今日の中国ニュース(2019年4月14日分)

2019年「台湾2・28時局講演会」レポート | 台湾独立建国聯盟

 台湾の歴史において、決して忘れてはいけない重大事件が1947年に起きた二・二八事件です。
 中国国民党は容赦なく大量殺戮を行い、わずか1ヵ月で3万人以上の人々が犠牲になりました。

 「国民党が自らの黒歴史について必要十分な形で、明確に謝罪の意を示しているか」という後始末の問題はさておき、今の国民党は「蒋介石独裁時」とは違います。もし「同じ」なら「民進党陳水扁*1→国民党・馬英九*2」という政権交代はあり得なかったでしょう。

 許世楷*3先生は、(中略)「台湾人の誤解は、政権交代自由民主と思って、国民党の政治が気に食わないと次は民進党にやらせようとし、民進党が気に入らないと国民党にやらせようとするが、これは非常に大問題である。台湾の場合は、アメリカや日本の政党交替とは全く違う。民進党政権が気に入らないから国民党に替えるのは台湾の場合は『政権交代』ではなく『祖国交代』である」と述べ、「国民党の祖国は中国です。その認識が台湾国内に薄い事が問題なのです」と指摘されました。

 馬鹿げた珍論ですね。国民党の「統一」にせよ、民進党の「独立」にせよ「提唱当初」はともかく、「現状維持が多数派」の現在においてはどちらも「将来的目標」でしかありません。
 「民進党陳水扁→国民党・馬英九」という政権交代が起こった時点でこうした主張が大多数の台湾人に支持されていないことは明白です。そもそも「最大野党が国民党」という状況において「国民党を否定」することは「国民党でも民進党でもない第三勢力の設立」を主張するのでない限り「何があろうとも、千代に八千代に、さざれ石が巌となって苔がむすまで、民進党政権が続いてほしい」という「民進党支持者の身勝手な願望表明」でしかありません。そんなもん、盲目的な民進党支持者以外に誰が支持するのか。
 今後、国民党が政権奪取できるか、出来ないかは分かりません。
 いずれにせよ「祖国交代」云々なんて物言いが「国民党の政権奪取阻止」においてほとんど無意味であることだけは確かです。
 「国民党・馬英九民進党蔡英文」の政権交代においても多数派は「即時独立」などおそらく望んでおらず「国民党の馬に不満があるから、民進党蔡英文にする」でしょう。そしてその不満とは大多数においては「なぜ馬は即時独立しないのか」ではなかった。一方今は「民進党蔡英文に不満があるから国民党にしよう」という機運が出ているわけです。
 そもそもウィキペディア「許世楷」によれば

陳水扁総統再選を受け、2004年7月5日、台北駐日経済文化代表処代表(駐日代表)に就任、約4年間務めた。2008年5月20日、国民党政権の発足と同時に辞職届を提出したものの、馬英九総統が慰留。

だそうです。これは馬総統が「許を慰留しないで辞任を認めれば後で国民党に悪口雑言するかもしれない。何言い出すか分からない。別に代表を続けさせても問題はないだろう」つう判断をしたからでしょうが、一方で許も「結局6/17に辞任した」もののすぐには辞めず、いったんは慰留を受け入れたわけです。それで何が「国民党の祖国は中国」なのか。

開会挨拶
王明理(台湾独立建国聯盟日本本部委員長)
 11月の統一地方選挙で台湾人が中国国民党に投票したことに愕然としました。現在の国民党は中国共産党と組んで台湾を統一しようという意図を明かにしているのにも拘らず、です。

 ばかばかしい。そうした政権評価の是非はともかく「政権与党はろくでもない」と思えば普通の人間は最大野党に投票するでしょう。
 そもそも「国民党は統一の意図を明らかにしてなどいません」。
 あくまでも「中台経済交流」を進めていく上に置いて、中国共産党と無用な対立をしないため、独立を声高に叫んだりしないだけの話です。中国の「統一云々」という話に対して「対等な統一なら反対しない」「台湾において統一を支持する声が高まれば反対しない(要するに今は高まってないと言うことですが)」としているだけです。

 中国はこの統一地方選挙の重大性をよく知って、様々な手を使って介入しました。

 トランプが大統領に当選した選挙での「ロシアゲート問題」と違い、中国によるその種の介入は全く認められてません。見苦しい言い訳にもほどがある。

来賓挨拶:日本も目に見える形で動かないと台湾は大変だ
櫻井よしこ(国家基本問題研究所理事長)
 かつて金門島は中国に対峙する最先端で、緊迫した町でしたが、今では中国からの観光客がぞろぞろいて、かつての激戦地の面影はありません。

 それで何か悪いのか。現実問題、「中国の侵攻の可能性がなく」、かつ「中国人観光客が来る」のならそうなるでしょう。
 それにしても、よしこなんぞを「反中国だから」という理由で来賓に呼ぶ時点でお話になりません。

 日本と台湾は運命を共にする2つの国です。

 もちろん運命を共にしてなどいません。

 3・11の時には台湾が本当に日本を助けてくれました。このことを日本人はずっと忘れないでしょう。

 やれやれですね。支援金なら中国も送っていますが。それどころか北朝鮮ですら送っていますが。大体この種の支援金は「単純な善意じゃない」し。

来賓挨拶:思えば遠くへ来たものだ
金美齢氏(評論家)
 来年の総統選挙で、蔡英文を綺麗な数字*4で当選させなければいけません。

 民進党ならまだしも「何でそんなに蔡英文にこだわるの?」ですね。

講演 第一部
228 事件は台湾人にとって何であったのか 以降台湾人は中国人・日本人をどのように見るようになるのか
許世楷(元駐日台湾大使・津田塾大学名誉教授)
・日本の台湾統治は本来日本の国益を目的としたものであるが、台湾人の生活文化を大きく変えた。日本人は主として真面目にその公的目的を遂行し、1945年に来た中国人が極端にその私的利益を追求したのと、異なっていることを台湾人は実際に見た。
・戦後の中国人統治は台湾人に不安定な生活をもたらし、戦前の日本人統治の評価が高まることになった
・ここに統治者としての悪玉中国人、善玉日本人の評価が台湾人の間に定着していくことになった。

 なるほどこういう「日本ウヨの提灯持ち、幇間」が「津田塾大名誉教授」だから、「新紙幣の肖像が津田梅子(津田塾創始者)」なんですね。っていくら安倍でもさすがにそれはないか。
 それはともかく、まあ随分と日本統治を美化するもんです。実際には「本心」というよりペマ・ギャルポが日本ウヨに媚びてるのと話は全く同じでしょうが。
 「中国に対決するためには、日本ウヨに媚びて何が悪い」つうマキャベリズム、党利党略には心からうんざりします。


北京で日本映画週間開幕 河野外相があいさつ | 共同通信

 日本映画を中国の映画ファンに紹介する「2019北京・日本映画週間」の開幕式が14日、北京市で行われた。訪中した河野太郎外相も出席し、日中両政府が昨年締結した映画の共同製作協定に触れ「多くの日中合作映画が作られることを期待したい」と述べ、映画を通じ互いの文化や社会への関心を高めてほしいと訴えた。

 ウヨ連中は認めたくないでしょうがこのように中国ビジネスが日本企業にとって重要なわけです。


豹変?急接近する中国とどう付き合うか : 深読み : 読売新聞オンライン元中国大使 宮本雄二*5

毛沢東*6周恩来*7トウ小平*8の時代までは、革命第一世代が直接外交を指揮したこともあり、(ボーガス注:国連加盟を実現し、米国と国交樹立するなど)確かに「したたか」だった
江沢民*9以降のリーダーはトウ小平路線を踏襲し、それを必死になって守ってきただけだ。この時代の中国外交に、私は「したたかさ」を感じたことはない。

 本気でそう思ってるのなら正気じゃありませんね。何らかの思惑による虚言でも、発言動機が理解できず、「正気を疑います」が。
 こんなこと言っても正気が疑われるだけだし、こんなこと言って安倍にすり寄っても「短期はともかく」果たして長期で利益になるのか(短期の利益ですら安倍が宮本氏を登用などするか疑問ですが)。
 「したたか」の「わかりやすい例」をあげれば、習近平政権での一帯一路やAIIBが「したたかな外交」なしで実現できたと本気で思ってるのか(まあ無知な俺が知らないだけで、江沢民胡錦濤*10の政権の時代だってしたたかな外交だったでしょうが)。
 大体「非常に大きな意味」では一帯一路もAIIBも「トウ小平路線(改革開放路線)」ですがトウ路線から自然に一帯一路やAIIBが誕生するわけもないでしょうに。
 福田赳夫*11内閣の日中平和友好条約締結を「日中友好は田中*12内閣が国交樹立してからの基本方針だからたいした成果じゃない」というくらい無茶苦茶でしょう。
 この点は「一帯一路やAIIBで習近平*13は歴史に名を残した。中国外交はしたたかだ。」と評価する浅井基文氏*14(外交評論家、元外務省中国課長)の方がまともな理解でしょう。つうか浅井氏のような理解がむしろ普通でしょう。

「一帯一路」の行方は? 中国アフリカ首脳会議 | 国際報道2019 [特集] | NHK BS1
花澤
「『一帯一路』を掲げ、アフリカでの存在感を増す中国。北京では今日(3日)とあす(4日)の2日間、中国とアフリカ各国の首脳が一堂に会する国際会議が開かれています。」
酒井
「その中国のアフリカへの資金拠出。アメリカの研究グループの調査では、2000年から2017年までに中国がアフリカ各国に貸し付けた金額は、日本円であわせておよそ15兆円に上ります。」
別府正一郎支局長(ヨハネスブルク支局)
「首都ダカールの街で目につくのは、中国企業による看板です。あちらに見えますように、中国とセネガルの友情や協力をアピールするものばかりです。街なかでは、中国の企業によって建設された建物が目に付きます。こちらの劇場、建設費は38億円です。こちらの美術館は、22億円。そして、このスタジアムは、60億円です。建設資金も、中国政府が提供しました。」
花澤
「別府さん、世界的に中国の支援に警戒感が強まっています*15が、結局のところ、アフリカは中国の進出を歓迎しているのでしょうのか、それとも懐疑的なのでしょうか?」
別府正一郎*16支局長(ヨハネスブルク支局)
「対照的な2つの受け止めが、同時に存在していると言えます。
 1つ目は歓迎で、特にこれは政府側の関係者に多いんですが、『中国は判断が早く、世界銀行のような国際機関や欧米と違って人権や環境などの問題に条件をつけない』と評価する声です。
 また、国民の間からも、仕事が増えたり、建設ラッシュを目の当たりにしたりして喜ぶ声が多く聞かれます。
 ケニアで、あるタクシーの運転手が『子どもたちを中国人と結婚させたいくらいだ』と話していたのが印象的でした。
 しかし、最近は債務の問題がクローズアップされ、警戒感も広がっています。
 先ほど、『中国は条件をつけない』という声を紹介しましたが、実際には、中国企業の受注や中国製の機械を使うことなどが融資の条件となっていて、地元の企業には、あまりメリットがないという批判も出ています。
 アフリカでは、確かに中国に対する視線が厳しくなっている面もありますが、他に主要なプレーヤーがいないため、結果的に中国の存在感が際立つことになっています。
 かつてアフリカと関係が深かったアメリカはトランプ政権になり、無関心が表面化しています。
 また、イギリスやフランスといった、かつての宗主国にも勢いはなく、結果的にアフリカは中国に頼らざるを得ないのが現状です。」

つうのは立派にしたたかでしょうよ。

 中国の「一帯一路」構想に対しても、日本は「自由で開かれたインド太平洋」をぶつけた。日本独自の外交が中国に響いているのだ。

 本気で言ってるなら正気じゃありませんね。何らかの思惑による虚言でも、発言動機が理解できず、「正気を疑います」が。一帯一路には実態があります。「自由で開かれたインド太平洋」構想(安倍)なんてもんのどこに実態があるのか。安倍が放言したものの、何の実態もない空中楼閣でしょうよ。そんな空中楼閣が中国政治に影響するわけもない。

 日本を訪問する中国人は、2008年に100万人の大台を突破した。

 そりゃ日本で観光旅行を楽しむのと、安倍の反中国極右外交に反感感じるのと話は別ですし。

*1:台北市長などを経て総統

*2:連戦内閣法相、台北市長などを経て総統

*3:陳水扁馬英九政権で台北駐日経済文化代表処代表(駐日代表)。著書『日本統治下の台湾』(1971年、東京大学出版会)、『台湾は台湾人の国』(共著、2005年、はまの出版)、『台湾という新しい国』(共著、2010年、まどか出版

*4:「きれいな数字」とは日本語として変だと思いますが要するに「大量得票で圧勝」ということでしょう。仮に再選を果たすとしてもそんなことは多分無理でしょうが。

*5:著書『これから、中国とどう付き合うか』(2011年、日本経済新聞出版社)、『激変ミャンマーを読み解く』(2012年、東京書籍)、『習近平の中国』(2015年、新潮新書)、『強硬外交を反省する中国』(2017年、PHP新書)、『日中の失敗の本質:新時代の中国との付き合い方』(2019年、中公新書ラクレ)など

*6:党主席

*7:首相

*8:党副主席、副首相、人民解放軍総参謀長などを経て国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席

*9:電子工業大臣、上海市長・党委員会書記などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*10:共産主義青年団中央書記処第一書記、貴州省党委員会書記、チベット自治区党委員会書記などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*11:岸内閣農林相、佐藤内閣蔵相、外相、田中内閣蔵相、三木内閣副総理・経済企画庁長官などを経て首相

*12:岸内閣郵政相、池田内閣蔵相、佐藤内閣通産相などを経て首相

*13:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*14:個人サイト(http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/)。著書『中国をどう見るか?』(2000年、高文研)、『集団的自衛権日本国憲法』(2002年、集英社新書)、『戦争する国しない国』(2004年、青木書店)、『13歳からの平和教室』(2010年、かもがわ出版)、『ヒロシマと広島』、『広島に聞く 広島を聞く』(以上、2011年、かもがわ出版)、『すっきりわかる! 集団的自衛権』(2014年、大月書店)など

*15:もちろんこうした一帯一路への批判(「債務の罠」云々とか)は「全くの嘘ではない」ですが、日本マスコミってこういう「やたら一帯一路に否定的な報道」が多い(そして肯定的報道が少ない)のは何なんでしょうか?。安倍への忖度?。それとも「反中国は売れる」?。

*16:著書『ルポ 終わらない戦争:イラク戦争後の中東』(2014年、岩波書店