今日の中国ニュース(2020年9月20日分)

中国、台湾での森元首相発言に説明要求 菅首相の意向めぐり - 産経ニュース

 中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)*1報道官は19日夜、台湾の蔡英文総統と18日に会談した森喜朗*2元首相が、菅義偉*3首相が「機会があれば蔡氏と電話で話ができれば」との意向があると表明したことについて、日本に説明を求めたとする談話を発表した。汪氏は「日本側は、メディアが報道していることは絶対に起こらないと明確に述べた」と説明している。

 「森元首相菅首相の特使として、蔡英文総統への菅のメッセージを伝えた。菅からは電話会談の意向が伝えられたらしい」なんてマスコミ報道が出れば「本当なのか?」「そのような行為は台湾を独立国扱いする行為で認められない」という抗議が中国から日本政府に来るのも当然でしょう。中国側発表に寄れば日本政府からは「心配しているようなことは起きない」という釈明があったそうですが。


台湾総統、菅首相と電話会談予定せず 森元首相発言に中国が懸念 | ロイター

 台湾を訪問した森喜朗元首相が、蔡英文総統との電話会談に前向きな姿勢を示す菅義偉首相の言葉を伝え、中国が懸念を示したことを巡り、蔡氏は20日、菅氏との電話会談は予定していないと述べた。

 ということで蔡英文の方もその事実を否定しました。


対中国「人権より大局重視」 民主化弾圧も「温かく見守る」―天安門事件外交文書:時事ドットコム
流血当日「対中非難限界」 人権意識低い外交―天安門事件文書:時事ドットコム

対中国「人権より大局重視」 民主化弾圧も「温かく見守る」―天安門事件外交文書:時事ドットコム
・外務省が時事通信の開示請求に対し天安門事件外交文書ファイル9冊(計3123枚)を公開した。
・事件5日後の6月9日、北京の日本大使館は外相宛ての大至急電報で、「諸外国の対中圧力」は「逆効果となり(中国は)ますますその対外態度を硬直化する危険がある」と指摘。
・6月22日に作成された極秘文書「わが国の今後の対中政策」には、「わが国が有する価値観(民主・人権)」より「長期的、大局的見地」を重視し、中国の改革・開放政策を支持すべきだと明記。
・6月26日にワシントンで行われた三塚博*4外相とベーカー*5国務長官(共に当時)の会談に向けた「中国情勢―日米外相会談大臣発言要領」と題した極秘文書では、「我々は、過度に反応したり、いたずらに感情的になったりすることを避け」、「息長く」「温かい目」で中国側の状況を見守っていくと記載した。
 外務省は6月21日、対中新規援助の延期などを記した極秘文書の中で「人道、人権上の問題をわが国の対中経協(経済協力)政策の基本政策そのものにこれを反映させることは、長期的な対中関係の見地から行き過ぎ」と指摘し、ODAと人権問題を絡ませない方針を示した。

流血当日「対中非難限界」 人権意識低い外交―天安門事件文書:時事ドットコム
・サミットに出席する宇野宗佑*6首相は7月6日、外務事務次官らに対して「中国は、言葉とメンツを重んじる国であるから、下手をすると逆効果である。EC(欧州共同体)、米と日本は違う、これが、文章や表現上、どこかににじみ出るようにしたい」と指示した。
三塚博外相のサミット発言案(7月11日)には、直前に会談したシンガポールリー・クアンユー首相の「“怒って、いらだった中国”よりも、平和的な隣国としての中国であった方が良い」という発言が盛り込まれた。
 結局、7月15日に発表された「中国に関する宣言」では、日本が希望する「中国の孤立化を避け」という文言が入った。北京の中島敏次郎*7大使は宇野首相の指示で、同18日に中国外務次官と面会した。次官はサミットでの中国に関する討議に「非常に不満」と述べつつ「日本は他の西側諸国よりも慎重な態度をとっている」と言及した。
 日本の対中姿勢を評価した中国政府は日本を「突破口」に国際的孤立からの脱却を狙い、日本もこれに応じた。91年8月に西側首脳として天安門事件後初めて海部俊樹*8首相が訪中し、92年10月には天皇訪中も実現した。(肩書は当時)。

 予想の範囲内ではありますが、この時期に公開に応じた政府の意図が何かは気になるところです。
 それにしても当時大して、日本政府の対中国外交を批判しても無いのに時事通信もよくもまあ「人権感覚が低い」などと抜かせたもんです。昨今の「反中国の風潮」に時事通信が媚びてるようにしか見えませんね。大体人権云々言うなら例えば「最近のサウジの件(反体制派ジャーナリスト暗殺疑惑)」「エジプトの軍事独裁」なんかも日本政府はろくに批判していませんがそれはどうなのか。
 「お前ら単にアンチ中国なだけだろ」「天安門事件は30年前だから非難できるだけだろ」という「不快感」しか時事通信にはありませんね。
 ちなみにこの報道に対する島田洋一のツイート。

島田洋一
 当時の米ブッシュ父政権も同様の宥和的態度だった。天安門事件後、すぐにスコウクロフト*9安保補佐官とイーグルバーガー*10国務副長官を極秘訪中させた

 まあ、そういうことですね。

【参考:スコウクロフト、イーグルバーガーの訪中】

岸田対中「気弱外交」に沈黙する野党 島田洋一(福井県立大学教授) « 国基研ろんだん 国基研ろんだん « 公益財団法人 国家基本問題研究所
 1989年の天安門事件後、米議会は「政府高官同士の接触禁止」を含む制裁措置を議決し、大統領も同意したが、その裏で当時のブッシュ父政権は、スコウクロフト国家安全保障担当大統領補佐官とイーグルバーガー国務副長官を密かに中国に派遣し、制裁は一時的で米中関係を早期に正常化したい旨伝えていた。

【真・人民日報】天安門事件直後に極秘訪中実施… 利害で対中政策を変更する米国 (1/2ページ) - zakzak
 日本政府は、中国が国際社会で孤立することは、かえって世界にとってマイナスだと最も早く制裁解除に動いたといわれている。
 後の天皇陛下の中国ご訪問と合わせ、日本の失敗と位置付ける声は国内に多い。
 だが、日本が制裁解除に踏み切るはるか前、ブッシュ政権の下で大統領補佐官だったブレント・スコウクロフトは密かに中国を訪問して、中国のリーダーたちと制裁解除に向けて接触を始めているのだ。

天安門事件30年 米中対立の“原点”と“開戦直前”警告 | 日曜スクープ | BS朝日
◆春名幹男*11
 私は、天安門事件のときは、ちょうど共同通信のワシントン支局にいたんですが、もう、あれから30年経つんですけれども、この30年間、自分たちがしてきたことについて、アメリカ国内では相当、反省も出ているわけなんですね。と言いますのは、天安門事件が起きたときにアメリカ国内でも中国に対する非難が高まったんです。それで何をやったかと言うと、中国とアメリカの高官交流禁止、あるいは軍事交流の禁止などを決めたんですが、実はその翌月、7月にブッシュ*12大統領(H.W.ブッシュ)は密使を送っています。それは(当時)スコウクロフト大統領補佐官とイーグルバーガー国務副長官なんですが、鄧小平さん*13接触させているんですよ。つまり、天安門事件にもかかわらず関係を保ちたい。さらに12月にもう一度同じ顔ぶれで密使として中国を訪問している。
(中略)
 それから何をしたかと言うと、アメリカは中国に対する経済的テコ入れをするわけなんですよ。アメリカの工場をどんどん中国に移転していくわけです。中国側もアメリカからの直接投資をどんどん受け入れるわけです。それで2001年に中国はWTOに加盟をして、中国は世界の工場になるんです。結果的にどうなったかと言うと、アメリカのものづくりが中国に相当移転をして、さらに技術まで移転するという形で、白人労働者の反発が高まり、トランプ政権が結局誕生する形になったわけなんですね。

*1:ブラジル・マナウス総領事、チュニジア大使などを経て外務省報道官(汪文斌 - Wikipedia参照)

*2:中曽根内閣文相、自民党政調会長(宮沢総裁時代)、宮沢内閣通産相、村山内閣建設相、自民党総務会長(橋本総裁時代)、幹事長(小渕総裁時代)などを経て首相

*3:第一次安倍内閣総務相、第二~四次安倍内閣官房長官を経て首相

*4:中曽根内閣運輸相、竹下内閣通産相、宇野内閣外相、自民党政調会長(海部、宮沢総裁時代)、幹事長(河野総裁時代)、橋本内閣蔵相など歴任

*5:レーガン政権大統領首席補佐官、財務長官、父ブッシュ政権国務長官、大統領首席補佐官などを歴任

*6:田中内閣防衛庁長官自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田内閣科学技術庁長官、大平内閣行政管理庁長官、中曽根内閣通産相、竹下内閣外相などを経て首相

*7:シンガポール大使、駐オーストラリア大使、駐中国大使、最高裁判所判事など歴任

*8:自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田、中曽根内閣文相を経て首相

*9:フォード政権、父ブッシュ政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官

*10:レーガン政権国務次官、父ブッシュ政権国務副長官、国務長官など歴任

*11:共同通信ワシントン支局長、論説副委員長、名古屋大学特任教授、早稲田大学客員教授など歴任。著書『ヒバクシャ・イン・USA』(1985年、岩波新書)、『秘密のファイル(上)(下):CIAの対日工作』(2003年、新潮文庫)、『仮面の日米同盟:米外交機密文書が明かす真実』(2015年、文春新書) など

*12:国連大使、CIA長官、レーガン政権副大統領などを経て大統領

*13:副首相、党副主席、人民解放軍総参謀長、党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席、党中央顧問委員会主任など歴任