安保三文書での「拉致の扱い」について「荒木和博」と「西岡力」の評価が違う件

令和5年 拉致被害者救出への展望2

西岡力救う会会長)
 去年12月に出た「国家安保戦略」という文書がありますね。
 実は前回の「国家安保戦略」平成25年版でも拉致問題は書いてありました。しかし、「この問題の解決失くして北朝鮮との国交正常化はありえない」とだけ書いてあったのですが、今回は「拉致問題については時間的制約のある深刻な人道問題であり、その解決失くしては北朝鮮との国交正常化*1はありえない」とあります。「時間的制約」のあとに、「深刻な人道問題」だとしています。

 と言うことで岸田を称える西岡ですが、一方で荒木の評価はもっと辛辣な代物です。

拉致問題は安全保障問題ではないのか【調査会NEWS3686】(R4.12.25): 荒木和博BLOG
 拉致問題についての言及は私が気づいたところでは「国家安全保障戦略」の以下の部分だけです。
 「北朝鮮による拉致問題は、我が国の主権と国民の生命・安全に関わる重大な問題であり、国の責任において解決すべき喫緊の課題である。また、基本的人権の侵害という国際社会の普遍的問題である」
 「とりあえず書いておきますよ」という感じで「喫緊の課題」と言う割にはその後の「国家防衛戦略」にも「防衛力整備計画」にも言及はありません(あるいは私が読み落としているのでしょうか。であればお詫びしますが)。つまり、具体的にどうやって「解決」するのかは全く書かれていない*2ということです。もちろん、「解決*3」が何を意味するのかも書かれていません。
 誰が、どうやって被害者を取り返すのか明らかにしなければならない*4はずです。
 本当にそれで「全拉致被害者*5の即時一括帰国*6」が実現すると思っているのか。

 荒木の思惑が何であれ、「こんな中身のない、具体性のない文書は拉致解決の役に立たない」ということについては荒木の言うとおりでしょう。
 いずれにせよこうなると荒木一派(特定失踪者問題調査会)と、西岡一派(救う会)はどんどん袂を分かっていくのでしょうね。

*1:俺個人は拉致解決のためにはむしろ「国交正常化を先行させるべき」ではないかと思っています。いずれにせよ、救う会の主張は「拉致解決を口実」にした日朝国交正常化の妨害でしかない。

*2:この点は荒木の指摘の通りでしょう。

*3:なお、ここは「荒木の言いがかり」ですね。解決が「拉致被害者の帰国」を意味してることは言うまでもないでしょう。

*4:現実的には「小泉訪朝」のような外交交渉以外に手はなく、その場合「経済支援とのバーター取引」以外に手はないでしょう。

*5:救う会、家族会の場合、1)特定失踪者(国内で既に40人以上発見され全て北朝鮮と関係なし、ほとんどは事件性がなく自発的失踪)まで全拉致被害者に入れている、2)「拉致被害者の死亡」の可能性を否定している、と言う意味で無茶苦茶な主張です。

*6:何故、段階的帰国を否定するのか訳が分かりません。即時一括帰国が簡単にできればそれが一番いいですが、できそうにないから段階的帰国が主張されるわけです。