黒井文太郎に突っ込む(2024年1月1日分)

黒井文太郎
 今は反左翼陣営が国内言論の延長で国際関係に言及してピントがズレてる感じですが、ほんの数年前までは主要メディアでも反米前提の論調で国際関係を扱う言説が強く、問題の本質からズレた解説も少なくありませんでした。
それが是正されたのは、ウクライナ問題できちんと解説される先生方の功績大です

 何がピントがずれてるのか、誰が反左翼陣営(右翼陣営と書かない理由が謎ですが、1)左翼の誤記か?、はたまた2)「左翼が無茶苦茶だからそのカウンターで反右翼が蔓延する」と左翼に悪口でもしたいのか?)なのか等、具体性皆無で意味不明なところが「アホの黒井」らしい。別に「ツイッターに文字制限があるから伝えづらい」と言う話ではなく、1)黒井の文章能力がないか、2)「批判対象の反論から逃げたい」など不当な動機から「意図的に曖昧」にしてるかどっちかでしょう。

黒井文太郎
 自分はシリア専門家ではないけれどシリアとの関係は長い。それで2011年からアサド批判を書いてますが、当時は日本語圏にアサド擁護言説*1も多く「黒井は北朝鮮では参考になるけれどもシリアは偏向してる」とのリプが結構ありました。

 吹き出しました。無知なので、シリアはどうか知りませんが「黒井=ただの反北朝鮮右翼」なんでむしろ北朝鮮で全く参考になりません。というか「北朝鮮問題への世間の関心が薄れたから」か、最近の黒井は著書もツイートもロシアばかりで「北朝鮮は皆無」ですが。

黒井文太郎*2
 「プーチンは後退しない」と最初から解説してきましたが、自分でも明言しました
プーチン氏「後退しない」 新年メッセージで:東京新聞 TOKYO Web*3

 吹き出しました。黒井だって「ハッタリ」と言う概念は知ってるでしょうに。
 例えば北朝鮮は「ソウルを火の海に」発言を過去にしたことがありますが、発言の是非はともかく、「在韓米軍や韓国軍の北朝鮮侵攻への反撃としてのソウル攻撃」ならまだしも、誰も「そんなことを先制攻撃で北朝鮮がやるとは思わない」わけです。
 プーチンに限りませんが「終わりにしたい」と思っても「自分から終わりにしたい、というと相手に舐められてむしろ終わらなくなるかも」「終わる場合でも相手に有利な決着になるかも。その場合、『相手が有利すぎる』と俺が攻撃されて失脚するかも」「俺に有利な条件(例えばプーチンの場合、現在、ロシアが支配する地域(ドネツク州、ルガンスク州ザポリージャ州、ヘルソン州など)の支配継続、ウクライナNATO非加盟、ロシアの戦争犯罪追及の断念など)で決着したい」「相手も終わらせたがってるだろうからこっちがあえて強気に出よう、その方が相手から『終わりにしたい』というかも」というハッタリは当然あり得ます。ロシアとウクライナのような敵対関係なら特にそうですが、交渉というのは「お互いが包み隠さずに本心を言って、それでまとまる」というようなきれい事では必ずしもない。交渉を有利にするためにあえて強気に出ることもあれば、逆にあえて下手に出ることもある。 
 勿論「ハッタリでない、本心の可能性」もありますが、それは「表向きの発言だけ」では分かりません。
 まあ、「反ロシア」黒井の場合「ウクライナの徹底抗戦」を正当化したいからこういうのでしょうが。
 勿論プーチンも「どんなに自分に不利な条件でも終戦(停戦)する」わけもない。当然「ウクライナの考える終戦(停戦)条件と折り合わず戦争継続」はあり得ますが、「プーチンは絶対に終戦(停戦)しない、妥協しない」と決めつけるのはおかしい。
 それとも黒井の言う「後退しない」とは「終戦(停戦)しない」「妥協しない」ではなく「プーチンが絶対に呑みたくない条件*4は、呑まざるを得ない状況に追い込まれない限り絶対に呑まない」と言う意味なのか。それはその通りでしょうが、「それはプーチンに限らず誰でも当たり前」ですし、それを「後退しない」とまるで「プーチンが一切譲歩しない、絶対に終戦(停戦)しない」かのように表現するのは詐欺的な言語使用法でしょう。

*1:具体的に誰のどんな言説か書かない辺りが「アホの黒井」らしい。

*2:著書『イスラムのテロリスト』(2001年、講談社+α新書)、『北朝鮮に備える軍事学』(2006年、講談社+α新書)、『日本の情報機関』(2007年、講談社+α新書)、『ビンラディン抹殺指令』(2011年、洋泉社新書y)、『イスラム国の正体』(2014年、ベスト新書)、『イスラム国「世界同時テロ」』(2016年、ベスト新書)、『プーチンの正体』(2022年、宝島社新書)等

*3:むしろ「終戦(停戦)しない」「和平交渉しない」ではなく「後退しない」という「曖昧な表現」であることを重視すべきではないか。これはプーチンが「後退してない(わずかだが前進している)」と言い訳できれば「終戦(停戦)してもいい」「和平交渉してもいい」と考えてることを意味してるのではないか。勿論プーチンが「後退してない、前進していると言い訳できると考える終戦(停戦)条件」をウクライナが「プーチン側に不当に有利、ウクライナ側に不当に不利」と考え、受け入れず、戦争継続はあり得ますが

*4:「自らの完全な失脚」を意味する「プーチン自身の刑事訴追」は「呑まざるを得ない状況」にならない限り、絶対に呑まないことだけは確かですが、それ以外(例:ウクライナ支配地域からの撤退、ウクライナNATO加盟容認、プーチンの部下の刑事訴追等)については正直彼の考えは分からないと思います。というか、恐らくはプーチンが「言質を取られて不利にならないように」故意に曖昧にしているのですが。