今日の中国ニュース(2019年6月3分)

天安門事件30年を前に各地で中国政府に批判の声 - 産経ニュース
 「各地」と書きながら出てくるのが「台湾と香港だけ」つうのが「何だかなあ」ですね。要するに産経に取材能力がないんでしょう。


エルサルバドル大統領にブケレ氏就任 対米急接近で注目:朝日新聞デジタル

 中米エルサルバドルで1日、2月の大統領選で当選したナジブ・ブケレ前サンサルバドル*1市長(37)が就任した。
 対中関係をめぐり、ブケレ氏はこれまでに「国交樹立過程が不透明だった」と指摘。「米国のためでも中国のためでもなく、エルサルバドルのためになることをする」とも述べ、見直す余地があることを示唆している。
 今後の動向が注目される。

 まあ「見直す」といったところでさすがに「台湾と国交を回復します」はないでしょうね。


豪州、ソロモン諸島に188億円支援 中国の影響力拡大阻止へ 太平洋諸国を重視 - 産経ニュース

ソロモン諸島は台湾と外交関係があるが、4月の総選挙で新首相に就任したソガバレ氏は中国との国交樹立を検討している。
・ソガバレ氏は4月の議会選(定数50)後の指名選で、副首相から4度目の首相に就任。地元テレビ局の取材に、台湾との関係について「強固でも不変でもない。外交関係の原則はどう利益を得るかだ」と見直しを表明した。見直しは前政権時から浮上していたが、現在連立政権を組む政党の議員は、半年以内に中国と国交を樹立しなければ不信任案を提出すると圧力をかけている。
 中国はソロモン諸島の輸出額の6割超を占め、貿易相手国として第1位。台湾と外交関係がある17カ国*2のうち、太平洋島嶼国が6カ国を占める。ソロモン諸島はこの中で最大で、同国が外交関係を台湾から中国に切り替えれば、地域でドミノ現象が起きるとの指摘もある。

 こうなると今後の「ソロモン諸島」そして「太平洋島嶼国(ソロモン諸島以外ではキリバス、ツバル、パラオマーシャル諸島ナウル)」の動向が注目されますね。
 なお、オーストラリアの支援ですが「支援のバーターで台湾との国交維持を要望した」のならともかくそうでないなら、「ソロモン諸島が台湾と断交し、中国と国交樹立するかしないか」には影響しないでしょう。そしてオーストラリアがそこまで台湾に肩入れし、中国と対立するかどうか。
 「台湾は関係ない」オーストラリアの国益維持のための支援でしかないでしょうねえ。
 しかしこうなると「台湾の安倍晋三(「見境なく中国を敵視」という意味)」蔡英文が、馬英九・前政権の対中国融和外交を否定し、中国といたずらに対立したことはまさに愚行だったと思います。
 蔡英文政権誕生以降、「パナマ」「ドミニカ共和国」「ブルキナファソ」「エルサルバドル」が「台湾との断交(そして中国との国交樹立)」を実行したことは、蔡に対する中国の反発の表れでしょう。

【参考:最近の台湾との断交、中国との国交樹立】

【世界ミニナビ】友情を経済で圧倒、台湾と断交のパナマで中国支援の鉄道計画(1/2ページ) - 産経ニュース
・昨年*36月に台湾と断交し中国と国交を樹立した中米パナマで、中国支援による鉄道建設に向けた調査が始まった。
パナマのバレラ大統領は4月、ロイター通信のインタビューに対し「中国とともに、約450キロの鉄道の実現可能について調査している」と認めた。実施されれば初期投資で50億ドル(約5500億円)という大きなプロジェクトだ。計画を報じたキューバメディアのプレンサ・ラティナによると、首都パナマ市からコスタリカ国境地域まで約2時間半でつなぎ、貨物列車も走らせる。
■経済で中国が圧倒
 台湾とパナマは、清朝時代の外交関係を引き継いだとされる長年の友好国だった。蔡英文総統は総統就任直後の2016年6月に訪問してパナマ運河拡張工事の完成式典に出席し、友好関係を再確認していた。
 わずか1年後にパナマが中国に乗り換え、蔡政権には大きな打撃となった。台湾はパナマに多額の援助を行ってきたが、経済で中国に太刀打ちできない状態だ。パナマにとって中国は米国に次ぐ貿易相手国で、運河の通行量でも中国は米国に次ぐ重要顧客だ。
 国交樹立でパナマと中国の関係強化は急速に進む。昨年10月、中国企業が1億6500万ドルを投じてクルーズ船用港湾の建設を始めたとロイターが報じた。同11月に訪中したバレラ氏は自由貿易協定(FTA)に向けた調査開始や中国向け経済特区の設立などで合意。今年4月には、中国国際航空が北京とパナマ市を米ヒューストン経由で結ぶ路線を開設した。
 中国は世界最大の人口と第2位の経済力で、台湾を寄せ付けない力量を見せつける。
 5月1日、カリブ海ドミニカ共和国が突如、台湾と断交して中国と国交を樹立した。前年のパナマに続いて2年連続、この地域で台湾から中国への乗り換えが起きたことになる。

 結局なんだかんだ言っても経済の問題が大きいわけです。


【正論】米国との戦争に勝てない中国 東京国際大学教授・村井友秀 - 産経ニュース

 現在の中国は改革開放政策によって都市化と少子化が進み、経済は対外貿易に依存し、経済発展が共産党支配を支える体質になった。農村人口は4割に減少した。現在の中国で、経済発展を支える都市が破壊され、一人っ子である多数の若者の命を大量消費する人民戦争を実行すれば、経済は崩壊し国民の不満が爆発して共産党政権は倒れるだろう。現在の中国は長期にわたる人民戦争を戦うことができず、短期間の局地戦争しか戦えない体質になっている。

 吹き出しました。それ中国に限った話ではなく「全ての近代国家(欧米や日本)」に該当することですけどね。
 日本で「太平洋戦争」のような「日本全国の都市(東京、大阪、名古屋など)が大規模空襲を受けるような戦争」が今できるかどうか。とてもできはしないでしょう。
 米国にしたって「やってる戦争」は「第二次大戦を除けば」全て「国外で発展途上国ベトナムイラクやアフガン)相手」です。「米国全土が攻撃を受ける恐れがあるような大国(旧ソ連や中国)とのがちの戦争」などできはしません。
 ベトナムですらドイモイ後は「ベトナム戦争のような国土全部が戦争」なんて事態はとてもやってられないんじゃないか。
 いずれにせよ、この産経記事からは、産経ですら「中国の日本攻撃」「中国と米国の戦争」などあり得るとは思ってないことが分かります。
 つまりは「近代化すると」一般的に言って「自国が戦場になるような戦争」はダメージがでかすぎて、とてもできなくなります。しかしその代わり「相手の国力が自分より劣る」など、「自国が戦場になる恐れがない」のならば「米国がベトナム、アフガンやイラクでやってるような、あるいはロシアがシリアでやってるような国外での戦争」は近代化(軍事大国化)によってかえって助長されることもあります(当然に助長されるわけではない)。


天安門事件30年 中国の国際復帰手助けした日本 国益確保へ問われる戦略 - 産経ニュース

 安倍晋三政権は、昨年の中国の李克強首相と安倍首相による相互訪問を経て「完全に正常な軌道へと戻った」(安倍首相の施政方針演説)とみなしている。
 両政府は今年5月に「日中軍縮・不拡散協議」を8年ぶりに北京で開くなど、各レベルで対話を活発化させている。今月28、29日に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)には、中国の習近平国家主席が就任後、初めて来日する。
 安倍首相は首脳の往来を通じ、両国関係を「新たな段階へと押し上げていく」考えだ。政府・与党内には早くも、習氏を国賓として再び招くことを模索する動きすらある。 

と不満たらたらの産経ですが
1)安倍がそうした方向性を変えるとは思われない
2)石破*4元幹事長でアレ、石原*5元幹事長でアレ、岸田*6政調会長でアレ、枝野*7立民党代表でアレ、安倍以外が首相になってもそうした方向性が変わるとは思えない
3)安倍が首相を辞めると産経の悲願「九条改憲の実現」が遠のく
ということから「ぶつくさ不満を言うだけ」で「安倍政権打倒を叫ぶわけでもない」それ以上何もしない、出来ない産経です。


【第597回・特別版】「対日甘言に乗らず」が天安門の教訓 « 今週の直言 « 公益財団法人 国家基本問題研究所

 日本は1992年の天皇訪中によって中国に救いの手を差し伸べてしまった。これが、今日の劇的な中国台頭への道を開いたというべきか。
 中国の銭其琛元副首相は2003年に出版した回想録『外交十記』の中で、天皇陛下の中国ご訪問に触れ、西側の対中制裁を打破するのに「積極的な効果があった」と平然と述べている。島国の中で総じて安定的な日本は、蛮族が盛衰を繰り返してきた大陸の狡猾な外交に手もなくひねられてしまう。

 この「銭其琛元外相の回顧録」の話は産経は「何度目だよ」といいたくなるほど何度も繰り返しています。よほど天皇訪中が不愉快なのでしょう。
 とはいえ「日本も中国ビジネスで大いにもうけた」のであり中国だけが利益を得たわけではありません。そして中国に「そうした思惑もあったであろう事」は天皇訪中時からわかりきったことです。つまり「狡猾な外交に手もなくひねられてしまう」なんて話ではない。
 おそらく「アンチ中国」産経は「訪中の件」だけでも明仁氏を「明仁の野郎、中国を助けやがって絶対に許せない」と憎悪してるでしょう。
 おそらく産経にとっては「反中国>絶対に越えられない壁>天皇万歳」でしょうから。その上「米長の例の件」「天皇在位中、靖国に一回も行かなかった件」「生前退位に反対する安倍を無視して退位したいと主張した件」など他にも「ウヨとして明仁氏を憎悪するネタ」は山ほどあります。とはいえ「明仁氏が産経のようなウヨから距離を置いてること」こそが「戦後天皇制持続の大きな理由」であり、にもかかわらず産経らウヨは「そんな天皇はおかしい」と明仁氏に憎悪をたぎらせるわけですが。

 中国共産党は、時折頭をもたげる民主化要求に対して威嚇と暴力で応じ、人々の不満のはけ口を外に振り向けようとする。国家の敵である日米をスケープゴートに仕立てて緊張を高め

 認識が完全にゆがんでますね。現在米国と中国が対立しているのは「米国トランプ政権が中国に報復関税やファーウェイ攻撃を仕掛けたから」であって別に「中国が米国をスケープゴートに仕立てた」わけではありません。
 日中関係にしても「安倍の靖国参拝」などが中国の反発を招いているわけです。「安倍以外の総理」「トランプ以外の大統領」でも常に中国が日米へ政治的攻撃をしてきたなんて事実はどこにもありません。


【第598回・特別版】モディ政権が継続するしたたかな対中外交 « 今週の直言 « 公益財団法人 国家基本問題研究所

 インドが中国との関係改善に動いているのには、幾つかの理由がある。第一に、経済的な結び付きの強さである。中印貿易は800億ドルの水準で推移しており、日印貿易の5倍以上だ。
 第二は、中国とインドの国力の差だ。現時点で中国の国内総生産GDP)はインドの約5倍で、インドの軍事力は中国を大きく下回り、いま中国と争ってもインドには全く勝ち目がない。
 第三に、国連安保理常任理事国である中国はインドに対して様々なカードを切ることができる。インドが望む常任理事国入りには中国の賛成が必要*8だし、2月にジャム・カシミール州で爆破テロを起こしたパキスタンのテロ組織ジャイシェ・エ・モハンマドの指導者マスード・アズハルを国連がテロリストに指定することも、中国政府はつい最近まで阻止してきた。中国はインドが望む原子力供給グループ(NSG)加入も妨害している。いたずらに中国を刺激することは、インドにとってマイナスにしかならない。

 こういう文章があの国基研サイトに載るとは驚きです。言ってることは全く正論であり、従って櫻井よしこ・国基研理事長、田久保忠衛・国基研副理事長が望む「インドの中国敵視」はあり得ない妄想と言うべきでしょう。

 インドは中国が嫌がるオーストラリアの日米印3カ国合同軍事演習参加に消極的な姿勢を見せる一方で、米国や日本と閣僚レベルの外交・防衛協議「2プラス2」の実施で合意し、軍事費も大幅に強化している。インドはまた中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)には参加しているものの、透明性に欠ける「一帯一路」構想は支持していない。

 つまりは獣(中国)にも、鳥(米国)にも言い訳が聞くよう、イソップ童話のコウモリのように、あるときは「私はAIIBに参加したから獣(中国)の味方だ」といい、またあるときは「私は一帯一路に参加してないから鳥(米国)の味方だ」というわけです。

*1:エルサルバドルの首都

*2:アフリカ1カ国(エスワティニ(旧称・スワジランド))、太平洋島嶼国6カ国(ソロモン諸島キリバス、ツバル、パラオマーシャル諸島ナウル)、中南米9カ国(グアテマラ、セントクリストファー・ネービス、セントビンセントおよびグレナディーン諸島ニカラグア、ハイチ、パラグアイベリーズホンジュラスセントルシア)、ヨーロッパ1カ国(バチカン)の合計17カ国。

*3:2017年のこと

*4:小泉内閣防衛庁長官福田内閣防衛相、麻生内閣農水相自民党政調会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)、第三次安倍内閣地方創生担当相を歴任

*5:小泉内閣国交相自民党政調会長(第一次安倍総裁時代)、幹事長(谷垣総裁時代)、第二次安倍内閣環境相、第三次安倍内閣経済財政担当相を歴任

*6:第一次安倍、福田内閣沖縄・北方等担当相、第二次、第三次安倍内閣外相を経て自民党政調会長

*7:鳩山内閣行政刷新担当相、菅内閣官房長官、野田内閣経産相民主党幹事長(海江田、岡田代表時代)、民進党代表代行(前原代表時代)を経て立憲民主党代表

*8:これは日本の安保理常任理事国入りも同じ事です。その意味で「常任理事国になりたい」といいながら中国に敵対的なウヨ(産経や安倍)は主張が矛盾しています。