今日の中国ニュース(2023年6月29日分)(副題:ついに光華寮が取り壊し)

京都・左京の元留学生寮が「急転直下」解体、なぜ? 中国と台湾が所有権主張、長年「塩漬け」|社会|地域のニュース|京都新聞

 深刻な老朽化が問題となっていた京都市の元中国人留学生寮「光華寮」が事実上、取り壊されたことが分かった。

 跡形もなく更地になったようです。
 なお、

光華寮訴訟 - Wikipedia
◆1952年(昭和27年)8月5日:
 日華平和条約が発効。
◆1952年(昭和27年)12月:
 台湾(中華民国)政府が光華寮を買収
◆1967年(昭和42年)9月:
 台湾政府が、寮を占有する中国人留学生に対し立ち退きを求めて提訴(京都地裁)。訴状には、原告「中華民国」、原告代表者「中華民国・駐日大使」と表示。
◆1972年(昭和47年)9月29日:
 日中共同声明に調印、日中国交正常化日華平和条約が失効)。これにより、日本は、台湾(中華民国)との国交を断絶。日中共同声明による政府承認の切り替え後、原告は原告代表者の表示を「中華民国財政部国有財産局長」に変更。
◆1977年(昭和52年)9月16日:
 第1審(京都地裁)は、台湾敗訴。判決は、台湾の原告資格を認めた*1上で、日本政府が中国(中華人民共和国)政府を唯一の合法政府と承認した以上、光華寮の所有権も中華人民共和国に移転したとして、原告(中華民国)の請求を棄却した。
◆1982年(昭和57年)4月14日:
 控訴審(大阪高裁)は、台湾勝訴。
 判決は、台湾の原告資格を認めた上で、光華寮は大使館など国家機能に直接かかわる財産ではないから、政府承認の切替によって台湾が取得した光華寮の所有権が中国に移転することはないとして、原判決を破棄、第1審に差し戻した。
◆1986年(昭和61年)2月4日:
 差戻し後第1審(京都地裁)は、台湾勝訴。
 判決は、台湾の原告資格を認めた上で、財産所在国(日本)が政府承認を切り替えた場合、大使館など外交にかかわる財産や国家の権力を行使するための財産は新政府(中国)に引き継がれるが、外交や国家権力の行使と無関係な財産については、旧政府(台湾)が引き続き所有権を維持するとして、原告(台湾)の請求を認容した。
◆1987年(昭和62年)2月26日:
 差戻し後控訴審(大阪高裁)は、台湾勝訴。なお、大阪高裁は、この判決を出すにあたり、職権で、原告の表記を「台湾(本訴提起時、中華民国)」と改めた。
◆2007年(平成19年)1月22日:
 最高裁は大阪高裁判決から20年後、突如「訴訟の原告である中国を代表する権限を持つ政府は、中華人民共和国中華民国のどちらであるか」について上告人(被告・中国人寮生側)と被上告人(原告・台湾側)の双方に意見を求め、意見書の提出期限を同年3月9日と定めた。
◆2007年(平成19年)1月25日:
 中国外務省報道官が定例会見で「光華寮問題は一般の民事訴訟ではなく、中日関係の基本原則に関わる政治案件だ。中国政府はこれに高度な関心を寄せている。日本側が、中日共同声明の原則に照らし、問題を適切に処理することを希望する」との見解を発表。
◆2007年(平成19年)3月9日:
 台湾(中華民国)外交部が、「本案は中国方面から日本へ恫喝や圧力があったとしても、日本の司法は独立しており、最高裁が最終的に公平で公正な判決を下すことを深く信じている」との声明を発表。
◆2007年(平成19年)3月27日
 上告審判決(最高裁第三小法廷、藤田宙靖*2裁判長)は、「破棄差し戻し」で台湾の「事実上の敗訴」。
 判決は、本件訴訟の原告は「国家としての中国(中国国家)」であるとした上で、日本政府が日中共同声明により「中国国家」の政府として中華人民共和国政府を承認したことなどから、原告の資格は「中華民国」から中華人民共和国に移転。日中共同声明による政府承認切り替え時点(第1審審理中)で訴訟手続はいったん中断すべきであり、誤って台湾(中華民国)に「原告資格」を認めて訴訟を継続したその後の下級審の審理、判決は訴訟中断事由を看過してなされた違法なものであるとして、(台湾から中華人民共和国に)原告資格を承継させてから審理をやり直すべきであるとして、原判決(差戻し後控訴審判決)を破棄、第1審(京都地裁)に差し戻した。光華寮の所有権の帰属については、何ら判断を示さなかった。最高裁は、本判決を出すにあたって、職権で、被上告人の表示につき「旧中華民国、現中華人民共和国」という肩書きを添えて「被上告人中国」と記載した。
◆2007年(平成19年)4月2日:
 台湾の黄志芳外交部長は、日本の対台湾窓口機関「財団法人交流協会台北事務所」の池田維*3代表を呼び、最高裁判決について「台湾として受け入れられず、極めて遺憾だ」と抗議した。

ということは「まだ裁判は継続中」なんですかね?。とはいえ建物が完全に取り壊された今、裁判目的があると言えるのか疑問に思いますが。
 いずれにせよ「当初は原告・台湾(台湾勝訴判決は勿論、中国勝訴判決ですら、問題にしていたのは所有権の中国への移転であって原告資格の中国への移転ではない)」としていたところ「最高裁」が「原告は台湾ではなく中国です、日中国交正常化で原告資格が移転したんです(そういう法解釈が正しいかどうかはひとまず置く)」としてしまった以上「台湾は訴訟の部外者」になってしまい、確かにもはや「台湾敗訴」と同じでしょう。
 「 三権分立を放棄するのか最高裁 」 | 櫻井よしこ オフィシャルサイトなどとウヨ連中がマジギレするのもよく分かります。

*1:この点が認めない最高裁判決と違います。この後、最高裁判決でひっくり返るまで「台湾の原告資格」について下級裁判所は認め続けました。

*2:東北大学法学部長。東北大学名誉教授。著書『公権力の行使と私的権利主張:オットー・ベール「法治国」の立場とドイツ行政法学』(1978年、有斐閣)、『西ドイツの土地法と日本の土地法』(1988年、創文社)、『行政法学の思考形式(増補版)』(2002年、木鐸社)、『行政法の基礎理論(上・下)』(2005年、有斐閣)、『最高裁回想録:学者判事の七年半』(2012年、有斐閣)、『裁判と法律学:「最高裁回想録」補遺』(2016年、有斐閣)等

*3:外務省アジア局長、官房長、オランダ大使、ブラジル大使、交流協会台北事務所代表等を歴任