今日の産経ニュース(10/31分)(追記・訂正あり)

■自民・二階*1総務会長、中国元副首相と経済連携強化で一致 「南シナ海」「邦人拘束」話題出ず
http://www.sankei.com/politics/news/151029/plt1510290029-n1.html
■自民・二階総務会長、楊氏と日中関係改善で一致  楊氏は日中首脳会談に期待
http://www.sankei.com/politics/news/151030/plt1510300026-n1.html
■自民・二階総務会長、中国の民間友好団体会長と面会 文化や青少年交流活発化で一致
http://www.sankei.com/politics/news/151031/plt1510310036-n1.html

http://www.sankei.com/politics/news/151029/plt1510290029-n1.html
 中国を訪問中の自民党二階俊博総務会長は29日、北京で中国国際経済交流センター理事長の曾培炎*2(そう・ばいえん)元副首相と会談し、日中両国の経済連携を強化すべきとの認識で一致した。
 会談では曾氏が「日中の経済関係は正念場を迎えている」として、来月中旬に中国のトップ50企業の経営者とともに訪日し、日本の経済界との交流を行うと表明。二階氏は「林幹雄*3経済産業相に伝え、自民党もしっかり対応したい」と応じた。

http://www.sankei.com/politics/news/151030/plt1510300026-n1.html
 中国訪問中の自民党二階俊博総務会長は30日、楊潔チ*4国務委員と北京市内で会談し、日中関係改善のプロセスを強固にしていくことで一致した。
(中略)
 一方、両氏は南シナ海の問題は話題にしなかった。二階氏は記者団に「日常茶飯事の若干のこぜりあいは、外交当局に任せておくことが大事だ」と語った。
 二階氏は30日夜、北京で中日友好協会会長の唐家セン*5元国務委員と会談する。

http://www.sankei.com/politics/news/151031/plt1510310036-n1.html
 中国訪問中の自民党二階俊博総務会長は31日、北京で中国人民対外友好協会の李小林*6会長と会談し、両国の文化や青少年の交流を活発化させていくことが必要との認識で一致した。李氏は習近平*7国家主席の幼なじみ。
(中略)
 二階氏は同日夜、北京市内で中国の文化を担当する劉延東*8副首相と会談。隣席でNHK交響楽団のコンサートを鑑賞した。

ということで「アベノミクスの先行きが不安なこと」もあり安倍も日中友好の方向にシフトを切りつつあるようです。


■伝統的価値観か現代的な多様性か、家族のかたちどう判断 夫婦別姓、再婚禁止期間の違憲性争う訴訟 4日に最高裁大法廷弁論
http://www.sankei.com/affairs/news/151031/afr1510310036-n1.html

(前略)
 早稲田大の棚村政行*9教授(家族法)は「働く女性が増えて、家族のあり方は変わってきた。男性でも女性でも実績のある人物が、名前を戸籍上も変えることに不便を感じる場合がある」と指摘。その上で、「離婚や再婚、国際結婚が増える中、その度に名前を変えるのが社会にとって好ましいか、名前が一緒だから家族の一体感が生まれるのか、考える必要がある」と話す。
 一見、夫婦の平等や多様性を認めることになりそうな夫婦別姓のどこが問題なのか。
「氏名の性格が根本的に変わる。『選択的』としつつ、国民全体の家族観に関わる」と反対するのは麗澤大の八木秀次*10教授(憲法学)だ。
(中略)
 性差のある再婚禁止規定は、離婚直後に女性が再婚した場合、すぐに生まれた子供の父親が不明確になることを避けるために定められたとされる。原告は「必要以上の制約」と主張。DNA型鑑定など親子関係について科学的特定方法が進む現在、「条文の根拠は失われた」と訴える。
 棚村教授も「親子を確定させるルールがきちんとあれば、再婚禁止期間は必要ない。ドイツやフランス、韓国などは廃止した」と指摘する。一方で撤廃した際には、親子関係を確定させるためのDNA型鑑定について、「裁判所から命じられた鑑定以外は認めないなど、厳格な運用が必要。血縁だけで親子を決めることができない場合もある」とみる。
 科学鑑定が進んだ今も、後婚の夫の子供と推定するなどの嫡出推定規定の改正がない限り、再婚禁止規定が必要と考えるのは東北大の水野紀子*11教授(家族法)だ。
(後略)

小生的にこの記事で興味深いのは

夫婦別姓批判(夫婦同姓擁護)」では「民法学者ではない」八木のコメントを持ってきた産経が、「再婚禁止期間擁護」では民法学者の水野教授のコメントを持ってきたこと

ですね。
 つまり産経だって「民法学者でない上に極右政治活動家の八木の発言」なんか「極右以外には」説得力皆無ですから、民法関係の話では使いたくないわけです。
 で産経にとっては幸せなことに「再婚禁止期間擁護(産経ら右翼の立場です)」では「水野教授」という「民法学者」が見つかった(なお、一応お断りしておけば水野説のような再婚禁止期間擁護は今では少数説で、棚村説のような批判派(期間廃止派)が多数説です)。
 ところが夫婦別姓ではそういう「産経にとって、都合のいい人」が「水野教授も含めて」見つからなかったのでしょう。*12
 その結果、
夫婦別姓批判(夫婦同姓擁護)コメントが憲法学者で、再婚禁止期間擁護コメントが民法学者ってどう見ても変だよなあ、読者は『両方とも、民法学者にしろよ』『民法学者で夫婦同姓支持派がいないから八木のコメントなのかよ。それおかしくねえか?』と絶対不自然に思うよなあ」
「でもせっかく本業の民法学者で俺達の再婚禁止期間擁護を支持してくれる水野教授が見つかったのに使わないのはもったいない」
「八木のコメントだと『ああ八木か、あいつ産経文化人で極右活動家だもんな。大体民法学者じゃねえじゃん、コメントに価値あるのかよ』で終わっちゃうからなあ。まだ民法学者の水野氏*13の方が世間に説得力があるよなあ」
「八木が怒るかも知れないがまあ仕方ないか」ということで、こういう「不自然な話」になったんでしょう。


■【お金は知っている】人民元の実利にひれ伏す米英 国際金融を牛耳るアングロサクソンの思惑とは(田村秀男*14
http://www.sankei.com/economy/news/151031/ecn1510310005-n1.html

 ワシントン発の報道によれば、国際通貨基金IMF)は中国の人民元を国際準備通貨単位である特別引き出し権(SDR)に組み入れることを11月下旬に正式決定するという。(夕刊フジ
 国内総生産GDP)データは偽装*15、しかも元相場は北京当局のさじ加減次第*16、元の需給関係を決める金融市場はがんじがらめに規制されている。
 「自由利用可能通貨」というSDR構成通貨の条件を満たさない元が、ドル、ユーロ、円、ポンド並みの国際通貨として扱われる。背景には、元を国際通貨として扱えば収益機会が広がるという国際金融資本の思惑がある。
 アングロサクソン(米英)が牛耳る国際金融資本の牙城は、ニューヨーク・ウォール街とロンドン・シティである。習近平国家主席が9月下旬に米国、10月下旬に英国を訪問した最大の狙いは元のSDR通貨認定工作の総仕上げだった。
(中略)
 10月6日には、ルー*17米財務長官が元のSDR認定について「IMFの条件が満たされれば、支持する」と表明した。同長官は3月に訪中した際には、「時期尚早」と反対していたが、豹変(ひょうへん)した。
(中略)
 米国はもともと、元のSDR認定問題は米金融資本のビジネス権益拡大のテコととらえてきた。認定条件として、段階的な金融市場自由化と元の変動幅拡大をIMFに検討させ、北京に提示してきた。中国の株式を含む資本市場に米金融大手が参入できるようになるし、元の変動がより大きくなれば、ヘッジファンドなどの活躍の場が広がる。
(中略)
 実利主義では英国が先行している。アジアインフラ投資銀行(AIIB)、元のSDR化とも、先進国で先頭を切って支持を表明。習氏は訪英して約400億ポンド(約7兆4000億円)の対英投資とロンドン・シティに人民元建ての国際決済センターの特権提供を約束。

 「財務省、外務省は無能だ、日本外交の敗北だ」と言い出すかと思ったら「IMFを牛耳る英米の政財官界は汚い」んだそうです。今さらそんな事言っても全く無意味でしょうに。

 日本に必要なのは正論だ。IMFの場で堂々と元の資格に異議を述べ、認めるためには、元の自由変動相場制移行と金融・資本市場の全面自由化を要求すべきだ。

 既にIMFが「元SDR化方針」を発表し、「田村が批判する英米は勿論」その他の欧州各国(独仏伊)からも異論がない状況でそんな事を言っても無意味でしょう。そして「そんな負けることが確実な戦い」を「欧米各国や中国の不興を買った」上、「負けることによって面子が潰れること」を恐れるであろう安倍にやれるわけもないでしょう(そして安倍が何もしなくても安倍信者・田村は何も言わないでしょう。何か言うとしてもせいぜい「官僚が悪い」「岸田外相や麻生財務相が悪い」でしょう)。
 というか田村がそこまで「元SDR化」に反対する理由が分かりません。やはり産経記者らしい「中国が喜ぶことには全て反対する」という極度の反中国でしょうか。


■ケリー米長官が中央アジア初歴訪…狙いはアフガン、背後にロシア
http://www.sankei.com/world/news/151031/wor1510310050-n1.html
 この時期に歴訪する理由がよくわからんですね。なにせ安倍の「中央アジア歴訪直後」です。
 安倍が「ホラ見ろ、俺の中央アジア歴訪は間違ってないんだ」と宣伝することが目に見えてる。
 そう言う宣伝をされて米国的にいいんでしょうか?
 それともマジで「安倍の歴訪と連携してる」んでしょうか。


■【VW排ガス不正問題】メルケル独首相の訪中にワーゲン首脳同行
http://www.sankei.com/world/news/151031/wor1510310026-n1.html
 例の不正問題の件について、「重要な市場である中国」の首脳相手にわざわざフォルクスワーゲンの首脳がわびを入れに来ました、という話です。


■首相あす訪韓 ガス田・北(ボーガス注:朝鮮)・慰安婦は… 中韓と関係改善探る
http://www.sankei.com/politics/news/151031/plt1510310016-n1.html
 11/2(月)の日中韓首脳会談予定(ただし中国は習主席ではなく、李首相の予定らしい)で11/1(日)訪韓だそうです。安倍が歴史認識問題(靖国南京事件慰安婦など)などでまともな態度をとることは全く期待できませんが、まあ、「日中韓三国」とも首脳会談しないわけにもいかないのでしょう。
 なお、
朝鮮日報『「安倍首相の来韓反対」 韓日首脳会談控え市民団体が会見』
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/10/30/2015103002546.html
ということで安倍に批判的な韓国の市民団体が早速「歴史認識問題などで朴政権が曖昧な態度をとり、安倍政権の無法を事実上黙認するなら安倍訪韓には反対だ」と朴政権に釘を刺しています。


■弁護人がナカダ容疑者の精神鑑定請求 埼玉・熊谷6人殺害事件
http://www.sankei.com/affairs/news/151031/afr1510310017-n1.html
 事実関係は当人認めてるようだし、これだけの凶悪事件となると「心神耗弱による減刑」ぐらいしか手がないかなあと言う気はします。


■【高論卓説】中国版「満鉄調査部」を創設せよ 中国研究員が“仰天”提言 「一帯一路」構想加速に向け
http://www.sankei.com/premium/news/151031/prm1510310001-n1.html
 「海外への企業進出にはシンクタンクが大事だ」という当たり前の話に過ぎないのですが、そこで「満鉄調査部」が例に出てくるのは確かに驚きです。最近の若い中国人にとって「満鉄」はもはや「歴史的事実」にすぎず「日本の侵略への怒り」とかそう言う思いは結構希薄なんですかね?


■【正論】米イージス艦南シナ海派遣の影にチラつくオバマ大統領の「抑制ドクトリン」 田久保忠衛(杏林大名誉教授)
http://www.sankei.com/premium/news/151030/prm1510300009-n1.html 
 「アメリカの態度は生ぬるい、抑制ドクトリンだ」と悪口雑言の田久保です。中国相手に戦争でも始めて欲しいんでしょうか?。
 いくらアメリカでも、いきなりそんな無謀なことはできないでしょうよ。今回のアメリカの措置をどう評価するにせよ。


■【湯浅博 全体主義と闘った思想家】独立不羈の男・河合栄治郎(1)70年安保反対闘争の喧噪
http://www.sankei.com/premium/news/151031/prm1510310009-n1.html
 わけがわからないですね。河合は1944年に死去しています。彼が「戦後の日米安保についてどういう考えか」なんて当然わかりようがない。河合の弟子筋には「猪木正道*18、関嘉彦*19、土屋清*20ら、旧民社党イデオローグ」が多く、旧民社党イデオローグは日米安保に好意的だったわけですが「だから河合も好意的に違いない」なんてのは勝手な決めつけです。
 安保擁護がしたいなら「河合の弟子」をネタにすればいいのですが「河合に比べて格が落ちる、知名度が落ちる」ということでこういうこじつけに走るのでしょう。

*1:小渕、森内閣運輸相、小泉、福田、麻生内閣経産相を歴任

*2:国家発展計画委員会主任、副首相など歴任

*3:小泉内閣国交副大臣、福田、麻生内閣国家公安委員長などを経て現在、経産相

*4:外務次官、駐米大使、外相などを経て現在、国務委員(外交担当)。

*5:駐日公使、外務次官、外相、国務委員(外交担当)など歴任。

*6:副首相、中国共産党副主席、国家主席中国人民政治協商会議全国委員会全国政治協商会議)主席を歴任した李先念氏の娘。

*7:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て現在、国家主席、党総書記、国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席

*8:中国共産党中央統一戦線工作部長、中国人民政治協商会議全国委員会全国政治協商会議)副主席などを経て副首相。

*9:著書『結婚の法律学(第2版)』(2006年、有斐閣選書)、『子どもと法』(2012年、日本加除出版)、『面会交流と養育費の実務と展望:子どもの幸せのために』(2013年、日本加除出版)など

*10:元「つくる会」会長、日本教育再生機構理事長というプロ右翼活動家。安倍内閣の審議会「教育再生実行会議」委員。『明治憲法の思想:日本の国柄とは何か』(2002年、PHP新書)、『「女性天皇容認論」を排す』(2004年、清流出版)、『本当に女帝を認めてもいいのか』(2005年、洋泉社新書y) など極右著書多数。

*11:個人サイト(http://www.law.tohoku.ac.jp/~parenoir/)。ウィキペディア「水野紀子」やhttp://nosumi.exblog.jp/17915643/によれば「東北大学始まって以来の女性部局長(法学研究科長だそうです)」なのでまあ優秀な方ではあるのでしょう。

*12:ウィキペディア「水野紀子」によれば水野氏は『「別氏制の導入が出生率向上に対してひとつの好条件を整備するものであることは、否定できない 」と述べ、少子化打開の方策として選択的夫婦別姓制度導入に賛同している』とのこと。

*13:保守的な方ではあるのでしょうが小生の知る限り彼女は「八木や島田洋一百地章などのように」産経のような極右メディアで右翼活動やってる人間ではないですね。

*14:著書『人民元、ドル、円』(2004年、岩波新書)、『アベノミクスを殺す消費増税』(2013年、飛鳥新社)、『消費増税の黒いシナリオ:デフレ脱却はなぜ挫折するのか』(2014年、幻冬舎ルネッサンス新書)、『人民元の正体:中国主導「アジアインフラ投資銀行の行末」』(2015年、マガジンランド)など

*15:というのは産経などウヨの主張に過ぎません。私見では「GDPデータの基礎となる地方統計が地方政府によって故意に歪められてる疑いは否定できない」が「中央政府自ら故意に歪めるようなことはしていない」し、「仮に歪みがあるにしてもアンチ中国が言うほどの歪みではない」というのが通説的見解かと思います。

*16:もちろん中国政府の規制は強いのでしょうが「さじ加減で自由自在に決められるわけではない」でしょう。

*17:クリントン政権行政管理予算局長、オバマ政権国務副長官、大統領首席補佐官などを経て現在、財務長官

*18:京都大学名誉教授、元防衛大学校長。著書『共産主義の系譜:マルクスから毛沢東まで』(1970年、角川文庫)、『ロシア革命史』(1994年、中公文庫)、『軍国日本の興亡:日清戦争から日中戦争へ』(1995年、中公新書)など

*19:東京都立大学名誉教授、元民社党参院議員。著書『私と民主社会主義』(1998年、日本図書刊行会)、『民主社会主義への200年:フランス革命からポスト冷戦まで』(2007年、一藝社)など

*20:経済評論家。著書『経済大国・虚像と実情:70年代日本経済の政策課題』(1970年、時事通信社)、『エコノミスト五十年』(1980年、山手書房)など