珍右翼・高世仁に突っ込む(2021年12/18日分)

豚が扇風機になる-屠畜のお仕事 - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 「豚が肉として売れて、扇風機になった」云々について言えば「拳銃」「覚醒剤」「児童ポルノ」のような「違法物品」でも「売れば金になる」わけで「売れたから屠殺に意味があると納得した」つう物言いには違和感を感じます。「商品価値があること」は「道徳的に正当化できること」を必ずしも意味しない。
 なお、「話が脱線します」が、高世の記事を読んで連想したことは「死刑執行人の苦悩」つうことです。
 そのものずばり、

◆大塚公子*1『死刑執行人の苦悩』(1993年、角川文庫)

と言う著書もあります。
 「食肉のための屠殺」は「食肉」を否定しない限り、「必要悪」ということにはなるでしょう。
 そして食肉を「道徳的観点」から否定する人間も「あまりいない」(もちろん「道徳的観点から否定する」ベジタリアンはいますが)。
 小生も含めて「多くの人間」は普通に「肉を食べている」わけです。
 とはいえ、死刑執行人はまた話が違う。「冤罪の危険」がありますからね。
 なお、高世も記事内で指摘していますが、現在はそうした「命を奪うのは残酷」という「ベジタリアンの食肉批判」よりも「人間が食べられる穀物(小麦、大豆など)を牛や豚に餌として与えることは食糧不足が危惧される現在、合理的でない(いわゆるSDGsの観点)」「牛や豚が呼気として排出するCO2が温暖化の観点から無視できない(もちろん一番問題なのは石炭、石油などによるCO2排出ですが)」などの食肉批判が強い。そこで出てくるのがそうした問題を生じない「大豆などから作る代替肉」、「昆虫食」といった話です。
 高世が紹介する

栃木裕さん*2(元芝浦屠場労組委員長)

「肉や皮革製品は生活に欠かせない」

という「食肉&屠殺」擁護論は「命を奪うのは残酷」という批判への反論にはなり得ても、「小麦や大豆を牛や豚の餌にすることで穀物不足がー、牛や豚の呼気による温暖化がー」「代替肉や昆虫食がある」という批判への反論には勿論なり得ません。 

【参考:代替肉】

脱炭素へ「代替肉」推奨 暮らしの変革呼び掛け―環境白書:時事ドットコム2021.6.8
 政府は8日の閣議で、2021年の「環境・循環型社会・生物多様性白書」を決定した。
 大豆など植物由来で生産過程での二酸化炭素(CO2)排出が少ない「代替肉」を「食の一つの選択肢」として初めて取り上げた。
 肉類について「飼料の生産・輸送に伴うCO2排出に加え、家畜の消化器からのメタン発生」により、温室ガス排出量が多いと指摘した。
 その上で最近、代替肉の商品を提供する飲食店やコンビニエンスストアなどが増えていると紹介。「見た目や食感も肉に近い代替食材が開発され、より身近な存在になることが期待されている」と訴えた。

ビジネス特集 “カルビ”も“ツナ”も大豆から 代替食品の可能性は? | NHKニュース2021.12.2
 なぜ、いま代替肉なのか。
 (ボーガス注:代替肉の方が低脂肪でヘルシーだという)健康志向や食の多様化もありますが、それ以上に、地球環境や食料問題に対する意識の高まりがあります。
 例えば、牛肉1キロを生産するのに、11キロの穀物がエサとして消費されています。
 飼育には大量の水も使い、牛の「げっぷ」が温室効果ガスの発生源にもなっていると指摘されます。
 ならば肉のかわりに植物性タンパクを食べた方が、環境負荷ははるかに小さく、将来の食料危機への備えにもなる。

「第4の肉」が人気沸騰 温暖化対策の救世主に?【けいざい百景】:時事ドットコム2022.2.9
 不二製油が、環境省が定める計算方法で算出したところ、大豆を生産する際に必要な水の消費量は、同じ重さの牛肉を生産する場合の8分の1で済んだという。
 不二製油によれば、大豆は二酸化炭素(CO2)換算では牛肉の85分の1しか温室効果ガスを排出しない。

*1:著書『57人の死刑囚』(1998年、角川文庫)、『死刑囚の最後の瞬間』、『「その日」はいつなのか。:死刑囚長谷川敏彦の叫び』(以上、2001年、角川文庫)。なお、長谷川敏彦は名古屋保険金殺人事件 - Wikipediaの主犯で、2001年に死刑が執行された。長谷川敏彦については、原田正治『弟を殺した彼と、僕。』(2004年、ポプラ社)でも取り上げられている。

*2:著書『屠畜のお仕事』(2021年、解放出版社