今日の朝鮮・韓国ニュース(2020年10月31日分)

【主張】「徴用工」協議 誠意を見せろに耳を疑う - 産経ニュース
 むしろ「いつもながら」産経の物言いに「耳を疑いますね」。日本が加害者で、韓国が被害者なのに何でそんな話になるのか。「原告(元徴用工)に誠意を見せなければ、差し押さえ請求は防げないと思う」「先ずは原告との話し合いの席に着くべきだ」「韓国政府に出来ることはないと思う」という韓国政府の主張は全くの正論です。

 いわゆる徴用工訴訟で韓国最高裁新日鉄住金(現・日本製鉄)に賠償を命じた不当な判決から2年がたった。
 だが、韓国を代表して対外関係に当たるべき文在寅政権は何ら有効な解決策を示さない。

 前も指摘しましたが、光華寮訴訟二審・大阪高裁判決(中国が敗訴、ただし最高裁では破棄差し戻しで中国が事実上勝訴)での中曽根政権と中国政府のやりとり

中国
「日中平和友好条約に反する不当判決だ。中曽根政権は事態を是正し、誠意を見せよ」
中曽根政権
三権分立なので我々には何も出来ない」

を産経や安倍、菅はどう理解しているのか。中曽根が正しいというなら「中曽根と全く同じ事しか言ってない文政権」も正しい。
 一方で「文政権が間違いだ」というなら中曽根は間違っていたことになります(なお、勿論産経は中曽根の釈明を支持)。
 産経のように「中曽根は正しいが文は間違ってる」なんてそんな変な話はない。それにしてもこの程度の指摘すら多くのマスコミがしないことには暗い気持ちになります。

 菅義偉政権は、韓国側が日本企業の資産を現金化して奪う不当な措置をとることを防がねばならない。国際法国益の尊重を貫き、文政権に翻意を促すべきだ。

 まるで「文政権が現金化するかのような物言い」ですが、「資産の差し押さえ、売却請求をするのは原告(元徴用工)」「請求について判断をするのは裁判所」で、三権分立なので文政権は裁判所に介入できず、文政権がこの手続きに関与することは何一つ出来ません。当然「翻意も糞もない」。
 文政権が「現金化したくても*1」原告が請求しなければそもそも現金化があり得ないし、逆に「現金化したくなくても」原告が請求し、裁判所がそれを認めればどうにもならない。どうにかしようとしたらそれこそ「違法、不当な司法への介入」です。
 そもそも原告は「日本製鉄との間で和解が成立すれば差し押さえはしない。先ずは話し合いに応じてくれ(話し合いが続く限り差し押さえはしないで自重する)」と言っているのだから現実的な策は「文政権に因縁つけること」ではなく「日本製鉄と原告が話し合いのテーブルに着くこと」です。ところが安倍、菅は「話し合いに応じるな」と言い、それに日本製鉄が従うのだから話になりません。

 韓国の金丁漢アジア太平洋局長は「日本政府と被告企業が問題解決に向け、より誠意ある姿勢を見せる必要がある」と述べたという。誠意を見せろというのは、さらに金を出せということなのか。

 この場合の誠意とは「カネ」と言う話ではなく「日本製鉄は原告が求めてる話し合いに応じるべき」「日本政府も日本製鉄に対話するように働きかけるべき」と言う話です。
 もちろん話し合いの結果「カネの支払いという問題」は当然出てくるでしょうが、金を支払うことそれ自体を今すぐ求めてるわけではない。

 日韓両国は昭和40年の国交正常化時の請求権協定で、一切の請求権問題は「完全かつ最終的に解決された」と約束した。

 この場合の「請求権の放棄」とは「国と国との関係にすぎず、韓国国民が日本企業に有する請求権は放棄されてない」とする説も有力です(もちろん韓国最高裁の立場はこの見解)。
 かつ「請求権の放棄」とは「法的に権利として請求できないだけ」であり、「日本企業が友好の証として自主的に払うこと」を禁じてるわけでもない。
 また、
【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】三菱マテリアルの和解はやはり「追及」の始まりだった…官民協力して真実を国際社会に知らしめよ(1/5ページ) - 産経ニュース
赤旗
韓国 徴用工訴訟/日本企業・政府は誠実に向き合え
徴用工問題 「赤旗」攻撃の河野外相/どちらがミスリードか
徴用工問題 記者「中国とは和解、韓国とは?」/官房長官「政府の発言、控えたい」
などの指摘でわかるように同様の「中国人徴用工の請求訴訟」では西松建設三菱マテリアルと元徴用工の間に和解が成立し、徴用工に一定の金が支払われてています。もちろん日中国交正常化においては韓国国交正常化同様、中国政府は賠償権を放棄しています(なお、上の記事のウチ赤旗は、和解を評価し、産経は和解を非難)。
 「日中国交正常化において中国政府が賠償権を放棄していても、西松建設三菱マテリアルは元中国人徴用工と和解し、一定の金銭を支払った。それを安倍政権も容認した。なぜ、同じ事が元韓国人徴用工と日本製鉄の間で出来ないのか。なぜ西松や三菱マテの和解を容認した安倍政権は、日本製鉄の和解を否定しようとするのか。道理が全く通らない。大国とみなす中国ならへいこらして、格下と見なす韓国なら敵視するのか」など批判する志位・日本共産党委員長らの指摘は全く正論でしょう。

【参考:光華寮訴訟大阪高裁判決(中国が敗訴)】

第5章 鄧小平の時代 ≪第1部 中華人民共和国小史≫ - 中国政治事情 - 4ページ - 大家重夫の世情考察
 日本では、1987年2月26日、大阪高裁が京都にある中国人留学生寮「光華寮」を台湾政府が所有すると判決した。劉述卿外交部副部長は、中江要介*2中国駐在大使を呼び、政治的に誤ったものであるとし、遺憾であるとの覚書を交付した。
 6月、日本外務省の柳谷謙介事務次官が、「鄧小平は、『雲の上の人』になったようで、下からの意見が届かないようだ」と内々の発言をした。
 6月6日、中国外交部アジア局責任者が、緊急に、駐中国の日本臨時代理大使を呼び、厳重抗議の申し入れをした。
 6月15日、柳谷次官は、日本記者団に釈明の会見をした。
 この時、第3次中曽根内閣であるが、中曽根*3首相、倉成正*4外相は、柳谷次官の辞任を認めた。

【参考:光華寮訴訟最高裁判決(中国が事実上の勝訴)】

第166回国会 外務委員会 第6号(平成19年4月11日(水曜日))
長島昭久*5委員
 京都に光華寮という中国人の学生寮があるんです。この光華寮をめぐって、その所有権をめぐっての訴訟が、これはもう四十年前に提起された訴訟でありますが、先月の末に、これの最高裁判決が実は上告から二十年ぶりに出たんです。
 最高裁の方から資料をいただきまして、調べたら、二十年というのは本当に異例の長さでありまして、上告審というのは大体今、平均でいうと三カ月とか四カ月とか五カ月で出る。ところが、これはもう二十年、ある種塩漬けというかたなざらしにされてきた事例なんですが、それが一月の末からぽんぽんぽんと審理に入って、二カ月で判決を出しちゃったんですね。温家宝総理(ボーガス注:訪日)とは余り関係ないのかもしれないんですが、しかし随分手回しがいいな、こう思ったのであります。
 まず、一番最初に、一九六一年に所有権の移転登記を中華民国の名前で完了しています。一九六七年に、中国の、大陸系の寮生が入ってきたものですから、中華民国としては、もうそういう人たちには出ていってほしい、これは我々の所有物なんだからそこからは出ていってほしいということで、その明け渡しを求めた訴訟なんですね。それが一九六七年の九月六日に提訴されました。
 しかし、その後、一九七二年に我が国政府は日中共同声明で政府の承認の切りかえをやりました。先ほど申し上げたように、中華民国から中華人民共和国に切りかえを行いまして、そのために、これは一審が続いている最中の話でしたので、そもそも承認を失った台湾が訴訟の当事者になれるのか、それからもう一つは、台湾が登記してあるんですけれども、寮の所有権は台湾から中華人民共和国に移るんじゃないか、こういうことが争われて、一審が、今外務大臣からサジェスチョンがありましたけれども、京都地裁で一九七七年に出て、これは、一九七七年の判決は、いや、わかった、中華人民共和国に所有権が移転するんだという判決が出たものですから、台湾側が控訴いたしまして、それで一九八二年に大阪高裁で逆転といいますか、いや、実は台湾の側にあるんだという判決をし、そして京都地裁に差し戻して、また一審も台湾の所有権を認め、一九八七年に大阪高裁が認め、そして、追い出されそうになっている寮生がそれに対して最高裁に上告した。こういう経緯で今日に至っているんです。
 皆さんも大体おわかりになったと思うんですが、そこで今回、最高裁はどういう判決を下したかというと、まず、一月二十二日にいきなり審理に入るんですが、上告人、これが中国側です、それから被上告人、これが台湾の側を代理している訴訟代理人ですが、この両方にそれぞれの立場を釈明しなさいという求釈明を行ったんですね。回答期限は三月九日。
 ちょっとこのクロノロジーを見ていただきたいんですが、もうほとんどの日本人は覚えていなかったと思うんですよ、この事件がこんなに、二十年間も最高裁で塩漬けになっていたのを。それが、一月二十二日に最高裁が動き出した途端、一月二十五日に(ボーガス注:中国)外務省の副報道局長が定例会見で、光華寮事件は民事訴訟ではなく政治的案件だ、こういう言及をするわけですね。
 それから、三月二十七日に判決が出ます。判決は、今までの下級審を全部無効にして、ひっくり返したんです。それはどういうことかというと、非常に形式的なところで判決を下したんですけれども、そもそも、中華人民共和国に政府の承認が切りかえられた、被上告人である中華民国の訴訟代理人というのは前の中華民国の政府から授権を受けて訴訟代理していたでしょう、しかし、一九七二年にその政府そのものを日本国政府は認めなくなったんだから、その訴訟代理事務自体そのものが無効だ、だから、二十年前にさかのぼってもう一回やり直しなさいという判決を下して、二日後に、中国の国営新華社通信は至急電で、日本の最高裁判所は、台湾当局は訴訟権を持たないと認定し一審の京都地裁に差し戻した、こういうふうに高らかに宣言をしているんです。
 これだけ見ると、ははあそうかと思うんですが、今回の判決を、両方の訴訟代理人が提出をした資料を見てみると、最高裁の判決は、まさに中国側の訴訟代理人の出した回答書のロジックそのものなんです。こういうことはよくあるのかと法律の専門家に聞いたら、そういうことは特におかしいことじゃないと。しかし、中国側のロジックそのものだということは一つここで確認をしておきたいと思います。
 先ほど言いましたように、騒然となったと言いました一九八六年、一九八七年のころは、京都地裁中華民国の所有権を認めた段階で、当時の駐日参事官だった陸参事官が遺憾の意を表明したり、あるいは当時外相だった呉学謙外務部長が外相定期協議の中で不満を表明したり、あるいは当時の最高指導者だった鄧小平氏もこういう判決を下すのはいかがなものかということをたび重なる機会にずっと言い続けた経緯が実はあるんですね。
 中国側、外務省の副報道局長は、先ほどちょっと紹介しましたが、光華寮訴訟は一般の民事訴訟ではなく中国政府の合法的な権益にかかわる政治案件だ、こういう指摘をされているんですね。しかも、日本側が中日共同声明の原則に照らしてこの問題を適切に処理することを希望するというふうに語っているんですが、この中国側の認識というのは、外務省としてどういうふうに受けとめておられるんですか。
佐渡島政府参考人
 お答え申し上げます。
 簡潔に申し上げれば、私どもの見解とは全く違うということでございます。
長島昭久委員
 それを聞いて安心をいたしました。何か外圧まがいのコメントでこういう判決になるのかなと。つまりは、司法の独立ということで、最高裁の出した判決について外務省やあるいは立法府、行政府がとやかく言わない、これが我が国の三権分立の一番重要なポイントだと思いますが、確かに司法の独立は重要なんですが、では国家の独立はどうなのかと私はちょっと実は心配した向きもあったんですが、今の佐渡島審議官の御答弁で十分だった、今回の温家宝さんの訪日には余り関係なかったんだなということがわかりました。ほっとしました。

外務省: 報道官会見記録(平成19年3月)
◆光華寮訴訟
(問)
 最高裁判決で、本日、光華寮受け渡し訴訟で、二審の差し戻し判決が下され、事実上台湾側の敗訴という形になったのですが、この判決を受けての率直な感想と、温家宝国務院総理の来日を控えた関係もあったのかなという考えもあるのですが、その辺も含めてお願いします。
(報道官)
 光華寮を巡る最高裁の判断が今日示されたということは承知しています。ただ、光華寮裁判自体は、政府が関与していない民事訴訟の裁判ですので、行政府の立場から今回の判断について特にコメントすることはありません。あくまでも法律上の問題として、裁判所の判断をそれとして受け止めているということです。

光華寮最高裁判決に寄せて─日中友好の名の下に司法は屈したのか平成国際大学教授:浅野和生)
 光華寮裁判は、台湾側の実質的敗北で幕となった。平成19年3月27日の最高裁判決には、日中友好の名の下に司法が政治に屈したのではないか、という懸念の声があがった。判決主文は、「原判決を破棄し、第1審判決を取り消す。本件を京都地方裁判所に差し戻す」というものであるが、要するに昭和42年9月6日に光華寮裁判が提訴されてからこの日までの訴訟経過の全てが否定されたようなものである。
(中略)
 それにしても、最高裁に上告されてからだけで 20 年もかけてきたのだから、いまさら判決を急ぐことはせず、さらに先延ばししてもよかったのではないかという疑問がある。
 よりによってこの 4 月、中華人民共和国から温家宝*6首相が来日する直前のタイミングで最高裁判所が台湾側敗訴の判決を出したのである。これでは、日本の司法が政府に従うものだとわざわざ表明したようなものである。
 今回の日中首脳会談では、安倍首相の靖国参拝問題や歴史認識問題に対する穏便な対応、さらには北朝鮮の日本人拉致問題解決に対する協力を中国から引き出そうという課題が日本側にあった。そして日中共同プレス発表の作成作業において、「日本側は当初、台湾問題への言及自体にも抵抗したが、中国が拉致問題を盛り込むことに同意したため、代わりに台湾問題について『(1972 年の)日中共同声明で表明した立場を堅持する』などと日中三文書に言及する表現を入れることに応じた」(読売新聞、2007年 4 月 12 日)。また安倍首相は「台湾独立は支持しない」ことを温家宝首相に言明した。こうした流れから見ると、3 月末の最高裁判決は、温家宝訪日を成功させ、日中関係改善の地ならしのために捧げられた供え物であったかのような印象を否めない。
(中略)
 今回の最高裁判決が判例として用いられるとすれば、今後とも司法を通じて、日本と台湾との関係が不当に毀損され、中国を無用に利することになりかねない。そうした危険を防止するためには、日本は、台湾に関わる問題の取り扱いの根拠となる法、つまり日本版「台湾関係法」を今からでも制定するべきなのではないか、ということが光華寮裁判の最高裁判決から学ぶべき教訓である。
[平成 19(2007)年 4 月 17 日記]

光華寮問題は終わってはいない: 深山飛水の思いつくまま日記
 読売新聞の報道「光華寮訴訟の最高裁判決、台湾外交部長が不満表明」 によれば、4月2日、台湾の黄志芳・外交部長は、日本の対台湾窓口機関・交流協会台北事務所の池田維*7所長を外交部に呼び、「台湾としては、この最高裁判決について、全く受け入れられず、極めて遺憾だ」と不満を表明し、さらに「判決は、温家宝・中国首相の(11日からの)訪日に影響を受けたのではないか」とも述べたそうである。これに対して池田所長は「三権分立の下での判決で、日本政府が介入することはあり得ないし、判決が、日台関係に影響することはない」などと理解を求めたそうである。
 しかし、池田所長の言っていることは嘘であろう。あれだけ長引いて解決がつかなかった裁判が、今ここで一転直下解決したのは、中国の外圧によるものであることは間違いない。
 安藤仁介京大名誉教授(国際法)は次のように言及している。
(1)なぜこんなに長い間、審理を放置していたのか理解に苦しむ。今回の判決は、昭和62年(1987年)に寮生側が上告した当時の事実に基づいて「中華民国」政府が「中国」の名において訴訟を継続することはできないとしているが、それなら20年以上前に、同趣旨の判決は下せたはずだ。


【ソウルからヨボセヨ】謝罪・反省は対日専用 黒田勝弘 - 産経ニュース
1)朝鮮戦争は未だ終戦していない(建前では停戦であり、38度線も国境ではなく停戦ライン)
2)朝鮮戦争を決定した中国共産党主席・毛沢東は未だ「建国の父」扱いだが、日中戦争、太平洋戦争を起こした連中は(昭和天皇は意図的に免罪されたとはいえ)、東条英機元首相、板垣征四郎陸軍大臣などが裁かれており、「日本の建前では」戦争犯罪人
3)日本は、日韓国交正常化、河野談話などであの戦争の非を認めた
と言う意味で「朝鮮戦争問題で非を認めない中国を非難しないのに何故慰安婦や徴用工の問題などで日本を批判する!」という産経・黒田の言い分には全く道理がありません。
 韓国側も「朝鮮戦争で非を認めない中国は理解できる(支持できるではない)が、慰安婦問題などで非を認めない安倍は理解できない」「安倍自民以前は自民党総理でも、橋本や小渕などはもっとまともだった。日本の右傾化が深刻だ」と呆れ、嘆いてることでしょう。

*1:そんなことはないでしょうが。

*2:外務省アジア局長、駐ユーゴスラビア大使、駐エジプト大使、駐中国大使など歴任

*3:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相

*4:田中、福田内閣経済企画庁長官、中曽根内閣外相など歴任

*5:鳩山、菅内閣防衛大臣政務官、野田内閣防衛副大臣希望の党政調会長地域政党未来日本」代表など歴任。現在、自民党衆院議員

*6:中国共産党中央弁公庁主任、党中央書記処書記、副首相などを経て首相(党中央政治局常務委員兼務)

*7:外務省アジア局長、官房長、駐オランダ大使、駐ブラジル大使、交流協会台北事務所代表などを歴任。