今日の産経ニュース(2020年8月30日分)

石破氏、菅氏出馬で戦略見直し 派内に非戦論も - 産経ニュース
 現執行部(麻生副総理・財務相、二階幹事長など)が党員投票を否定し菅をポスト安倍につけようとする中、党員投票が実際に否定された場合、「敗戦し、新しい執行部に干される恐れがあってもあえて出馬し意地を見せた上で、党員投票否定の不当性を訴えるのか」、「今回は見送るのか(ただし見送っても仮に菅が首相になったとして石破を厚遇する保証はなく、かつ自民党員の石破人気がダウンする恐れがある)」、石破も悩んでいるようです。


【総裁選ドキュメント】谷垣グループが幹部会、党員投票の必要性で一致 - 産経ニュース
 つまりは党員投票を前提にすれば「本命・石破、対抗・岸田、穴・菅」となり、議員投票「だけ」だと「本命・菅(二階派麻生派が支援の見込み)、対抗・岸田、穴・石破」になるわけで「何だかなあ?」ですね。
 岸田はどっちにしろ本命にはなれないわけですが、「巻き返しが可能かもしれない」「巻き返せなくても善戦すれば新総裁(石破?)に厚遇される可能性がある」党員投票の方がまだマシと言うことでしょう。


次の首相、石破氏1位34% 菅氏14%、河野氏は13% 共同緊急世論調査 - 産経ニュース

 衆院議員の任期は来年10月まで。望ましい衆院解散・総選挙の時期については「任期満了かそれに近い時期」が51・8%で最多。次期衆院選比例代表での投票先は自民党が48・0%、立憲民主党は11・6%だった。
 退陣表明の時期については「適切だった」が58・6%。「遅過ぎた」は25・3%、「早過ぎた」12・7%だった。内閣支持率は56・9%で、8月22、23両日の調査より20・9ポイント増。第2次安倍内閣以降の7年8カ月間について、ある程度を含め「評価する」が71・3%に上った。

 衆院選挙について「今すぐに」が多くないのは「ポスト安倍の新首相」「立民・国民民主に統合による新党」の動きを暫く見たいと言うことで、「ある程度」理解できますが他は全く理解できませんね。
 「病気辞任による同情票」も多少はあるのかもしれませんが、それにしても、小生のような安倍批判派、自民批判派には信じられない結果でげんなりします。勿論小生的には「比例で自民になど投票しない」「退陣は遅すぎた(遅くともモリカケ桜を見る会といった疑惑発覚時には辞めるべきだった*1)」「安倍など評価しない」ですが。もちろん、安倍が有能なのでは無く「日本人が劣化している」「安倍でなくても谷垣*2、石破や岸田でも恐らく長期政権になった」でしょう。谷垣や石破、岸田が首相で長期政権なら今回の安倍ほど無様な辞任劇では無かったかもしれない。
 正直、今の日本人は「自民党の政治が千代に八千代に」という連中ばかりなのかとげんなりします。
 モリカケ桜を見る会などの不正をなんとも思わないのが今の日本人なのか。マスコミの安倍批判の弱さも影響してるとは言え正直絶句しますね。
1)田中*3首相の金脈辞任の時は「クリーン」を売りにしていた三木氏*4を総裁に担いだ
2)リクルート事件の時は竹下*5首相が退陣に追い込まれたあげく、「リクルート疑惑」の浮上した灰色政治家「宮沢*6蔵相」「安倍晋太郎幹事長」「渡部*7政調会長」ら党内実力者はポスト竹下に名乗りを上げられず、いわゆる傍流であり「竹下派(党内最大派閥)の雇われマダム、神輿」と言われながらも「リクルート疑惑に関与してない」宇野氏*8、海部氏*9が急遽総裁になった
そうした時代と今の違いにはため息が出ます。
 それにしても「内閣支持率は56・9%で、8月22、23両日の調査より20・9ポイント増」てのは何なんでしょうか?。
 22日から1週間程度しか経ってないのに「退陣表明しただけでそれ」とは明らかに異常であり「病気辞任への同情」でしょうか(つまりは退陣表明しなかったら低いままだったろうと言うことですが)。「適切だった」が多いのも実際にそう思ってると言うよりは、「病人に向かってもっと早く辞めて欲しかったとか、辞めるのが早すぎるとかいうのはいかがなものか」という話なのか。
 「臨時代理を何故か立てない不自然さ」を考えれば、どう見ても仮病だし、仮に「マジの病気」だとしても「病人に同情すること」と「政治家の政策を支持すること」と全然違うでしょうに。
 これは安倍に限らず「仮病の安倍とは違う」、「石橋*10首相の病気辞任」「大平*11首相、小渕*12首相の在任中の病死」だって話は同じです。彼らに同情することと彼らの政治をどう評価するかは全く違う。
 日本人であることが心底嫌になります。いずれにせよ「国民が馬鹿でも」めげずに野党各党など自民批判派は、自民批判を続けていくほかは無いわけですが。


二階派、菅氏支持の方針固める 自民党総裁選で - 産経ニュース
 ということで「予想の範囲内ですが」二階派は菅支持だそうです。


菅義偉官房長官が出馬意向固める - 産経ニュース
 「安倍*13が干していた」石破*14は勿論「自民党政調会長」岸田*15ですら首相になれば「安倍本人や安倍政権幹部(麻生*16副総理・財務相や二階*17幹事長?)」を「世論に配慮して切り捨てるかもしれない」「モリカケなどの追及が始まるかもしれない」という恐怖感から「安倍の子分である菅」を「過去にも小泉内閣官房長官安倍氏、福田氏*18が首相になるなどしている。官房長官の菅氏*19も候補者だ」と担ぎ上げる動きが急遽起こり、菅もそれに乗り気だという話です。
 菅なら石破や岸田に比べて「安倍の共犯」といってもいい立場なので安倍を裏切れない、とにかく安倍政権時代の悪事が追及されるのだけは避けようという話です。
 もちろん安倍の子分なら他にも下村*20選対委員長などいますが、さすがに「安倍内閣官房長官を長くやった菅以外」では説得力に欠けるという理解なのでしょう。
 で、それを強行するためには「石破どころか岸田と比べても、党員人気の低い菅」では党員投票では惨敗確実なので、「急いで決める必要がある」「党員投票はコロナ感染の原因になりかねない」との詭弁で議員投票だけにして「菅に投票しろ!」と(二階幹事長や麻生副総理・財務相などが?)派閥議員を締め付けて菅総裁を強行すると。
 事実なら酷すぎて唖然ですね。
 とはいえ、「本命・石破、対抗・岸田」と言われていたところへ「いきなり大穴・菅を担ぎ上げた上」、党員投票をせずに議員投票だけで、菅総裁強行などして政権が持つのか甚だ疑問です。何せ、国民世論どころか、自民党限定ですら菅の人気は高くありませんし、「安倍に干されていた石破」や「安倍政権幹部とは言え、派閥ボスの岸田」ならまだしも「安倍の子分でしかない菅」では「安倍政権への批判(モリカケのような不正でアレ、コロナ失政でアレ)」は確実に菅を直撃するでしょうし。
 「アンチ安倍の俺の願望込み」ですが、そこで菅が「安倍政権時代のような居直り、詭弁」で逃げようとしても、どこまで通用するかは疑問だと思いますね。「もはやああした居直り、詭弁は限界に来ている」と理解しての安倍の政権放棄でしょうし(というかいい加減そんな詭弁、居直りはマスコミや国民も徹底的に批判すべきであり、容認してはいけませんが)。
 また、菅の場合、「岸*21元首相の孫」「安倍晋太郎*22元外相の息子」という安倍が持っていた「親の七光り」もない。
 官房長官経験者とは言え「安倍政権官房長官」になるまでろくな役職に就いてなかった菅が有能とも思えない。
 もちろん、菅でアレ、石破でアレ、岸田でアレ、誰でアレ、野党としてはポスト安倍安倍時代同様に批判していくだけですが。
 なお、仮に菅が首相になったところで安倍に「院政などはできない」でしょう。
 もちろん病気辞任を表明した人間が院政などやって発覚したら「やはり仮病か!」という批判は免れない。そう言うリスクを安倍本人も、二階幹事長、麻生副総理・財務相らも犯す蛮勇は無いでしょうが、それ以前に安倍に「院政をやる能力など無い」でしょう。
 また二階、麻生といった面子も「モリカケなどの追及をしない」程度の事はしても、今更「無役の安倍」にへいこらする気も無いでしょう。


【書評】『兵站 重要なのに軽んじられる宿命』福山隆著 - 産経ニュース評・江崎道朗(評論家)

 著者の福山隆元陸将は、先の大戦についても、兵站を軽視した戦争指導の在り方を厳しく批判し、こう断言する。
 《どんなに優れた作戦計画と優秀な軍部隊があろうと、それを成立させる兵站が伴わなければ作戦は成功しない》
 では、そうした過去の反省が戦後の自衛隊に生かされているのかといえば、答えはノーだ。自衛隊は武器・弾薬の不足に長年苦しめられてきており、実弾訓練さえ十分にさせてもらっていない。それは政府が兵站のために必要な予算つまり防衛費を抑制しているからだ。

 そもそも兵站とは「食料や医薬品などを含み、弾薬限定では無い」し戦前日本が「兵站を軽視した」と言う場合、それは「食糧不足で餓死になった(インパール作戦ガダルカナル島の戦いがその典型)」「医薬品不足で病死が続出」などと言う話であって「弾薬云々」と言う話ではありません。
 むしろ「武器と弾薬さえあれば戦える」として「医薬品や食料などを軽視したこと(特に食料については現地調達すればいいとした上、その現地調達がまともな金銭購入では無く、現地住民からの略奪を意味したので、現地住民の反発を招くことになるし、現地調達ができなければ当然餓死に直結する)」が戦前日本軍の問題なので、江崎の物言いは、ずれていてとんちんかんです(福山本自体がこんなとんちんかんなんでしょうか?)。江崎の物言いでは「兵站が重要」と言いながら江崎自身は「医薬品や食料などといった兵站を軽視している」のではないかと疑いたくなります。
 しかし、それはさておき。
 「過去の政権と比べ」安倍政権下において防衛費は増加しています。それも毎年増加しています。つまりは仮に本当に「弾薬が不足している」としてもそれは「金の使い方がおかしい(高額な最新兵器に金を使いすぎてる)」と言う話であって防衛費が足りないという話では全くありません。
 当たり前ですが「金の使い方がおかしければ」カネはいくらあっても足りません。
 大体、防衛費にやたらつぎ込んだら、科学研究費、医療福祉費(言うまでも無いですが日本は高福祉の国とはとても言えません)など他の費用がなくなってしまう。以前、NHKでも「日本の科学研究費は減る一方なのに、中国は逆に増えてる。その結果、中国の論文数は増えてるが日本は減ってる。日本では研究環境が酷すぎるとして最近では中国のスカウトに応じる日本人研究者すらいる。」などという趣旨の報道がされてましたが、江崎らウヨの言うように軍事費にやたらつぎ込めば「科学研究分野での中国の躍進と日本の没落」にさらに拍車がかかりかねません。江崎らウヨ連中は「常軌を逸した軍事偏重」というべきでしょう。
 なお、戦前日本軍の兵站軽視という点では

藤原彰*23『餓死した英霊たち』(2001年、青木書店→2018年、ちくま学芸文庫
◆吉田裕*24『日本軍兵士:アジア・太平洋戦争の現実』(2017年、中公新書

が定評のある本かと思います。

*1:特定秘密保護法制定」のような「悪政」と「金脈疑惑(田中)」「ウォーターゲートニクソン)」「リクルート疑惑(竹下)」「崔順実ゲート(朴槿恵)」「モリカケ(安倍)」のような「疑惑の発覚」は意味がまるで違います。前者は価値観の違い(もちろん俺は悪政を理由に安倍辞任を求める立場)ですが後者については自民支持層であっても「安倍に辞任を求めるのが当然」です。

*2:小泉内閣国家公安委員長財務相自民党政調会長(福田総裁時代)、福田内閣国交相自民党総裁、第二次安倍内閣法相、自民党幹事長等を歴任

*3:岸内閣郵政相、池田内閣蔵相、佐藤内閣通産相自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)などを経て首相

*4:国民協同党書記長、委員長、片山内閣逓信相、改進党幹事長(重光総裁時代)、鳩山内閣運輸相、自民党幹事長(石橋総裁時代)、政調会長(岸総裁時代)、岸内閣科学技術庁長官(経済企画庁長官兼務)、池田内閣経済企画庁長官、自民党政調会長、幹事長(池田総裁時代)、佐藤内閣通産相、外相、田中内閣副総理・環境庁長官などを経て首相

*5:佐藤、田中内閣官房長官、三木内閣建設相、大平、中曽根内閣蔵相、自民党幹事長(中曽根総裁時代)などを経て首相

*6:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、福田内閣経済企画庁長官、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相。首相退任後も小渕、森内閣で蔵相

*7:福田内閣厚生相、大平内閣農水相、鈴木内閣蔵相、中曽根内閣通産相自民党政調会長(中曽根、竹下総裁時代)、宮沢内閣副総理・外相など歴任

*8:田中内閣防衛庁長官自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田内閣科学技術庁長官、大平内閣行政管理庁長官、中曽根内閣通産相、竹下内閣外相などを経て首相

*9:自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田、中曽根内閣文相を経て首相

*10:吉田内閣蔵相、鳩山内閣通産相を経て首相

*11:池田内閣官房長官、外相、佐藤内閣通産相、田中内閣外相、蔵相、三木内閣蔵相、自民党幹事長(福田総裁時代)などを経て首相

*12:竹下内閣官房長官自民党副総裁(河野総裁時代)、橋本内閣外相を経て首相

*13:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官を経て首相

*14:小泉内閣防衛庁長官福田内閣防衛相、麻生内閣農水相自民党政調会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)、第三次安倍内閣地方創生担当相など歴任

*15:第一次安倍、福田内閣沖縄・北方等担当相、第二次、第三次安倍内閣外相を経て自民党政調会長

*16:橋本内閣経済企画庁長官、森内閣経済財政担当相、小泉内閣総務相、外相、第一次安倍内閣外相、自民党幹事長(福田総裁時代)を経て首相。現在、第二~四次安倍内閣副総理・財務相

*17:小渕、森内閣運輸相、小泉、福田、麻生内閣経産相自民党総務会長(第二次安倍総裁時代)を経て幹事長

*18:森、小泉内閣官房長官を経て首相

*19:第一次安倍内閣総務相を経て、第二~四次安倍内閣官房長官

*20:第一次安倍内閣官房副長官、第二次安倍内閣文科相などを経て自民党選対委員長

*21:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、日本民主党幹事長、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相

*22:三木内閣農林相、福田内閣官房長官自民党政調会長(大平総裁時代)、鈴木内閣通産相、中曽根内閣外相、自民党総務会長(中曽根総裁時代)、幹事長(竹下総裁時代)など歴任

*23:1922~2003年。一橋大学名誉教授。著書『軍事史』(1961年、東洋経済新報社)、『日本帝国主義』(1968年、日本評論社)、『天皇制と軍隊』(1978年、青木書店)、『昭和の歴史(5):日中全面戦争』(1982年、小学館→1988年、小学館文庫→1994年、小学館ライブラリー)、『戦後史と日本軍国主義』(1982年、新日本出版社)、『太平洋戦争史論』(1982年、青木書店)、『南京大虐殺』(1985年、岩波ブックレット)、『日本軍事史』(1987年、日本評論社)、『大系日本の歴史(15)世界の中の日本』(1989年、小学館→1993年、小学館ライブラリー)、『昭和天皇15年戦争』(1991年、青木書店)、『南京の日本軍:南京大虐殺とその背景』(1997年、大月書店)、『中国戦線従軍記』(2002年、大月書店→2019年、岩波現代文庫)、『天皇の軍隊と日中戦争』(2006年、大月書店)など(藤原彰 - Wikipedia参照)

*24:一橋大学名誉教授。著書『徴兵制』(1981年、学習の友社)、『天皇の軍隊と南京事件』(1986年、青木書店)、『昭和天皇終戦史』(1992年、岩波新書)、『日本人の戦争観』(1995年、岩波書店→2005年、岩波現代文庫)、『現代歴史学と戦争責任』(1997年、青木書店)、『日本の軍隊:兵士たちの近代史』(2002年、岩波新書)、『シリーズ日本近現代史(6)アジア・太平洋戦争』(2007年、岩波新書)、『兵士たちの戦後史』(2011年、岩波書店→2020年、岩波現代文庫)、『現代歴史学軍事史研究:その新たな可能性』(2012年、校倉書房)、『日本人の歴史認識東京裁判』(2019年、岩波ブックレット)など(吉田裕 (歴史学者) - Wikipedia参照)