新刊紹介:「歴史評論」2022年11月号

 小生が何とか紹介できるもののみ紹介していきます。正直、俺にとって内容が十分には理解できず、いい加減な紹介しか出来ない部分が多いですが。
特集『生涯学習のなかの歴史学
◆博物館・カルチャースクールの歴史学(滝口正哉*1
(内容紹介)
【1】歴史系博物館において「展示活動」以外にも市民講座などが行われるべき所、厳しい経済状況の博物館が多く、また多くの公立博物館は「市民講座」について高額の受講料を取るわけにも行かないためにそこまで手が回っていない博物館が少なくないこと(展示活動で手一杯の博物館も多い事)
【2】一方、カルチャースクールの場合、「それなりの受講料を徴収する」が「そうであるがゆえに、戦国時代や幕末維新など人気がある分野に講座が偏る傾向があること」が指摘される。
 そうした問題をどう克服していくかが重要な課題と主張される。


◆学び舎歴史教科書で学ぶ市民学習会(鳥塚義和*2
(内容紹介)

市民学習会
 「板橋区・大人の学び広場」「全日本年金者組合調布支部近現代史を学ぶ会」「浦安歴史たんけん隊」「新日本婦人の会西宮支部・目からウロコの歴史教科書カフェ」

など「学び舎歴史教科書で学ぶ市民学習会」の活動について紹介されている。

参考

兵庫民報Web版: 学び舎教科書で歴史を学び直す2017.11.26
 西宮市で「目からウロコの歴史教科書カフェ」が毎月続けられています。「子どもの側に立って、子どもの目を意識しながら」作られた中学歴史教科書『ともに学ぶ人間の歴史』(学び舎発行)を読み、語り合い、理解を深めています。

目からウロコの歴史教科書カフェ | ひぐち光冬のブログ2018.10.6*3
 新日本婦人の会西宮支部が主催している『目からウロコの歴史教科書カフェ』。
 先月参加させていただいてめちゃくちゃおもしろかったので、簡単に内容をシェアさせていただきます
 歴史教科書カフェでは、中学校社会科の2つの教科書を見比べながら学習していきます。
 1つは、現職・元職の先生たちが子ども目線でつくった『学び舎』の教科書。
 そしてもう1つは、戦争賛美(右派)の『育鵬社』の教科書。
  私が参加させてもらった回では“第一次世界大戦の日本の動き”を学びましたが、
 いやはや教科書によってここまで書き方が違うとは…。
 『学び舎』では中国の立場から“第一次世界大戦を日本がどういう機会にしようとしていたか”ということに迫ろうとしているのに対し、『育鵬社』では“わが国は”という主語を使い、さらりと流す感じ。
 教科書によってこんなに違いがあるなんて今まで知る由もなかったので、今回知ることができて本当に良かったと思います。
 道徳の教科書もそうですけど、何にせよ“鵜呑みにしないこと”が何よりも大切なことだなと感じさせられました。


◆労働者教育のなかの近現代史学習(吉田ふみお)
(内容紹介)
 労働者教育協会(労教協)で歴史学習活動に関わる筆者が自らの活動や

【学習の友社の歴史関係刊行図書(刊行年順、刊行年が同じ場合は著者名順)】
◆藤森明『こころざしいまに生きて:伊藤千代子の生涯とその時代』(1995年、学習の友社)
◆藤田廣登『小林多喜二とその盟友たち』(2008年)
◆浜林正夫*4 『イギリス労働運動史』『「蟹工船」の社会史:小林多喜二とその時代』(以上、2009年)
◆本庄豊*5『山本宣治』(2009年)
山田敬男『新版・戦後日本史』(2009年)
◆加藤文三*6『渡辺政之輔とその時代』(2010年)
◆杉浦正男*7ほか『メーデーの歴史』(2010年)
◆山田善二郎*8『日本近現代史のなかの救援運動』(2012年)
◆大日方純夫*9『日本近現代史を生きる』(2019年)
山田敬男『戦後日本労働組合運動の歩み』(2019年)
◆上杉朋史 『西田信春』(2020年)
◆大日方純夫ほか『日本近現代史を読む(増補改訂版)』(2020年)
◆玉川寛治*10『飯島喜美の不屈の青春:女工哀史を超えた紡績女工』(2020年)
◆藤田廣登『時代の証言者・伊藤千代子(増補新版)』(2020年)
山田敬男ほか『知っておきたい日本と韓国の150年』(2020年)

といった労教協(出版部門は学習の友社であり、月刊誌『学習の友』を刊行)の歴史分野での活動を紹介している。
 なお、労教協(日本共産党や全国労働組合総連合(全労連)の友好団体)の性格上、「ある意味当然ではある」のですが、やはり『飯島喜美*11』『伊藤千代子*12』『小林多喜二*13』『西田信春*14』『山本宣治*15』、『渡辺政之輔*16』という「共産党関係の人物(特に失礼ながら獄死、拷問死など非業の死を遂げたとは言え、一般には無名な飯島喜美、伊藤千代子、西田信春)の評伝が多い」ですね。


◆「新書」の中の歴史学(松田健*17
(内容紹介)

【世界哲学史シリーズ(2020年)】
◆世界哲学史1:古代1
◆世界哲学史2:古代2
◆世界哲学史3:中世1
◆世界哲学史4:中世2
◆世界哲学史5:中世3
◆世界哲学史6:近代1
◆世界哲学史7:近代2
◆世界哲学史8:現代
【歴史講義シリーズ】
◆古代史講義(2018年)、古代史講義【戦乱篇】(2019年)、【宮都篇】(2020年)、【氏族篇】(2021年)
◆中世史講義(2019年)、中世史講義【戦乱篇】(2020年)
◆近世史講義(2020年)
◆明治史講義【人物篇】、【テーマ篇】(以上、2018年)、明治史講義【グローバル研究篇】(2022年)
◆大正史講義、大正史講義【文化篇】(以上、2021年)
◆昭和史講義(2015年)、昭和史講義2(2016年)、昭和史講義3(2017年)、昭和史講義【軍人篇】(2018年)、昭和史講義【戦前文化人篇】(2019年)、昭和史講義【戦後篇】(2020年)、昭和史講義【戦後文化篇】(上)(下)(2022年)
→刊行年で分かりますが【歴史講義シリーズ】で一番最初に刊行されたのが2015年の昭和史講義でそこから派生した本も「昭和史講義」が他の時代に比べて一番多い。昭和史だけ、やたら人気があるんですかね?。よくわかりませんが。
【思想史講義シリーズ(2022年)】
◆思想史講義【明治篇1】
◆思想史講義【大正篇】

など「新書とは入門編、一般向け啓蒙書で、一人の人間が書くもの」と言うイメージに反する「複数の人間が書く講座物」的な新書という「他に例の少ない異色な新書」を近年発行しているちくま新書の松田氏へのインタビュー。
 松田氏は「ちくまは軽い新書も出している」と断った上で「新書は軽い物」という昨今の風潮に異を唱えたかったとのこと。
 松田氏曰く「ちくまにはプリマー新書があるので若者向けの柔らかい内容はプリマーでやればいいと思ってる」とのこと。
 この点は「ジュニア新書」がある岩波書店も似たような面があるでしょう。ただし「多くの出版社」は新書レーベルは一個しかないわけですが。


歴史科学協議会第56回大会準備号「歴史認識のポリティクス:地域・国家・市場」
(前振り)
 12/3、4に行われる歴史科学協議会第56回大会「歴史認識のポリティクス:地域・国家・市場」の報告者が「報告を予定している内容」について「概要」を述べている物なので、今後「内容変更」がある可能性がありますし、概要なので細部までは述べられてはいません。
◆「歴史」の書かれ方と「記憶」のされ方:人々はなぜ過去をめぐって諍いを起こすのか(橋本伸也*18
(内容紹介)
 架空問答形式で書いてみます。

 マトリョーシカの起源について

マトリョーシカ人形 - Wikipedia
 19世紀末、神奈川県箱根町にあったロシア正教会の避暑館にやってきたロシア人修道士が、本国への土産に持ち帰った箱根細工の七福神入れ子人形がマトリョーシカの起源

と言う説があること(但し他の説もある)を知っていますか?

 済みません、知りません。
Q
 何が言いたいかと言えば「伝統」というのは実は「イメージの産物」にすぎないことが多く、「事実からは乖離、逸脱していたり」、あやふやなところがあると言うことです。
 例えば、「クリミアやドネツク」をロシア領扱いし、編入したプーチンの認識は否定的に扱われますが、「本当にそんなに簡単に否定できるのか」と言うと複雑な問題が実はあると思います。こうしたプーチンの認識は「彼が新しく発明した物」ではなく「彼以前からそうした認識がある」からです。
 「プーチン擁護、ウクライナ敵視」と誤解されないよう注意した上でこの問題を論じてみたいと思います。
【補足】
 さすがに「プーチン擁護、ウクライナ敵視」はしないとは思いますが、とはいえ「実際の報告を見ないと何とも言えない怖さ」は若干あります。


ポスト・トゥルース*19時代の歴史認識:米国「歴史戦争」から1619年プロジェクト論争へ(中野耕太郎*20
(内容紹介)

なぜトランプは根強く支持されるのか:揺らぐ建国の歴史と人種問題。「愛国教育」でバイデンとの対立 1(今井佐緒里) - 個人 - Yahoo!ニュース2021.2.28
 1619年とは、奴隷になった最初のアフリカ人が、英国植民地時代のバージニア州ジェームズタウンに到着した年のことである。
 「1619年プロジェクト」とは、この400周年を記念して、2019年に『ニューヨーク・タイムズ』紙が立ち上げた、特別な取り組みである。
 同紙はいう。
「このプロジェクトは、奴隷制度の結果と、黒人のアメリカ人たちの貢献を、私たちの国の物語の中心に置くことによって、歴史の枠組みをつくりなおすことを目的としています」
 1619年プロジェクトの中で語られ、最大の猛反発をかったのは「アメリカへの(白人)入植者が、英国からの独立を宣言した主な理由の一つは、奴隷制度を守りたかったからだ」という主張である。
 つまり、アメリカ独立革命は、奴隷制度を維持するために起こった。奴隷制度は国家のDNAに組み込まれていたため、真の建国は1619年であった、という主張である。
 賛否は別として、(ボーガス注:保守派から)反発が出るのは当然と言えるだろう。アメリカの成立は「1776年の独立宣言」とされてきた。

米教育委も人種・少数派を巡る対立の場に(The Economist): 日本経済新聞2022.2.22
 米ニューヨーク・タイムズは、黒人奴隷が最初に米国に連れて来られた1619年を米国史の真の起点と捉え、その400年の節目となる2019年に奴隷制度と人種的抑圧を米国史の中心に据える「1619プロジェクト」を立ち上げた。トランプ政権はこれに対抗し、米国が英国から独立した1776年を米国史の起点とする「1776プロジェクト」を立ち上げた(編集注、愛国教育の促進を狙ったがバイデン政権が昨年終わらせた)。

といういわゆる「1619年プロジェクト論争(リベラル派がNYTに好意的な一方で、極右派は敵視)」など「米国での右派とリベラル派の歴史論争(特に黒人差別に関する論争)」を論じるとのこと。
 問題は「1619年プロジェクト攻撃側」に「デマ中傷や暴動扇動(上院襲撃)も恥じないトランプとその支持者」のような「危険な連中(ポスト・トゥルース派)」がごろごろいることです。トランプらの存在によって「1619年プロジェクト」を冷静に論じることはやはり今の米国では困難なようです。

【参考:歴史論争】

なぜトランプは根強く支持されるのか:揺らぐ建国の歴史と人種問題。「愛国教育」でバイデンとの対立 1(今井佐緒里) - 個人 - Yahoo!ニュース2021.2.28
 今アメリカを襲い、国を二分している問題は、大変深刻な問題だ。それは人種問題であり、アメリカ建国の意味を変えそうな根源的な問題となっている。
 今までの「常識」をくつがえしかねないほどのこの大論争は、「文化戦争」と呼ばれている。
 大きな転機となったのは、2020年5月、ミネアポリスで黒人のジョージ・フロイド氏が警察に拘束されて殺害されたことだ。
 これは大規模な「Black Lives Matter(黒人の命は大事)」運動に発展してゆき、外国にも波及した。
 そのようなうねりの中、全米各地で「黒人差別的」とみなされた歴史的な銅像や記念碑が破壊されるようになった。
 アメリカ建国の偉人達として尊敬されてきたはずの、初代ワシントン大統領、第3代ジェファソン大統領についても「生前に奴隷を所有していた」等と批判された。一部地域では銅像や記念碑が破壊された。


アメリカ南部における戦争の記憶と記念碑:アメリカ独立戦争を中心に(和田光弘*21
(内容紹介)
 BLM運動下で発生した「独立英雄であるワシントン(初代大統領)、ジェファソン(ワシントン政権国務長官ジョン・アダムズ*22政権副大統領を経て三代大統領)、ジャクソン(七代大統領)」を「黒人差別者」「先住民(インディアン)虐殺者」として批判する運動と「独立英雄への不当な侮辱」として反発する保守派について論じる予定とのこと。その意味では問題意識は◆ポスト・トゥルース時代の歴史認識:米国「歴史戦争」から1619年プロジェクト論争へ(中野耕太郎)に近いと言えるでしょう。
 
参考

ジョージ・ワシントン - Wikipedia
 1970年、インディアン権利団体「アメリカインディアン運動 (AIM)」は、スー族のブラックヒルズ一帯の占有権を認めた条約の確認を合衆国に求め、ワシントンらの「顔」の彫られたラシュモア山頂上で長期占拠抗議を行った。この際、スー族運動家のラッセル・ミーンズらインディアンたちは、ジョージ・ワシントンの「顔」に小便をかけてみせた。

相次ぐ銅像の撤去 歴史とは? NHK解説委員室2020.6.25
Q2、
 どんな銅像が被害にあっているのですか?
A2、
 南北戦争当時の南軍の将軍や兵士の像が中心です。奴隷制や人種差別を象徴しているというのです。バージニア州の州都リッチモンドにあるリー将軍銅像です。
 南北戦争南部連合軍の司令官だったリー将軍は、圧倒的に優勢だった北軍を最後まで苦しめた名将として知られています。しかしジョージ・フロイドさんの事件を受けてバージニア州のノーサム知事は今月4日、リッチモンドにある将軍の銅像を撤去し別の場所で保管すると表明しました。ノーサム知事は「我々は過去を真摯に学び、過去から教訓を学ぶべきだ」と話しています。
 南北戦争といえば、最近、こんな動きもありました。
 映画「風と共に去りぬ*23」。1939年に公開されたこの映画は、南北戦争当時の南部の農園を舞台に白人女性スカーレット・オハラの半生を描いた長編映画で、世界的なヒット作となりました。しかし奴隷制を正当化しているという批判を受けて、アメリカの映画配信会社はこの映画の配信を一時停止することを決めたのです。
 黒人奴隷の描かれ方をめぐって「白人から暴力を受けたり過酷な労働を強いられたりしていた当時の奴隷の実態が描かれていない」「白人の視点で美化されている」といった批判や抗議が相次いでいたのです。
 映画といえば、私が子供の頃にさかんにテレビで放映されていた西部劇映画は、勇敢な白人の保安官が凶悪な先住民に立ち向かうといったストーリーがほとんどでした。
 オードリー・ヘップバーン主演の映画「ティファニーで朝食を」にも、差別的に描かれた日本人が登場します。制作された当時は問題にならなくても、今の基準や価値観から見れば差別的な表現にあたるということは当然あるのだと思います。

ラルフ・ノーサム - Wikipedia
 2020年6月にミネアポリスで発生した反人種差別デモが全米に拡大する中、州都のリッチモンド中心地にあるロバート・E・リー将軍像にも「人種差別に反対」という落書きが加えられるようになった。同月6日にノーサム(民主党所属)は「南北戦争が邪悪な奴隷制のためで無く、州の権利のための戦いであったかのようなウソの歴史を教えてはならない」として、リー将軍像を撤去・保管する方針を表明した。撤去表明については、共和党の州議会議員から批判を受けた。

 ということで当初の「黒人差別批判→銅像否定」は「リー将軍」など、「南北戦争関係」がメインだったところ、ついに「建国の父(初代大統領)であるワシントン批判」にまで話がエスカレートしていき、保守派の反発も強まったわけです。
 やはり「建国の父」に対する批判は何も

中国共産党主席・毛沢東
北朝鮮初代首相、初代国家主席金日成
北ベトナム初代国家主席ホーチミン
イスラム革命後イランの最高指導者ホメイニ

等といった「共産国等、独裁色の強い国」に限らず「自由の国」を標榜する米国においても『リベラル派、左派』はともかく、「少なくとも保守派にとってはタブー」だったわけです。
 まあ、日本だって「未だに西郷崇拝色が強い」と言われる鹿児島で「西郷隆盛(鹿児島人にとっての「建国の父」的存在?)なんか西南戦争を起こしたテロリストじゃん、あんなんを崇拝してるらしい鹿児島県民はアホと違うか」等と県外の観光客がうかつに放言したら、その場の空気が凍り付き、多分恐ろしい事になるでしょうしね。小生もその種の蛮勇はありません。

「建国の父」ワシントンらも銅像破壊のターゲットに…トランプ大統領、厳罰で臨む姿勢 - 産経ニュース2020.6.24
 トランプ米大統領は23日、訪問先の西部アリゾナ州ユマでの会合で、全米各地で「黒人差別的」とみなされた歴史的な銅像や記念碑が破壊されている問題に関し「銅像を引き倒したり汚損した者に最長で禁錮10年を科すことができるようにすることを指示した」と述べ、厳罰で臨んでいく姿勢を打ち出した。
 首都ワシントンでは22日夜、数十人の暴徒がホワイトハウス前の公園に建てられている第7代ジャクソン大統領の銅像をロープや鎖で引っ張って倒そうとしたが、駆け付けた警官隊に撃退された。トランプ氏は暴徒らの行為を「闇討ちだ」と非難した。
 デモに参加している一部の黒人運動家や極左系の活動家は、ジャクソンや初代ワシントン大統領、第3代ジェファソン大統領について「生前に奴隷を所有していた」との理由で銅像や記念碑を破壊している。

米先住民、トランプ氏のラシュモア山訪問に反発 「白人至上主義の象徴」 - BBCニュース2020.6.26
 4人の歴代大統領の顔を彫った人物は、米国の白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン」(KKK)と関係のある白人至上主義者だったとされる。
 一部のネイティブ・アメリカンの活動家は、ブラックヒルズをスー族に返還し、モニュメントを取り壊すべきだと主張している。一方、先住民グループは(ボーガス注:モニュメントによる)観光収益の恩恵を受けるべきだという意見もある。

トランプ氏、歴史的人物の像撤去を批判 独立記念日祝う式典で演説 :東京新聞 TOKYO Web2020.7.5
 トランプ米大統領は3日、初代ワシントンなど歴代大統領4人の顔が山肌に彫られた中西部サウスダコタ州景勝地ラシュモア山で、4日の独立記念日を祝う式典に出席した。演説では黒人差別への抗議デモが、歴史的人物の像撤去を求める動きに発展していることを批判。「文化戦争」をあえて利用し、白人保守層の支持者にアピールした。
 トランプ氏は4人の大統領の顔を背にした演説で、「この記念碑が冒瀆され、英雄の遺産が破壊されることは決してない」と宣言。歴史的な人物の像が各地で撤去されたり壊されたりする動きへの批判を展開し「歴史を一掃する運動だ」と非難した。会場に集まった約7500人は、ほとんどが白人の共和党支持者とみられ、トランプ氏に呼応し大歓声を上げた。
 ラシュモア山には、ワシントンのほかジェファソン、リンカーンセオドア・ルーズベルトの各大統領の顔が刻まれている。ワシントンやジェファソンには、黒人奴隷が労働していた農場の主だったとの指摘もある。また4人の顔が彫られた場所は、米政府が先住民から奪った土地で「白人至上主義の象徴だ」との批判もある。

町山智浩 on Twitter: "ホワイトハウス前のアンドリュー・ジャクソン銅像が倒されそうになっている。ジャクソンはトランプが最も尊敬している大統領。南部の土地を先住民から奪って居留地に強制移住させたことで悪名高い。" / Twitter

バイデン大統領になって執務室の装飾はこう変わった…進歩主義者や活動家の肖像が多数 | Business Insider Japan2021.1.26
 「バイデン大統領にとって重要なのは、執務室の中に自分の理想の大統領像を示すことだった」と、執務室オペレーションズの副ディレクター、アシュレー・ウィリアムはワシントン・ポストに語っている。
 トランプ前大統領が称賛したポピュリストのアンドリュー・ジャクソン大統領の肖像画は消え、代わりに(バイデン大統領のように)問題の多い時代に国を率いることになった進歩主義的なフランクリン・ルーズベルト大統領の大きな肖像画が登場した。
 バイデンの新しい執務室には、F・ルーズベルトに加えて、(ボーガス注:ケネディ大統領の弟でケネディ政権司法長官を務めた)ロバート・ケネディ、(ボーガス注:公民権運動活動家で1964年ノーベル平和賞受賞者の)マーティン・ルーサー・キング・ジュニア、(ボーガス注:公民権運動活動家で、1955年のモンゴメリー・バス・ボイコット事件で知られる)ローザ・パークス、(ボーガス注:フランクリン・ルーズベルト大統領の妻で、ルーズベルト死後も国連米国代表など政治的に活動した)エレノア・ルーズベルト労働組合幹部で公民権活動家のセサール・チャベス*24などの進歩派や活動家の姿が展示されている。
 ワシントン・ポストによると、(ボーガス注:避雷針の考案者とされる科学者)ベンジャミン・フランクリン肖像画はバイデンの科学への敬意を反映して(中略)いるという。

 フランクリンについては

ベンジャミン・フランクリン - Wikipedia
 1752年、雷を伴う嵐の中で凧をあげ、凧糸の末端にワイヤーで接続したライデン瓶により雷雲の帯電を証明するという実験を行った。また、雷の電気はプラスとマイナスの両方の極性があることも確認したといわれている。この命がけの研究結果によってフランクリンはロンドン王立協会の会員となった。この逸話は有名だが、同じような実験をしようとして多くの死者が出たため、現在はあまり紹介されない。この逸話が紹介される際には、「フランクリンが死ななかったのは運が良かっただけ」「絶対に真似をしてはいけない」という解説がほぼ必ずされる。フランクリン本人は十分に安全に考慮していたつもりだったが、それでも現在からみれば自殺行為に近い。
 なお、フランクリンが実際に凧の実験を行ったのかを疑問視する専門家もいる。

を紹介しておきます。

ジェファーソン像を議事堂から撤去へ、奴隷主だった過去受け 米NY市 - CNN.co.jp2021.10.19
 米ニューヨーク市公共デザイン委員会は18日、市議会議事堂から「建国の父」のひとりであるトマス・ジェファーソンの像を撤去する決定を下した。
 同市が収蔵するパブリックアート作品を管轄する公共デザイン委員会は同日、「黒人・ラテン系・アジア系市議会議員団」の要請を受けて採決を行い、賛成8票、反対0票でジェファーソン像が移設されることになった。
 市議会のイネス・バロン議員は米国建国の父であり、かつ奴隷の所有主だったジェファーソンの像について、統治のためにニューヨーク市民が集まる場には不適切なものだと指摘。
 エイドリアン・アダムズ議員は委員会での説明の際、「トマス・ジェファーソンは600人超の奴隷の所有主だった」と指摘。 「(ボーガス注:黒人という)私のような外見の人間は『本質的に劣っており、知性に欠け、自由や権利に値しない』と根っから信じていた奴隷主*25に敬意を表する像が置かれている場所に座っていると考えると、私は非常に落ち着かない気持ちになる」と述べていた。


◆1890年代における「地方史学会」の組織と活動(廣木尚*26)  
(内容紹介)
 奥羽史学会(1895年、宮城県仙台市)、北陸史談会(1896年、石川県金沢市)、九州史談会(1897年、熊本)など1890年代における「地方史学会」の組織と活動に言及し、【1】何故1890年代にこうした活動が活発になったのか、【2】1890年代のこうした活動はその後の歴史研究にどのような影響を与えたのかを論じるとのこと。

*1:立教大学特任准教授。著書『千社札にみる江戸の社会』(2008年、同成社)、『江戸の社会と御免富』(2009年、岩田書院)、『江戸の祭礼と寺社文化』(2018年、同成社

*2:著書『世界近現代史・授業が楽しくなる「歌と演説」』(1996年、日本書籍)、『15年戦争教材発掘あれこれ』(1999年、日本書籍

*3:筆者の樋口氏(西宮市議、現在、無所属)は「樋口光冬氏の日本共産党からの除籍について」(党西宮芦屋地区委員会と党西宮市会議員団の連名:2021年12月17日付)によれば「コロナワクチン有害論やマスク不要論」を主張し「党の批判や説得にも応じなかった」が故に「日本共産党から除籍された困った御仁」ですが、この記事に限定すれば「変なことは書いてない」と思うので紹介しておきます。樋口氏のワクチン有害論についてはワクチンに対する僕の考え | ひぐち光冬のブログ(2022.2.2)、マスクについての僕の考え | ひぐち光冬のブログ(2022.2.5)、私ひぐち光冬は「オミクロン株対応ワクチン接種事業」に反対いたします | ひぐち光冬のブログ(2022.9.16)を紹介しておきます。勿論、彼を支持してるわけではなく「これでは共産党としても除籍せざるを得ないだろう」と言う「批判」の意味合いでの紹介です。

*4:1928~2018年。一橋大学名誉教授(英国史)。著書『イギリス革命の思想構造』(1966年、未來社)、『イギリス市民革命史(増補版)』(1971年、未來社)、『イギリス民主主義思想史』(1973年、新日本出版社)、『魔女の社会史』(1978年、未來社)、『イギリス名誉革命史』上・下(1981年、1983年、未來社)、『物語労働者階級の誕生(増補改訂版)』(1983年、学習の友社)、『イギリス宗教史』(1987年、大月書店)、『イギリス民主主義思想史(新版)』(1999年、新日本出版社)、『人権の思想史』(1999年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『パブと労働組合』(2002年、新日本出版社)、『ナショナリズムと民主主義』(2006年、大月書店)、『世界史再入門』(2008年、講談社学術文庫) など

*5:著書『魯迅の愛した内山書店』(2014年、かもがわ出版)、『戦争孤児』(2016年、新日本出版社)など

*6:著書『川合義虎:日本共産青年同盟初代委員長の生涯』(1988年、新日本新書)、『亀戸事件』(1991年、大月書店)、『渡辺崋山』(1996年、大月書店)など

*7:元・全日本印刷出版労働組合書記長

*8:著書『アメリカのスパイ・CIAの犯罪』(2011年、学習の友社)など

*9:早稲田大学名誉教授。著書『天皇制警察と民衆』(1987年、日本評論社)、『自由民権運動立憲改進党』(1991年、早稲田大学出版部)、『日本近代国家の成立と警察』(1992年、校倉書房)、『警察の社会史』(1993年、岩波新書)、『近代日本の警察と地域社会』(2000年、筑摩書房)、『近現代史考究の座標』(2007年、校倉書房)、『自由民権期の社会』(2012年、敬文舎)、『維新政府の密偵たち:御庭番と警察のあいだ』(2013年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『「主権国家』成立の内と外』(2016年、吉川弘文館)、『世界の中の近代日本と東アジア』(2021年、吉川弘文館)、『唱歌蛍の光」と帝国日本』(2022年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)など

*10:著書『「資本論」と産業革命の時代』(1999年、新日本出版社)、『製糸工女と富国強兵の時代』(2002年、新日本出版社

*11:1911~1935年。評伝に、山岸一章「紡績労働者の飯島喜美」(山岸『不屈の青春:ある共産党員の記録』(1969年、新日本出版社)所収)、鹿野政直「飯島喜美:革命運動史上の光芒」(『鹿野政直思想史論集 第6巻』(2008年、岩波書店)所収)などがある(飯島喜美 - Wikipedia参照)。彼女については赤旗コンパクトに「闘争・死」と刻み 獄死した飯島喜美とは?(2005.8.18)を紹介しておきます。

*12:1905~1929年。評伝として東栄蔵 『伊藤千代子の死』(1979年、未来社)、ワタナベ・コウ『漫画・伊藤千代子の青春』(2021年、新日本出版社)(伊藤千代子 - Wikipedia参照)。彼女については赤旗伊藤千代子を詠んだ歌とは?(2004.5.5)、「こころざし生かして」/伊藤千代子生誕100年 澤地さんが講演/長野(2005.7.21)、田村副委員長とワタナベ・コウ氏対談/伊藤千代子 力の源は/田村氏「ジェンダー平等の原点」/ワタナベ氏「歴史の前進を確信」(2021.1.10)、平和な社会であり続けるために作品広げたい 映画『わが青春つきるとも 伊藤千代子の生涯』京都で初試写会、上映運動成功へ実行委員会結成 | 京都民報Web(2022.6.8)を紹介しておきます。

*13:小林については赤旗戦前の党員作家、小林多喜二はどんな人?(2002.2.20)を紹介しておきます。

*14:1903~1933年。西田については、赤旗戦争に反対し殺された西田信春って?(2005.2.10)、小林多喜二と同時期に拷問で死亡 無名の活動家が生きた時代とは 11日に評伝刊行 | 毎日新聞(2020.2.8)、 北海道)特高に虐殺された無名活動家 元高校教師が評伝:朝日新聞デジタル(2020.2.11)、きょうの潮流 2020年2月17日(月)『西田信春--甦る死』刊行 無名活動家の生涯 小林多喜二と同時期、福岡で拷問死 | 毎日新聞(2020.2.23)、弁護士会の読書:西田信春――甦る死(2020.3.31)を紹介しておきます。

*15:1889~1929年。衆議院議員として治安維持法反対を主張したことで右翼テロで暗殺される。彼の生涯を描いた映画『武器なき斗い』(山本薩夫監督、1960年公開)は西口克己(1913~1986年、京都市議(日本共産党)在任中の1986年に病死)による彼の評伝『山宣』を映画化したもの。山本については赤旗山本宣治ってどんな人?(2004.3.3)を紹介しておきます。

*16:渡辺については「革命運動に生きた渡辺政之輔と丹野セツ」現代の労働研究会代表 小畑 精武 | コラム/温故知新を紹介しておきます。

*17:ちくま新書編集長

*18:関西学院大学教授。著書『エカテリーナの夢、ソフィアの旅:帝制期ロシア女子教育の社会史』(2004年、ミネルヴァ書房)、『帝国・身分・学校:帝制期ロシアにおける教育の社会文化史』(2010年、名古屋大学出版会)、『記憶の政治:ヨーロッパの歴史認識紛争』(2016年、岩波書店)、『せめぎあう中東欧・ロシアの歴史認識問題:ナチズムと社会主義の過去をめぐる葛藤』(編著、2017年、ミネルヴァ書房) 、『紛争化させられる過去:アジアとヨーロッパにおける歴史の政治化』(編著、2018年、岩波書店)など

*19:客観的な事実より感情へのアピールが重視される政治文化のこと。2020年アメリカ大統領選挙でのトランプ派のバイデン不正選挙主張(バイデンの不正選挙を主張し、一部のトランプ支持者は上院襲撃まで実行)がその典型例とされる(ポスト真実の政治 - Wikipedia参照)。

*20:東京大学教授。著書『戦争のるつぼ:第一次世界大戦アメリカニズム』(2013年、人文書院)、『20世紀アメリカ国民秩序の形成』(2015年、名古屋大学出版会)、シリーズアメリカ合衆国史3『20世紀アメリカの夢:世紀転換期から1970年代』(2019年、岩波新書)など

*21:名古屋大学教授。著書『紫煙と帝国:アメリカ南部タバコ植民地の社会と経済』(2000年、名古屋大学出版会)、『タバコが語る世界史』(2004年、山川出版社世界史リブレット)、『大学で学ぶアメリカ史』(編著、2014年、ミネルヴァ書房)、『記録と記憶のアメリカ:モノが語る近世』(2016年、名古屋大学出版会)、シリーズアメリカ合衆国史1『植民地から建国へ:19世紀初頭まで』(2019年、岩波新書)など

*22:二代大統領。六代大統領ジョン・クィンシー・アダムズは彼の息子

*23:1940年にアカデミー作品賞、監督賞、主演女優賞(ヴィヴィアン・リー)、助演女優賞ハティ・マクダニエル:黒人俳優では初の受賞者)、脚色賞などを受賞

*24:1927~1993年。米国農場労働者連合会長を務めた(セサール・チャベス - Wikipedia参照)

*25:ジェファソンのこと

*26:早稲田大学大学史資料センター講師。著書『アカデミズム史学の危機と復権』(2022年、思文閣出版