今日の産経ニュースほか(10/22分)(追記・訂正あり)

■人民日報『対中関係の発展、日本はドイツと英国に学ぶ必要がある』
http://j.people.com.cn/n/2015/1027/c94474-8967541.html

 中国の習近平国家主席はこのほど英国への公式訪問を終え、中英関係は開放的、持続的、ウィンウィンの「黄金時代」を迎えた。数日後の29日には、ドイツのメルケル首相が中国を公式訪問する。メルケル氏の訪中は首相就任後8度目となり、西側諸国の元首・首脳のうち、在任期間中の訪中回数が最多となる。
 英国とドイツはまるで「先を争う」かのように、積極的に対中関係を発展させている。そんなことを考えた時、ふと中国の隣国・日本のことが思い浮かんだ。中日関係は過去数年間、国交正常化以来最も厳しい局面を迎えている。中日関係と、英独の対中関係を比べると、その差は歴然だ。このような対比を行うのは、日本と英独両国が重要な部分で似通った面を持つためだ。私はどうしても疑問に思わざるを得ない。対中関係において、英独にできることが、なぜ日本には出来ないのだろう?
(中略)
 英国は米国の伝統的な確固たる同盟国だ。米国も、英国と日本をヨーロッパとアジアの最も重要な同盟国と考えている。しかし、だからと言って、英国と日本が中国と密接な関係を築けないというわけではない。英国は西側諸国の中で、率先して中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創始メンバーに申請した。キャメロン首相を含む英国政府の高官は近頃、「英国は中国にとって西洋の最も確固たる支持者、最も開放的な協力パートナーだ」と何度も表明している。キャメロン政権の中国に対する積極的な態度には、戦略的展望と政治的な勇気が反映されている。これに比べて安倍政権は、AIIB問題で米国側につくことを選び、狭隘で短絡的な視点で中国を捉え、米国とともに「中国脅威論」を振りまくことで、自国の軍事安全政策調整の道を開こうとし、中日関係をより一層複雑にしている。

 産経が何を言おうと「欧州は産経が希望するような反中国路線をとることはない」と言うことが改めて分かります。


■産経『ドイツのメルケル首相が29〜30日訪中』
http://www.sankei.com/world/news/151023/wor1510230052-n1.html
■産経『仏大統領が訪中へ、習氏と会談』
http://www.sankei.com/world/news/151026/wor1510260030-n1.html
 中英に続き中独、中仏の友好関係アピールが展開されるのでしょうか。


■人民日報『間近に感じる中英協力の価値』
http://j.people.com.cn/n/2015/1023/c94474-8965909.html

 英国の強い願いは何か?第1に中国からの投資を呼び込むことだ。キャメロン政権の優先課題は英国経済の持続的成長の確保だ。保守党が年初の総選挙で圧勝したのは、経済政策の成果に負うところが大きい。中国は投資大国となりつつあり、近年エネルギー、インフラ、文化などの分野をカバーして近年対英投資の勢いを増している。英国は現在欧州において中国からの直接投資を最も多く受け入れている国であり、中国の対欧州投資総額の30%を占めているうえ、予想を上回る急増を示している。
 第2に人民元の最も優れた海外オフショアセンターであることだ。英国は西側諸国で初めて人民元決済センターを設立する。英国は人民元国際化の加速の波に乗り、世界金融におけるシティ・オブ・ロンドンの優勢を揺るぎないものにすることを決意した。

 まあそういうことなんでしょう。id:Bill_McCreary氏の名言で表現すれば『「経済のほうが政治よりよっぽど現実(実状)に正直だ、の実例』(たとえばhttp://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/0923078995318b8a865f3339b5611701参考)でしょう。


■産経『キャメロン英首相、お気に入りのパブに習氏招く 人権問題は「ほとんど話さず」』
http://www.sankei.com/world/news/151023/wor1510230048-n1.html

 英国のキャメロン首相は22日夜、ロンドン郊外の首相別邸近くにあるお気に入りのパブに、公式訪英中の習近平・中国国家主席を招待し、名物のビールを飲みながら談笑して両国の蜜月ぶりを演出した。
(中略)
 サッカーの熱烈なファンだという習氏は23日、最後の訪問地である中部マンチェスターで、英サッカー・プレミアリーグの名門クラブ、マンチェスター・シティーの本拠地などを訪問、帰国の途に就く。

 例のI濱女史やid:Mukkeさんなどは憤慨しまくるのでしょうが、まあ、これが現実のわけです。


■産経『【習近平訪英】習近平主席に英BBC記者が会見で皮肉たっぷり質問 「英国民は人権に問題を抱えた国とのビジネス拡大をなぜ喜ばなければならないのか」』
http://www.sankei.com/world/news/151022/wor1510220042-n1.html
 まあ、普通「ビジネス拡大は喜ぶ」でしょう。金儲けは大事です。きれい事言ったって何がどうなるもんでもない。「英国がつきあってる国って皆、非の打ち所のない人権主義的な民主主義国家でしたっけ?」「そう言えばチリのピノチェトが失脚後に貴国に来たときどういう対応をしたんでしたっけ?。いったん逮捕したけど結局釈放したんじゃなかったでしたっけ?(勿論皮肉)」とアンチ中国のこういう英国人記者に聞きたくなりますね。
 まあ、経済大国・中国の存在感は「アジアやアフリカなどのさまざまな独裁的国家(多くは貧乏国)」とは大きく違いますけど。

http://www.sankei.com/world/news/151022/wor1510220042-n1.html
「習主席、英国民は、民主主義がなく、不透明で人権に大きな問題を抱えた国とのビジネスが拡大することを、なぜ喜ばなければならないのでしょうか」
 キャメロン氏に指名された英BBC放送の女性記者が21日、いきなりこんな質問をぶつけた。

 まあ、BBCの記者も随分なことをいうもんですね。産経ですら安倍に向かって、「安倍総理、日本国民は(以下略)」なんてことは中国関係では言えないんじゃないですかねえ。ましてや習主席のような中国高官がいる前ではとてもそんな事言えないでしょう。
 それにBBCってのは日本で言えばNHKに当たるメディアですが、それでこれってのはスゴイですね。日本でNHK記者がこれをやったら「首相に恥をかかせた」と後でどんな報復が待ってるか分からないですよね。そこは「政権交代が普通の英国と自民党長期政権の日本」「メディアの自由が重視される英国とそうでない日本」という違いでしょうけど。

 キャメロン氏はこれに苦い表情で、「人権か、ビジネスかという質問の前提にはまったく賛成できない。5年、首相を務めて思うのは、両方が重要だということだ。経済関係が強固になれば、双方の関係も深まり、それ以外の問題でも率直な議論ができるようになる」と反論。
(中略)
 中英関係は、キャメロン氏が2012年、中国政府が敵視するチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と会ったことで悪化。(ボーガス注:経済的な意味で)痛い思いをしたキャメロン氏は近年、中国の人権問題に関する批判を封じて実利外交に転換している。

 まあ、現実問題「人権>ビジネス」で「中国とは経済交流しない」てわけにもいかないでしょう。

習氏はこの後、「われわれは現実に即した人権発展の道を見つけた。人権は大切であるが、世界を見渡せば、すべての国で改善が必要な状況にある」と述べ、はぐらかした。

 なかなか習氏も「内心はともかく」、表面上は軽く受け流す「大人の対応」と言うべきでしょうか。「あんたら、ウチだけが民主主義で問題があるみたいに言うけど、ミャンマーとかエジプトとか他の国はどうなんよ」つうのは一理ある主張です。

 次いで、中国人記者が経済に関して質問。約20分弱の会見は、この2問の質問で終わった。
 不満が残る英国人記者は「時間が限られているとはいえ、あまりにひどい内容だ。英国民の不安だけが高まった会見だと思う。おカネが欲しいあまりに、われわれは早くも中国化してしまったのか」と皮肉たっぷりに語った。

 まあ、繰り返しになりますけど、現実問題「人権>ビジネス」で「中国とは経済交流しない」てわけにもいかないでしょう。


■産経『【首相中央アジア歴訪】安倍首相「拉致解決への協力に期待」、蒙首相「北東アジア安定に貢献したい」 日モンゴル首脳会談の要旨』
http://www.sankei.com/politics/news/151022/plt1510220040-n1.html

【モンゴルのサイハンビレグ*1首相】
 2020年の東京五輪を歓迎する。建設労働者の不足が言われているが、モンゴルとして労働者を派遣する用意があることを表明したい。
安倍晋三首相】
 大規模鉱山開発はモンゴルの経済発展の重要な柱だと理解している。タバン・トルゴイ炭田開発と鉄道は、提案内容について採算性など真摯に調査させたい。

 「モンゴル人建設労働者を日本に出稼ぎに出したい」んだそうです。日本は「単純労働者は引き受けない方針」ですから安倍は断るんじゃないかとは思いますけど。大体「日本に出稼ぎ労働者を送り込みたい」のはモンゴルだけじゃないでしょうし。
 それはともかく「出稼ぎさせてくれと安倍に嘆願」とは、今モンゴルって不況なんでしょうか?
 もちろん今時「遊牧では食っていけないこと」は間違いないのでしょう。
 安倍もはっきりと

大規模鉱山開発はモンゴルの経済発展の重要な柱だと理解している

と明言しています。
 一部の「アンチ中国」の内モンゴル活動家は日本ウヨ相手に「中国が伝統文化の遊牧を破壊してる」とか寝言抜かしてますけど破壊するまでもなく遊牧なんかオワコンなんでしょう。海外への出稼ぎとか、鉱山開発しないと食っていけない、それが「外モンゴルだけでなく、内モンゴルも含めて」今のモンゴルでしょう。
 そう言う状況下では勿論「隣国中国」と敵対することなどモンゴルにはできはしないわけです。一部内モンゴル活動家が叫ぶ「大モンゴル(外モンゴルへの内モンゴル編入)」などあり得ない話です。


■産経『自民、船田元・憲法改正推進本部長交代へ 安保審議で「違憲」の憲法学者推薦に関与、事実上の更迭』
http://www.sankei.com/politics/news/151022/plt1510220041-n1.html
 産経や国基研が「船田なんか更迭しろ」と叫んでいたとは言え、マジで安倍が船田を更迭するほどバカだとは思っても見ませんでした。


■産経『【正論】プーチン「シリア介入」の危険度 北海道大学名誉教授・木村汎*2
http://www.sankei.com/column/news/151022/clm1510220001-n1.html
 産経文化人の「なんちゃってロシア専門家」などまともに相手できる代物ではないと思いますが。

 プーチン大統領は、なぜこの時期にシリア空爆に踏み切ったのか。
 この問いに対し、私自身は次のように考える。ウクライナ危機が泥沼状態に陥っているために、ロシア国民はうんざりし、ひいてはプーチン大統領の手法に疑念すら抱きはじめた。国民の微妙な変化に気づいた大統領は、彼らの熱狂を持続させるために新しい軍事的、外交的攻勢が必要とみなした。これこそが、プーチン氏がシリア軍事介入を決した最大の動機ではないか、と。

 おいおいですね。そうではなく「プーチンにとって、プーチンが考えるロシアの国益上、米英のアサド政権転覆方針は賛同できるものではなく、だからこそ米英の企みを挫折させるため空爆によるアサド支持に踏み切った、空爆でしか米英の企みは阻止できないと思った」「空爆して米英と対立してでもアサド政権を支援しないといけないと思った」と素直に考えればいいじゃないですか。
 「国民は俺がシリアに介入しても反発せずむしろ『ロシアの国威を発揚した』と俺に拍手喝采するんじゃないか」という計算はプーチンにあったかも知れない。ただプーチンの主目的はあくまでも「アサド支援が国益に資する」でしょう。
 プーチンにとってやる必要もない空爆を、ナショナリズムを煽ることによる、国民への人気取りでやったわけではないでしょう。

「勝利をもたらす小さな戦争」。
 治者が被治者の国内的不満を外部向けに発散させるために用いる常套(じょうとう)的手法である。プーチン氏も、例外でない。チェチェン過激武装勢力*3、サアカシュビリ*4グルジア大統領、ポロシェンコ*5ウクライナ大統領をそのような「外敵」に祭り上げることによって、ロシア国民に精神的カタルシス(浄化)を齎(もたら)そうと試みてきた。

 やれやれですね。プーチンの政治手法の是非はともかく、これらにしたって「必要もないのに敵に仕立てた」わけではないでしょう。サーカシビリとの対立は「南オセチア紛争」が原因だし、ポロシェンコとの対立は現在進行形の「クリミア問題」が原因です。
 プーチンにとって「敵とせざるを得ない存在」だからこそ「敵になった」わけです。「国民は俺があいつらと敵対しても反発せずむしろ『ロシアの国威を発揚した』と俺に拍手喝采するんじゃないか」という計算はプーチンにあったかも知れないですがこれまた「そういうナショナリズム扇動が主目的じゃない」でしょう。

 プーチン氏は今回ばかりは事を急ぎ過ぎたのではないか。ウクライナ問題がまだ片付かないうちに、シリアへの軍事介入をはじめたからだ。一つ一つ問題を根気よく解決してゆくという正統派スタイルでなく、一挙に戦線拡大を図ってしまった。

 一挙に戦線拡大で自滅というと「日中戦争やってるのに太平洋戦争始めた日本」「対英戦をやってるのに対ソ連戦を始めたナチドイツ」を連想しますがそれはさておき。
 まあ、プーチン的には「戦線は拡大したくない」でしょうが「シリア・アサド政権の重要性」から拡大せざるを得なくなったというところでしょう。
 そしてプーチンもそれなりの計算はしてるでしょう。
 「米国も地上軍は投入しないだろうから、俺の方も空爆でOKだろう」
 「米国が支援するシリア反体制勢力なんて米国の支援で成立してる烏合の衆だから簡単につぶせるだろう」
 「アサド政権打倒後のはっきりしたプランが米国にあるわけではないだろうから、『アサドを打倒してISを利することになる危険性をどう思ってるのか』と言えば米国もアサド打倒には固執しないだろう」
 「イランなど俺を支持する国もある」
とか。
 つうか何でこんなに産経がプーチン空爆を非難する一方で米国のアサド打倒計画を黙認し「アサド政権を打倒したがる」のかわかりませんが、「米国の考えには無条件で従う」のが習い性になってるからでしょうか。


■産経『【高橋昌之のとっておき】安保法制、理念なき「反対運動」はやはり一過性で終わった*6
http://www.sankei.com/premium/news/151022/prm1510220003-n1.html
 もちろん理念はあるし、現時点では「一過性で終わった」とは到底言えないでしょう。単に「そうあってほしい」という産経の願望でしかないわけです。

現在の閑散とした国会周辺の状況を両紙はどう見ているのでしょうか。

 法案成立前に「安保法反対」と国会前デモするのならともかく、法案成立後に「安保法反対」と国会前デモして何か意味があるんでしょうか。そして戦いとは当然ながら「国会前デモ」に限らないわけです。
 まあ、安倍が安保法を具体的に発動する事態(今はそうではないでしょう)になっても大規模デモが起こらなかったら残念ながら「運動は一過性に終わった」と見てもいいでしょうが、今のところ「一過性」とみる根拠は何もないでしょう。

*1:日本外務省サイト(http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/c_m1/mn/page23_001297.html)に寄れば、文部大臣、情報科学技術庁長官、内閣官房長官などを経て首相

*2:著書『プーチン主義とは何か』(2000年、角川oneテーマ21)、『新版・日露国境交渉史:北方領土返還への道』(2005年、角川選書)、『現代ロシア国家論:プーチン型外交とは何か』(2009年、中公叢書)、『プーチン』(2015年、藤原書店)など

*3:そもそもチェチェン紛争プーチンが大統領に就任する前のエリツィン政権時代に発生しています。プーチンチェチェン紛争を始めたわけではない。

*4:シェワルナゼ政権法相を経て、2004〜2013年までグルジア大統領。大統領退任後、サーカシビリ批判デモの激化によって事実上のウクライナ亡命に追い込まれる。2015年に「反ロシア派」のサーカシビリはポロシェンコ・ウクライナ大統領によってオデッサ州知事に任命されたが「ウクライナ亡命を余儀なくされるような問題政治家を反ロシアというだけで重用するのか」というポロシェンコ批判は当然存在する。

*5:ユシチェンコ政権外相、ヤヌコビッチ政権経済発展・貿易相などを経て2014年からウクライナ大統領

*6:そもそも「理念の有無」と「運動の継続」は直接には関係ないですし、その理屈だと「一過性に終わったウヨの国籍法改正反対運動」は産経的にどうなるんですかね?。まあ、あんな酷い言いがかりが法改正後も続くとはさすがに最初から思ってませんけど。