今日の産経ニュースほか(2019年6月29日分)

【最初に追記】
 この拙記事が祝! 櫻井よしこの「週刊ダイヤモンド」での連載が、25年を経てついに打ち切られる! - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)で紹介頂きました。いつもありがとうございます。
【追記終わり】

「 日本の歴史をどれだけ深く学ぶかによって近未来を切り開く道が自ずと明らかになる 」 | 櫻井よしこ オフィシャルサイト
 もちろん日本の歴史を学ぶことは大事なことですがよしこの場合「南京事件否定論」「河野談話否定論」というデマゴーグなのだから話になりません。

 安岡正篤*1は首相まで務めた宮沢喜一*2を「ヨコの学問はできてもタテの学問がなっていない*3」と評した。

 やれやれですね。安岡なんて

・戦前の「大川周明*4」「北一輝*5」「頭山満*6」「西田税*7
・戦後の「赤尾敏*8」「児玉誉士夫*9」「笹川良一*10」「野村秋介*11

に当たる人物、つまり黒幕(フィクサー)だの「大物右翼」だの言われる人物を持ち出してどや顔とは呆れます。よしこのようなウヨにとっては安岡らこれらの大物ウヨは「尊敬に値する人物」なのでしょうが、世間的にはそうではないでしょう。もちろん俺もアンチウヨとして、彼らを尊敬などしません。
 ちなみに真偽は不明ですが安岡は

終戦玉音放送を推敲した
・池田*12派を「宏池会」と命名した
岸信介*13以降の歴代首相(田中角栄*14三木武夫*15を除く)が施政方針演説の推敲を依頼していた(安岡が死去するのは1983年なので中曽根*16首相まででしょうか?)

などの伝説を持つ大物右翼です(ウィキペディア安岡正篤」参照)。そのため、「ロッキード事件」児玉や「競艇のドン」笹川に比べれば知名度は落ちますが、安岡は割と有名な右翼かと思います。
 昔は「平成の年号の発案者」なんて安岡伝説もありましたが、ウィキペディア安岡正篤」によれば、これはウソで実際は「山本達郎・東京大学名誉教授」だそうです。
 まあ、よしこの紹介する安岡発言が事実だとしても、こんなのはよしこらウヨが「河野洋平*17」「加藤紘一*18」「福田康夫*19」などを「反日自虐」「中国の犬」呼ばわりするのと大して変わりません。「リベラル派の宮沢氏」を安岡のようなウヨが良く言うわけがないでしょう。
 つうか、「安岡云々」ではなく、よしこらウヨ自身が宮沢氏については「河野談話当時の首相」「天皇(今の上皇)訪中時の首相」ということで激しく憎悪し、敵視しているわけですが。

 近年読んだ本の中でとりわけ重要だと感ずるのが白鳥庫吉博士の書いた日本史である。大正3(1914)年に開設された「東宮御学問所」で時の皇太子、裕仁親王に日本史を教えるために白鳥博士が書いた5巻に上る書である。いま『昭和天皇の教科書 国史』(以下『国史』、勉誠出版)として手にすることができる。

 研究の進展した今時、戦前に死去した「白鳥庫吉(1865~1942年)」を褒めるとはよしこは非常識にもほどがあります。しかも白鳥を褒める理由が「昭和天皇の教科書を作ったから」とは時代錯誤にもほどがあります。それにしても「勉誠出版」てのは右翼系の出版社なんでしょうか?

 『国史』には(中略)皇室の国民に対する視点が次のように書かれている。日本国の特徴は、天皇が日本国を「大きな家族」と見做し、「君と民とがおだやかに和して国の基礎を強く固め」ていることだ、と。

 今時そんな天皇制理解は非常識にもほどがあるでしょう。そもそも「今も昔も」国民は「天皇の家族」ではありません。そういう洗脳(いわゆる赤子思想)をして「家族なんだから国民は父親(国父)である天皇のために尽くせ」と国民を操っただけです(こうした洗脳は古今東西独裁国家で存在したもので、戦前日本の専売特許ではありませんが)。しかもそんなことを抜かしながら「沖縄戦の集団自決」でわかるように都合のいいときは「家族だから父である天皇のために尽くせ」、都合が悪くなると「平然と切り捨てる」のだから昭和天皇は「最低最悪の亡国の君主」ですね。
 「明治時代から1945年までの天皇崇拝の洗脳」が強力だったためにろくに国民の批判もあびずに、それどころか、多くの日本人から敬愛され「退位もしないで居座り続けた昭和天皇」ですが、本当なら「亡国をもたらしたムソリーニ体制に協力した国王への反発から王制が廃止された」イタリアのように天皇制が廃止されても何らおかしくなかったでしょう。「昭和天皇が退位すらせずに居座ったこと」は日本人として屈辱ですね。

 天皇の慈しみは日本に移り住んだ異民族にも同様に注がれる。天皇は、「(異民族を)従来の国民と同様に慈しみ、両者が溶け合って円満な国づくり」を実践したと『国史』は述べる。右の精神は第一次世界大戦後のヴェルサイユ会議で日本が人種差別撤廃を主張したこととも、対米開戦の理由ともなった米国での日本人排斥運動への憤りとも、通底するのではないか。

 「よしこは嘘八百も大概にしろ」ですね。日本の植民地(台湾、朝鮮)統治のどこが「異民族差別のない円満な関係」だったのか。
 「対米開戦の理由ともなった米国での日本人排斥運動への憤り」というのも大嘘です。いわゆる排日移民法の成立は明治時代のことだし、対米開戦の理由は「蒋介石政権を巡る政策の対立」です。
 日本は「蒋介石政権を転覆して中国を完全な植民地にしようとし」、一方、蒋介石を支援する米国はそれを阻止しようとしました。
 つまりは
1)日本が蒋介石政権転覆を諦めて、蒋介石と講和するか
2)米国が蒋介石を見捨てて日本の中国侵略を容認するか
どちらかであれば戦争は起きなかったわけです。

 歴史上、天皇や皇室発の争いも確かにあった。それを『国史』は蘇我一族の横暴な振舞いを例にして、どんな時も天皇は一氏族のみを寵愛してはならないと戒めている。

 壬申の乱大海人皇子(後の天武天皇)と大友皇子*20の権力争い)はどう見ても「天皇は一氏族のみを寵愛してはならない」などという話ではなく、「天皇一族の個人的な権力争い」ですが、まあ、白鳥もそうは書けなかったのでしょうね。その結果「悪いのは蘇我氏だ」のような「天皇は悪くない」というデマが捏造されるわけです。まあ現代の目から見れば馬鹿馬鹿しい限りです。

 さて、25年間*21にわたった連載は今回で終了する。読者の皆様には深く心からのお礼を申し上げたい。編集部の方々にも深く感謝申し上げる。

 さすがに週刊ダイヤモンドにもよしこの連載への苦情や批判(非常識ウヨ、デマ右翼の与太を掲載するな、など)でもあったんでしょうか。よしこの後釜が「百田尚樹」のような非常識なバカではなくまともな人間なら大変いいことだと思います。まあ、よしこは内心とても悔しがってるのでしょうが。


【日露首脳・共同記者発表詳報】(下) プーチン露大統領「平和条約交渉を新たなレベルにするため地道に作業する」(1/2ページ) - 産経ニュース

 エネルギー分野はロシアと日本との協力の主要な分野になっており、日本企業は「サハリン2」に参加していました。また「アークティックLNG2」というプロジェクトに三井物産JOGMEC*22が参入する重要な合意が結ばれました。それに従い、30億ドルの投資が予定されています。

 「日露の経済、文化交流を進めよう」という話はあっても「島の返還」なんて話は見事なまでに何一つ出てこないプーチン発言です。


【日露首脳・共同記者発表詳報】(上) 安倍首相「平和条約交渉の乗り越えるべき輪郭は見えた」(1/2ページ) - 産経ニュース
 よくもまあこんなデタラメなことが言えるもんだと本当に感心(?)します。
 まあ確かに「返還した島に米軍を置くなというロシアの要望」「返還が決まった時のロシア人住民の扱い(ロシア本土に帰国してもらうのか、ロシア系日本人として国籍付与して住み続けてもらうのか)」など「平和条約交渉の乗り越えるべき輪郭」は見えてるかもしれませんが、「どう乗り越えるのかは全く見えてないよね」つう話です(安倍への皮肉のつもり)。

 先ほど『北極LNG2』への日本企業の参画が正式に決定した。ロシアが進める北極地域の開発と、わが国のエネルギー安定供給に貢献する協力が成立したことを歓迎します。また、ハバロフスクに日本の経験と技術を生かした予防医療診断センターを設立するため、日露双方が投資を決定しました。私が8項目の協力プランを提案して以来、3年間で200を超えるプロジェクトが生み出されており、今後もこのような互恵的な協力をさらに拡大していきます。
 2023年までに、相互訪問者をそれぞれ少なくとも20万人、計40万人にする目標を日露で共有しました。経済関係をより緊密にし、地方間や大学間などさまざまな交流を増やしていきたいと思います。

 「結局、島の返還なんかどうでもよくて日本企業がロシアで金儲けしたいだけと違うのか」ですよね。


安倍首相、「女性が輝く世界」約束 日本の女性労働参加率は改善 - 産経ニュース
 今の日本は「ワーキングプアが増え、夫婦共働きでないととても生活が成り立たない」という要素もあるので「女性の労働力増加」は単純に喜べる話でもありません。「働かなくてもいいが、専業主婦でもいいが、働きたいから働いてる」というのでは必ずしもない。


1964年東京五輪聖火リレー秘話 米統治下の沖縄「日の丸で埋まった」 - 産経ニュース
 祖国復帰前の沖縄において日の丸は「米国批判の意味」を持ち得ました。
 復帰後の「本土民が」「日本中央政府が」沖縄県民を差別してる現在に置いて日の丸は「そんな旗にはなり得ません」。
 変わったのは「日の丸の持つ政治的意味」であり「日の丸に負のイメージを持たせてしまった」のは復帰後、沖縄を見捨てた、差別した「本土民」「日本中央政府」です。沖縄県民が変わったわけではない。


自民・二階幹事長「棄権者名、張り出せ」 参院選低投票率めぐり - 産経ニュース
 言ってることが本当に無茶苦茶ですね。もちろん棄権は褒められたことではない。
 棄権者の中には「政治に全く無関心」という困った人間もいるでしょう。しかし一方で「政治への不信、失望による棄権」というケースもあるでしょう。まずは「自分たち政治家が政治不信によって棄権を助長してないか」とか「投票率を高めるため死票が多い小選挙区はやめて比例や大選挙区にしよう」などと思うべき所「棄権したらさらし者にしよう」とはどういう神経をしてるんですかね。


【令和の争点】生き抜く 「公助」から「自助」へ意識変化 政治はビジョン示せるか - 産経ニュース
 社会保障の目的は「公助」です。「自助」などと抜かして、弱者切り捨てをしようなどとんでもない話です。
 「健康で文化的な最低限度の生活(憲法25条)」、つまり「憲法上の権利として最低限認められたもの」は公共(政府)が保証して当然の話です。そこまで自助に任せたら何のための社会保障なのか。
 産経のような物言いは社会保障の否定でしかない。しかし「助け合い」を否定して産経や自民が守りたい「保守だの伝統だの」とは一体何なのか。そんなもんは私見では保守や伝統の名に値しないでしょう。
 そしてこんなことを抜かし「格差社会」を容認する産経がよくもまあ「中国は格差が酷い」だのと抜かせるもんです。少なくとも中国政府は産経とは違い「格差縮小」の方向に動いているでしょうに。


「北海道観光の起爆剤に」 菅長官がアイヌ施設を視察 - 産経ニュース
 本当にこんなことを菅が言ったのなら無神経極まりないでしょう。「少なくとも建前においては」この施設は「明治以降差別され続けてきたアイヌについて、きちんと文化を後世に伝えていこう」という話であって「観光で金儲け」という話ではないからです。
 安倍政権においては「チベットなど外国の民族文化保護」も「観光で金儲け」という理解なのかと疑いたくなります。


安倍首相がG20議長記者会見 自身のイラン訪問に「各国から強い支持あった」 - 産経ニュース
 例のタンカー攻撃について、トランプが「イランの犯行だ!。許せない!」といった時点で「イラン訪問の成果などなかったこと」は明白なんですがね。
 まあ、イランにせよ、アメリカにせよ、EU諸国にせよ、安倍に気を遣って、面と向かっては「失敗だ」とは言わないのでしょうが、それを理由に「訪問が支持された」と強弁するとは、いつもながら安倍はどれほど恥知らずなのか。まあ、支持したと言っても「226事件陸軍大臣告示」の有名な文句「諸子ノ真意ハ国体顕現ノ至情ニ基クモノト認ム」と同じ、「安倍氏の真意は中東平和の至情に基くものと認む」でしかないでしょう。
 226事件で川島大臣らが後に「青年将校を下手に挑発したら収拾がつかなくなる。告示内容も『行為の是非はともかく国をよくしたいという思いでやった事は認める』としか言ってない。高橋蔵相らの殺害正当化なんかしてない」と言い訳したように、各国首脳も面と向かって問われれば「安倍にケンカ売っても我が国が反感買うだけで何もいいことなんかない。『行為の是非はともかく中東平和という思いでやった事は認める』としか言ってない。イラン訪問が成功したなんて言ってない」と言い訳するでしょうね。


【産経の本】『日本共産党の最新レトリック』筆坂秀世著 有権者をナメた「野党共闘」 - 産経ニュース
 むしろ「なめてるのは筆坂の方」ですよね。
 当初は『私たち、日本共産党の味方です』(鈴木邦男氏との共著、2007年、情報センター出版局)、『悩める日本共産党員のための人生相談』(2008年、新潮社)なんて本を出し「共産党に苦言を呈する左派リベラル」を演じていた物の「既にそんな人間はたくさんおり、よほど筆坂本に魅力がないと売れない→実際売れなかった」となったのか、今や『日本共産党中韓:左から右へ大転換してわかったこと』(2015年、ワニブックスPLUS新書)なんて本を書き河野談話を否定し、慰安婦の違法性を否定するのだから呆れて二の句が継げません。
 まあウヨ団体が組織購入でもしてくれるんでしょう。
 筆坂の行為「違法行為(慰安婦)の違法性否定=歴史修正主義」なんてのはもはや価値観の違いではなくただのデマです。
 筆坂もよくもまあここまで恥知らずなことが出来ると関心(?)します。しかしどう見ても大して売れてないし話題にもなってないし、「産経、日本会議などウヨ連中」も「元共産党幹部がカネのために反共雑文を書くとは落ちぶれたもんだ」「俺たちから見捨てられたらどうする気なんだろうな?」と完全に筆坂を見下してるでしょうが。まあ、筆坂もそんなことはわかってるでしょうが「生活のためにプライドを捨ててる」わけです。つうか離党したとは言え、まともな食い扶持はいくらでもあるはずだと思うんですけどね。

*1:1898~1983年。戦前、右翼的教育団体「金鶏学院」を設立するが戦後、GHQによって解散させられる。1958年(昭和33年)には岸信介元首相、安倍源基元内務相(鈴木貫太郎内閣)、木村篤太郎元法相(吉田内閣)らとともに右翼結社「新日本協議会」を結成、安保改定運動や改憲運動などに関わった(ウィキペディア安岡正篤」参照)。

*2:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、福田内閣経済企画庁長官、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相。首相退任後も小渕、森内閣で蔵相。

*3:いわゆる「幅広く何でも出来る何でも屋」ではあっても、「専門領域がない」つうことですかね(そうした安岡の指摘の是非はともかく)。

*4:1886~1957年。戦後、A級戦犯として訴追されるが発狂を理由に免訴ウィキペディア大川周明」参照)。

*5:1883~1937年。226事件で死刑判決(ウィキペディア北一輝」参照)。

*6:1855~1944年。右翼結社・玄洋社総帥(ウィキペディア頭山満」参照)。

*7:1901~1937年。226事件で死刑判決(ウィキペディア西田税」参照)。

*8:1899~1990年。1951年、大日本愛国党総裁に就任(ウィキペディア赤尾敏」参照)。

*9:1911~1984年。大野伴睦自民党副総裁)、河野一郎(岸内閣経済企画庁長官、池田内閣農林相、建設相など歴任)らと親密な関係を持ち政界のフィクサーとして暗躍した(ウィキペディア児玉誉士夫」参照)。

*10:1899~1995年。戦前、右翼政党・国粋大衆党総裁。戦後、日本船舶振興会(現・日本財団)会長、国際勝共連合名誉会長を歴任(ウィキペディア笹川良一」参照)。

*11:1935~1993年。1961年に右翼結社「大悲会」会長に就任。1963年7月15日、河野一郎邸焼き討ち事件を起こし逮捕され、懲役12年の実刑判決を受けた。出所後の1977年3月3日、経団連襲撃事件を起こし逮捕。懲役6年の実刑判決を受け再び服役(ウィキペディア野村秋介」参照)。

*12:元大蔵次官。吉田内閣蔵相、通産相、石橋内閣蔵相、岸内閣蔵相、通産相などを経て首相

*13:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任

*14:岸内閣郵政相、池田内閣蔵相、自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)、佐藤内閣通産相などを経て首相

*15:片山内閣逓信相、鳩山内閣運輸相、岸内閣科学技術庁長官(経済企画庁長官兼務)、池田内閣科学技術庁長官、自民党政調会長、幹事長(池田総裁時代)、佐藤内閣通産相、外相、田中内閣副総理・環境庁長官を経て首相

*16:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官を経て首相

*17:中曽根内閣科学技術庁長官、宮沢内閣官房長官、村山、小渕、森内閣外相、衆院議長を歴任。現在、日本国際貿易促進協会会長

*18:中曽根内閣防衛庁長官、宮沢内閣官房長官自民党政調会長(河野総裁時代)、幹事長(橋本総裁時代)など歴任

*19:森、小泉内閣官房長官を経て首相。

*20:明治維新後「弘文天皇」の諡が与えられるが、通説では天皇としての即位はなかったとみられている。

*21:25年もこんな与太が連載されてたのかと呆れます。

*22:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構の略称