珍右翼・高世仁に突っ込む(2023年3/7日分)(副題:ホームレスにはやはり精神疾患者が多いらしい)(追記あり)

【追記】
 知的障害あるいは精神障害のある人物の行動を管理あるいは抑制するのは、いろいろ困難が多いことを痛感する - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)でこの拙記事を紹介頂きました。
 いつもありがとうございます。
【追記終わり】
外国人ホームレスを生む「仮放免」制度 - 高世仁のジャーナルな日々

 先週4日のTBS『報道特集』が特集「イタリア人男性の死」で在日外国人が日本でどう扱われているのかを報じていた。
 去年、東京入国管理局施設に収容中、自殺した男性がいる。イタリア人のルカさん(56)。福生市多摩川にかかる橋の下で2年以上ホームレス生活をしていた。
 2018年、精神の不調を訴え、心療内科を受診、「妄想性パーソナリティ障害の疑い」と診断される。
 日本人の妻もいなくなったが、ルカさんはイタリアに身寄りもなく帰れなかったという。
 2020年に滞在許可を失い、入管施設に収容された。入管は、コロナ禍以降、施設での密を防ぐため、仮放免を積極的に運用。ルカさんも収容を解かれたが、仮放免中は仕事ができず、健康保険も生活保護も使えない。ルカさんはホームレスになり、多摩川の橋の下に寝泊まりしていた。橋で工事が始まり、ルカさんの存在が入管に通報されたらしく、去年10月25日、ルカさんは連行され入管施設に再び収容された。面接に行った人道支援団体の牧師に「私はここで死ぬ」と言ったルカさんは11月18日朝に施設内で自殺しているのが発見された*1

 勿論「日本の入管制度を批判した上での話」で「入管制度の問題点を免罪する気は無い」ですが「ルカ氏の件」に限れば外国人ホームレスを生む「仮放免」制度*2ではないのではないか。報道特集の報道姿勢には問題がありはしないか?
 妄想性パーソナリティ障害では果たして定職に就けたかどうか(なお、高世の記事を読む限り、入管生活で精神病を発症したのではなく「精神病→ホームレス→入管生活」のようです)。
 日本人であっても同じ立場であればルカ氏同様に「定職に就くことが難しい→身寄りが無いから誰も支援してくれない→ホームレス」で場合によっては「人生に絶望して自殺」ではないか。違いがあるとすれば「日本国民なので入管に収容されないこと」だけではないか。
 ルカ氏の件に限れば外国人ホームレスを生む「仮放免」制度というよりはホームレス(外国人に限らない)を生む社会福祉の貧困でしょう。
 そして入管の責任を問うとしたらこの件ではむしろ「精神病治療をまともにしなかったこと(その結果、自殺を招いた)」でしょう。
 こういう「精神病を罹患しホームレス」と言うケースは結構多いのではないか。
 「精神病、ホームレス」でググったところ以下の記事もヒットしました。

路上生活者に多数の精神疾患 日本で初の調査 森川すいめい医師(精神医療交流集会の講演から) IQ70未満の人が34%も 生活保護の受給にも壁が – 全日本民医連2011.3.7
 「ホームレス状態の人に精神障害を抱える人が多数いる」。
 精神医療・福祉交流集会(一月開催)の講演で、精神科の森川すいめい*3医師が明らかにしました。路上生活に陥り、そこから抜け出せない理由に障害が関係しており、生活保護制度の欠陥が問題を難しくしているという指摘です。講演の要点を紹介します。

IQ70未満が34%…ホームレスが抱える知的障害というタブー|ホームレス消滅|村田らむ - 幻冬舎plus2020.10.27
 2009年、野宿生活者の支援をする精神科医の森川すいめいが東京・池袋で168人のホームレスを対象に行なった調査によれば、そのうち10~15%の人が精神障害を抱えている疑いがあり、19%の人がアルコール依存症と判断された。
 さらに同調査ではIQが70未満の人が34%もいたという結果も出ている。
 同じような調査結果は他にもある。2014年、全日本民医連の精神医療委員会が研究者とともに行なった名古屋市内の路上生活者114人の精神保健調査でも、対象者の34%に知的障害があり、42%に統合失調症アルコール依存症など精神的疾患があることがわかっている。
 僕は、他人に極度に迷惑をかけていなければ路上で生活するくらい自由にさせてあげればいいと思っている。しかし、精神的疾患や知的障害を抱えた結果、仕方なくホームレスになっているのだとすれば、それは、ホームレスというよりも、単に福祉からこぼれてしまっている人だ。

 さて高世の記事に話を戻します。

 番組に登場したもう一人の在留外国人は、チリ出身のクラウディオ・ペニャさん(62)。
(中略)
 ペニャさんにはチリに帰れない理由がある。1973年、チリの社会主義を目指していたアジェンデ政権を軍部がクーデターで倒し、ペニャさんの父親は、軍部の左翼狩りに協力せざるをえなかったという。その後*4、父親は(ボーガス注:民主化後の政府調査に協力し)軍の虐殺行為を証言したところ、軍部の息のかかった勢力から「裏切者」と狙われ、ペニャさん自身、拉致されて暴行・拷問を受けた。家族は今も隠れ住んでおり、とても危険で帰れないというのだ。

 「チリは民主化したはずなのに?」と絶句ですね。

 自民党が国会に上程を予定する入管法の「改正案」は、仮放免の改善策を全くもりこんでいないばかりか、難民申請を3回して認定されなかったら強制送還を可能にするという、とんでもない内容だ。

 これについては最近の記事として
「命と人権を守れ」 入管法改正案に9都市で抗議行動 | 毎日新聞2023.2.23
〈社説〉入管法改定案 権限さらに強めかねない|信濃毎日新聞デジタル 信州・長野県のニュースサイト2023.3.3
赤旗
在留資格認定 唯一の道/入管法改定案再提出に抗議声明/生活困窮者支援団体など89団体2023.1.27
主張/入管法改定再提出/人権侵害への反省がみえない2023.2.17
入管法改悪 反対の波/国に帰れない人を追い出すなんて2023.2.24
を紹介しておきます。

*1:この自殺については例えば東京の入管施設で収容中のイタリア人男性が死亡 自殺か | NHK(2022.11.18)、仮放免取り消し、東京入管で自殺 イタリア人男性 国連から「改善」勧告受けたばかり:東京新聞 TOKYO Web(2022.11.19)、赤旗入管 適切な医療「当然」/収容者死亡事件 仁比氏に法相答弁(2022.11.23)参照

*2:正確には「仮放免制度」それ自体と言うより、「仮放免」中、収入を得るための労働が禁じられ、生活保護も受けられないので経済的にやっていけない(収入を得るための労働や、生活保護受給を認めよ)という話です。

*3:NPO法人TENOHASI理事。著書『漂流老人ホームレス社会』(2015年、朝日文庫)、『その島のひとたちは、ひとの話をきかない:精神科医、「自殺希少地域」を行く』(2016年、青土社)、『感じるオープンダイアローグ』(2021年、講談社現代新書)。森川氏については精神科医 森川すいめいさん[前編]父親の支配下にあった壮絶な生い立ち - 記事 | NHK ハートネット精神科医 森川すいめいさん[後編]"開かれた対話"で得た旅の到達地 - 記事 | NHK ハートネット(2021.4.20)、1対1で話さず、対等な関係をつくる。オープンダイアローグはなぜ「心」に効くのか? 森川すいめいさんに聞く | ハフポスト LIFE(2022.10.10)も紹介しておきます。

*4:勿論、民主化