今日の産経ニュース(1/8分)(追記・訂正あり)

■自民“背水の陣” 宜野湾市長選に挙党態勢 連敗ドミノ断ち切れるか
http://www.sankei.com/politics/news/160107/plt1601070051-n1.html
 連敗ドミノとは「沖縄県知事選(翁長氏*1勝利)」「衆院沖縄選挙区(比例復活はあったが小選挙区では自公候補全敗)」のことです。共産支持の俺としてはここで自公候補に勝っておきたいところですがそれはさておき。この記事の何が酷いって「ここで敗北すれば4月の衆院北海道5区補欠選挙や6月の沖縄県議選などの大型選挙に負の連鎖を生みかねず、夏の参院選にも悪影響を与えかねない」と自民党の都合しか書いてないことでしょう。沖縄なんか眼中にないわけです。
 なお「背水の陣」なんて言ってますが仮に負けても「本心はともかく」建前では「一地方選挙に過ぎない」と産経や自公は強弁するでしょう。選挙前だから危機感を煽って、団結を高め、選挙に有利にしたいだけです。


■【正論】年頭にあたり 「ミニ・ソ連」の再興は白昼夢だ(木村汎*2
http://www.sankei.com/column/news/160108/clm1601080001-n1.html
 まあ、「ミニ・ソ連」とやらの定義によりますがプーチン*3が目指してるのはそんなことではなく「旧ソ連加盟国家への一定の影響力保持」でしょう。「だからそれが俺の言うミニソ連なんだ」と木村氏が言えばそれまでの話ですが。

 11年10月、プーチン氏は「ユーラシア連合」構想を発表した。旧ソ連邦構成諸国のうち、既に欧州連合EU)や北大西洋条約機構NATO)に加盟済みのバルト三国*4を除くなるべく多くの国々を糾合して、ロシア指導下に「ミニ・ソ連」を創ろうというスキームだった。
 ところが、それから4年経過し「ユーラシア経済連合」と名称を改めるなど、同構想の内容を若干修正したにも拘わらず、既に参加を決定したのはロシアを除くと4カ国にすぎなかった。カザフスタンベラルーシキルギスアルメニア。いずれも自国内に多くのロシア系住民を抱えるか、経済的、軍事的理由から要請を断れない弱みをもつ国々だった。
 他方、ジョージアウクライナアゼルバイジャンモルドバといった有力な旧ソ連構成諸国は同「連合」参加をボイコットした。

 当初の理想よりは縮小したとは言え「連合体」ができたのだからプーチンにとっては御の字でしょう。また、本部が中国にあって、中国が加盟国ではありますが「中国、ロシア、カザフスタンキルギスタジキスタンウズベキスタン」によって構成される上海協力機構なんてものもあります。

 ウクライナを「ミニ・ソ連」プロジェクトから離反させるだけでなく、EUNATOの方へ事実上追いやる結果を招いたことは、ロシアにとり大きなマイナスだった。というのも、ウクライナは地理、人口、国力などから見て、旧ソ連構成諸国のなかで群を抜く重要な地位を占めているからである。プーチン氏発案の「ユーラシア連合」の成否は、ひとえにウクライナが同プロジェクトに参加するか否かに懸かっているといっても過言でない。

 「ウクライナの不参加はダメージ」ってのは木村氏の主観にすぎませんからね(そもそもクリミア併合前から不参加だったわけですし)。
 そもそも「クリミア併合で敵に回した(木村氏)」のではなく、「親ロシア政権が打倒されたこと」を「反ロシア、親NATOの現れ」と判断したからプーチンは「クリミア併合に動いた」のであって木村氏の認識は何ともとんちんかんです。

 プーチン大統領の決断によって、ロシアがクリミアを獲得したことは確かに事実かもしれない。だが、そのためにロシアが支払わねばならない代償は実に大きかった。仮に主要8カ国(G8)からの追放、経済制裁、「ミニ冷戦」の発生を別にしても、ロシアはウクライナ全体を失ってしまった。ウクライナは米欧、EUNATO側へ急接近を遂げる一方、「ユーラシア連合」構想へ参加する意欲をゼロにしてしまったのだ。戦術家・プーチン氏は、なぜそのような戦略上の過ちを犯したのだろうか。私の説明は、こうである。

 「親ロシア政権打倒」時点で、既にウクライナは「EUNATO側に接近をした」と見るのがプーチンに限らず「プーチン批判派も含めて」常識的な見方だと思いますが。「ウクライナNATOEU接近」に話を限れば、クリミア併合があろうとなかろうと事態は変わらなかったでしょう。「ウクライナNATOEU接近」に話を限れば、つまりはプーチンには木村氏の言う「戦略ミス」など何もないわけです。

 プーチン氏とて、生身の人間である。理性(“頭”)にばかりもとづいて、政治的判断を行っているわけではない。時にはエモーション(“心”)に動かされて、衝動的な決定を下すこともあろう。まさにクリミア併合の決断は、その一例だったのではないか。

 プーチンはそんなに甘い人間じゃないでしょう。彼の計算が「合理的で彼の計算通りに事態がうまく進展したか」はともかく計算自体は当然してるでしょう。

 クリミア併合は、14年3月16日に実施された住民投票の結果、圧倒的多数がロシア編入に賛成していることが判明。それを知ったプーチン大統領は2日後に電光石火のごとく併合に踏み切った。しばらくの間こう説明されていた。
 だが、この通説はその後、大統領自身の言葉によって否定された。はるかそれ以前の段階、2月23日午前7時にクリミア併合の決断は下された。これが、今日の公式説明なのである。

 もちろんこれだけでは「2月23日午前7時にクリミア併合の決断は下された」というプーチン発言が正しいかどうかはわかりません。単に「当初の発表を変更した方が俺にメリットだ(実際メリットかどうかはひとまずおきます)」という判断から説明を変えたに過ぎないのかも知れない。大体「それが事実」なら「何故住民投票をしたのか」「何故実際の併合と決定までの間に1ヶ月のブランクがあるのか」という疑問が出てきます。
 したがって「それが事実なら無法ではないのか」というプーチン批判はあり得ても「それは事実だ」と断定した上で、プーチン戦略を分析するなんて事はおそらくやめた方がいいでしょう。


■【主張】対北朝鮮制裁 率先し断固たる対応とれ
http://www.sankei.com/column/news/160108/clm1601080003-n1.html
 他の国ならともかく「交渉以外では解決しない」拉致問題を抱えている北朝鮮との間で無責任に良く制裁論が唱えられるもんです。
 たとえば日本がウクライナ問題で「欧米ほどにはロシアに対し厳しい態度を取ってない」のも北方領土問題があるからです。
 産経は「拉致問題を解決する気はやはりないのだ」と呆れざるを得ません。本来なら「どうしても制裁が必要なら仕方がないが制裁は避けて欲しい」「とにかく日朝交渉に影響が出ないようにして欲しい」とでも家族会が言うべきでしょうが言わないんだからげんなりです。

*1:那覇市議、沖縄県議、那覇市長を経て沖縄県知事

*2:著書『日露国境交渉史』(1993年、中公新書)、『プーチン主義とは何か』(2000年、角川書店Oneテーマ21新書)、『現代ロシア国家論:プーチン型外交とは何か』(2009年、中公叢書)など

*3:エリツィン政権大統領府第一副長官、連邦保安庁長官、第一副首相、首相などを経て大統領

*4:エストニアラトビアリトアニア