今日のロシアニュース(2023年5月13日分)(副題:ウクライナの『反転攻勢』ほか)

政治指導者が自主的・主体的に決断を下さず事大主義・他力本願に走ると、取り得る選択肢が狭まってゆく: 白頭の革命精神な日記
 白頭先生も指摘するようにゼレンスキーの「反転攻勢」発言は「実際に反転攻勢が始まるまでは眉唾」でしょう。
 何せ以下の通りです。

ウクライナ高官「計画はまだ承認されていない」反転攻勢めぐり | NHK | ウクライナ情勢
 ウクライナの国家安全保障・国防会議のダニロフ書記は9日、公共放送のインタビューに応じ、(中略)「われわれの計画をすべて知っているものは誰もいない。なぜなら、計画はまだ承認されていないからだ」と述べ、いくつかの選択肢を検討している段階だと明らかにしました。

 さて反転攻勢の効果に懐疑的なNHK報道も紹介しておきます。

今後の反転攻勢をめぐるウクライナ側の3つの懸念 - キャッチ!世界のトップニュース - NHK
 ウクライナは近く、大規模な反転攻勢に乗り出す構えですが、実はここに来て、ウクライナの指導部から「成果をあまり期待し過ぎないで欲しい」というメッセージも出ています。
 今回は、反転攻勢をめぐるウクライナ側の懸念について、「長距離砲」「防空能力」「内外の期待」という3つの点で、別府キャスターが解説します。
 まず、「長距離砲」をめぐる懸念です。
 ウクライナに、欧米から供給される兵器は徐々にその射程が伸びてきました。当初は射程30から40キロのりゅう弾砲、続いて射程およそ70キロのハイマースです。しかし、その後、ウクライナ側の再三の要請にもかかわらず、さらに射程の長い兵器はもらえていません。
 これを見越してロシア軍は拠点を後退させています。つまり、「ここまでは届かないだろう」という場所まで移動し、そこから攻撃を続けているのです。
 欧米がより射程の長い兵器の供与をためらう理由は、ウクライナが仮にそれでロシア領内を攻撃すれば、事態がエスカレートすることを懸念していることがあります。
 これについて、ゼレンスキー大統領はワシントン・ポストのインタビューで「ロシア領内を攻撃しないと何回も約束しているのに、なぜ供与してもらえないのか、率直に言って理解できない」と話しています。
 次に、「防空能力」です。
 ウクライナには4月、最新鋭の迎撃ミサイルシステム「パトリオット」が届きました。しかし、きのう8日も首都キーウなどをロシアのドローンが多数襲ったことが示すように、ロシアの空からの攻撃に対しては引き続きぜい弱なままです。
 最後に、「内外の期待」をめぐる懸念です。
 去年(2022年)9月の東部ハルキウ州、11月の南部ヘルソン州の北側と、これまでの反転攻勢は2回続けて成功しました。このため、今度も成功するに違いないという期待*1ウクライナ国内に加えて欧米の支援国でも高まっています。
 しかし、ワシントン・ポストは、「ウクライナ側には、その期待に見合う成果が出なければ、欧米からの軍事支援が減ったり、ロシアと交渉するよう圧力が高まったりするのではないかという懸念がある」と指摘しています。これについてレズニコフ国防相は「次は何をもって成功と見てもらえるのか分からない」と発言しています。

 なお「射程の長い兵器」としてはこの報道の後「英国からハイマースより射程が長いストームシャドウ(射程250キロ)」が供与されたことを一応指摘しておきます。
 ストームシャドウについては例によって以下の「景気のいい報道*2」もありますが、小生は軍事素人なので何とも評価できません。

英がウクライナに供与の巡航ミサイル“ゲームチェンジャーに” | NHK | ウクライナ情勢
 イギリスがウクライナに供与した巡航ミサイル「ストームシャドー」について、防衛省防衛研究所の兵頭慎治研究幹事は、供与される量によるとしながらも「戦況を大きく変える『ゲームチェンジャー』になり得る兵器だ」と指摘しています。

 いずれにせよ「ロシア領内を攻撃しない」発言からはストームシャドウ供与にあたり「ロシア領をストームシャドウで攻撃しないこと」をゼレンスキーが英国に約束したであろうこと、それを反故にすること(ストームシャドウでのロシア領攻撃)はさすがにしないであろう事は予想できます。
 「ロシア領内を攻撃しない」について言えば【1】(ゼレンスキーは否定しているが)米国政府流出文書に「ゼレンスキーがロシア領内攻撃を提案した」という指摘があるとの報道がされた【2】(ミサイルではないが)ドローンでのロシア領攻撃なら既にしていると言う問題があり、「鵜呑みにできない」と言う問題があります。
 しかしNHKからこんな指摘が出るようになるとは驚きです。


「ワグネル」トップ、ウクライナに露軍位置情報の提供提案 米紙報道 - 産経ニュース
 事実なら完全な「ロシア軍に対する裏切り」ですが、ウクライナ側は「ロシア軍とワグネルの共謀による罠」を疑って応じなかったとのこと。
 勿論こうした報道は「ワグネルとロシア軍の分断狙い*3」「ワグネルが軍事的に追い詰められてるアピール」ではあるでしょう。


中国、ウクライナ・ロシアに特別代表派遣へ 15日から - 日本経済新聞
中国代表、15日からウクライナなど歴訪 和平へ「意思疎通」 - 産経ニュース
 重要なのは「ウクライナが中国の特使を受け入れた」ということですね。
 ウクライナは「和平提案を全否定しない」し、「対中関係もそれなりに重視してる」わけです。

*1:とはいえ、白頭先生も指摘するように「軍事支援を引き出す狙い」でしょうがそうした期待を高めてるのはゼレンスキー政権自身ですが。

*2:とはいえ、供与される量によると言う但し書き付きですが。

*3:但し、「ロシア軍とワグネルの共謀による罠」ならば分断にはつながりませんが。