珍右翼・高世仁に悪口する(2024年2/15日分)

ウクライナ戦争

ウクライナ戦争:勝利と平和のあいだで - 高世仁のジャーナルな日々
 前線に膨大な物量と兵員を投入するロシア軍に対して不利な状況に立たされているウクライナ軍。また、連日さらされる空襲の恐怖、増え続ける命の犠牲、失業や避難生活で進む貧困化で疲れ切った市民たち。この現実を前に「もういいかげんウクライナも矛を納めて停戦すればいいのに、占領された地域はロシアに譲って」と停戦を主張する声が高まっているようだ。

ウクライナ戦争:勝利と平和のあいだで2 - 高世仁のジャーナルな日々
 ウクライナではロシアの攻撃によって日々人命が失われ、国土が破壊されているが、戦争は科学研究へも甚大な影響を与えている。ITなどの分野で優秀な人材を輩出し続けてきたが、およそ8万人とされる研究者たちがいま窮地に立たされているという。
 研究施設などの破壊、資料の散逸さらには人材の流出など二重三重の危機が襲っているという。

 俺も「戦争はいい加減停戦・終戦すべきではないか」と思っています。
 これは単純に「ウクライナの反転攻勢が上手くいっていない→あげくザルジニー総司令官更迭」「米国共和党が典型だがウクライナ支援消極論もNATO諸国に台頭してきた→ウクライナへの支援の減少」といった「戦争が2022年2月の開戦から2年を経過し明るい展望が見えない(以前、高世もウクライナで軍総司令官解任の可能性 - 高世仁のジャーナルな日々で紹介していたが、小泉悠*1は今後の見通しで、ウクライナの反転攻勢はどんなに早くても2025年まで成果は出ない、2024年はウクライナがロシアの侵攻を耐えて現状維持を続ける時期だとまで言っている)」という事実「のみ」に基づいています。
 「どちらに道理があるか」と言うことは全く問題にしていない(一応断っておけば、ロシアの侵略で、ロシアに非があると勿論思っています)。開戦当初なら俺も「停戦・終戦論」は口にしなかったでしょう。
 例えば「勝敗の決着がつかずに双方痛み分けで停戦・終戦で終わったケース」は過去にも「朝鮮戦争(1950年6月~1953年7月の約3年1ヶ月:北朝鮮韓国併合を目指して侵攻するが挫折。建前では今も戦争状態で38度線は国境でなく停戦ライン)」「イラン・イラク戦争(1980年9月~1988年8月の約8年間:イラクがホメイニ体制打倒を目指し侵攻したが、結局ホメイニ体制は存続、一方でフセインイラク体制は存続し、イランの脅威として残り続けた、イラクは後にクウェートに侵攻)」等があります。
 なお、話が脱線しますが北朝鮮、イランが核開発にこだわるのもこの戦争時に米国が韓国側、イラク側を支援し、北朝鮮やイランの政権転覆を画策したからでしょう。
 結局「停戦・終戦すべきかどうか」は「戦争の展望(今後、短期でロシアが撤退しウクライナが領土を奪還する可能性があるか、戦争を継続することによるウクライナの社会、経済への打撃をどう見るか等)」「交渉の展望(停戦・終戦交渉においてウクライナがどんな交渉成果を得られるか等)」等の「事実認識」をもとにした「停戦・終戦すべきかどうか」という「価値観」の問題でしかない。
 ウクライナにとって戦争の展望が明るく、交渉の展望が暗ければ「継戦」に、戦争の展望が暗く、交渉の展望が明るければ「停戦・終戦」に傾く。
 しかし「ウクライナにとって戦争の展望が暗かろうとも、停戦・終戦してロシアを利することは避けたい」と「継戦重視」の価値観に立てば、戦争の展望に関係なく「継戦」に傾く。
 ウクライナ戦争はそういう話であって、高世のように単純に「ロシアがウクライナ領の一部を事実上支配し、プーチン政権も存続する状況で停戦・終戦して侵略者ロシアを利していいのか」で済む話ではない。ウクライナ戦争に限らず、現実の政治、社会問題とは勧善懲悪ではない(勿論理想は勧善懲悪であるべきですが)。あえて涙を呑んで「忍び難きを忍び、耐え難きを耐える」決断をすべき時もあり得ます。


プーチンの戦争目的は変わっていない - 高世仁のジャーナルな日々
 「戦争目的を変えた」というと「面子が潰れる」からそう言わないだけでプーチンは当初の戦争目的(恐らくウクライナ全土支配、ゼレンスキー政権打倒)は諦め、もはや「現在のロシア支配地域の維持」「ICCでの刑事責任追及の無効化」「対ロシア制裁解除」等で停戦・終戦してもいいと思ってるのではないか。
 もちろんだからと言って「今すぐ停戦・終戦すべき」と言う「単純な話でもない」ですが、少なくとも議論は現実に依拠してされるべきです。
 「プーチンの戦争目的は変わっていない(高世など)」というのはデマでしかないでしょう。

*1:東大准教授。著書『現代ロシアの軍事戦略』(2021年、ちくま新書)、『ウクライナ戦争』(2022年、ちくま新書)、『ウクライナ戦争の200日』(2022年、文春新書)、『終わらない戦争:ウクライナから見える世界の未来』(2023年、文春新書)、『オホーツク核要塞:歴史と衛星画像で読み解くロシアの極東軍事戦略』(2024年、朝日新書)等