価格の上げ下げだけでなく、その裏側にある意味についてもしっかりと伝えていきたいと思っています。(編集長 島田耕)

「日本経済は視界不良」と言う文章と言い

1バレル=40ドル台を割れば、それは中国の経済悪化が一段と進んでいる「合図」で、世界経済に大きなマイナス影響を及ぼす前兆かもしれません。

と言う「原油安を『安くて良かった!』と手放しで喜ばない上、中国景気停滞による日本経済、世界経済へのダメージを恐れる文章」と言い、いつもの「アベノミクス万歳」「くたばれ中国」とは違うまともな文章です。
 まあ、産経内部でも経済記者は割と「まともな人が多い」のかもしれません。例の田村秀男*11みたいな反中国のキチガイもいますけど。
 宮崎正弘島田洋一のような「頭の足りない反中国右翼」は「上海株式市場の株価低迷で、俺たちの主張の正しさが証明された、ついに中国経済の終わる日が来た」とか言って喜ぶのかも知れませんが、まともに考えたら「本当に中国経済がやばくなったら日本経済が直撃くらって一緒に沈みかねない」恐ろしい話のわけです。何せ隣国ですから。

【追記】
■【原油一時40ドル割れ】輸出に「逆風」、脱デフレにも「悪材料」 経済界、マイナス面も意識 
http://www.sankei.com/economy/news/150822/ecn1508220018-n1.html

 ここにきて原油安の要因として多くの専門家が指摘するのが「中国の景気失速懸念」(三菱総合研究所の武田洋子氏)だ。「中国バブル崩壊」が意識されれば、日本企業の対中輸出や現地生産にも悪影響が出る。

として中国経済の「日本経済、世界経済への悪影響の懸念」について触れています。
 安倍としては「リスキーな追加緩和」をしたくはないでしょうが、今後「打つ手がなくて泣く泣く追加緩和」の危険性もあるかと思います。


■石破氏*12、自民総裁選出馬断念のワケは? 側近の慎重論 内閣支持率回復 閣内で身動きとれず
http://www.sankei.com/politics/news/150822/plt1508220008-n1.html

40%前後の内閣支持率を誇る首相

 産経らしい文章です(苦笑)。もちろん「安倍の支持率は今だいわゆる危険水域といわれる30%台前半」にはなっていません。これは俺のようなアンチ安倍にとっては不快です。また「9月の総裁選に出馬しないらしい」石破も「地方創生相としての成果がないこと」もあって、「もっと安倍支持率が落ちてから安倍おろししよう、安倍が無投票再選でも仕方ない」と思ってるのでしょう。
 しかし「40%台」と言う支持率は「誇れる」ものなのか。普通に考えて過半数切ってる支持率は誇れないでしょう。産経だって安倍以外の首相でこんな文章を書くとも思えません。


■【産経抄】8月22日
http://www.sankei.com/column/news/150822/clm1508220003-n1.html

安倍晋三首相とプーチン氏の関係は互いの誕生日にプレゼントを贈り合うほど良好だが、メドベージェフ氏やロシア外務省は問題解決に意欲がない。

 なんか「プーチン*13大統領(前首相)は悪くない、プーチンは安倍さんの友人だ」「メドベージェフ首相(前大統領)や外務省が悪い」と言いたげな産経ですが
1)ロシアの法制度上、外務省は勿論、首相も大統領の部下
2)メドベージェフはプーチン政権下において、「大統領府第一副長官、第一副首相」などを歴任、メドベージェフにとってプーチンは恩人*14(なおプーチン後継をメドベージェフと争ったライバルとしては当時、ヴィクトル・ズブコフ*15首相、セルゲイ・イワノフ*16第一副首相がおり、メドベージェフのプーチン後継は確実ではなく微妙だった)
と言ったことを考えれば「メドベージェフらの態度」はプーチンの態度と見ていいでしょう(以上は、ウィキペ「プーチン」「メドベージェフ」を参照)。
 場合によっては「北方領土なんか返してもいい」「四島はともかく二島返還ならいいんじゃないか」とメドベージェフらが思ってるのにプーチンが「絶対に返すな」という態度の可能性すらある。
 もちろん産経がプーチンをかばうのはプーチンが好きだからではなく

安倍晋三首相とプーチン氏の関係は互いの誕生日にプレゼントを贈り合うほど良好

だからでしょう。プーチン批判は「プーチンとの交友を誇る安倍」に対する批判になりかねませんから。

山崎豊子さんのベストセラー小説『不毛地帯』の主人公のモデルの一人は、草地さんだとされる。

 もちろん最大のモデルが「伊藤忠商事社長、会長を歴任した瀬島龍三」である事は言うまでもないでしょう。
 『不毛地帯』に出てくる主人公が勤務する近畿商事のモデルは明らかに伊藤忠ですから。そして草地氏は瀬島と違って実業家にはならなかった。にも関わらず草地云々という物言いが出てくるって事は「抑留中の瀬島の振るまい」は「ソ連に媚びてた」とは言わないまでも「右翼的心情の持ち主」には我慢がならなかったんでしょう。まあ、「ソ連に媚びて抑留仲間を攻撃する」なんてのは論外としても「抑留されてるという弱い立場」を考えれば「下手に対立しない」というのはある意味当然の考えだと思いますが。

シベリアで生死をともにした抑留仲間らは以前、小欄の取材に「草地さんは天皇陛下の次に偉い」と語っていた。

 やれやれですね。「シベリア抑留者でないお前にシベリア抑留者の気持ちが分かるか」と言われればその通りです。とはいえ草地氏は「関東軍作戦参謀(最終的階級は陸軍大佐)」というそれなりの立場です。
 シベリア抑留の悲劇が生まれた一因(もちろん全要因とは言いませんが)は草地氏ら「日中戦争という無謀な戦争を推進した関東軍幹部連」にもあると思うのですが「シベリア抑留中のソ連批判」でそうした草地氏の責任をチャラにしていいのか。

平成3年4月、来日したソ連ゴルバチョフ大統領と面会した際のことだ。草地さんは一喝した。
「私は君の父親と同じ年齢だ。父として言う。北方領土を返したまえ」。
政治家や外務官僚には、この気迫と不屈さを見習ってほしい。

 ばかばかしいですね。単に草地氏が非常識なだけじゃないですか。そんな事言ってゴルビーが「はい、わかりました」と言うわけもない。まあ、草地氏も本気じゃなくてパフォーマンスでしょうがこんな馬鹿げたパフォーマンスに何か意味があるのか。ましてや政治家や外務官僚がそんな馬鹿な事をできるわけもない。

*1:例のid:Mukkeさんとか

*2:文脈からして「教会の屋根とかに立ってるでかい十字架」でしょう。「個人個人が持ってる小さい十字架を1500本廃棄しても」破壊だの撤去だのと大騒ぎするような話でもないでしょう。

*3:やっていいとは言いませんが後述するようにその全部ないしほとんどは地下教会でしょう。公認教会は対象外のわけでそれを「反政府勢力弾圧」と呼ぶのはともかく「宗教弾圧」とよぶのはどんなもんだろうと個人的には思います。

*4:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て現在、国家主席、党総書記、国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席

*5:ウィキペディアに寄れば「三自愛国教会」がプロテスタント系で「天主教愛国会」がカトリック系。

*6:あくまでも「地下教会側」の自称ですのでどこまで本当かは不明ですが

*7:禁じるつうか「中国政府当局の許可無しの布教は原則、不可」で許可取ってないって事です。

*8:ウィキペディアに寄れば「1962年(NHKでドラマ化)」「1963年(TBSでドラマ化)」「1969年(再びNHKでドラマ化)」「1975年(松竹で映画化)」「1978年(フジテレビでドラマ化)」「1981年(日本テレビでドラマ化)」「1992年(フジテレビで再びドラマ化)」「2010年(フジテレビで三度ドラマ化)」「2014年(BS日テレでドラマ化)」と9回も映像化されています。

*9:もちろん小説のネタですので、どこまで小説が現実に合致してるかは疑問です。

*10:追記:ググったら他にも佐々木譲ストックホルムの密使』(新潮文庫)なんてのもあるようです。

*11:著書『人民元、ドル、円』(2004年、岩波新書)、『アベノミクスを殺す消費増税』(2013年、飛鳥新社)、『消費増税の黒いシナリオ:デフレ脱却はなぜ挫折するのか』(2014年、幻冬舎ルネッサンス新書)、『人民元の正体:中国主導「アジアインフラ投資銀行の行末」』(2015年、マガジンランド)など

*12:小泉内閣防衛庁長官福田内閣防衛相、麻生内閣農水相自民党政務調査会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)を経て現在、第三次安倍内閣地方創生相。

*13:エリツィン政権大統領府第一副長官、連邦保安庁長官、第一副首相、首相を経て大統領

*14:その為、「プーチン首相、メドベージェフ大統領時代」という建前ではメドベージェフが上司の時代すら「プーチンが与党党首の座をメドベージェフに渡さなかったこと」もあって「事実上の上司は今もプーチンだ」と言う意見すらあったわけです。実際「今のプーチン大統領、メドベージェフ首相」を見ればその通りだったのでしょう。

*15:現在国営企業ガスプロム会長

*16:プーチン政権下で国防相、第一副首相を歴任。現在、大統領府長官