王力雄というバカをdisってみる(追記あり)

チベットNOW@ルンタ
王力雄「炎の遺言――なぜチベット人焼身するのか?」前半
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51773905.html

 絶望は主な焼身理由ではない。

という王の主張と

 本土の人々はすでに、亡命政府始め外のチベット人たちが今も進めている「国際社会の圧力を利用し、中国政府に譲歩を迫る」というやり方を無効と自覚し、とにかく「自分たちが立ち上がらなければいけないのだ」という決意のもとに、個人ができる最高の抗議形態として焼身を選んだのだという。

という王の主張は明らかに矛盾するだろう。
 「自殺しか手立てがないと思い込む」というのは「絶望」以外何物でもないだろう。
 「チベットの現状が良くなることを願っての自殺だから絶望じゃない」というのは言葉遊びでしかあるまい。ま、それはともかくチベット亡命政府の「国際社会の圧力を利用し、中国政府に譲歩を迫る」という方策が無効だというなら王はどんな路線を展望してるのか、それを見てみよう。


チベットNOW@ルンタ
王力雄「チベット独立ロードマップ」
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51762084.html

 タイトルからして読む気をなくす。独立主張などダライはしていないし、現実性に乏しいと思うが。いずれにせよここから王がかなりの対中タカ派だと理解できる。


思いつくまま
王力雄:チベット独立ロードマップ(4)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/3a53e3e0803b96c4807a55f9c5665c01
 ここでの王の主張は「俺が今まで見たことがない主張」と言う意味で面白い。
 王は「なぜチベット問題は解決しないのか」と問いかける。ま、普通は「中国とチベットの考えが違うから(もちろん王はチベット全面支持だ)」と答えるだろう。
 で、王のような「中国が全て悪い」という立場に立ったとして、ではなぜ中国はそういう悪い立場を改めることができないのか。それに対する答えとして誰でも思いつくのは「多数派漢民族チベット自治権拡大や独立を支持しないから共産党も改めようがない」か「多数派漢民族の動向に関係なく中国共産党上層部がチベット自治権拡大や独立を支持しないから」だろう。
 ま、共産党上層部なり多数派漢民族なりが支持しない理由は「国威失墜は嫌だ」「領土減少など嫌だ」「チベットの権益(埋蔵資源)は重要だ」などいろいろ考えられる。
 王の主張は違う。
 王曰く「チベット問題に関与する官僚がチベット問題解決を望まないから」だそうだ。
 従って「漢民族の意向や共産党上層部の意向は関係ない」のだそうだ。
 どこかで聞いたことのある話だが、これは明らかに「官僚支配が問題だ・中国版」といっていいだろう。「官僚支配のせいで八ッ場ダム建設が止まらない」んだとかの中国版。そうした「官僚支配が問題だ」論は、それが一面の事実だとしても「官僚以外を免罪してしまう」「官僚支配を許す構造を無視している」という点で問題だと言っておこう。というかチベット問題が解決しない理由の一つは明らかに「多数派漢民族チベット自治権拡大や独立を支持しないから」だろう。であるなら官僚支配を強調する王の議論は間違った結論しか出さないだろう。


思いつくまま
王力雄:チベット独立ロードマップ(5)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/ad0b149a99460cc9b1333fe1463878f7
 ここで王は「インドネシアから武力闘争で独立を達成した東チモール」「セルビアから武力闘争で独立を達成したコソボ」を紹介している(ただし王も認めるように武力闘争もやったが、それだけではなく亡命チベット政府のような平和的闘争や国際社会へのアピールもあったのだが)。
 王の主張が何かが簡単に理解できるだろう。チベットの蜂起である。この蜂起は一応平和的蜂起(ゼネラルストライキや大規模デモなど)のみを意味するようだ。さすがに王も武力蜂起を公言するほど野蛮ではないらしい。
 しかし無茶苦茶にも程があるだろう。政治情勢が違うのに「東チモールコソボを見習って立ちあがれ」などと安全地帯から言うのは下劣きわまりない。ま、王が「チベット人蜂起」に自らも参加し死亡したからと言って「有言実行が評価できる」だけで「多数の流血が出ても構わない、独立のためだ」と暴言はいた行為は許されるものではないだろうが。
 王の暴言はとどまるところを知らない。第一次天安門事件周恩来首相の死がきっかけ、第二次天安門事件胡耀邦*1・元中国共産党総書記の死がきっかけであることを理由に「遅くともダライの死をきっかけに蜂起が起こるだろう」と言い出す王。ま、これ「ダライが死ぬ前に解決した方が僕はいいと思うんだ」というブラフかもしれないが、物の言い様があるだろう。
 「ダライが死ぬ前に僕は解決した方がいいと思います、蜂起が起こったら困るでしょ?」というのと、「ダライが死んだら蜂起が起こるだろう!。」と扇動的な物言いをするのと意味が全然違うだろう。前者の物言いなら中国も交渉に乗り出しやすいだろう(実際に乗り出すかはともかく)。後者の物言いではただの挑発ではないか。交渉する気が王にはないのだろうか?。ないのだろうね。
 なお、俺個人の感想を言えば幸か不幸か王の言うように蜂起が起こる可能性は必ずしも高くないと思う。可能性としては他に「運動が衰退する」「ダライ死後も亡命政府がリーダーを擁立し、そのリーダーの元で従来通り運動」という可能性もあるだろう。大体、地元チベットにリーダーがいてそれなりのプランがあるならともかくそうでないなら「ダライ死後一斉蜂起」などばくち以外何物でもあるまい。
 他にも王の文章には首をかしげるところが多い。

普通の西側の人々は政客や商人のように中国の利益や政治の制約を受けていない。彼らのチベット問題についての判断は日常生活から離れて、おもに価値基準に基づいている。チベットは彼らにとっては中国に占領された独立国家であり続けており、チベット問題は西側と中国の価値観の対立をほとんど代表している。ゆえに自然に中国を攻撃する最適な標的となる。

 そんなことはない。王の言う「普通の人」が何を意味するか知らないが「日本や欧米の普通のサラリーマン」でも商売で中国と何らかの関わりがある人はたくさんいるだろう。
 それを全て「普通じゃない人=商人」呼ばわりしたら「日本や欧米のかなりの人」が「普通じゃない人」になるだろう。 要するに王の主張が「まともじゃない」わけだが。
 現実問題として中国と関わりがあるから批判しづらい、批判したくない人はたくさんいるし、関わりがない人が皆、王が期待するように「人権的側面から中国批判してくれる人」とは限らない。むしろ「関わりがないから興味ない」人も結構いるだろう。本気で王がこんなことを言ってるのなら甘すぎる。

中国は低い人権と環境破壊を代価として海外資本を引き寄せ、大量の廉価製品を作って国際市場に衝撃を与え、西側諸国が100年以上かけて築き上げた労使関係・福祉制度・市場秩序を損なっている。

 そんな問題(発展途上国の低賃金労働問題)は中国限定ではないのに、中国だけが悪いかのように王には呆れる。中国だけ非難しても何ら問題は解決しない。
 しかも王は「損なっている」「だから欧米各国もいずれは中国非難する」というのだが問題は「損なうことを利益と考え推進しようとしてる勢力」、いわゆる新自由主義の立場に立つ政治勢力が欧米に存在するという事実を王が見事に無視してることだ。欧米諸国の政治勢力が皆「社民主義」の立場に立つのなら王の言うように中国の低賃金労働は批判の対象だろうが世の中そんなに甘くない。

チベット独立は連鎖的に新疆(訳注:東トルキスタン*2)やそれ以外の中国の少数民族地域の独立を引き起こすだろう。

 それはどうだろう?。いずれにせよチベット関係者・王(王の妻オーセルはチベット人作家で中国批判を行っている)がこんなことを言えば中国に喧嘩を売ってるのも同然だ。こんな反中国挑発文章がロードマップとは王の馬鹿さに呆れて物も言えない。王には交渉する気がまるでないらしい。ま、交渉しなくても無問題、チベットの方が断然有利とか、逆に交渉の可能性ゼロ、どんなに中国を挑発してもチベットの不利な状況は変わらない*3、というならこういう文章を書いてもいいかもしれないが果たしてそういう状勢理解が適切だろうか。そういう状勢理解を果たしてチベット亡命政府はしているのだろうか。


王力雄:チベット独立ロードマップ(6)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/22ce52f7c20ee1714fb388f36d78a0b1

ばかでかいソビエト帝国が瓦解すると事前にだれが予想できただろう?

 だから中国だって崩壊するかもしれない、そのときはソ連各国(ウクライナとか)が独立できたように独立できるかもしれないと言う王。しかし「当面崩壊しないかもしれない」のであり、王のような「甘い状勢判断」をするのは問題ありすぎだろう。というか「中国は崩壊する、そのときは独立できるだろう」と叫ぶだけの文章のどこがロードマップなのだろうか?。読む前は「それなりにまともな中国もダライも飲める策」でも提示してくれるのかと思って読んだ俺がバカだったな。
 何度も言うが王の馬鹿さには呆れて物も言えない。王のようなバカは黙ってろよ。
 むしろ人民日報『ダライ一味が「焼身自殺」を煽動するのは行き詰まりの現れ』(http://j.people.com.cn/94474/7637249.html)が指摘するように追い詰められているのはチベットの方だろう。

http://j.people.com.cn/94474/7637249.html
 焼身自殺を煽動するダライ一味の奇怪なテロ行為の目的は3つに尽きる。
 第1に、急速な経済成長と社会持続的安定というチベット自治区および四川省チベット族地区の良好な局面の破壊だ。シンガポール紙・聯合早報は「各国の民族政策を比べれば、チベットその他チベット族地区に対する中国の政策はゆとりのある、手厚いものだ。ダライの考えと行動は現実から著しくそれている」と分析する。ダライ一味はこのような発展が続くことで、その分離主義の主張が完全に支持を失うことを恐れ、焼身自殺という煽動的かつ痛ましい方法を利用して、社会にパニックを起こし、チベット族地区を乱そうと企てているのだ。
 第2に、「チベット問題」が国際社会で脇に追いやられないようにすること。近年、世界各国は中国との関係発展を重視し、「チベット独立」の話題は誰も取り合わなくなってきている*4。ダライ一味にとって焼身自殺事件は「国際ニュースのトップ」に返り咲き、外国勢力の支持を勝ち取る重要な手段となっているのだ。
 第3に、これによって中央政府に交渉圧力をかけようとの愚かな企みだ。焼身自殺事件の発生後、ダライ一味は「中国政府はチベット人の行政中央またはダライの私的代表と早急に交渉し、悲劇の再発を防ぐべきだ」「対話こそ問題解決の唯一の道だ」としきりに提案している。焼身自殺事件を利用して中央政府に自らの分離主義への譲歩を迫り、「大チベット区」*5や「高度の自治」といった、今なお望みを抱く見せかけの実現を愚かにも企んでいるのだ。
 ダライ一味による焼身自殺煽動、誇大宣伝事件が物語るものは、その活動能力や影響力などではなく、その弱体ぶりと、いかんともしがたい政治的行き詰まりに他ならない。これははっきりと言えるが、時代の潮流に逆行するダライ一味の行為に中国政府が譲歩する事は断じてなく、チベット仏教の無数の信徒がこれを認めることも断じてない。他人の命を奪い、暴力を煽動する道を歩み続けるのなら、ダライ一味の完全な崩壊も遠くはないだろう。

ダライラマが独立を放棄したのは、誰もが知る通り現実に対する一種の妥協である。

 まあ、そうだろうが、王に無神経にそういうこと言われてもダライが迷惑なだけだ。こういうのをありがた迷惑という。


【追記】
 id:noharraの、弯曲していく日常『王力雄氏の「チベット独立へのロードマップ」』(http://d.hatena.ne.jp/noharra/20130113#p1)は俺がバカだと思う王を絶賛してて面白いなあと思った。正確に言うと面白いと言うより「ばかばかしい」かな。
ダライが独立主張していないのに部外者の王が独立云々言うのは問題がありすぎるだろう。かつ王の主張のどこが「ロードマップ」の名に値するのだろうか。こんなお粗末な主張でロードマップとか言ってるんじゃねえよ。こんなお粗末な代物じゃ百年経とうと独立できないと思うぞ。
しかしid:noharraにはそういう常識がないようだ。

*1:中国共産主義青年団共青団)第一書記、陝西省党委員会第一書記などを歴任したが、文化大革命が始まると1967年に実権派と批判されて失脚。文革終了後復権し、中国共産党中央組織部長、党中央秘書長兼中央宣伝部長、党中央政治局常務委員兼党中央書記処総書記などを経て1982年に党総書記。しかし1987年に保守派の批判で失脚。党総書記を解任され党政治局員に降格され失意の中で病死。

*2:かえって注をつけてわかりにくくなってると思うが。新疆は自治区という制度なので境界がはっきりしてるが東トルキスタンではどこからどこかかえってわかりづらいと思う

*3:その場合でも挑発していいかは疑問だが

*4:確かに「チベットの人権問題」ならまだしもいまどき「チベット独立」なんか国際社会は支持しないだろう。ダライが今いるインドすら支持しないのではないか。

*5:ペマ・ギャルボは以前『今の青海省はほとんどがチベットの領土でしたし、雲南省にもチベット自治県が三つほどありました』(http://pemagyal.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_277b.html参照)ととんでもないことを言ったことがあるがこういう「現在のチベット自治区以外の青海省雲南省チベット自治区に組み入れろ」という主張を大チベット区という。ただしどう見ても中国が認めるとは思えないため、ダライや亡命政府は少なくとも公式にはこうした主張はしていない。ま、でもペマの「大チベット区」的発言を野放しにしてる時点で中国に「大チベット区構想を本当に放棄しているか怪しい」と疑われても文句は言えないだろうが。