今日の産経ニュースその他(8/14分)(その1:安倍談話)(追記・訂正あり)

毎日新聞『70年談話:安保法案反対の若者ら「矛盾」と批判』
http://mainichi.jp/feature/news/20150814mog00m010012000c.html
 「過去の反省と安倍首相がいうなら何故、戦争体験者や隣国が『過去の反省に矛盾する』と批判するような法案を衆院強行採決したのか、何故談話の中に『平和主義一般』ではなく『積極的平和主義』なんて言葉が唐突に登場するのか」という主旨の反対派の若者の発言は全く正論だと思います。


時事通信反日的でないこと前提=中国の戦勝記念行事出席−安倍首相』
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201508/2015081400929&g=pol
 安倍の言う「反日」の意味は全く不明です。「対日戦勝記念式典」なんだから「戦前日本」は当然批判されるでしょう。それを安倍が「反日」というなら「出席は不可能」でしょうが、まあ、「戦前日本を批判しない抗日戦争記念式典」なんてもんがあるわけもない。中国からすれば「じゃあ出なくていいよ」でしょう。
 それとも「戦前日本批判はしてもいいが安倍政権批判は控えてくれ」つうことなのか。まあ、これも「何だかなあ」ですよね。安倍の言う「安倍政権批判」が何を意味するか知りませんが、訪中した安倍に中国要人が全く苦言を呈さないなんて事もあるわけがない。
 まあ、さすがに、事情はどうあれ、訪中した国賓・安倍を「つるし上げてぼこぼこに叩きサンドバッグ状態にする」ようなことはしないでしょうが「批判はゼロでお願いしたい」なんてことが通るわけもないでしょう。


■【戦後70年談話】与党「バランスとれた談話」と評価 野党は「一般論に終始」と批判
http://www.sankei.com/politics/news/150815/plt1508150005-n1.html
 バランスて「意味不明な言葉」を平気で言える辺り与党はおかしい。バランスて何のバランスなのか。どうせ「極右べったりで米国からさえも非難される代物でなくて良かった」「一方で日本会議などにも言い訳ができる内容で良かった」「バランスがとれてる」つうことでしょうが談話の建前はそう言う話と違うでしょうに。


■【戦後70年談話】首相会見詳報(2)「世界の平和と繁栄に力を尽くす責任がある」「中国にはありのまま受け止めていただきたい」
http://www.sankei.com/politics/news/150814/plt1508140036-n1.html

記者
「今年中に中国に訪問して、習近平*1国家主席と3回目の首脳会談を行うのか。
(中略)」
安倍
 「中国のみなさんには戦後70年に当たってのわが国の率直な気持ちをありのまま受け止めていただきたい。中国とは習近平国家主席との2度にわたる首脳会談において、戦略的互恵関係の考え方に基づいて関係を改善することで一致している。日本と中国は地域の平和と繁栄に対して、大きな責任を有している。両国の経済関係は非常に密接であり、さまざまなレベルで対話を重ねながら、安定的な友好関係を発展させ、国際社会の期待に応えていきたい。
(後略)」

 産経や日本会議などと違い安倍は少なくとも建前の世界では「日中友好」を語らざるを得ないわけです。


■【戦後70年談話】オバマ政権が歓迎 「他国の模範となる」と米高官
http://www.sankei.com/world/news/150815/wor1508150006-n1.html
 「え?。日露戦争の下りまで評価するのか?」と米国の酷さには唖然です。さすが、「韓国の朴チョンヒ政権」「フィリピンのマルコス政権」「エジプトのムバラク政権」「チリのピノチェット政権」など世界各地の独裁政権国益を理由に支援してきた「悪の帝国・アメリカ」だけのことはあります。
 まあ、他にもオーストラリアだの褒めてる国はあるようですがおそらく「中韓に比べて戦争被害が小さいし、貿易の観点から日本ともめたくない」とかであってちょっと素直には受け取れないですね。


赤旗
■主張『「安倍70年談話」:過ち認めぬ首相に未来託せず』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-08-15/2015081501_05_1.html
村山談話、事実上投げ捨て、安倍首相が戦後70年談話
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-08-15/2015081501_02_1.html
■安倍首相「70年談話」、「侵略」「植民地支配」自らの判断明示せず、「戦争する国づくり」宣言
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-08-15/2015081502_01_1.html
■首相「侵略」拒否、70年談話記者会見
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-08-15/2015081502_04_1.html
村山談話“引き継いだ印象なし” 識者から“失望、歴史に傍観的”、安倍談話に厳しい視線、中国政府「ごまかすべきでない」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-08-16/2015081601_01_1.html
■「村山談話」どう投げ捨てたか、「安倍談話」を検証すると
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-08-16/2015081602_01_1.html
■“安倍談話、非常に残念”、光復節式典で韓国民団団長
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-08-16/2015081602_03_1.html
■安倍談話 海外メディア 厳しく批判
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-08-16/2015081602_04_1.html
■安倍談話 海外から厳しい批判
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-08-16/2015081603_01_1.html

人民日報
■外交部が安倍談話についてコメント 「日本は戦争責任を明確に表明すべき」
http://j.people.com.cn/n/2015/0815/c94474-8936616.html
■安倍談話「お詫び」はあいまいで残念 浅野*2元外務副大臣
http://j.people.com.cn/n/2015/0816/c94474-8936972.html
安倍氏は今後どの道を歩むのか
http://j.people.com.cn/n/2015/0817/c94474-8937417.html
■「安倍談話」は一体何を語ろうとしているのか
http://j.people.com.cn/n/2015/0817/c94474-8937042.html

朝鮮日報
■韓国市民団体 安倍談話を批判=「謝罪とは言えない」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/15/2015081500319.html
■安倍談話 「被害者問題への言及ない」と憤り=元慰安婦
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/15/2015081500317.html
国連事務総長「真の和解必要」 安倍談話に遺憾表明
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/15/2015081500557.html

中央日報
■<戦後70年談話>青瓦台「安倍首相、他人の言葉借りて謝罪…国民は納得しない」
http://japanese.joins.com/article/472/204472.html?servcode=A00§code=A10&cloc=jp
■<戦後70年談話>村山元首相「談話引き継がれた印象ない」
http://japanese.joins.com/article/473/204473.html?servcode=A00§code=A10&cloc=jp
■<戦後70年談話>安倍首相の「不思議な謝罪」
http://japanese.joins.com/article/470/204470.html?servcode=A00§code=A10&cloc=jp

産経
■【戦後70年談話】台湾の元慰安婦 「正式な謝罪がなかったのは遺憾」
http://www.sankei.com/world/news/150814/wor1508140039-n1.html
■【戦後70年談話】「過去の談話より後退」社民・又市幹事長コメント
http://www.sankei.com/politics/news/150814/plt1508140035-n1.html
■【戦後70年談話】「村山談話歴史認識から大幅に後退」 韓国メディア、談話は「過去形謝罪」と否定的報道
http://www.sankei.com/world/news/150814/wor1508140041-n1.html

 早速国内外のさまざまな方面から批判意見が出ています。俺も同感ですね。


■【戦後70年談話】空襲被害者、特攻隊員、抑留者ら、理解と注文
http://www.sankei.com/politics/news/150814/plt1508140033-n1.html
 産経がコメント取るような連中なので皆極右ですが、特に酷いコメントがこれ。

 元衆院議員で旧ソ連に約3年にわたり抑留された経験を持つ全国強制抑留者協会会長の相沢英之*3さん(96)は「想像より丁寧な内容で全般的に異論はない。特に日露戦争が植民地支配下にあった人々を勇気づけたと言い切った点は大変良かった」と評価。一方で「約60万人が拉致*4された事案であるソ連の抑留について一言もなかったのは大変残念」と指摘した。

 相沢コメント前半について言えば「日露戦争が植民地支配下にあった人々を勇気づけた」なんてのは明らかなデマです。良かったどころか最悪です。
 後半について言えば「戦後70年の反省談話」ですからね。そこに唐突に「ソ連の抑留は酷かった」なんてぶち込んだら「安倍が、自民党が、日本政府がシベリア抑留をネタに居直ってる」と思われるだけです。


■【戦後70年談話】首相談話全文
http://www.sankei.com/politics/news/150814/plt1508140016-n1.html
 ついに安倍談話が出ました。出たら早速コメントしようと思っていたので早速コメントします。

日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました。

 「当初の私的談話方針を撤回し」、「公明党の太田国交相」も含む閣僚で閣議決定したんだから「最悪の代物ではないんじゃないか」と期待した俺がアホだったようです。冒頭からいきなりこれです。しかし「自称平和の党・公明党」がここまで酷いとは思っても見ませんでした。
 韓国植民地化を実行するため「ロシア勢力を韓国から排除するための帝国主義侵略戦争日露戦争を公然と美化です。日露戦争は「韓国植民地化の一環」であり無理矢理韓国併合と切り離すことなどできません。
 これは日本の侵略を当時受けていた中韓(特に韓国)に対する挑発行為以外何物でもないでしょう。
 いずれ人民日報や朝鮮日報でも「安倍の日露戦争正当化」に対する批判記事が出るでしょう。もしかしたらニューヨークタイムズワシントンポストなど欧米のリベラル派メディアにも出るかもしれない。出たら追記で紹介したいと思います(なお断っておきますが俺は中国語、韓国語、英語がダメな凡人なのでここで言う「出たら紹介」とは「朝日、読売など日本メディアでその記事が紹介されたら」とか「インターネット版の人民日報(日本語版)、朝鮮日報(日本語版)にそういう記事が載ったら」などという意味です)。
 大体、安倍は「勇気づけた云々」といいますがそれは「安倍や当時の日本」に善意に解釈しても「日本の勝利直後」であり、その後、日本が植民地解放運動のために動くわけでも何でもないこと、それどころか欧米のように中韓への侵略を推進していくことに「アジアやアフリカの人々」は失望していきます。
 そして勇気づけたというなら「ロシア革命」も「レーニン民族自決権を主張したこと」「ソ連が本音はともかく建前では各地の民族運動に連帯意思を表明し、場合によっては経済支援したこと」などもあって「多くのアジアやアフリカの人」を勇気づけたし、アジアやアフリカの人々の中には「中国の毛沢東*5」「北朝鮮金日成*6」「ベトナムホーチミン*7」など「共産主義の立場からの民族主義者」を生み出したのですがその辺り安倍はどう考えるのか。
 ああそういえば今、思い出しましたが、本多勝一氏が週金コラムで「欧米への勝利でアジア人を勇気づけたというならベトナムのフランスや米国への勝利の方がよほど、そうじゃないか。日露戦争の日本勝利と違ってベトナムによる他国植民地支配なんてもんはないし」「ベトナムホーチミン、ファン・バン・ドン*8ボー・グエン・ザップ*9ベトナム革命第一世代は『明治維新の三傑(大久保利通*10西郷隆盛*11木戸孝允*12)』ならぬ『ベトナム革命の三傑』としてもっと日本人は評価すべき」つう言葉を思い出しました。

 世界を巻き込んだ第一次世界大戦を経て、民族自決の動きが広がり、それまでの植民地化にブレーキがかかりました。この戦争は、一千万人もの戦死者を出す、悲惨な戦争でありました。人々は「平和」を強く願い、国際連盟を創設し、不戦条約を生み出しました。戦争自体を違法化する、新たな国際社会の潮流が生まれました。
 当初は、日本も足並みを揃えました。しかし、世界恐慌が発生し、欧米諸国が、植民地経済を巻き込んだ、経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました。その中で日本は、孤立感を深め、外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使*13によって解決しようと試みました。国内の政治システムは、その歯止めたりえなかった。こうして、日本は、世界の大勢を見失っていきました。
満州事変、そして国際連盟からの脱退。日本は、次第に、国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」への「挑戦者*14」となっていった。進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました。

 「欧米が経済ブロック化するから悪いんだ」「だから日本は恐慌からの脱出のために満州ブロック経済を作ろうとしただけなんだ」と言いたげな物言いは「侵略戦争を公然と居直ってる」として「中韓は勿論欧米の反発も買いかねない」などという意味でどうかと思います。
 しかし、「第一次大戦後」

戦争自体を違法化する、新たな国際社会の潮流

が生まれたのに、日本がそれを公然と無視し中国侵略から、果ては東南アジア侵略にまで暴走したこと、その理由が「世界恐慌対応(中国への侵略で恐慌から脱出する)から植民地再分割戦争(東南アジア侵略)に突入」、つまり「アジアの植民地解放(大東亜戦争でのスローガン)」などというきれい事ではなく「カネの問題でしかないこと」を安倍がはっきり認めてることは安倍の主観が何でアレ、いいことではないかと思います。冒頭に出てきた「日露戦争正当化」がこの談話の問題点の一つ*15だとすれば、「日本が戦争違法化の潮流をカネのために公然と無視したこと」をとにもかくにも認めてる点はこの談話のそれなりに評価出来る点でしょう。そう言う意味ではウヨにとって、この談話は手放しで評価できるものではないでしょう。まあ、「安倍に甘いウヨ連中」は手放しで評価するかも知れません(苦笑)。
 ただし、安倍以外の首相ならおそらく「世界の大勢を見失って」「進むべき針路を誤り」云々と言うこの部分にウヨは反発するであろうと思います。

 戦火を交えた国々でも、将来ある若者たちの命が、数知れず失われました。中国、東南アジア、太平洋の島々など、戦場となった地域では、戦闘のみならず、食糧難などにより、多くの無辜の民が苦しみ、犠牲となりました。戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たち*16がいたことも、忘れてはなりません。
 何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実。歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。一人ひとりに、それぞれの人生があり、夢があり、愛する家族があった。この当然の事実をかみしめる時、今なお、言葉を失い、ただただ、断腸の念を禁じ得ません。

 はっきりと「戦前日本の行為について謝罪します」と言わず「断腸の念*17」と言う辺り「安倍が明確な言葉でわびたくないこと」が嫌と言うほど改めて実感できます。
 とはいえ、

何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実

に「断腸の念」を安倍が感じる以上、それは論理上、「安倍によるある種の、戦争被害国への謝罪以外何物でもない」(何度も言うように「おわびします」など明確な言葉でわびることができない辺り、安倍は姑息ですが)。
 ここも、談話のそれなりに評価出来る点でしょう。そう言う意味ではウヨにとって、この談話は手放しで評価できるものではないでしょう。まあ、「安倍に甘いウヨ連中」は手放しで評価するかも知れません(苦笑)。
 ただし、安倍以外の首相ならおそらく「何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実」云々と言うこの部分にウヨは反発するであろうと思います。

 事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない*18

1)「戦前美化」櫻井よしこ中教審委員)や百田尚樹NHK経営委員)なんぞ要職に就けた分際で
2)武力行使国際紛争を解決しようとした米国のイラク戦争を支持した癖に
3)憲法九条を敵視し、違憲の戦争法案制定を企む*19癖に
「お前、本気でそう思ってるのかよ?、虚言も大概にしろよ」と問い詰めたくなりますが、さすがの安倍も公然と「正義の戦争ならやっていいんです」と公言する度胸はないようです。
 ここもウヨにとって手放しで評価できるものではないでしょう。

 我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。
(中略)
 こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。

 はっきりと「安倍内閣としてわびたい」と言わない辺り安倍のせこさにうんざりしますが、この部分は普通に解釈すれば「安倍も歴代内閣の過去の反省と謝罪(具体的には河野談話村山談話、菅談話*20など)を本音はともかく建前では評価してる」という風にしか理解できません。ここもウヨにとって手放しで評価できるものではないでしょう。

 戦争の苦痛を嘗め尽くした中国人の皆さんや、日本軍によって耐え難い苦痛を受けた元捕虜の皆さんが、それほど寛容であるためには、どれほどの心の葛藤があり、いかほどの努力が必要であったか。
 そのことに、私たちは、思いを致さなければなりません。

 つうことで思いをいたすための材料として以前、別エントリ(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20150720/5210278609)で紹介した「藤田茂・中国帰還者連絡会会長」の文章をここで紹介したいと思います。なお、寛容であることはすばらしいことですが、それは「加害国から要求すべき事」では当然ながらありません。

http://www.ne.jp/asahi/tyuukiren/web-site/backnumber/02/hujita_kandaiseisakunituite.htm
■季刊・中帰連2号(1997年)『中国人民の寛大政策について』(藤田茂*21
 1974年*227月7日、日中戦争開始の原因となった盧溝橋事件37周年に中帰連が主催した「日本軍国主義を告発する」報告集会において為された藤田茂・(注:中帰連)初代会長の講演内容です。
 この文章は藤田茂氏の生前の文章のうちもっともよく知られている文章であるとともに、日本人戦犯の「認罪」について、その状況をよく説明しているものです。『季刊・中帰連』第2号にも収録されていますが、多少の異同があるため、本文は、中帰連編『私たちは中国で何をしたか』*23より転載いたしました。


(前略)
 中国の人々の寛大で暖かい処遇にはただただ頭のさがる思いでした。
 先般、中国を訪問した知人が私に申しました。
「中国の人々は、過去の戦争のことは忘れましょう、将来の平和と友好のため話し合いましょうと言いました。さすが中国人は大国の人民だ。あの日本軍の侵略による損害を水に流そうというのです」と。
 私はこの言葉を聞いて大変情けなく思いました。誰が親兄弟を殺され、先祖伝来の家を焼かれてこれらを忘れられましょうか。私は「過去のことは水に流そう」と言っておられる中国人民の奥深い心情を、正しく理解する必要があると痛感いたしました。
(中略)
 広州*24で、あるレセプションに出席いたしましたとき、その席上で広州市革命委員会の副首席の方の挨拶がありましたが、その一節で「私の故郷は河北省であります。そこでは軒並みに日本軍によって殺された人がたくさんいました。私は日中問題について長い間悩んでいました。毛沢東思想の学習と党と政府の辛抱強い指導によって、ようやく日本人民と日本軍国主義を区別することができるようになりました」と言っておられました。
 中国の東北*25から海南島に至るまで、かつて日本軍が侵略した地域には、中国人民の血の跡が残っているのです。このことを私たちは銘記しなければなりません。日本が中国を侵略したことは拭い去ることのできない歴史の事実であります。
 私は、侵略戦争の実態をよく見つめて侵略戦争を心の底から憎むとき、はじめて「過去のことを水に流して日中友好を願う」中国人民の心情を理解することができるのだと考えています。過去の侵略戦争を反省し、日本軍国主義の告発こそ、日中友好の基礎であると私は確信しております。
 訪中した際、周恩来総理は私に対して次のように述べられました。
「今度、日中両国の間に国交が回復したことはまことに喜ばしいことです。これは経済的基盤の異なる両国の総理が紙の上で約束したものであります。しかし、本当の友好はこれからでありましょう。中国人民と日本人民がお互いにもっともっと理解を深め、その相互理解の上に信頼の念が深まってこそ、初めて子々孫々に至るまで変わることのない友好関係が結ばれることでしょう。これにはまだ永い年月がかかることでしょう。日中友好のためお互いにいっそう努力しましょう」
 私はこの言葉こそ今日、中国人民の心情であると感じております。
 私は老骨に鞭打って、侵略戦争反対、軍国主義の告発、日中友好のために今後も邁進する覚悟です。

さて藤田氏の文章の紹介から安倍談話への突っ込みに戻ります。

 日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります。

 ここだけ切り出せば正論ですが言ってるのは「南京事件否定論者・百田尚樹櫻井よしこと公然とつきあってる安倍*26」「河野談話に悪口雑言しまくってきた男・安倍」なんだから説得力皆無です。
 「つうことはアレか、政府として歴史教科書にきちんと南京事件慰安婦を『恥ずべき日本の戦争犯罪』として教科書会社に書かせると言う事ですか?*27」と聞きたくなります。

唯一の戦争被爆国として、核兵器の不拡散と究極の廃絶を目指し、国際社会でその責任を果たしてまいります。

 官房副長官時代に「日本核武装論」をかました男がよくもまあ心にもない発言ができるもんです。

 私たちは、二十世紀*28において、戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を、この胸に刻み続けます。

 はっきりと「旧日本軍慰安婦」と言わない辺りがせこすぎます(もちろん「20世紀」という幅の広さですから「反共・産経が大騒ぎする満州での旧ソ連兵による日本女性レイプ」「ユーゴ内戦での民族浄化」など、慰安婦以外も含んでるのでしょうが)。しかしこの発言と自分の河野談話への因縁がどう両立するんでしょうか。

私たちは、経済のブロック化が紛争の芽を育てた過去を、この胸に刻み続けます*29

談話の最初でも

世界恐慌が発生し、欧米諸国が、植民地経済を巻き込んだ、経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました。その中で日本は、孤立感を深め、外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使によって解決しようと試みました。

と言ってましたがその繰り返しです。「欧米がブロック経済するから悪いんだ」「だから日本は恐慌からの脱出のために満州ブロック経済を作ろうとしただけなんだ」という居直りを2度もやる安倍には心底呆れます。
 つうか「経済のブロック化が紛争の芽を育てた過去を、この胸に刻み続け」るというなら「北朝鮮への経済制裁」はいい加減やめたらどうなんですかね。それとも「これから制裁は徐々に解除します」という予告でしょうか(毒)。

だからこそ、我が国は、いかなる国の恣意にも左右されない、自由で、公正で、開かれた国際経済システムを発展させ、途上国支援を強化し、世界の更なる繁栄を牽引してまいります*30

 まあ一般論としては誰も異論がないでしょうが安倍がAIIBを「恣意的な金融システムになる恐れがある」などと非難してきた過去*31を知ってれば「戦後70年談話で中国への当てこすりかよ?」という疑念は否定できません。この部分について後で人民日報に安倍批判記事が載るかも知れません。

「積極的平和主義」の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります。

 おいおいです。安倍の「積極的平和主義」は「集団的自衛権行使容認」が当然の要素として組み込まれてるという代物です。当然国内外から批判がある。そんなものを戦後70年談話で「日本の目指すべき道」として自画自賛するとはどういう神経をしてるんでしょうか。
 つうことで、コメント終わり。「それなりに評価できる部分(「極右の安倍ですらこういってる」として後に使えそうな部分)」も一部にはありましたが全体的には「やはり極右・安倍の談話」としかいいようのない酷い代物だと思います。日本メディアがこの談話をきちんと批判出来るかどうか今後注目したいと思います。


【追記その1】

よく練られた安倍談話を見ると村山や河野の類がいかに阿呆で軽薄無能だったかが分かる。

ツイッターでべた褒めの島田洋一*32ですが、既に小生が指摘したように

・進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました。
・何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実
・我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。
(中略)
 こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。

などといった言葉は本来島田にとって評価できるものではないでしょう。もちろん安倍が「本心では反省の意を表明したくない」というのは見え透いています。俺は詳細に分析はしていませんが「過去の談話よりは後退してるのかも知れない」。
 「日露戦争を『アジア民族に希望を与えた』と正当化したり」「日中戦争、太平洋戦争を『確かに問題行為だったけど、ブロック経済した欧米も悪いんだ!』と居直ったり」という明らかに酷い部分もあります。ただ何度も言うように「過大評価はできないがウヨが手放しで評価できるほど徹頭徹尾極右史観で居直ってるわけでもない」。
 にもかかわらず島田が手放しで評価するのは
1)相手が安倍だから
2)ウヨ的な事を吹きまくる島田だが、実際問題「南京事件なんかない」などというウヨ史観全開談話など到底出せないと内心では自覚してるから
でしょう。全く島田らウヨはいい加減でデタラメな連中です。


【追記その2】

http://www.jcp.or.jp/web_policy/2015/08/post-702.html
■『戦後70年にあたって:「安倍談話」と日本共産党の立場』(日本共産党幹部会委員長・志位和夫
(前略)
 本日、発表された「安倍談話」は、「侵略」「植民地支配」「反省」「お詫び」などの文言がちりばめられていますが、日本が「国策を誤り」、「植民地支配と侵略」を行ったという「村山談話」に示された歴史認識はまったく語られず、「反省」と「お詫び」も過去の歴代政権が表明したという事実に言及しただけで、首相自らの言葉としては語らないという欺瞞に満ちたものとなりました。
 暴力と強圧をもって韓国の植民地化をすすめた日露戦争を、「植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけた」とのべていることは、乱暴きわまりない歴史の歪曲にほかなりません。
 全体として「安倍談話」は、戦後50年にあたって「村山談話」が表明した立場を、事実上、投げ捨てるにひとしいものであり、国内外のきびしい批判を招くことは避けられません。
 戦後70年の首相談話が、このような有害な内容となった根底には、安倍政権が、侵略戦争を肯定・美化し、歴史を偽造する極右勢力によって構成され、支えられているという問題があります。
(後略)

http://j.people.com.cn/n/2015/0814/c94474-8936383.html
■人民日報『安倍談話発表 直接の「お詫び」避ける』
(前略)
 安倍氏は談話において直接「反省」と「お詫び」の意を表明することを避け、過去の日本政府の歴史認識の回顧を通じ、「我が国は先の大戦における行いについて、繰り返し痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきた」と述べた。
 安倍氏は日本の侵略と植民地行為についても、同様に直接的な表現を避け、「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段として二度と用いてはならない」、「植民地支配から永遠に訣別」など第三者的な口調を用いた。
 安倍氏はまた、戦後生まれの世代が人口の8割を超え、「あの戦争に何ら関わりのない」世代に「謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と述べた。

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/08/14/2015081402270.html
朝鮮日報『安倍談話、村山・小泉談話より後退、「過去形」のおわび』
 安倍晋三首相は14日、閣議で決定した戦後70年談話を発表し、植民地支配と侵略についても言及したものの、日本の行動として明示しなかった。
 また自らの言葉で謝罪せず、「わが国は先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明してきた」として、「過去形」の表現を用いた。
 「先の大戦における行い」が何を示すのかについても明白にしなかった。
 日本の加害行為を明確に表現し、謝罪した村山談話や小泉談話とは差がある。村山元首相と小泉元首相はそれぞれの談話で日本が「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」と述べ、「心からのお詫びの気持ち」を表明した。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150814/k10010190051000.html
NHK『戦後70年談話 被爆者団体「不誠実で立腹」』
 戦後70年にあたっての総理大臣談話について、長崎の被爆者団体、長崎原爆被災者協議会の山田拓民事務局長は「今回の談話は、平和についての考え方が、今、国会で審議されている安全保障関連法案に関して安倍総理が言っていることと180度内容が違っていて、本心で言っていると思えない。誠実さも期待感もなく、非常に腹が立った」と述べました。
 また、談話の中で、唯一の戦争被爆国として核兵器廃絶を目指し国際社会で責任を果たすと言及したことについては、「核兵器廃絶への具体的な方策も示さず、口先だけの表現だった」などと述べて、失望感を示しました。
(後略)

*1:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て現在、国家主席、党総書記、国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席

*2:橋本内閣防衛政務次官森内閣外務政務次官、第一次安倍内閣外務副大臣麻生内閣官房副長官を歴任

*3:大蔵官僚を経て政界入り。海部内閣経済企画庁長官、森内閣金融再生委員会委員長を歴任。妻は女優の司葉子

*4:まあ確かに違法な抑留だとは思いますけどね。何でもかんでも拉致と呼ぶのは違うんじゃないか。

*5:中国共産党主席

*6:国家主席朝鮮労働党総書記、朝鮮人民軍最高司令官

*7:国家主席ベトナム労働党主席

*8:副首相(外相兼務)を経て首相

*9:ベトナム人民軍総司令官、国防相

*10:参議、大蔵卿、内務卿を歴任

*11:参議、陸軍大将、近衛都督を歴任

*12:参議、文部卿、内務卿を歴任

*13:安倍が「侵略」「戦争」と言わないばかりでなく「武力の行使」とも言えない辺りが実に安倍らしい。

*14:「破壊者」「敵対者」などとはっきり言えないで「挑戦者」というあたり実に安倍らしい。挑戦者は「ボクシングや将棋・囲碁のタイトル戦」などでも使う言葉ですから(苦笑)。まあ前後の文脈から「破壊者」「敵対者」以外何物でもないんですが。

*15:勿論、他にもあります

*16:慰安婦のことでしょう。ウヨ支持層の手前、はっきり慰安婦と言えないが、「慰安婦に謝罪してるかのような物言いで中韓、欧米などの批判をかわそうとする」辺りが安倍の姑息さを改めて示しています。

*17:強い怒りや悲しみを感じることを「断腸の念」といいますが当然ながら「怒りや悲しみ」は謝罪とイコールではありません。中韓の方々だって戦前日本には「侵略被害国民」として「断腸の念」のわけです。id:MukkeさんやI濱女史は「中国のチベット支配」に日夜「断腸の念」でしょう。まあ、談話の前後の文脈から「日本の愚かな行為への怒りや悲しみの表明=ある種の謝罪」と意訳はできますけどね。「戦前日本がアジアに対してした行為に首相として、強い怒りと悲しみを感じましたがアジアの方々にわびる気はありません」なんてそんな変な話ないですから。

*18:一部で噂されるように仮に「ロシアのクリミア併合」「中国の南シナ海紛争」などへの当てこすりだとしても「安倍には米国のイラク戦争を支持した前科がある」上、「戦争で国際紛争を解決しようとする戦争法案策定を画策している最中」なのだからむしろ「安倍は嘘ついてるんじゃねえ!」と批判される材料を安倍自らから作ってるだけでしょう。

*19:要するに日本の自衛隊アメリカの中東での戦争に参戦すると言う事

*20:安倍が具体的な談話名を何一つ出さない点が安倍のせこさ、姑息さを示しています。

*21:第59師団師団長(陸軍中将)。戦後、中国帰還者連絡会中帰連)会長。藤田氏や中帰連については人民日報『「中帰連」から「撫順の奇蹟を受け継ぐ会」まで、日本国内の反戦の声』(http://j.people.com.cn/n/2014/0723/c94474-8759380.html)、『日本人戦犯2人目・藤田茂の供述書を公開 村民を虐殺(一)』(http://j.people.com.cn/n/2014/0707/c94474-8751784.html)、『日本人戦犯2人目・藤田茂の供述書を公開 村民を虐殺(二)』(http://j.people.com.cn/n/2014/0707/c94474-8751836.html)、『日本人戦犯2人目・藤田茂の供述書を公開 村民を虐殺(三)』(http://j.people.com.cn/n/2014/0707/c94474-8751838.html)参照

*22:なお、1972年の田中首相、大平外相訪中によって日中国交は正常化された。

*23:1987年、三一書房刊行。なお、中帰連の編集した著書には他にも『完全版三光』(1984年、晩聲社)、『覚醒:撫順戦犯管理所の六年』(1995年、新風書房)などがある。また、中帰連をテーマにした著書として星徹『私たちが中国でしたこと:中国帰還者連絡会の人びと(増補改訂版)』(2006年、緑風出版)、岡部牧夫他『中国侵略の証言者たち:「認罪」の記録を読む』(2010年、岩波新書)などがある。

*24:広東省省都

*25:満州、今の東北三省(遼寧省吉林省黒竜江省)のこと

*26:南京事件について安倍本人が公然と否定したことはないかと思いますが否定論者とおつきあいしてる以上安倍も同罪です。

*27:まあ「つくる会」以外そう言う方針に教科書執筆者は反対なんかしないでしょうけど。

*28:他の文章と違い「先の戦争」においてでない点が悪い意味で「すごすぎます」。20世紀と言ったら論理的には「明治、大正時代」「1945年以降」も当然含みます。したがって「ユーゴ内戦での民族浄化と言う名前の組織的レイプ」なども含みますが何で「20世紀」なんていうんでしょうか。そこまでして慰安婦問題を矮小化したいのか。

*29:追記:なお拙エントリ『新刊紹介:「前衛」11月号』(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20151017/5421309876)で紹介した池津論文はこの部分を「民主党から政権奪取した際の衆院選挙・自民党公約「TPP反対」に違反していると批判される「TPP交渉」の正当化という思惑があるんじゃないか」と指摘しています。オレは愚かにも気付きませんでしたが言われてみればそうかも知れません。俺個人は「中国、韓国は今のところ不参加など、全ての国が参加してるわけじゃないしむしろTPPこそが『ある種の経済ブロックじゃねえの?』」と思いますが。また「戦争の反省」でそんな異質なものをぶち込むのは端的にいってふざけているとオレは思います。

*30:追記:なお拙エントリ『新刊紹介:「前衛」11月号』(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20151017/5421309876)で紹介した池津論文はこの部分も「民主党から政権奪取した際の衆院選挙・自民党公約「TPP反対」に違反していると批判される「TPP交渉」の正当化という思惑があるんじゃないか」と指摘しています。

*31:その結果AIIBに日本は加入していません。

*32:つうか中韓など談話の対象から批判されるような談話を出す安倍の方が無能だと思いますが島田らウヨにとってはそうはならないわけです。