今日の産経ニュース(9/10分)

■【検証・文革半世紀 第3部(1)】「黒幕は米国人だ」南シナ海裁定でKFC入店拒否…毛沢東時代に重なる排斥
http://www.sankei.com/premium/news/160910/prm1609100027-n1.html
 文革と関係ない事を文革とこじつけるのも大概にしたらどうなのか。
 しかも「米国への反発の表明としてKFC(ケンタッキーフライドチキン)に行くのは辞めよう」とか「KFCは中国から出て行けとデモをしよう」とか言うのは「一部の反米派の市民運動」に過ぎません。中国政府が「KFCは中国から出て行け」と圧力をかけてるわけでも何でもない。
 それどころか
■産経『【緊迫・南シナ海KFCへの抗議は「間違い」中国紙がたしなめ』
http://www.sankei.com/world/news/160719/wor1607190025-n1.html
によれば「米国政府と米国企業はイコールではない」として人民日報が不買運動を批判しているわけです。産経も不買運動がどれほどの成果を上げたか書いていませんので恐らく大した成果などなかったのでしょう。


■【検証・文革半世紀 第3部(2)】政敵を根絶やしにする「連座制」 習近平*1の反腐敗キャンペーンで復活
http://www.sankei.com/premium/news/160911/prm1609110029-n1.html
 共犯として捜査し、共犯として処罰しているので「仮に共犯とこじつけて逮捕起訴し、失脚させるシナリオが事前にあったとしても」少なくとも『建前上は』連座制ではありません。
 そして産経は「連座制復活」と根拠レスで騒ぐだけで「単なる共犯処罰ではなく連座制復活だ」と評価した根拠を何一つまともに提示できません。
 それに習氏の「反腐敗キャンペーン」を政敵潰しと見るのも正しくはないでしょう。
 基本的には「深刻な汚職を撲滅しないと国と党の未来がない」との判断からキャンペーンは行われてると俺は思います。あくまでも主たる目的は汚職撲滅で産経が言うような政敵潰しではない。
 しかし、「ならば、差別なく習派も非習派も摘発されてるかというとそこは怪しい」程度の話でしょう。

罪を犯した本人だけでなく周辺の者も処罰するのは、古代中国の習慣だった。

 何も古代中国に限った話ではなく、「大河ドラマでも描かれてましたが」、豊臣秀次*2の子どもなんかも「責任があるわけのない幼い子ども」でも、秀吉によって連座で処刑(死刑)されたわけです。もちろん程度の差こそあれそうした連座処罰は「秀次処罰事件での秀次の子どもへの扱い」に限った話でもない。
 「近現代」ならともかく前近代においてはむしろ連座制は「中国に限らず」何処でも普通に行われていたことです。


■【検証・文革半世紀 第3部(3)】奇跡にしがみつく陳情者 指導者が政治利用、解決率はわずか0・1%
http://www.sankei.com/premium/news/160913/prm1609130005-n1.html
 トウ小平*3江沢民*4胡錦濤時代にも陳情はあったろうに、「陳情=文革」とこじつけるのが酷いですね。


■【検証・文革半世紀 第3部(4)】「特権階級が社会を牛耳る」 農村部に根付く読書無用論
http://www.sankei.com/world/news/160914/wor1609140002-n1.html

 自分の名前以外に覚えた漢字は、「男」「女」の2文字だけ。トイレに行くときに困るからだ。
 外国報道陣も入る北京市中心部の外交官アパート。三輪車タクシーの客待ちをしていた河南省出身の30代女性がそう話してくれた。
 「工商銀行」「朝陽医院」といった漢字が読めず、看板を指さして客に目的地などを確認することもある。それでも、1日平均200元(約3千円)前後の収入は、同世代の故郷の大学卒業生より多い。
 郷里に残してきた幼い娘について、女性は「多少の読み書きは覚えた方がいいと思うが、学校に行く必要はない」という。この周辺で待機する運転手は農村部からの出稼ぎ労働者が多く、大半は学校に行ったことがない。
 「勉強する必要はない」という「読書無用論」は、農村部を中心に今も大きな支持を得ている。中国青年報が2014年、四川省の雲郷雍村で行った調査では、村の262世帯の約4割に当たる106世帯が子供を学校に行かせる必要はないと考えていた。「字を知らなくても金は稼げる」「教育費が高すぎる」などの理由からだという。

 深刻な問題ですが、まあ、ただこれ誰が考えても「文革は関係ない」。
 「学校へ行く金が高いから」「学校へ行くより働いて金を稼ぐ必要がある」つうのは、中国に限らず、アジア、アフリカの発展途上国に広く見られる現象でしょう。昔の日本だってこれに似た話はあるわけです。経済大国となった中国ですが「豊かなのは大都市中心で田舎はそうでもない」といいます。まあ戦前の日本なんかもそれに似たところがあると思いますが。
 また中国青年報つうのは「中国共産主義青年団共青団)の機関紙」です。共青団つうのは胡錦濤*5国家主席李克強*6首相などを産み出した組織で、別に党に批判的メディアというわけでもない。
 そう言うメディアが「農村の教育無用論を憂う記事を書く」。共産党指導部だって「農村の教育無用論」についてそれなりの危機意識を当然持ってるわけです。
 つうか、「中国と一緒にはできませんが」日本だって「経済的事情で大学進学をあきらめる人」はいるわけです。日本の場合、「経済的進学による高校進学断念」がほとんどないと言う意味では「中国ほど深刻ではない」ですが、日本も中国も本質はそれこそ一緒でしょう。
 

■【検証・文革半世紀 第3部(5)】「法律より党指導者の考え方が重要」 “人治”の伝統、いまだ消えず
http://www.sankei.com/premium/news/160915/prm1609150005-n1.html
 「法律より重要なものがある」というのは
1)裁判で労組に負けてもろくに謝罪もしなかった「竹原元阿久根市長」や「橋下元大阪市長」(ウィキペ「竹原信一」「橋下徹」参照)
2)あるいは自衛隊イラク派兵差止訴訟判決訴訟名古屋高裁判決で「イラク派兵は憲法九条違反」と認定され、国が負けたことについてマスコミに聞かれて「そんなの関係ない(小島よしおのギャグ)」とおちゃらけて「何という不謹慎な男だ」と呆れられた「航空幕僚長時代の田母神」(ウィキペ『田母神俊雄』)
3)違法に尖閣ビデオを持ち出した元海上保安官一色正春
4)そして彼らにろくに批判もしなかった、それどころか一色に至っては「よくやった」と褒め称えた産経
と違うのかと突っ込みたくなりますがそれはさておき。
 まあまともな記事じゃないですね。
 「習は人治だ、人治は文革だ」という駄記事です。
 先ず第一に愚劣なのは「習は人治」としながらそう判断するまともな根拠が記事内にない。
 お断りしておきますが小生は「習政権は法治主義の観点から問題がない」といいたいのではなく、「この産経の批判記事は批判の体をなしていない」といいたいわけです。
 第二に「法治主義の観点で問題がある=文革」なのか。
 それなら「天安門事件トウ小平」「国連やオバマ米国大統領から人権面で批判されたドゥテルテ・フィリピン大統領」「国内で独裁色を強めるエルドアン・トルコ大統領」「阿久根の竹原、大阪の橋下」なども「文革」になってしまうでしょう。それが果たしてまともな物言いなのか。
 「法治主義の観点から問題がある=文革」なら「古今東西の行政の違法行為は何でも文革」になりかねないわけでそれこそ文革を軽視する暴論です。

 文革中、紅衛兵国家主席劉少奇*7の自宅に押し入って夫妻に暴行した際のことだ。劉は中華人民共和国憲法の本を持ち出し、「私は国家主席である以前に、公民として憲法で保障された権利を享受できる」と主張したが、完全に無視され殴られ続けた。中国ではよく知られたエピソードだ。

 何で有名かといえば今では文革は党、政府によって否定されているからです。
 党、政府にとってこうした事実は隠す話でもない。
むしろ
1)党幹部・劉少奇の勇敢さや合理主義などを示すエピソード
2)「文革は2度と起こしてはならない」として文革の愚劣さ、悲惨さを示すエピソード
として大いに宣伝すべき話でしょう。

浙江省党委書記の夏宝竜*8は、G20を成功させることで「党中央」と「習総書記」を満足させることをスローガンに掲げた。この言葉からは、「法の支配」を重視する姿勢などみじんも感じられない。

 意味がよく分かりません。産経は何が言いたいのか。
 「共産党は政権与党だが、そこは政府中央と習国家主席と『政府』を前面に出すべきだった」つうことか。
 それとも「国民と浙江省民のために成功させたい」といえば良かったのか。いずれにせよこれ「「法の支配」を重視する姿勢などみじんも感じられない」つう話なのか。
 別に「党中央を満足させるためなら法律を無視する」と言ってるわけでもないでしょうに。


■【検証・文革半世紀 第3部(6)】青春捧げた農村、2000万人辛酸 安い年金、都会で暮らせず
http://www.sankei.com/premium/news/160916/prm1609160006-n1.html
 「中国の年金は安すぎる」というもはや何一つ文革と関係ない話です。もちろん「文革の為に年金が安い」なんてことはない。
 普通に「年金額をアップすべきだ」と書けばまともな記事になったでしょうが、文革とこじつけずにはいられない産経です。
 なお、日本の年金も決して高くはありません。

*1:アモイ市副市長、福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て国家主席、党総書記、国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席

*2:豊臣秀吉(関白、太政大臣を歴任)の甥。秀吉に子どもがいなかったことから、秀吉の後継者として関白に任じられるが秀吉に子ども(後の豊臣秀頼)が生まれた後に謀反の疑いで処刑される。実際にはでっち上げによる粛清と見られる。

*3:副首相、党副主席、人民解放軍総参謀長などを経て党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*4:電子工業大臣、上海市長・党委員会書記などを経て国家主席、党総書記、国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席

*5:中国共産主義青年団共青団)中央書記処第一書記、貴州省党委員会書記、チベット自治区党委員会書記、国家副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*6:中国共産主義青年団共青団)中央書記処第一書記、河南省長・党委員会書記、遼寧省党委員会書記、副首相などを経て首相

*7:全国人民代表大会常務委員会委員長国家主席など歴任

*8:天津市副市長、浙江省長などを経て浙江省党委員会書記。